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2004/11/10
【参院イラク特】イラク情勢をめぐる諸問題を3議員が鋭く追及


 10日、参議院のイラク人道復興支援活動等及び武力攻撃事態等への対処に関する特別委員会は一般質疑を開催し、民主党からは平野達男、尾立源幸、若林秀樹の各参議院議員が質問に立った。

 平野議員は、イラク現地の治安状態、自衛隊の撤退条件などを大野防衛庁長官に質した。この中で平野議員はまず、情報収集に努めるとの長官答弁を引き出した上で、サマワの自衛隊宿営地に迫撃砲、ロケット弾が撃ち込まれた事件に関して「ファルージャの武装組織と関係があるとの情報がある」と質し、情報収集に努めるよう求めた。さらにこうした状況、非常事態宣言をどう考えるのか、自衛隊員の安全確保義務が防衛庁長官にはあるとして「どういう状況で撤退するのか、基本的な考えを」と質した。大野長官は、「サマワは安全であり、非戦闘地域である」との答弁を繰り返した。これに対して平野議員は「何も考えていないのと同じ。人的被害が出たら考えるのか」と迫った。

 また、バグダッド空港が48時間閉鎖されたことで「バグダッド空港は非戦闘地域か」を質した。これに対して、大野長官は「確かに基本計画では非戦闘地域で、活動計画の中に含まれるが自衛隊は一度も行っていない。依然として非戦闘地域である」と現実を全く無視した答弁。これに対して平野議員は周辺事態法、テロ特措置法、イラク特措置法と憲法解釈が無原則に拡大してきたことを挙げ、「憲法解釈をなし崩しに拡大されていっては困る」と釘を刺した。

 続いて、当選後初質問に立った尾立議員は、公認会計士、税理士と歩んできたこれまでを振り返り、「税は簡単で分かりやすく、安い方がいいという確信をもっている。この確信のもとに国会議員として税金の集め方・使い方をチェックしていきたい」と宣言し、質問に入った。

 尾立議員はイラクにおける復興支援はじめ、新潟地震等での災害支援等、自衛隊の活動を高く評価するとの考えを示した上で、12月14日が期限となる自衛隊のイラク派遣延長問題について質した。尾立議員は「状況を見極めて判断」するとする小泉首相の考え方について、アメリカ政府の意向、日本国内の世論、イラクの治安状況を考慮するということだろうと分析した上で、その判断基準に加え、開戦の大義、自衛隊員の安全、自衛隊派遣の費用対効果、自衛隊の復興支援活動に対する現地ニーズ、各国動向等も考慮し、総合的に判断すべきと指摘した。同時に、イラクからの即時撤退を強く求める民主党の姿勢を明示した。

 また、1年間の復興支援活動に要した費用について尾立議員は質したが、外務省側は明確な答弁を回避。ニューヨーク・タイムズが自衛隊車について「傷一つなく、まるでショールームから出てきたよう」と揶揄したように、宿営地外へ出ることができずに十分な活動を実施できていない現状も指摘。自衛隊の主活動とされる給水・浄水についてもNGOならば経費も抑えられる上、そろそろ現地イラク人の手に委ねる時期にきている点に言及。「自衛隊が期間を延長し、留まりつづけること」について疑問を呈した。尾立議員はまた、劣化ウラン弾等の影響を受けないよう、自衛隊員の安全確保につとめること、渡航者への危険情報の提供を徹底するよう釘を刺した。

 続いて、質問に立った若林議員は、国家基本政策委員会において小泉総理が「自衛隊が活動している地域が非戦闘地域だ」との発言を捉え、本末転倒な議論であると迫った。これに対して、大野長官は、自衛隊が駐留しているので治安が良くなっている面もあるなどと答え、また町村外相も、実態を見てほしいなどと答えるなど、曖昧な答弁に終始した。

 さらに若林議員は、終わりを決めていない援助は現地の依存体質を強めるばかりで好ましくないと述べ、自衛隊の駐留による援助活動のあり方に反省を促した。これに対して町村外相は、ODAによる援助などに切り替えていかなければならないと答えたものの、自衛隊の中心的な活動の一つである給水活動についても、具体的な移行スケジュールは示されなかった。

 最後に若林議員は、1年前の11月29日に殺害された奥大使と井上審議官に関する事件の真相が明らかでない点を追及し、アルジャジーラに懸賞金付きで情報提供の広告を出すことを提案した。さらに、事件当時の上村臨時代理大使が真相を知っている可能性があるが、今回参考人招致を断られたことを取り上げ、参議院イラク特委員長および各理事によって招致について協議することを求め、委員長は協議すると発言した。
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