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2005/11/17
【衆院拉致特】松木・松原・西村智・荒井各議員が質問行う


衆議院の北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会が17日午後に開かれ、松木謙公・松原仁・西村智奈美・荒井聰各衆議院議員が質問に立ち、拉致問題に関する政府側の見解を様々な観点から質した。

 まず質問に立った松木謙公衆院議員は、「先の6者協議、日朝協議で拉致問題に関し進展があったのか」を質した。外務省の齋木アジア大洋州審議官は、「残念ながらわれわれの満足する回答はなかった」と答えた。このため松木議員は、「次は何をめざすのか」と追及。齋木審議官が「対話の場に北朝鮮を引き留める」と答えたため、松木議員は、「対話だけでは仕様がない」として、経済制裁発動を発言していた安倍官房長官に「私も同感。経済発動が効かないという人もいるが、本気で日本が怒っている強い意思表示が必要」として、経済制裁発動を求めた。

 安倍官房長官は、「対話や制裁が目的ではない。生存被害者の帰国、真相の究明が目的だ。厳しい決断をすることになると伝えた。どのタイミングかを熟慮している」と答弁。さらに松木議員が「対話や制裁が目的ではないのはそう。今度の交渉がダメなら、制裁と決め交渉に臨んではどうか」と提案した。安倍官房長官は「こうなれば、こうなると申し上げるのは適切ではない」と答えた。

 二番手として質問に立った松原仁議員は冒頭、横田めぐみさんの「偽遺骨」問題に言及。遺骨が偽者だとわかった時点で当時の細田官房長官から誠意ある北朝鮮の対応が見られない場合は経済制裁の発動も辞さないとの認識が示された点を取り上げ、「この12月で1年になる。経済制裁を発動する時期が来ているのではないか」として、小泉首相から指示は出ているか、経済制裁発動をどう認識するか等を安倍官房長官に質した。

 それに対して安倍官房長官は、従来通り対話と圧力路線を継承していく考えを示し、経済制裁に関しては「まず経済制裁ありきではなく、拉致問題解決することが肝要。総合的に判断するというのが総理の考えだ」などと答弁した。

 松原議員は「細田官房長官は迅速かつ誠意ある対応が重要と発言した。迅速という意味からすればどんなにいっても一年だ」として早急な対応の必要性を重ねて指摘。日本国の官房長官の発言を軽視し続ける北朝鮮に対しては強い姿勢で対処すべきとの認識を示した。北朝鮮側に期限を設定して経済制裁の発動を提示することも必要だとの問題提起も行った。

 同時に松原議員は拉致問題解決に向け、北朝鮮はもちろん諸外国に日本政府の姿勢を示すためにも調整室ではなく拉致問題対策室を内閣に設置するよう安倍官房長官に要請した。この指摘に対して安倍官房長官は「解決に向けてはそれぞれの省庁が自らの役割を果たしながら必要に応じて内閣官房が各省庁の調整を行う」と述べ、現在の体制が現状では望ましいとの認識を示すにとどまったが、松原議員は対策室設置の必要性を重ねて指摘した。

 松原議員はまた、拉致問題の解決なくして支援は有り得ないとの認識を示し、政府の毅然とした対応を要請。この点については安倍官房長官からも「きちんと解決しない限り、支援が我が国から具体的に(提示される)ことは有り得ない」との答弁を引き出した。

 続いて質問に立った西村智奈美衆院議員は、冒頭、新潟県選出の国会議員として、拉致問題の早期解決に取り組む決意を表明した上で、今後の協議の見通しを明確に示すよう政府に求めた。

 西村議員は質問の中で、今後の協議には、拉致された疑いが濃厚な失踪事案も含まれるという認識でよいか質問。麻生外務相は、疑いが強い方々について情報を求めるのは当然であり、今後の交渉の中にその問題が含まれるとの考えを示した。西村議員はまた、日朝平壌宣言の「双方」の意味を確認し、麻生外務相は日本国と北朝鮮を指すと答弁した。

 西村議員はさらに「日本にも高位の人権担当官の設置が必要ではないか」として、北朝鮮の人権問題を専門的に取り扱う役職を求める意見に対する政府の見解を求めた。安倍官房長官は、米国の活動状況を参考にしながら検討したいと慎重な姿勢を示した。これに対して西村議員は、具体的な方針を示し、後戻りしない決意で取り組むよう強く求めて質問を終えた。

 最後に質問に立った荒井聰衆院議員は、拉致被害者家族の横田さん夫妻の思いとして、「政府が頼りにならない」という心情を持っており、「今でも(その思いが)あまり変わっていないのではないか」などとして、安倍官房長官の所見を質した。安倍官房長官は、「何としてもご家族の思いに応えたい」などとした。

 荒井議員は更に、政治の使命は「国民の生命と財産を守る」ことだとして、北朝鮮による拉致問題への外務省の対応について質した。佐々江アジア大洋州局長は、「北朝鮮がやったものだと断定するまでに相当な時間がかかったのは事実だ」などとし、荒井議員は、「国会の基本に関わる問題だという思いが少なかったのではないか」などと指摘した。

 また荒井議員は、北朝鮮との外交を行う際の多国間外交の必要性を強調。周辺各国の協力が不可欠だと指摘するとともに、人権問題に関心の高い欧米各国など国際世論に訴えかけるための広報戦略の必要性も訴えかけた。
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