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2003/02/28
河村、山花議員らが府中刑務所を視察




民主党の河村たかし、山花郁夫の両議員は28日夕、野党4党の法務委員会理事・委員らで東京・府中市にある府中刑務所を訪れ、同所で保護房収監中に死亡した2人の受刑者の詳しい死因、死亡当時の状況などを調査した。両議員以外の参加者は、自由党の石原健太郎、共産党の木島日出夫、社民党の保坂展人の各議員。

 一行はまず管理棟内の会議室で所長らから説明を聞いた。所長の説明では、死亡した2人のうち1人は99年8月、奇声・大声を発したため12回目の保護房入りとなった翌日早朝、呼吸微弱の状態で発見され、まもなく心不全で死亡。もう1人は、奇声・大声を発したため約1か月前から保護房入りが続いていた02年4月、自発呼吸がない状態でいるところを発見され、急性心不全による死亡が確認された。いずれも革手錠の使用はなく、検死でも外傷等は見られなかったという。

 続いて一行は受刑者を収監するエリアに案内され、実際に独居房や保護房、治療施設、監視カメラシステムなどを順次視察した。ここからは写真撮影はもちろん、携帯電話やたばこの持ち込みも禁止される。同エリアに入って最初に目に入った柱上トランスの載っている電柱は、感電による自殺を防止するためか、よじ登れないよう、途中にぐるりと柵が設けてあった。

 施設内は清掃が行き届いており、予想以上に衛生的な状態だ。独居房は満室に近い状況で、房の扉が並ぶ廊下を歩くと、各房に受刑者の姿が監視窓を通して見える。各房は3畳ほどの広さで4分の3ほどが畳敷き。17時30分に就寝時間となるため、房内の受刑者の多くはすでに寝具をかけて横たわっているが、起きている者もいる。途中、ある房からは吠え声のような奇声が繰り返し聞こえていた。

 続いて案内された保護房は、実際に中に入ることができた。広さは独居房よりも若干広く、4畳程度か。全面板張りの壁にリノリューム張りの床。窓は、天井近い高さに一応明かり取りがある。設備は床にぽっかり四角い穴があいたような陶器製の便器、床の高さにある洗面台だけ。夜間も定期的に中の様子を監視するために蛍光灯の照明は消灯しない。壁を引っ掻いて書いた「○○参上」などの落書きが目につく。見学した房の両側には、受刑者を収監中らしき保護房があり、ドアに収監日を「2/26」などと記した紙片が張られている。独居房と異なり、監視窓は蓋が閉じてあるため、中の様子は分からない。保護房は15室あるという。

 保護房などを天井のカメラで24時間監視しているというモニターは計23台。うち18台は7秒ごとに画面が切り換わり、他の5台は手動で切り換える。また、「集中治療室」ということで案内された病室は、普通の病院のICUのような高度な医療機器は見当たらず、学校の保健室のような雰囲気。2人がベッドに寝ていた。人工透析を受けているのだそうだ。

 再度会議室に戻り、革手錠を見せてもらった。参加議員の1人が「名古屋刑務所で見たのは、ずいぶん使い込まれたようだったが、ここのは新品同様だね」と言うと、「実際、あまり使っていませんので」との説明。牛革を重ねて厚さ8ミリほどになっているが、かつて、これを道具を使わずに切って取り外してしまった猛者もいるという。府中刑務所では、各種の革手錠を合わせて34組保有する。

 見学を終えての意見交換。「保護房に入れることで、いったいどういう効果があるのか。精神疾患が原因で奇声を発する場合、さらに病気が進行しないか」「名古屋刑務所の事件も、最初は『病死』とされていた。府中の2件は本当に大丈夫か」「名古屋の事件についてどういう感想を持つか」などの質問が続く。「名古屋の事件については、一言で言えば残念だ」と所長。「犯行には多数の刑務官が関与していた。組織の体質が一般社会とは違うのではないか」との質問には「指揮が悪かったのだと思う」。「名古屋の噂は聞いていたか」「聞いていない」。

 あれだけの国会審議の後ということもあるが、調査には非常に協力的な印象で、話を聞いている限りでは、特に重大な問題を隠蔽しているようでもない。その府中刑務所でも、昨年1年間に法相等に処遇改善を訴える情願が計316件、人権擁護局への申し立てが18件あったという。最後に、人員増の希望を問われると、「刑務官(現在470人)をあと100人、医官(現在10人)をあと5人増やしてもらいたい」と率直な回答。議員たちは、「何とか実現できるよう努力する」と約束した。

 視察を終え、管理棟前のゲートを出た正面には立派な武道場があり、おそらく刑務官たちであろう人々が剣道の稽古に励んでいる様子が見えた。敷地内には幾棟もの官舎が並ぶ。敷地を出たところでは、学校帰りなのだろうか、友人たちと別れて官舎の方向に向かう中学生たちとすれ違った。
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