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2004/12/22
2005年度税制改正に対する考え方
民主党税制調査会
会長 中川正春

1.05年度税制改正にあたっての基本的考え方

(1)現状認識


 わが国の経済情勢は、昨年から本年夏にかけて一部に回復の兆しを見せたものの、依然として厳しい環境にある。とりわけ、中小企業や地方は、回復というにはほど遠い状況が続いている。また失業率は歴史的に高い水準で推移し、実質賃金は減少し、その結果として最大の需要項目である消費にGDPを押し上げるほどの力強さは見られない。加えて、秋口からは海外経済の減速による輸出の鈍化、デジタル家電の在庫の積み上がり、原油価格の高騰などにより、先行き不透明感が強まっている。小泉総理は「改革なくして、成長なし」と政権就任以来3年半にわたって叫び続けているが、結局改革は進まず、我が国の経済構造の大きな転換がないままに、再び厳しい冬の季節を迎えるのではないかとの懸念が強まっている。
 長期にわたる景気の低迷などを背景に、社会全般に閉塞感や不安が蔓延している。この閉塞感を打破し、安心、活力、将来に向けた希望をもたらすことが構造改革の目的である。しかし、小泉政権の取り組んだ「改革」と称するものは、いずれも看板倒れであり、内実を全く伴わないものであった。小泉内閣の看板である道路公団改革、年金改革、いわゆる「三位一体改革」などいずれの改革も、将来に対する展望に繋がるものどころか、国民の不安をますます増大させる結果となった。
 さらに暗雲をもたらしているのが、極めて厳しい我が国の財政状況である。対GDP比140%を超える長期債務残高は、第二次大戦時の水準に並ぶ水準であり、戦後我が国が超インフレに悩まされたという歴史を振り返れば、この水準はまさに危機という他はない。
 今後は、上記のような多くの問題を克服しつつ、将来の我が国のあり方に応じた「あるべき税制」の構築に向けて、抜本的な改革を早急に断行していく必要がある。


(2)主要課題


定率減税

 民主党は、現段階において定率減税の縮減・廃止を行うことには反対である。我が国経済状況は、前記のごとく未だ不透明な状況にあり、そのことは日銀の政策態度からも明らかである。その意味では、定率減税導入の目的は未だ達成されていない。さらに今後は配偶者特別控除一部廃止、年金課税強化、年金保険料・雇用保険料の引き上げ等の国民負担増が目白押しである。このような状況下で、国民にとっては大型増税となる定率減税の縮減・廃止を強行することは、余りにもリスクが大きいと考える。
政府は基礎年金国庫負担率引き上げの財源を定率減税の廃止等によって確保することとしているが、定率減税が景気対策として導入された経緯をふまえれば、その増収分を特定財源のように取り扱うことに合理性は無い。年金に対する国民の強い不信等を勘案すれば、引き上げ財源は歳出の徹底的な見直しによって確保すべきである。
 定率減税そのものは導入の経緯、減税の方法から見ても特例的・一時的な措置であり、将来的に廃止することが妥当である。しかし、その実施にあたってはデフレ脱却や賃金の伸びなど国民が回復を実感できる経済状況の実現を踏まえつつ、「あるべき税制」構築に向けた抜本改革の中で行うべきと考える。


定率減税の2分の1縮減による影響
(影響を被る人口:国税 約4800万人、地方税 約4997万人)
年収 夫婦 +子ども2人 夫婦のみ
300万円 0.07万円 (8.75%) 1.2万円 (10.90%)
500万円 1.75万円 (11.25%) 3.2万円 (11.14%)
700万円 4.1 万円 (10.87%) 6.0万円 (10.86%)
1000万円 8.9 万円 (9.34%) 10.9万円 (9.14%)
1500万円 14.5 万円 (6.14%) 14.5万円 (5.24%)
※カッコ内の数字は増税率



