前原誠司代表は26日、小泉首相と2回目となる党首討論に臨み、首相に対し、この国をどこに導こうとするのか、哲学の問題を指摘し、首相にはなんらの哲学もなく、一国の総理としての資格がないことを明らかにした。
民主党は人口30万人以上の基礎自治体に現在の政令市並かそれ以上の権限を与える、広域調整を担う道州、外交・安全保障、シビルミニマムを担う国という明確な国のあるべき姿、哲学をもっていることを前原代表は示し、分権のイメージ、最終的なこの国の形をどこに置き、分権、行財政改革を進めているのかを、問うた。首相はあるべき国の姿を示すことができず、前原代表は「あるべき姿、国を全く考えていない。総理は中身のない、行財政改革をやろうとしている」と締めくくり、討論を終えた。
やり取りの要旨は以下の通り。
■BSE、食の安全、人間の安全保障
前原 アメリカ産の牛肉輸入再開は拙速にやるべきではない。日本の基準に合わせ、全頭検査をするという業者からの輸入に限るべきだ。よもやブッシュ大統領の訪日に合わせて作業を進めるようなことがあってはならない、ことは人間の安全保障に関することで重大だ。輸入される牛が生後20カ月未満であること、危険部位が除去されていることの証明はできるのか。
小泉 大統領の訪日とは関係ない。20カ月未満、危険部位の除去が守られるならば輸入再開。
前原 野党第一党の党首への答弁としては余りにもお粗末、政府から情報を取り、ブッシュ大統領の訪日に合わせ作業しているとの情報を得ている。
――20カ月未満、危険部位の除去の証明には最後まで答えず、無責任さ露呈。
■アスベスト対策
前原 WHOなどが危険を指摘してから、30年も経ち、昨年ようやく原則使用禁止になった。これは行政の怠慢、不作為である。しかも、当時の建設省が国有の建物にはアスベスト禁止を87年に出している。行政の責任は重い。
小泉 各省庁にわたっているので、議論を進めて来年の通常国会の早い時期に法案を提出する。
前原 政府の無策が被害を拡大させた。遡及適用ができるような仕組みを作るべき。縦割りの行政では遅れが出る。関係閣僚会議ではなく、対策本部への格上げを。
小泉 (遡及適用は)参考にさせていただく。連絡、連携をとり法案の準備を進めている。
――対策本部への格上げ、縦割り行政の弊害、行政の責任には触れず。
■人に温かい政治 行財政改革
前原 BSE,アスベスト、鳥インフルエンザ対策もそうだが、今の政治には人間、国民への優しさがない。障害者自立支援法もそう。これで浮く予算は300億円、川辺川ダム地元は無駄と言っているのに、関連予算4000億円。依然として箱物中心の政治で人が中心となっていない。真の改革競争、いい改革競争はするが、小さな政府競争はしない。無駄は削り、大事にところに予算はつけるべき。いま、政府内は増税の大合唱だが、総理の任期中に消費税は上げないのはなぜか。
小泉 行財政改革が私の大きな仕事。将来に税負担を転化してはいけない。来年の9月まで消費税を上げる環境にはない。政治的判断。
前原 行財政改革は具体的にどのように進めるのか。どれくらい規模、どの分野か。
小泉 12月の予算編成まで、具体的にはこれからつめるので、数字を出せる段階ではない。公務員の人員の削減、人件費の削減も議論している。年末までによりはっきりさせる。
前原 数字を入れるというのは重い発言で、数値目標を決めて実行していくのは大事なこと。発言した以上は実行してもらいたい。民主党はマニフェストに3年間は増税しないことを明記した。どの程度の数字がでてくるか楽しみ。
■分権、国のあるべき姿
前原 分権を進め最終的にこの国をどの様にするのか。総論を。
小泉 総論だけでなく具体論を出そうとしている。数字を出し各論を進めている。3兆円の税源移譲を目指している。
前原 聞くに堪えない。総論がない人がしゃべっている。ゴールをどこにおくのか。一国の総理としては情けない議論。民主党は人口30万人以上の基礎自治体に現在の政令市並かそれ以上の権限を与える、広域調整を担う道州、外交・安全保障、シビルミニマムを担う国という明確な国のあるべき姿を持っている。哲学を申し上げたい。今の政治では、お金、いくら国からお金がくるかが事業のインセンティブになっている。地方に権限を移譲すればこうした無駄はなくなる。あるべき国の姿、国を全く考えていない人が中身のない行財政改革をやろうとしている。
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