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2003/06/05
【参院事態特】有事関連3法案、賛成多数で可決




参議院武力攻撃事態対処特別委員会で5日、有事関連3法案の討論・採決が行われ、賛成多数で可決された。また、国民保護法制整備などを盛り込んだ附帯決議も議決された。
 
 締めくくり質疑で質問に立った民主党・新緑風会の榛葉賀津也議員は、一連の有事法制は憲法の平和主義に背くものではないと言及した。そうした視点に立ちながらも榛葉議員は、武力攻撃事態関連3法案だけが先行し、セットで出されるべき国民保護法制が先送りされたことが国民不安を増幅させることにつながっていると指摘。小泉首相の見解を質した。首相は「有事に関する法整備がもっと早くからなされていれば、不安は解消されている。これまで有事の議論さえタブーだった」などと主張。武力攻撃事態関連3法案が成立した後、国民保護法制は順次整備されていくとするだけで、先送りした理由は明確に示さなかった。
 
 続いて、榛葉議員は信教の自由の担保の有無と、国民保護法制を含めた有事法制が完備された後に原発が武力攻撃対象となった場合のトラブルへの対処をめぐって、福田官房長官に確認。福田官房長官は「武力攻撃事態においても、日本国憲法で保障している基本的人権は最大限尊重されるのは当然」として、信教の自由も尊重されると答弁。原発への対処をめぐっては十分な検討を加えていくとした。
 
 榛葉議員はまた、武力攻撃事態の認定から対処基本方針の策定までの経緯について質問。事態の認定は米軍の情報をもとに判断されることが想像される以上、米国の戦争に日本が巻き込まれる事態も生じ得るとの懸念を榛葉議員は示し、民主党が認定の判断の根拠を書き込むようを主張した理由について、修正案提出者の民主党の前原誠司議員に質した。前原議員は「判断は閣議決定に委ねられるわけだが、その判断の基準となった情報を国民は知る権利があり、協力するからには知る義務がある」と主張。政府の恣意的な認定を防ぐためには、認定根拠を国民に示すことが何よりも重要だと述べた。
 
 さらに榛葉議員は民主党提案の改善点について渡辺周議員に質問。渡辺議員は、基本的人権の保障、戦争行為終結の議決に関する国会関与、国民権利保護の視点等を盛り込んだとした上で、「国民保護の視点が強いものに何とか修正した」と述べた。
 
 質疑終局後、民主党・新緑風会の池口修次議員が賛成の立場から討論を行った。

 池口議員は、当初の政府案では「基本的人権にかかる規定が曖昧であること」「対処基本方針にかかる民主的統制が不十分であること」「国民保護法制の整備がなされていないこと」等の点で不備があり、衆議院の審議で民主党が修正案を提出したと経緯を説明。その上で、安全保障の根幹にかかわる極めて重要な法案に対しては、与野党が一致して対処すべきことが望ましいとの判断から、民主党は与党との修正協議に臨み、基本的人権の尊重、国会の議決による対処措置の終了、国民への情報提供、国民保護法制整備までの一部措置の施行凍結、事態認定の前提となった事実の明記等、民主党の主張を大幅に反映する修正を得たことを明らかにした。また参議院の審議では、衆議院で懸案となっていた指定公共機関の指定における日本赤十字社や民間放送事業者の扱い等で、一定の前進も見られた点などを述べ、賛成を呼びかけた。

 採決は、安全保障会議設置法改正案、武力攻撃事態法案、自衛隊法改正案の順に行い、3案とも起立多数で原案通り可決された。 採決後、民主党・新緑風会の川橋幸子議員が自由民主党、保守新党、民主党・新緑風会、公明党共同提案の付帯決議案を朗読。起立多数で採択した。
 
【附帯決議】(抜粋・要約)

「安全保障会議設置法の一部を改正する法律案」、「武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案」及び「自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案」に対する付帯決議

政府は、次の事項について、適切な措置を講ずるべきである。
一、国民の保護のための整備に当たっては、内閣総理大臣を除くすべての国務大臣で構成する国民保護法制整備本部を活用し、地方公共団体や民間機関、国民の意見を広く求めること。
二、日本赤十字社に関しては、その自主性、公共性及び中立性を十分尊重して対処措置の内容を規定すること。
三、放送事業者に関する指定公共機関の規定の整備に当たっては、放送の内容を警報、武力攻撃事態等の状況、避難の指示の内容等最小限にとどめ、かつ、放送機関の編集に影響をおよぼすことのないよう留意し、表現・言論の自由を侵すことのないようにすること。
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