税源移譲

 民主党は従来から現行の約20兆円の補助金等のうち、18兆円補助負担金を廃止するかわりに、5.5兆円の税源移譲と12兆円余りの一括交付金制度の創設を提唱してきている。これによって我が国のかたちを抜本的に改め、真の地域主権国家を形成していくことを目的としている。
これに対して小泉内閣が進める、いわゆる「三位一体」改革は、従来にも増して中身のない看板倒れに終わった。政府の要請に基づき地方6団体がまとめた補助金改革案は真摯には受け止められず、ほとんど反映されなかった。税源移譲の額についても、政府自ら「3兆円をめざす」ことを閣議決定していたにもかかわらず、結果はその8割にとどまり、数字の辻褄合わせさえ行うことができなかった。
税源移譲を含め地方の税財政改革を行うにあたっては、まず最終的な着地点を明確に示すことが必要である。今回の「三位一体」改革は、これを怠り、3兆円という金額ばかりが先行したために迷走し、結果は地方分権に逆行しかねないものに終わっている。
税源移譲の手段としては、税収中立を前提に、比較的税源の偏在が小さく、また地方からも要望のある所得税減収・住民税増収の方式が望ましく、また住民税の増収策としては比例税率化が望ましいと考える。なお現行の税率・ブラケットを基本として税源移譲を行った場合、所得税と住民税の課税最低限の相違により300万人程度の納税負担が急増する可能性があるので、これを回避する手段を講じるべきである。また、より大規模な税源移譲を行うにあたっては地方消費税も検討の対象となりうると考える。
地方交付税については、税源移譲の手法及び税源移譲による地域間の格差の状況を踏まえつつ、その財源とする税目について見直す必要がある。また当面は算定方法の簡素化・透明化、行革・増収対策に対するインセンティブ機能の付与、総額の抑制、不交付団体の割合に拡大等の改善を進めつつ、将来的には財政調整制度の抜本的改革が必要である。その際には地方自治体間で行う水平調整による格差是正も検討の対象とすべきと考える。

*「三位一体の改革」とは?

「三位一体」とは元来キリスト教の用語だが、小泉内閣における地方分権推進のキーワードとして流用されている。地方財政改革を推進するにあたり、地方の主たる財源である「税源(地方独自の税収)」「地方交付税(国から移転される、使途に制限のない資金)」「補助金(国から移転される、使途に制限のある資金)」の3種類の資金の流れを一体的に改革し、地方の自主性・裁量性を高めようとするもの。


年金改革

 民主党は、現行の公的年金制度を抜本的に改め、全ての年金制度を一元化した上で、現役時代に所得に比例して納付する保険料に応じて受給額が定まる「所得比例年金」と、この「所得比例年金」の受給額が安定した最低限の生活を確保する額に満たない高齢者に支給する「最低保障年金」からなる新たな年金制度を提唱し、これを具体化した法案を通常国会、秋の臨時国会に提出した。
 高齢者の最低限の生活を確保するために支給する「最低保障年金」の財源に充てるために「年金目的消費税」を創設する。本格的な高齢社会において、現役世代のみの負担で年金制度を支えることは困難であることから、高齢者も含めた国民全体でこれを支えるために「年金目的消費税」の創設が必要である。この「年金目的消費税」による税収は、現行制度のように年金の高額受給者まで一律に給付するのではなく、真に必要な高齢者に対する給付を重点化することで、税本来の役割を果たすこととする。
 「所得比例年金」は、現役時代の所得に応じて受給額が定まることから、所得捕捉の正確性が求められる。そのために納税者番号制度(仮称)を導入する。この納税者番号制度は、所得捕捉と同時に適正な社会保障給付を確保するためにも必要である。また保険料徴収の効率化を図るために、社会保険庁を廃止し、その事務の一部を国税庁に統合した上で、新たに歳入庁を創設する。歳入庁では、税の賦課・徴収に併せて、年金保険料、労働保険料の徴収も行うこととする。
今後、本格的な高齢社会を迎えるにあたって、社会保障給付の増大は不可避である。税制改正を検討するにあたっては、この社会保障給付の財源を確保することが重要な課題となるが、そのためには社会保障制度のみならず、税制に対する国民の信頼が欠かせない。社会保障制度改革と税制改革を表裏一体として捉え、早急に取り組んでいくことが重要である。


