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2006/04/03
【衆院行革特】菅議員、小泉行財政改革の負の遺産めぐり議論


 衆議院行政改革特別委員会で3日、総括質疑が行われ、民主党・無所属クラブの菅直人議員が前原誠司代表に続いて質問に立ち、小泉政権5年間を振り返るとともに、掛け声倒れの行財政改革の実態、格差拡大と少子化問題等をめぐり小泉首相らと議論を交わした。

 「行財政改革を旗印にスタートした小泉内閣が、この5年間で何を成し遂げ、何ができないで、何を後に残そうとしているのか総決算する立場から質疑を行いたい」と宣言した菅議員は、成し遂げた正の遺産としては〔1〕不良債権処理〔2〕景気の回復の2点を列挙。ただし、この実現の裏には40兆円を超える公的資金の投入や低金利・ゼロ金利による国民に痛みを強いる構造があると分析。バブル崩壊後15年を要した点については、「あまりにも遅かったといわざるを得ない」と述べ、きびしい見方を示した。
 
 同時に、小泉政権の負の遺産としては、〔3〕小泉政権下における国の借金170兆円の積み増し〔4〕道路公団、社会保険庁、防衛施設庁とも、官製談合防止に一円も切り込めない現状〔5〕地方切捨て〔6〕格差拡大〔7〕アジア外交における首脳会談の失敗のつけ――などの5点を指摘。「つまりこの5年間では不良債権処理と景気回復は進んだが、負の遺産も大きく、小泉政権後に残された」と菅議員は分析してみせた。
 
 これに対して小泉首相は「5年間で改革は進んだと思っている。実際に進んでいるからこそ与党に議席を与えてくれたのではないか」と強弁。「地方切捨てではなく、地方には独自の持ち味を発揮して欲しいということだ」と、論理性のない否定を繰り返した。
 
 菅議員は積み増した170兆円の国債に関して「17代の政権で積み上がった542兆円の借金のうち、なんと31%は小泉内閣が積み上げたものだ」と分析し、GDP160%を超える借金超大国の実情を指摘。同時に国債は平均金利が上がれば利息払いが追加発生することに言及したうえで、返済のメドを質した。しかし、首相は「財政は長期間かかるものと短期間で済むものがある。10年や20年で返せるものではない」などとするだけで明確な答弁を回避。これを受けて菅議員は、金利の上昇による国債の利息払いの方が税収の伸びよりも大きくなり、財政は改善されないとの財務省試案を示し、「財政を再建させようとするならば、増税やむなしという結論になる」と指摘した。また、その後の質疑からも、金利負担と税収の伸びのどちらが大きくなるか、今後の経済動向を見守らなければわからないという見解が首相や谷垣財務相から示されるに留まり、「つまりは財政再建は進んでいないということではないか」と菅議員が批判するに至った。
 
 1人の総裁から4人の社長体制になっただけで、官製談合は存続したままであるのが道路公団民営化であり、官製談合がなくなれば入札価格は30%以上安くなり税金の無駄遣い削減に繋がるとの指摘がある防衛施設庁の官製談合の実態等に言及した菅議員は、そうした諸問題に何ら切り込んでいないのが小泉行財政改革の実体であることを浮き彫りにした。「一円でも官製談合による税金の無駄遣いを減らしたか」との質問にも、首相ははぐらかしの答弁を繰り返すだけだった。

 菅議員は、公共調達における官製談合や随意契約における不透明な支出をなくせば30%の単価の引下げは可能との見方を提示。「10兆円の国・地方あわせた歳出削減が可能となる」と指摘し、そうした策も講じずに改革は進んでいると強弁する小泉政権の不誠実ぶりを批判。「天下りを受け入れた企業には発注しない」との閣議決定をすれば官製談合はなくなるとも菅議員は問題提起し、首相に英断を迫ったが、前向きな姿勢は示さなかった。

 また、年金掛金が社会保険庁の予算として計上されている実態にも菅議員は疑問を呈し、「以前のようにゴルフボールを買うといったことはなくなったが銀行が個人預金から支出しているのと同じ」として、名前だけにすぎない社会保険庁改革の実態を浮き彫りにした。
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