民主党の鳩山由紀夫代表は21日、衆議院本会議で小泉首相の所信表明演説に対する代表質問を行い、小泉内閣の経済失政、日朝国交正常化交渉を通じた大失態、金権腐敗政治打破への消極姿勢などを厳しく批判し、「政権交代こそが日本再生のための唯一の道」だと訴えた。
鳩山代表はまず、現下の経済状況について、小泉首相の経済無策が政権発足以来の「小泉デフレ・スパイラル」を招いたうえ、内閣改造直後の竹中経財・金融担当相の不用意な発言が株価の「竹中クラッシュ」を招き、株価の時価総額が首相就任以来130兆円失われるなど、今や日本は完全に「経済有事」だと指摘。こうした経済状態の悪化に対して、「構造改革なくして景気回復なし」と絶叫し続けるだけの小泉首相の政治には、「心」が感じられないと批判した。
不良債権処理問題については、「不良債権の正確な事態把握と公表、経営責任の明確化を条件にした公的資金の投入や一時国有化を速やかに行う」という4年前の金融国会以来の民主党の方針に基づいて対応しなかったことが現在の事態を招いたと指摘。小泉首相のペイオフ解禁再延期などの無責任な政策転換を批判するとともに、中小企業などに対する地域金融の円滑化に向け、民主党が現在提案している「金融アセスメント法案」の早期実現を求めた。
補正予算については、「デフレ対策や景気対策は必要だが、同時に、安易な財政支出は容認できない」とし、民主党が当初予算審議時に求めたように、経済効果の薄い従来型の公共事業関連支出を抑制し、本当に経済効果のある事業、民間投資を誘発できるような支出、国民の雇用や老後の不安を解消するような政策への支出へと予算の組み替えを行うとともに、不要不急の歳出の削減、国有財産の売却などによって国民に新たな財源負担を求めない内容の補正予算を可及的速やかに編成すべき、などと提案。他方、今後の経済情勢次第では、本格的な補正予算を編成する必要がでてくるかもしれず、その場合、小泉政権の公約であった「国債30兆円枠」を堅持できなくなるとすれば、小泉政権の明らかな公約違反であり、直ちに小泉首相は退陣するのが筋だと迫った。
次に、鳩山代表は、外交問題について質問。小泉首相が今月29日に日朝国交正常化交渉を再開すると表明していることに対し、「拉致問題の真相解明について北朝鮮の誠実な対応に確信が持てないまま、北朝鮮による核開発という事実を受け、なぜ、そのように国交正常化交渉を急ぐのか」と質すとともに、核開発について、首相の訪朝前に米国政府から知らされていたことを国民に隠して平壌宣言に署名したことは「国家・国民への背信行為だ」などと厳しく追及した。
鳩山代表はさらに、今回の統一補選の原因ともなっている「政治とカネ」問題を取り上げ、首相の消極姿勢を突いた。鳩山代表は、「日本社会から信頼という言葉が急速に失われているが、その元凶は、自民党長期政権下で増殖してきた政官業癒着構造にある」と指摘するとともに、公共事業受注企業や公的資金投入先金融機関等からの企業献金を「無条件に永久禁止すべきだ」と提案。また、新入閣した大島農水相の口利き疑惑について、農水相が「秘書官は金をもらっていない」と弁明する一方、秘書官を解任したことは不可解だとし、任命権者としての小泉首相の責任を明確にするよう迫った。
答弁に立った小泉首相は、現在の経済状況について「『改革なくして成長なし』という私の路線に原因があるというのは誤解。この路線はしっかりと堅持していく」と強弁。鳩山代表が紹介した中小企業者の悲痛な声についても「たしかに現在の困難、窮状から出てきたものだが、厳しい中で果敢に取り組んでいる企業もたくさんある。あまり悲観主義に陥らずに明るい展望を持ち、力強く希望を持って取り組んでもらいたい」とかわしたが、議場内には激しい怒りのブーイングが上がった。
この他の財政規律、補正予算、外交問題などについては、小泉首相は官僚の作成した答弁書に目を落としたまま早口で棒読みの答弁。北朝鮮の核開発を知りながら平壌宣言に署名した問題については、「情報は日米の信頼関係に基づいて提供されたものであり、信頼関係に鑑み、対外的に明らかにしなかった」との苦し紛れの答弁。
大島農水相の口利き疑惑についても、「政治とカネの問題については、つねに襟を正すべき。(疑惑が事実だったらとの)仮定の議論よりも、しっかり事実関係を調査し明らかにすべきだ」と他人事のような答弁に終わった。
小泉首相に続いて答弁に立った大島農水相は、「秘書官について報道されて以来、彼がその職務に全力を投じられない状況になったので交代させることとした」とし、秘書官の解任は疑惑の有無とは無関係との説明を繰り返した。
本会議後に鳩山代表は、「小泉首相の真剣な答弁を期待していたが、全くの期待外れだった。経済政策に関して、何の具体的説明も具体策も示されなかった。核開発についても、なぜ知っていながら署名したのかという点についての具体的な説明がなかった。『政治とカネ』の問題に至っては、全くの無関心ぶりで、明確な答弁はなかった」と記者団に感想を述べた。
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