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2006/04/05
【衆院農水委】荒井議員、民主党農政改革案の妥当性浮き彫りに


 民主党提出の「食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案」及び政府提出の「農業担い手の経営安定交付金交付法案」が合わせて審議された衆院農林水産委員会で5日、民主党・無所属クラブの荒井聰議員が質問に立ち、民主党案提出者の党農林漁業再生本部事務局長の山田正彦『次の内閣』ネクスト農水相、同事務局長代理の篠原孝議員、仲野博子議員はじめ中川農水相に、それぞれの法案について質した。

 荒井議員は冒頭、民主党案の答弁者として熱弁を振るう菅議員の姿勢に対し、「武蔵野市選出の菅議員がまるで農村主義のような農村・農業政策について情熱をこめて発言しているのは隔世の感がある」と語った上で、従来はマイナー感が強かった農業政策が2003年に民主党が「農林漁業再生プラン」を打ち出すことによって、各党がそれまでの農業政策の流れとは違う方向へと展開を始める契機となったとの見方を示した。

 荒井議員はまた、農業政策の難しさは、単に経済政策だけではなく、環境保全といった多面的側面や文化・歴史的側面に対する国民の理解を広めていかない限り本当の意味での農業政策にならないと指摘。そうした理解を広げるための施策が農水省は不十分だったとも語った。その上で荒井議員は食料自給率の向上は重要との認識を示し、主要先進国中最低に位置し、安全保障の側面からも深刻といえる日本の食料自給率をどう向上させていくか、具体的施策を質した。それに対して中川農水相は長々と答弁したが具体的施策は示されず、一方の民主党案提出者の篠原議員は、「直接支払いの導入により食料自給率を高め、農業・農村全体を活性化していく」と明言。世論調査で国内自給率の高まりを期待する声が増えている点にも篠原議員は言及し、安全保障、食の安心・安全という側面でも国内自給率の向上が不可欠であるとの認識を示した。同時に、民主党案で直接支払いの対象となる主要生産物に定めた米・小麦・大豆及び菜種等の過去の最大生産量を合わせると食料自給率50%は達成できることも明らかにした。

 続いて荒井議員は、政府が昨年10月に決定した経営所得安定対策大綱で定めた、19年度から導入される品目横断的経営安定対策に言及。同対策で、対象を絞り込むこととしている点について、規模や営農スタイル等さまざまな農家が存在するからこそ成り立っている農村社会には合致しないと指摘。同時に、担い手育成・確保政策のあり方について質した。この点について篠原議員は「担い手をピンポイントで対象をしぼるのではなく、農業・農村全体の活性化を図るなかから、担い手を育てていく形がいい。全体の底上げが大事」と語り、対象を絞った形で交付を行おうとしている政府案のあり方に疑問を呈した。

 荒井議員はまた、政府の品目横断的経営安定対策において、北海道の場合のみ10ヘクタールの経営規模が対象要件とされている点を取り上げ、「認定農家を育てるという視点で考えると、なぜ北海道だけ差別するのか疑問」と指摘した。

 また、バイオマスは今後の農業政策に重要な意味を持つとの認識を示した荒井議員は、米国はじめ諸外国と比べて実用化が進まないのは政府の取り組みの遅れによるものとの認識を示した。同時に、民主党案において直接支払いの対象としてバイオマスを上げている点について「唐突な気もするが、関連性を整理したのか」と質した。それに対して、民主党提案者の山田議員は、「過剰な生産は誘導的に抑えられると思うが、それでも一時的に過剰になった場合は棚上げ備蓄していく」と説明。こうして棚上げ備蓄された米等の生産物はバイオマス利用によってエネルギーに転換していく考えであることを明らかにした。
 
 そうした答弁を受けて荒井議員はバイオマスの重要性を再認識し、中川農水相に対し、関係省庁とバイオマスの普及についてしっかりと議論して、農業政策のなかに位置づけていくよう強く要請した。さらに荒井議員は、輸入食品の安全確保にむけた取組みの重要性も指摘。輸出国に食品安全検査官を派遣するなど、体制を整えるよう求めた。
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