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2003/03/20
イラク攻撃への対応に関する代表質問(広中議員)
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参議院本会議
イラク攻撃への対応に関する代表質問
民主党・新緑風会 広中 和歌子
私は、民主党・新緑風会を代表して「イラクに対する武力行使後の事態への対応についての報告」について、質問いたします。
ブッシュ大統領は、全世界の人々が恐れていた通り、現地時間で3月17日夜アメリカ国民に対するテレビ演説で、イラクのフセイン大統領に最後通告を行いました。
「フセイン及びその息子は48時間内に亡命しない限り、重大な結果になる」と。その重大な結果とはイラクへの空爆の開始を意味します。
そして48時間の期限切れを迎えた今日、日本時間で今朝11時35分アメリカによるイラク攻撃が始まりました。
民主党はこの戦争に強く抗議し、平和的解決に立ち戻るよう求めます。
以下、その理由を申し述べます。
ブッシュ大統領は、その演説の中で武力行使を行うとしたら、イラク政権に対してであり、無実な一般国民に向けられたものではない、彼らを独裁者から解放するのだと言っています。しかし、本土に空爆が始まれば、その被害は
無差別に広がります。多くの人々が死傷し、都市とそのインフラはズタズタに壊されます。暴力から民主主義を守るという大義名分の中で、イラクの人々と国土が傷つきます。何十万という難民も発生することでしょう。そのほとんどは罪のない子どもや女性、争いとは無関係な人達です。一般市民の犠牲について、総理はどう考えますか。
アメリカの持つ兵器はハイテクで、強力かつ効果的です。21世紀を迎えるに当たり、私達人類は戦争に血ぬられた20世紀と決別したいと願った筈です。
武力によらない解決を願った筈です。国連憲章もわが国憲法の理念もそれを
示しているのではありませんか。
第2の理由は、これまで人類は二度の世界大戦で5000万以上の人が殺された反省から国連を創設しました。国連憲章は自衛のためか、或いは国連安保理の容認以外の戦争は、一切禁止しています。従って、今回のアメリカ等による
イラク攻撃は国連憲章の違反になりませんか。
何故なら、イラクは米国を攻撃もしていないし、一昨年9・11テロを起したとされるアルカイダとの関連も証明されていない。そのイラクを新たな安保理決議のないまま、安保理決議678、687、1441をベースに一方的に30万人の
兵力、6個空母陣の大軍で攻撃することは、明らかに国連の権威と信頼性を損なうことになりませんか。新たな安保理決議が必要だとしていた総理のこれまでの主張に反しませんか、伺います。
ブッシュ政権による武力行使が許されない第3の理由は、イラクへの攻撃は現在ではなく将来脅威になるという理由で行われるものだからです。それが
実行されれば、これは明らかに先制攻撃であり、先制攻撃が国際社会で容認されることに道を開くことに繋がるからです。恐怖が先制攻撃を生み、そこから更に武力行使の連鎖が生まれます。総理の御所見を求めます。
第4に、この先制攻撃の目的はサダム・フセインの武装解除、大量破壊兵器を問題としている筈なのに、今はフセイン政権そのものを倒すことにその矛先がシフトしています。サダム・フセイン憎し・フセイン政権打倒が先にあるのではありませんか。それは内政干渉ではありませんか。
第5の理由は、今回のアメリカ等の攻撃で今後多くのテロを世界中に引き起こす可能性が生まれるからです。特に、イスラム圏の人々の反感は、中東問題を更に悪化させます。文明の衝突を引き起こすことを懸念します。総理の御所見を求めます。
第6に、戦争は紛争解決の手段としては必ずしも所期の効果をもたらすとは限りません。アメリカはベトナムでの体験からそのことを充分に知っている筈です。特に相手の国民の自尊心を傷つける場合には究極の勝利は望めません。
国際間の問題は、地道な、辛抱強い外交協力で解決していかなければなりません。このことは総理のお考えではないのですか。
第7に、戦争が経済に与える影響です。
原油の価格と供給の不安定化などによって、世界の経済はさまざまな形で大きな痛手を受けるでしょう。わが国の経済にとってもその影響は計り知れません。総理の評価を伺います。
第8に、戦争による環境破壊も見逃すわけには参りません。戦争は究極の
環境破壊です。現在、関西で第3回世界水フォーラムが開催されています。21世紀は戦争ではなく、環境の世紀にしなければ人類の存続は有り得ません。
第9に、この戦争にアメリカは多くの戦費を費やすでしょう。その試算を教えて下さい。アメリカは当然同盟国日本に応分の分担を求めてくることになるでしょう。政府はどういう形で戦費と戦後処理の負担を考えているのですか。自分達の望むこと、正しいことに応分の負担をするのは当然ですが、日本はアメリカと日米安全保障条約を結んでいるというだけでは血税を支払うことに国民は同意しないでしょう。戦争で破壊した後、再建支援をするという愚行ではなく、査察を徹底して行い、平和的解決のために努力をするべきではありませんか。