財政健全化

 小泉総理は、就任当初こそ「国債30兆円枠」を唱え、財政健全化を進める姿勢を示したものの、3年余の政権担当期間の間に140兆円を超える(H17予算を含む)国債を発行し、「世界一の借金王」となった。これによって我が国財政状況は深刻さをいよいよ増し、健全化への取り組みは一刻を争う課題となっている。
 民主党は政権獲得後10年をメドにプライマリーバランス黒字を図ることとしている。これを実現するための第一歩は、国民の政治行政に対する厳しい批判を考えれば、歳出の徹底的な改革から取り組むことである。公共事業・特殊法人・公務員人件費などの大幅見直しなどには即座に取り組むことが必要であり、その後の数年間は聖域なき歳出改革を断行する。
 しかし、現在の財政危機は歳出改革のみで脱却できるものではなく、歳出改革に続く、歳入改革が必要である。歳入改革を進める上では、「簡素・公平・中立」という税制の原則を踏まえつつ、広く負担を求めなければならない。具体的には所得税や相続税においては控除の見直し、法人税については租税特別措置法の原則撤廃等による課税ベースの拡大が必要である。
 また地方分権は財政健全化の観点からも必要である。国・地方の役割分担を地域主権国家を前提に整理し直し、この役割分担に応じた税源の見直しを行う必要がある。この改革を通じて、国が地方の財源を全般的に保障するシステムを見直し、地方の財政面での自立を促進することが重要である。



2.政府与党が検討している個別改正項目について

(1)所得税関係


金融所得課税の一体化

 政府が検討している「金融所得課税の一体化」は、現行の分離課税を前提としたまま、金融商品の一部について課税方法の統一、損益通算範囲の拡大を進めるものであるが、その手法は小手先の細工にとどまり、将来の方向性が見えない。これでは政府が看板とする「貯蓄から投資へ」の実現は困難であると考える。
 民主党としては、既に進みつつある社会の二極分化を加速させないためにも、累進構造を備えた総合課税を維持することを基本とする。その上で、「貯蓄から投資へ」を本来的な意味で進めるために、長期的投資の優遇を進める。具体的には株式等の長期保有に対する税制上の優遇の拡充、配当への課税軽減や企業の配当性向の向上に資する税制の構築等を進めていく。


住宅ローン減税

 政府は中古住宅の流通促進を目的に住宅ローン減税における築年数制限の廃止を、省エネ住宅や耐震改修の普及促進を目的にリフォーム投資額の一定割合を所得税から控除する制度を検討している。目的それ自体には理解しうる点もあるが、これらの場当たり的な小細工は税制を複雑にするものであり、あるべき税制から遠ざかるばかりか、国民にとっても利用しにくいものとなる可能性がある。
 民主党は、従来から住宅ばかりでなく自動車や教育ローンなど、原則としてキャッシュローン以外の債務に係わる利子を所得控除する「ローン利子控除制度」の創設を提唱している。この制度によれば政府が検討する様々な目的を達成できることはおろか、広汎な消費を活性化し、また今後予想される金利上昇局面にも消費の下支えの効果が期待できる。細かな制度をいくつも設けることよりも、単一の簡素な控除制度を設けることが国民の利便性の観点からも望ましく、結果として大きな効果が期待できるものと考える。


(2)法人税関係


不良債権処理関係税制

大手行の不良債権問題はようやく出口が見えてきたが、地域金融機関においてはまだ問題が払拭されたとは言えない状況にあり、金融庁は昨年に引き続き不良債権処理支援の拡充を求めている。
無税償却の範囲拡大については、間接償却中心である我が国の環境を踏まえた上で、一定の範囲で不良債権の範囲を拡大し、無税償却を容易化する必要がある。
 欠損金繰越控除期間の延長については、不良債権処理の加速に配慮した適用開始年度の設定が必要である。
 また不良債権処理促進のみならず、低迷する地域経済、中小企業の状況を考慮し、平成4年度以降凍結されている繰戻還付制度の復活が必要である。


