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2003/05/21
【参院個人情報特】自己情報コントロール権など含む野党修正案否決


参議院の個人情報の保護に関する特別委員会で21日、民主党はじめ野党4党は、個人情報取り扱い事業者に対して主務大臣の代わりに勧告や命令を行う第三者機関を新設することなどを柱とする修正案を共同提出したが、賛成少数で否決。政府提出の個人情報保護関連5法案は、賛成多数で可決された。
 
 また、採決時には、法律施行後3年をめどに内容を見直す一方、個人情報の一層の保護のために医療、金融など個別分野ごとの法整備を求める付帯決議を全会一致で採択した。

 小泉首相も出席した同委員会では、民主党・新緑風会から高橋千秋議員が総括質疑を、藤原正司議員が政府案に反対、野党4会派共同提出の修正案に賛成する立場で討論を行った。個人情報保護法制施行後の懸念項目とされる自己情報コントロール権やセンシティブ情報の慎重な取扱いの明文化、報道・表現の自由の担保、目的外利用の規定整備、主務大臣の恣意的な運用回避のための第三者機関の設置等の問題に改めて言及した。
 
 高橋議員は政府提出の5法案について、そもそも誰のための法律か国民には見えないとし、「官僚・行政の利便性追求のためか」として、小泉首相の認識を質した。小泉首相は「国民の便益のため」としてIT社会に対応した行政サービスの体制整備だとし、一方で公開を望まない個人情報の保護に関しては厳格に対応するとの姿勢を示した。これを受けて高橋議員は、自己情報コントロール権の重要性に言及し、「個人の情報は守られるというのは基本的な権利。それを担保するのがこの法律であるはず」として、法律に自己情報コントロール権の明文化を訴えた。また高橋議員はセンシティブ情報の慎重な取扱い規定の必要性を指摘し、報道・表現の自由が担保されていない原状等を問題視し、列挙した。
 
 締め括り総括質疑後、民主党・新緑風会の内藤正光議員が野党4会派を代表し、政府提出の5法案に対する修正の動議を提出した。内藤議員は「個人情報保護法制の必要性は野党も一致して認めるところだ」としながら、基本的な哲学において政府とは考え方を異にすると表明し、行政機関の個人情報保護の在り方は甘いと断じた上で修正案の概要を説明した。
 
 個人情報の保護に関する法律案への修正案では「自己情報コントロール権を第一条の目的規定に定め、個人情報取扱事業者の義務の具体化」、「個人情報取扱事業者に対して、センシティブ情報の特に慎重な取り扱いの義務づけ」、「個人情報保護における主務大臣の恣意的な運用をさけるため、いわゆる三条委員会である個人情報保護委員会を設置」、「適用除外規定は、活動機関限定ではなく、活動の目的で規定する」、「本法公布後、二年を目途に、政府は金融、情報通信及び医療分野における個人情報保護について法制上の措置を講ずる旨の附則を加える」、「個人情報取扱事業者の義務規定の明文化」等の修正を行った。

 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案に対する修正案では、「個人情報の目的外利用について、厳格な禁止規定を設け、行政機関の個人情報の濫用への歯止めにする」「データマッチングに関する規定や公務員への実効的な罰則規定を設ける」「個人情報開示決定等の取消しを求める訴訟は、管轄の特例を定める」「本法施行後3年を目途に見直し条項を附則に加える」等の修正を加え、関連3法案についても内藤議員は修正点を明示した。
 
 続いて、政府提出の5法案と野党提出の修正案に対する討論が行われ、民主党・新緑風会の藤原正司議員が政府案に反対、野党4会派共同提出の修正案に賛成する立場で討論を行った。藤原議員は防衛庁が自衛官募集のために自治体に適齢者の個人情報提供を求めた問題に言及し、行政側の不透明な情報収集やセンシティブ情報の収集を明確に禁ずることのない政府案では、(防衛庁問題に代表されるような)国民の不信・不安を払拭できないと断じた。政府案は閣僚や与党政治家にとって住みやすい世の中をつくるための法案に過ぎないと指弾し、一方の野党修正案は真の個人情報保護を目指すと同時に、表現の自由をはじめ、国民生活の自由に最大限に配慮した内容だと評し、討論を締めくくった。
 
 採決は、野党修正案を一括して行い、修正案は賛成少数で否決、続いて政府提出5法案すべての採決が行われ、賛成多数で原案通り可決された。
 
 採決後、民主党・新緑風会の岡崎トミ子議員が、個人情報保護法案、および行政機関個人情報保護法案に対して、法律施行後3年をめどに内容を見直す一方、主務大臣の権限行使に当たっての表現の自由・学問の自由等を妨げないとする規定の徹底、出版社が報道・著述のために個人情報を取り扱う場合は個人情報取扱事業者の義務規定の適用除外とすること、個人情報の一層の保護のために医療、金融など個別分野ごとの法整備を求める等の付帯決議を提出し、全会一致で採択した。
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