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2003/05/30
【衆院本会議】永田議員、保険業法改正案の問題点をくまなく指摘


内閣提出の保険業法の一部を改正する法律案の趣旨説明・質疑が30日、衆議院本会議で行われ、民主党の永田寿康議員が質問に立った。

 永田議員は第一に、一回の通常国会で一つの法律を二度改正するに至った経緯を追及。生命保険契約者保護機構に関連して保険業法が改正された際、すでに予定利率引き下げを政府は検討していたにもかかわらず、改正法案に盛り込まれなかった点について「自民党の山崎幹事長が予定利率引き下げは統一地方選挙にマイナスだと述べたと伝えられている。しかし何千万人という保険契約者に影響する問題であれば、選挙の中心的争点に据えるべきだったはず」とし、国民不在の与党方針を批判。竹中金融・経済財政担当相は「多くの論点が存在することから、広く検討した結果」などとかわした。

 第二に、永田議員は契約者と生命保険会社との情報の非対称性について質問。政府案では、予定利率の引き下げや契約者債権以外の債権カット等を含む再建案を生命保険会社が作成し、これを契約者総代会等に示して了解を得ることとされているが、契約者にとって、示された再建案が適切かどうかを判断することは絶望的に困難だとの見方を永田議員は示した。その理由としては、死差益・費差益・利差益といった数値が契約者に秘密にされているうえ、財務諸表の正確さにも疑義があると指摘。利差益、死差益、費差益はもちろん、ソルベンシーマージン比率の根拠となる数値等は全て契約者に説明すべきだとする民主党の考えを示し、監査法人等の確認を経た財務関係数値を契約者に開示する制度を盛り込むよう、竹中金融・経済財政担当相に求めた。

 第三に、憲法の保障する財産権との関係を追及。政府案が、契約者の10分の1以上が異議を申し立てた場合には生命保険会社の提示した再建案は実行されないとしている点について永田議員は、「逆に言えば破綻処理をした方が有利になる契約者がいたとしても、その人数が全体契約者数の10分の1未満であれば、その人たちは不利益を甘受するしかないということだ」と指弾。総代会承認方式と異議を唱える契約者数が10分の1未満であることをもって、憲法の保障する財産権を侵害してもかまわないと考える法的理由を示すよう、竹中金融・経済財政担当相に質した。

 竹中金融・経済財政担当相は「法律によって合理的範囲の制約を加えるということ、つまり別の公益を守るという範囲のものは憲法に違反するものではない」などとした。

 第四として永田議員は「仮に憲法問題がクリアされても、予定利率引き下げが更正法に基づく破綻処理よりも有利だとの説明を避けて通ることは許されない」として、破綻するより有利だという説明を誰がどう行うのか、そしてその説明が誤った場合の責任は誰が負うかが不明確だと、竹中金融・経済財政担当相に指摘した。

 第五に永田議員は「破綻を回避するための予定利率の引き下げであり、引き下げた後に破綻するのでは元も子もない」とし、経営の安定性の担保は誰が行うか、責任の所在の不明確さを指摘。

 第六に、契約者の10分の1以上の異議により再建案が実行に移れなかった場合、財務基盤に対する信用が失われて解約が殺到して破綻する可能性に言及。破綻が起こり、解約停止措置によって経済的損失が拡大してしまう契約者に対しては財産権が保護されるべきだと問題提起した。

 第七に、契約者と保険会社の契約関係の不平等性を指摘。小泉不況下、保険料が支払えずにやむなく保険解約に至る人は少なくないが、解約に伴う不利益は契約者に帰着される。しかし、今回の予定利率引き下げ問題は、会社側に契約不履行の非があり、その責任は会社に帰着すべきにもかかわらず、結論としてはその経済的責任の殆どが契約者に配分されている点について、「契約者はやり切れない」と永田議員は言及した。

 第八に、政府案では契約者総代会を一種の民主的議決機関と見なしているが、実際には、総代会の構成員は会社に都合の良いメンバーを意図的に選んでいる実態を指摘。

 第九に、「新商品に切り替えれば、解約した瞬間は損をするけれども、予定利率の高い新商品は長期的に見て有利だ」と乗り換え主義の経営方針を採用し、生命保険会社を破綻に追い込んだ当時の経営者と予定利率引き上げを許してきた政府の責任を指摘した。

 永田議員は、トータルで17項目もの問題点を矢継ぎ早に列挙し、政府案のずさんさを浮き彫りにした。
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