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2006/04/12
【参院本会議】共に学ぶ体制へ 神本議員、学校教育法改正案質す


 参議院本会議で12日、民主党・新緑風会の神本美恵子議員が質問に立ち、学校教育法等の一部を改正する法律案に関して、小坂文部科学大臣はじめ関係大臣の見解を質した。

 20年以上教職にあった神本議員は冒頭、担任した小学一年生のクラスにいた言葉を発しない自閉症の子が3学期のある朝、日直として言葉を発し、声なき声をクラスの仲間たちは口の動きで読み取ることで理解したという、教員時代の子どもたちとのふれあいを振り返り、「歓声と拍手がやまなかった光景に胸がふるえた」と発言。全国の小中学校でこのような可能性を秘めた子どもたちの素晴らしい力によって「共に学び、共に育つ」教育が実践されているとの見方を示した神本議員は、その一方で共に学び育つ支援体制が制度として確立していないために、親の付添いを強要されたり、学校行事から排除されたりする、多くの困難に直面している現状が報告されていることを明らかにした。

 支援体制が進まない理由について神本議員は、日本の障害児教育制度が、1961年文部省の「わが国の特殊教育」に示された「心身の故障者は、それぞれの故障者に応じた適切な教育を行う場所を用意する」とする障害児の分離別学体制の継続に起因すると指摘。盲・聾・養護学校及び特殊学級に就学させるべきという判断を受けながら、地域の学校の通常学級を選択した子どもたちは「制度の枠外の子」としてその数さえ把握されてこなかった点にも言及した。制度的に放置されているこれらの子どもたちの存在は、今回の改正案でどう位置づけられているのか、神本議員は小坂文科相の見解を質した。それに対して文科相は「小中学校におけるこのような障害をもつ児童・生徒のための取り組みについて、法律上明確化することとしている」などと答弁した

 次に、障害者を社会から分離することなく、統合することを基調とする1975年に国連第30回総会が採択した「障害者の権利宣言」に始まる一連の「国連障害者年行動計画」、「子どもの権利条約」、「障害者の機会均等化に関する基準規則」、「サラマンカ宣言」などを列挙した神本議員は、本改正案がそうした国際的な障害者施策の流れを受けとめて提案されたかどうかを確認した。小坂文科相は「児童ひとりひとりのニーズに応じた教育の実現を図ろうとするものである」とした。

 また、「障害のある人の権利及び尊厳の保護及び促進に関する包括的かつ総合的な国際条約」いわゆる障害者権利条約の策定作業が続いている国連での日本政府の姿勢をめぐり、「議長草案第24条の教育の項では、ひとりひとりのニーズを可能な限り通常の教育環境のもとで保障するというインクルーシブ教育を大前提とした論議が交わされている」として、日本政府にも前向きな姿勢で臨むよう、麻生外務大臣に注文をつけた。

 神本議員は猪口少子化・男女共同参画担当大臣に対しては、「今回の改正は、障害のある子だけの問題、教育だけの問題ではなく、世界に類を見ない少子高齢社会を迎える日本社会全体の課題として、共生社会を実現するために、学校教育全体、日本の社会のあり方とも関連して将来を見通して行われるべきと考える」と問題提起した。

 次に、今回の改正案と2004年に改正された障害者基本法との整合性にも神本議員は言及し、障害者基本法では「改正障害者基本法は、何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならないとし、国民の責務として、社会連帯の理念に基づき、障害者の福祉の増進に協力することを求めている」として「障害者差別禁止」を理念としていることを指摘した。そのうえで神本議員は、今回の改正では障害のある人への差別をなくし、社会連帯の理念を前進させることになるものであるべきであることを重要視する考えを示した。

 神本議員はさらに、今回の改正案においては、これまでの特殊教育を重複化する障害や、新たに支援を必要とするLDやADHDなどの発達障害の子どもたちにも対応できる特別支援教育に転換することを趣旨としている点について神本議員は、「しかしながら施設・整備の改善や教職員配置の改善など、ひとりひとりの個別のニーズに応えうる条件整備に手がつけられていない」と批判。センター的機能をもつことになる特別支援学校の教職員や、新たな「特別支援教育」を行うことになる通常学校・学級の教職員の過重な負担軽減のためにも、ニーズに応じた条件整備が必要だと指摘した。

 最後に神本議員は、わが国がめざすべき社会は、障害の有無にかかわらず、誰もが相互に人格と個性を尊重し合う共生社会だと改めて提示。「すべての人が支え合い生きる喜びを分かち合える共生社会を実現するためには、冒頭に紹介した子どもたちのようにできるだけ早いうちから障害のある子とない子が共に学ぶ教育が不可欠。そしてそのことは障害のない子にとっても共に生きることを学ぶかけがえのないすばらしい教育の機会である」と強調し、質問を締めくくった。
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