人材育成減税

 我が国の最も重要な資源は人材であり、その育成に国が全力を挙げることは当然である。その一環として産業の競争力強化や雇用の安定の観点から、税制において一定の措置を講じることも考えられる手段である。
 与党は従業員の教育研修費や教材費の一部を法人税から控除する制度を決定したが、現在の価値観やライフスタイルの多様化に鑑みれば、企業主体の人材育成促進策と同時に個人の自己啓発に係わる経費を控除の対象とするなど個人主体の支援策も積極的に検討すべきである。


年金積立金にかかわる特別法人税

 退職年金等積立金に対する特別法人税の課税停止が来年3月で時限を迎える。年金課税については、従来、拠出・運用・給付の各段階で実質的に非課税となっていたが、給付段階においては昨年の税制改正において課税強化が行われた。  
特別法人税の課税は、市中金利が歴史的に極めて低い状況になり、年金資産の運用が低迷したことから停止された。この導入の経緯を勘案すれば、「ゼロ金利」を超えた「量的緩和」を行っている現段階においては、この停止を解除することは適当ではなく、特別法人税の課税停止については、再度の延長が望ましいと考える。また年金制度改革に合わせて、特別法人税制度自体の改廃も検討していくべきである。


(3)酒税


 酒税については、一昨年の税制改正で酒類間の格差是正を名目にしつつ、実体的には発泡酒の狙い撃ち増税が行われた。今回、さらにいわゆる「第三のビール」に対して同様の狙い撃ち課税を行えば、民間企業の開発意欲ひいては消費者利益を損なうことになりかねない。現行酒税制の維持を前提に、単なる増収を目的とする小手先の改正を行うことには反対である。
 与党は現在10種類、11品目の酒類の分類を「蒸留酒」「ビール等」「その他の醸造酒」に再区分し、それぞれの分類ごとに同一の税率を適用することを検討するとしているが、その際に「財政事情を考慮し」との付帯条件が付き、財政赤字補填を目的とした増税の色彩が濃くなっている。酒税の改正にあたっては、納税者の信頼・理解を得るために酒税の透明性・公平性を重点に置くべきであり、アルコール度数に応じた課税など、より公平で分かりやすい課税方式に抜本的に改めることが必要であると考える。


(4)地球温暖化対策税の創設と自動車関係諸税の見直し


国際的な地球温暖化対策の枠組みを定めた京都議定書が来年2月に発効することとなり、環境省はこれが確実になった段階で、唐突に新たな環境税案を提案した。環境省は2年前にも環境税の研究発表を行っているが、このときには「環境税+CO2削減技術・設備導入に対する補助金」のケースで、京都議定書の目標達成のためには炭素1トン当たり3000円の課税が必要としていたにもかかわらず、今回の提案では税率をトン当たり2400円と引き下げてきた。 
その上、今回の提案では税収の一部を社会保障財源に充てても、京都議定書の目標達成が可能としており、この変化の経緯が不明確であり、環境省案の実効性には疑問がある。
民主党は、京都議定書の目標達成という国際的な責任にとどまらず、環境保全社会の構築という将来世代に対する責任を果たしていくためにも、地球温暖化防止に向け国民全体の取り組みが必要であると考える。そのためには全ての政策を環境保全、温暖化防止の観点から見直していく必要があるが、とりわけ温暖化防止のための経済的措置は、税収使途のグリーン化、国民意識の向上などの観点から有用であり、早急な導入が必要と考える。ただし、地球温暖化対策税の導入は、歳入欠陥の穴埋めを目的とするものではない。よって、特に産業部門において温暖化防止に対して顕著な努力・効果が見られる場合には十分な配慮を行うべきであり、また税収の使途についても導入の趣旨に十分配慮しなければならない。
具体的には、CO2排出量(炭素含有量)に着目し、炭素1トンあたり3000円程度課税し、電力については、現在の電源開発促進税を一部組み替えて課税する炭素・エネルギー税とする。但し、その際には他に転換不可能な原料炭・ナフサ等の原材料としての使用については課税の対象から外し、産業界等の温暖化ガス発生の抑止への効果的な取り組みに対しては税の軽減もしくは還付制度を設け、わが国産業競争力の維持・強化を図る。また輸入石炭についても一定の措置を設ける。税収は、省エネルギー・新エネルギーの技術開発、設備投資、普及等に優先的に配分する。これにより、我が国の産業の国際競争力をさらに強化し、環境技術立国として、環境と雇用を両立させた持続可能な社会を構築する。なお石油税制についても、そのあり方を含め今後検討する。
同時に複雑かつ過重な負担となっている自動車関連諸税について、自動車重量税の税率を本則に戻した上で自動車税と統合し、自動車取得税を廃止して消費税との二重課税を解消し、その抜本的な整理統合を図る。
 なお今後の道路整備においては、国はその骨格となる道路の維持・補修を中心とし、その他の道路については地方が主体となって整備することとする。地方の道路整備財源については、民主党の地方分権政策に則り、自動車関連諸税の整理統合による減収分も含め、上記一般財源化された税収より確保する。