一昨日のブッシュ演説の直後、そして今日開戦の日、小泉総理は改めて米国への支持を表明しました。国民の8割が反対しているにもかかわらずです。
何故、日本は国連の権威を無視し、国際法学者の多くが国際法違反として
反対するアメリカのイラクへの武力行使に同意し、支持しようとするのでしょうか。それが同盟国、友好国としてのとるべき道とお考えなのですか。今回の対イラク戦で日本はどのような形で協力するのか、具体的にお述べ下さい。
テロ特措法は厳格に適用されるかどうか、重ねて伺います。
アメリカがイラクに大量破壊兵器を破棄させるべく、最大の圧力をかけて
いるのだから、国際社会も一致協力することが大切だ、という川口外務大臣のこれまでの繰り返しの発言を、私も一応受け止めてさせて頂きました。その圧力もあってか、イラクは穏当に国連の査察を受け入れてきたではありませんか。通常兵器といわれるアッサムード・の廃棄にしても、少なくも所持する50%は実行されたというではありませんか。
確かに、イラク全土で査察を効果あらしめるには、イラク側の自発的協力は欠かせず、それをイラクはこれまで小出しにしていることは事実かもしれません。しかし、これはフランスやドイツが主張するように国連査察チームがもう少し時間をかければ解決することではありませんか。
戦争が始まれば、各地にテロが多発するかも知れません。テロ攻撃に対し、アメリカは国土安全保障省を設置し、対応を一本化していますが、日本の場合、テロ対策にどのような緊迫感をもって対応策を検討していますか、伺います。
更に、イラクとその周辺国に滞在する日本人、自らを危険にさらしながら
救援活動するNGOの人達の安否が気づかわれます。ガスマスクや解毒医療薬などの支給を含め、邦人保護のための日本政府の対応をお伺いします。
小泉総理、日本がアメリカを支持するのは、緊迫する北朝鮮問題がすぐそこにあるための苦渋の選択であり、その脅威に対応するにはアメリカの協力が欠かせないということなのですか。それなら、総理は国民にもっとそのことを説明するべきです。第一、アメリカははっきり具体的に北朝鮮問題の平和的解決について日本に協力を約束しているのですか。
総理、あなたはいつも短い言葉でしか説明なさいません。世の中が平和な
時は、それはそれでパンチがきいているという形で国民に受け止められたかも知れません。しかし、現在のような危機の時代には、国民にはっきり説明して下さらなければなりません。政府には説明責任がある筈です。
その点、イギリスのブレア首相の、はじめからアメリカ支持の態度を明らかにしつつ、自らの政治生命を賭けても国民に平易に情況を説明してきたのと
対照的です。少なくともブレア氏は国民に対してフェアプレーをしてきたと
思います。
しかし、ブレア政権がアメリカに加担して武力行使に参加することを決定した時、労働党院内総務、クック氏はじめ、ブレア政権の閣僚の辞任が相次いでいると報道されています。
小泉政権の閣僚の中にはそのような正義に基づいて行動する勇気ある方は
いらっしゃらないのでしょうか、伺います。
私はかつてアメリカで長期に暮らし、アメリカを第二の故郷とさえ思う者です。アメリカの友人の多くはブッシュ政権の、「はじめに武力行使ありき」の
やり方を批判し、自分達の国の有り様を非常に心配しております。
そして日本の原口国連大使の「日本はアメリカを支持する」という、早々と去る2月の国連の場での発言を、日本の世論と受け止めています。
私は日本の声を国の内外に発信する必要を感じ、仲間の女性議員と署名を集め、小泉総理宛に「米国等のイラクへの武力攻撃に反対することを強く求める」申し入れを行うことに致しました。72名の衆・参女性議員のうち、過半数の42名が署名しました。その申し入れは英訳され、外国通信社経由で世界中に発信されています。
申入れ書は日本人が過去の経験から学んだ教訓として「戦争や紛争で最も
深く傷つくのは女性や子どもを含む一般市民」であり、「暴力からは何も生まれない」ことを強調しています。また、8割を超える市民が武力攻撃に反対しているにもかかわらず、日本政府の立場がその世論を反映していないことへの憂慮を表明しています。
去る12日、総理には忙しいということで会って頂けず、福田官房長官に直接署名の束を手渡しましたが、私共の申し入れに対し、総理のお考えをお聞かせ下さい。
総理、そして議員の皆様、私達日本の進むべき道は、国連を重視し、国際的ルールにのっとって平和で持続可能な地球社会の秩序を構築することだと思われませんか。
日本は既に亡き小渕総理などのイニシアティブで予防外交や人間の安全保障という概念に基づき、国際的に活動を始めているではありませんか。そのために政府も議員も官僚もNGOも個人もそれぞれに創造的なリーダーシップを発揮するべきです。
日本は世界最初の大量破壊兵器の被爆国であり、武器輸出をしたことがないという特質を生かし、「平和国家」を今こそ世界にアピールする機会です。
政府は速やかにアメリカに対し、イラク攻撃の中止を申し入れるべきことを強く要請し、私の質問を終わります。
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