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2002/10/22
【参院本会議】「国民不在の改革は無用」千葉議員が代表質問


 参議院本会議において22日、民主党・新緑風会の千葉景子議員が小泉首相の所信表明演説に対する代表質に立った。

 千葉議員は冒頭、「改革なくして成長なし」を掲げた小泉内閣の1年半が、むしろデフレ・スパイラルによる“経済有事”を引き起こし、国民を生活や将来への深刻な不安の中に突き落としていることを指摘。「あなたの言う『改革』には人間の心や姿が見えず、将来の夢や希望のかけらも感じられない」と厳しく断じた上で、小泉改革が挫折したこの1年半の総括を求めた。

 小泉首相は、自らの改革路線の総括には触れずに、政官業癒着体質の自民党を「ぶっ壊す」と豪語していたことについて問われたのに対応し、「改革に協力しないならぶっ潰すと言った。しかし、今は全部法案に協力してくれる。自民党は着実に変わっている。そこが自民党のいいところ」などと自民党抵抗勢力との蜜月関係を誇示する始末だった。

 千葉議員は次に、大島農水相の前秘書官による口利き疑惑を取り上げ、「政治とカネ」の問題が焦点になっている最中に閣僚の不祥事が明らかになったことについて、首相の任命責任を追及した。しかし首相は、「職務に全力を尽くし、疑惑を晴らすよう指示している」などとやはり“他人事”の答弁。疑惑を否定しながらも秘書官を更迭した理由を問われた大島農水相も、「全力で集中して仕事ができる環境と状況でないため交代させた」などと不明瞭な答弁に終始した。

 財政・金融政策をめぐっては、首相のなし崩し的な政策転換が経済の混乱を招いている現状を指摘。とりわけ、ペイオフ延期と不良債権処理の加速について国民に明確に説明し、混乱の責任を明らかにするよう求めた。その上で千葉議員は、民主党の経済対策を提起。(1)長期的視野に立った安心・安全のシステム──年金制度、健保・介護の保険制度の根本改革、雇用保険の給付期間や給付額の拡充、需給要件の緩和、(2)未来志向の雇用創出策──環境、福祉、新エネルギーなどの産業育成、NPO支援税制など非営利団体の活動促進による新たな雇用の創出、(3)生活者・中小企業を生かす金融政策──金融アセスメント法の策定、中小企業に対する金融上のセーフティネット確立、(4)国際ルールを重視した経済健全化策──日本版SECの創設、公正取引委員会の強化、などを挙げ、首相に実行を迫った。

 ペイオフ延期について首相は、不良債権処理を加速する観点からのものだとし、「平成16年度には不良債権処理を終結する」という目標を提示しただけで、なしくずし的な政策転換には触れなかった。また、民主党が提起している金融アセスメント法案については、「一律の基準に基づいて政府が各金融機関の活動を評価するのはいかがか」などとコメントしたにすぎなかった。

 北朝鮮問題では、9月17日の日朝首脳会談で拉致被害者8名が死亡していると伝えられながら平壌宣言にそのまま署名したのはなぜか、と追及。また、10月29日の国交正常化交渉再開を決めた理由、今後の拉致問題に対する交渉方針などを質した。さらに、その後明らかになった北朝鮮の核兵器開発の問題についても、首脳会談時にどのようなやりとりがあったのかを明らかにするよう求めた。

 首相は、首脳会談における金正日国防委員長の発言が「謝罪と再発防止の決意を明確に示すものだった」などとして平壌宣言にそのまま署名したことを正当化。国交正常化交渉再開についても、「交渉の中で(拉致問題などへの)誠実な対応を求めていくことがもっとも効果的」などと述べたにすぎなかった。核兵器開発をめぐっては、首相が責任ある行動をとるよう求めたのに対し、金正日氏は関連するすべての国際条約を遵守すると述べたことを紹介した。

 千葉議員はイラク問題についても取り上げ、武力攻撃を主張する米英両国に対してどう対応していくのかを質した。首相は、武力攻撃に対する直接の態度は明らかにせず、「大量破壊兵器の開発・配備に関する必要かつ適切な安保理決議が採択されるべきだ」と述べるにとどまった。

 さらに千葉議員は、国民生活に不安をもたらしている諸問題について質問。とりわけ、原発のトラブル隠し問題をめぐって国の検査体制の甘さを批判し、対応を質した。首相は、電力会社による原発の自主検査の法制化や抜き打ち検査の実施などを検討しているとしたが、経済産業省の原子力安全保安院が軸となった国の管理体制が問題視されていることについては、「現在のチェック体制がもっとも有効」などと突っぱね、保安院の独立による推進体制とチェック体制との分離については拒否する姿勢を明らかにした。
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