(5)地方税関係


住民税関連

 与党は高齢者向け非課税措置の縮小として、65歳以上の高齢者のうち、前年の合計所得125万円以下に適用される非課税優遇措置の廃止を打ち出した。個人住民税については本年も住民税の均等割引き上げが行われており、また高齢者については公的年金課税の強化が行われたばかりである。地方自治体の財政健全化が必要であることは論を待たないが、まずは歳出の徹底的な見直しや抜本的な地方分権の推進などの構造改革に何ら手を付けないまま、国民にいたずらに負担を押しつけることは許されない。さらに今回の決定は余りにも唐突であり、国民の理解が得られるとは到底思えない。高齢者に係わる増税は速やかに撤回し、所得税・住民税の抜本改革の中で改めて検討すべきである。
 なお本年の公的年金課税強化によって、高齢者の住民税額が上がり、その影響で各種社会保険料負担が増加した。この際に政府は財務省・総務省・厚労省の連携を欠き、この影響を見逃していたことが国会審議で明らかとなった。今回の非課税措置の廃止も、公的年金課税強化同様、税のみではなく、社会保険料にも及ぶ負担増となるものであり、社会保障制度の抜本改革に全く手も付けない段階で、実質的な社会保険料の引き上げは行うべきではない。


法人税関連

 税源移譲に伴い地方間の税収格差が拡大することが想定されることから、当該格差を縮小することを念頭に、与党は法人事業税の分割基準の見直しを決定した。しかし、この手法も余りにも場当たり的といわざるを得ない。そもそも法人事業税は税収格差是正のための道具ではなく、これを安易に格差是正に用いることは税制の基本理念を逸脱し、かつ将来の抜本的な税源移譲に即したものとは考えられない。これは、政府の進める三位一体改革自体に理念や全体像が欠落していることから生じる矛盾ではあり、目先の微調整に走ることなく、まずは税源移譲の全体像や移譲額を明確にした上で、地方交付税等財政調整の手段と合わせて、格差是正の手段を検討すべきである。



3.民主党の求める税制改正の課題

(1)所得税関係


 先に記したものの他、所得税については以下の改革を求めていく。

国民の納税者としての意識を高め、税金の無駄遣いを強力に是正していくために、給与所得者の納税についても確定申告を原則として、年末調整を選択できる制度へと改める。

公平感のある社会へと転換するため、個人所得課税において世帯単位で、高所得者に相対的に有利な「控除主義」から、支援が必要な人への「給付主義」へ転換する。そのため所得課税の各種控除を見直し、それによって生み出される財源を子育て支援策などの社会保障給付への財源とする。


