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2005/03/02
【衆院予算委】締めくくり質疑で米澤・田中・佐々木・牧議員が質問


 衆議院予算委員会は2日、平成17年度総予算の締めくくり質疑を行った。民主党・無所属クラブからは、米澤隆(副代表)・田中慶秋(常任幹事)・佐々木秀典・牧義夫各衆院議員が質問に立ち、内政・外交全般にわたって小泉内閣の見解を問い質した。質疑・討論の後、予算案は与党の賛成多数で可決された。

 最初に質問に立った米澤議員は、国会における小泉首相の答弁について触れ、言葉のやり取りのみにこだわりすぎ、一国の首相として「軽い」と言わざるを得ない、と戒めた。続いて郵政改革問題に触れ、郵政改革の大きな目的が財投改革にあったことが忘れ去られていると指摘し、谷垣財務相に対して郵貯・簡保資金の資金運用先である特殊法人の財務状態を厳しく問い質した。これに対して谷垣財務相は、特殊法人改革は進んでおり数字上は問題がないとの答弁に終始した。米澤議員は、財投には270兆円もの不良債権があるとの研究結果を引用して政府の認識の甘さを批判し、この問題が解決しないまま郵政を民営化した場合には民営化会社に不良債権を付け回すことになると指摘した。

 また米澤議員は、郵政民営化に伴うコンピューターシステムの再構築が間に合わない恐れを指摘して、このような深刻な問題を精神論で片付けることの危険性に言及。拙速に民営化を進める理由に疑問を呈した。さらに米澤議員はアメリカの日本への要望書の中で郵政民営化が求められている点を取り上げ、アメリカが郵貯・簡保の資金を取り込もうとしている可能性に言及したが、竹中民営化担当相は日本のためにやっているとのみ答弁した。最後に米澤議員は、郵政を民営化した場合においても外資規制が必要であることを力説した。

 米澤議員に続いて質問に立った田中議員は、まず外資による日本企業の買収のあり方について触れ、現状に懸念を表明。外資歓迎論を展開する小泉首相に対して、米国の例なども挙げて法整備の必要性を田中議員は説き、首相も同感であるとの意向を示した。田中議員は更に、環境問題とエネルギー政策の関連や、原子力発電所の安全確保等の問題にも言及。首相は環境保護と経済発展の両立の必要性を説き、カギを握るのは科学技術だ、などとした。

 政治とカネの問題についても田中議員は、橋本元首相らの証人喚問が未だに実現していないことに触れて、政治資金規正法の見直しの問題も含め、「予算委員会としての使命を果たしていない」と厳しく指摘。「証人喚問についての一定の結論を」と甘利衆院予算委員長に求めた。甘利委員長は「理事会で協議中」などとしたが、昨日の首相答弁に委員会として応えていないと田中議員は納得せず、審議は一時中断。甘利委員長は、「各党間の協議を引き続き要請したい」と述べ、田中議員は、「採決を先送りしてでもやるくらいの重要な問題だ」として、証人喚問実現に向けて一定の結論を出すべきだと改めて主張し、質問を終えた。

 田中議員に続いて質問に立った佐々木秀典議員は、司法制度改革、新農業基本計画、BSE問題に関する島村農水相の発言等を取り上げた。

 司法制度改革について佐々木議員は、陪審員制度の法制化、司法ネットの整備、法科大学院事業等を列挙し、「改革は成果をあげている」との見方を示す一方、改革をより確実なものにするためにも諸外国と比べ明らかに少ない民事法律扶助国庫補助金の支出増額の必要性を指摘。また、法務省の司法試験委員会が、法科大学院修了者が対象の新司法試験と現行司法試験の併存が始まる2006年度の合格者数について、新試験900−1100人、現行試験500−600人とする指針を決めたことに関して、「法科大学院の存立の問題とからんでいる。合格者が少なすぎると制度の意味がなくなる」とし、検討を求めた。

 また、佐々木議員は2月25日の衆院予算委員会で島村農水相がBSE(牛海綿状脳症、狂牛病)対策をめぐり「全頭検査は世界の非常識」と発言した問題を取り上げ、「米国産牛肉輸入再開に際しては日本と同等の措置を求める」とした小泉首相の所信表明演説と明らかに矛盾し、閣内不一致であるとして答弁を求めたが、首相は「当事者に聞いてくれ」として答弁を回避。島村農水相は「世界で全頭検査を行っている国はどこにもない」などと開き直り、国民の安心・安全より米国重視の政府の姿勢が改めて浮き彫りになった。

 続いて質問に立った牧議員は「三位一体の改革」で最大の焦点となった義務教育費国庫負担金の扱いや、義務教育にもたらす影響等に関して集中的に質問した。

 牧議員は「今回行われる義務教育費国庫負担制度の法改正は中味があまりにもずさんであり、教育論の議論がないがしろにされたまま進められようとしている。財政論が先行し、数字合わせに終始している。どこが地方分権改革か分からない」との懸念を示し、義務教育において、地方の独自色を示すことは必要としながらも、義務教育の機会均等など、守らなければならない最低ラインをどう保持するか、小泉首相の教育理念等を質した。小泉首相は、「地方には地方独自の特色があるので、全国一律でなくてもいい」などとするだけで、明確な答弁を回避。牧議員は地方の裁量権拡大につながらない、数字合わせにすぎない義務教育費国庫負担金削減にほかならない実態を指摘し、再考を促した。また、三位一体改革をめぐる与党合意に、義務教育費国庫負担金の削減に一貫して反対してきた中山文科相の署名がない点も取り上げ、教育軽視の政府の姿勢の証明と指摘した。

 質疑終了後、討論が行われ、民主党・無所属クラブを代表して石田勝之衆院議員(常任幹事)が平成17年度総予算に反対の討論を行った。この中で石田議員は、定率減税の縮減、財政健全化への取り組みなどの政府予算案の問題点を列挙した上で、「国民に痛みを強いるだけで、改革、改革と、空虚に叫ぶ小泉内閣の、国民不在の政策をぎっちり詰め込んだ政府予算案に、民主党が賛成できるわけがない」と断じた。その後に行われた採決では、政府案が与党の賛成多数で可決された。
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