(2)法人税関係


法人税は国際的な整合性や経済社会の構造変化に柔軟に対応していく必要があるが、税率については当面現状を維持する。

償却期間の短縮、残存価値の見直し等減価償却制度の抜本的見直しを行う。

中小企業の競争力強化と自己資本蓄積による体質強化をはかるため、中小企 業に対する同族会社の留保金課税を廃止する。


(3)消費税関係


消費税は、今後の我が国にとって極めて重要な税であるが、一方で国民の消費税に対する不信感はいまだに根強い。今後は、さらに制度の透明性、信頼性を高めていくことが重要である。その一環として、インボイス制度を導入すべきである。

歳出の徹底的改革を前提としつつも、将来消費税率の引き上げが不可避となった場合には、逆進性対策が必要となる。民主党としては、逆進性対策として、基礎消費支出に係る消費税額相当分の一律還付制度を検討していく。

平成15年度税制改正において免税点の見直しが行われ、課税業者が約200万増加することが見込まれている。この新たな課税業者に係わる帳簿の記録・保存や簡易課税制度の選択について、十分な配慮が必要である。


(4)相続税関係


今後の相続税の制度設計にあたっては、共同で富を形成してきた配偶者間の並行移動に係わる控除の拡大や、被相続人の介護を実際に行ってきた者に対する配慮が必要である。

相続遺産を自治体やNPOなど公益を実現する団体に寄付する際の、大胆かつ使いやすい税の減免制度や寄付者を讃える制度を創設することが必要である。

循環型社会の形成促進、地域の良好な生活環境維持の観点から、里山、雑木林等の身近な緑の相続に対し、利用制限・保全義務を課した上で、相続税・固定資産税の軽減措置を図るべきである。

相続税収の使途については、年金や介護保険とのリンクを検討すべきである。


(5)特定非営利活動法人(特活法人)支援税制・公益法人改革


平成15年度に政府は特活法人支援税制の改正を行ったが、その効果は乏しく、特活法人数が約2万にも達したにもかかわらず、認証特活法人は0.1%にとどまっている。今回も小幅の改正を行っているが、小手先の改正にとどまっており、公益を担う主体という特活法人の位置づけに比べれば、不十分だといわざるを得ない。

民主党は、この認証NPO法人制度の改善し、全NPO法人の概ね5割が認証NPO法人となりうる制度を目指す。

そのため、最大のハードルとなっているパブリックサポートテストの要件を大幅に緩和する。また認証NPO法人の認定機関を国税庁から、官僚以外からなる第三者機関へと変更する。

同時に寄付金控除制度を拡充し、税額控除と所得控除の選択が可能となることとし、さらに従来の1万円の裾切りを廃止する。

今後はさらに国民1人1人がNPOの活動を直接的に評価し、かつ納税を活用して直接的に資金面の支援を行いうる制度を、自治体の事例を参考にしつつ、検討していく。

公益法人制度改革については、非営利法人全体のベースとなる基本類型である非営利法人(仮称)と、その法人類型をベースに寄付金控除を中心とする税制上の優遇措置を与えられた法人類型(税制支援非営利法人(仮称))の2階建てとする。

非営利法人(仮称)は原則非課税・収益事業のみ課税を原則とする。

税制支援非営利法人(仮称)には、みなし寄附金制度や寄付控除等の優遇措置を付与する。


(6)戦略的な教育減税


教育は国の基本、根幹であり、教育の質を高めていくことは、今後わが国が国際競争を生き抜いてゆく上でも非常に重要である。よって、教育(リカレント教育を含む)に対する税制上の優遇措置を拡充する。

子弟の教育ローンの利子を所得控除する恒久制度(再掲)や、国の保証によ る「二世代教育ローン」の創設及び税制優遇措置を創設する。

就職後のリカレント教育を促進するため、現行の勤労学生控除の要件を緩和すると共に、高度な人材育成をさらに進めるために、大学院等(法科大学院を含む)の高度専門教育の学費を本人が負担する場合の税制上の優遇制度を創設する。


以上
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