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2006/01/24
【参院本会議】江田会長、国政全般にわたり小泉首相の姿勢質す


 24日午前、参議院本会議において、江田五月参院議員会長が小泉首相の施政方針演説に対する代表質問を行い、今日の日本が直面する諸課題について、幅広く小泉首相の政治姿勢を質した。

 冒頭江田議員は、昨晩ライブドアの堀江社長が逮捕された件を取り上げ、堀江社長が自民党の応援の下に衆院議員候補者となったことを考えると、「もし当選していたら、金融政策に空恐ろしさを感じる」と語り、堀江社長を刺客に登用してヒーローにした首相の責任を問った。これに対して首相は、捜査中なので発言は控えるとしつつ、これは選挙で応援したこととは別問題であると答弁し、責任を回避した。

 江田議員は、参院における決算審議の充実やODA見直しへの取り組みについて触れ、これらについて首相から「協力していく」との答弁を得た。

 江田議員は、豪雪被害を取り上げ、「大雪は自然現象だが、過疎地の高齢者に被害が集中したことは社会現象であり、政治の問題だ」と、安全・安心の社会システムの構築を怠っている政府の責任を追及するとともに、喫緊の課題である除雪費用への国の支援を訴えた。これに対して首相は、災害対策法による措置、自衛隊の派遣、除雪費用の補助などを行うと答弁した。

 ここで江田議員は、首相が施政方針演説の中で相撲力士や野球選手を取り上げて、彼らの活躍がさも自らの功績であるかのように語ったことを捉え、それは「政治のおかげではなく、政治に利用すべきでもない」と批判し、首相の我田引水の論法に釘をさした。

 江田議員は、市場に任すべき部門とそうでない部門があるとした上で、耐震偽装問題などが起こらないように制度設計を見直すべきであると質問した。これに対して首相は、民間開放路線は誤っていないと断言しつつも、江田議員の意見も参考にして今国会において必要な法改正を行うと語った。

 江田議員は、マックス・ウェーバーの考え方を引きながら、日本の市場の質が失われているのではないかと問題提起したが、首相は市場の質の劣化や倫理の希薄化を招いているとは思わないと強弁した。

 江田議員はさらに、米国産牛肉の輸入再禁止という事態を捉え、政府の食の安全よりも日米関係を優先させる姿勢を問題とし、首相に責任の認識を問ったが、首相は食品安全委員会の審議を経て決定した輸入再開であると語り、責任の認識の希薄さが明らかとなった。

 江田議員は、小泉首相の政治哲学は改革のためには少々の犠牲もいとわないというものであり、民主党の考え方は改革の中でもあくまで個人の幸福を尊重するものであるとして、首相の政治哲学を批判した。

 その上で各論に入り、まず労働分配率のあり方と非正規雇用の安定化について質問したが、首相は労働分配率は労使関係で決めることであり、雇用問題については構造改革特区などによって解決するという素っ気ないものであった。江田議員の特例現在廃止は選挙公約違反だとの質問に対して、首相は「あくまで暫定的なものを元に戻すだけだ」と強弁した。江田議員は、政府の言う基礎的財政収支の均衡だけでは、膨大な財政赤字は減少しないとして、新しい財政再建目標を作ることを提案し、首相は債務残高のGDP比などの指標も検討していくと答弁した。江田議員は、破綻金融機関に対する財政支援が行われたにもかかわらず、経営者への民事刑事の厳格な責任追及が行われていないことがモラルハザードを招いていると指摘したが、首相は破綻金融機関については民事刑事の責任を問っていると強弁した。江田議員は、NPOの育成について質問し、首相の前向きの答弁を得るとともに、子ども対策として「子ども家庭省」の創設を提案したが、首相は既存の少子化社会対策会議と担当相で対応可能とのみ答弁した。江田議員は、司法制度改革について、司法支援センターへの予算確保と裁判員制度の啓蒙活動の推進を、また科学技術立国についての施策の充実を訴え、ともに首相から積極的な答弁を得た。

 江田議員は、質問を外交に移し、日米関係が良いと言われるにもかかわらず、日本が国連総会に提出した核軍縮決議にアメリカが反対している点を問題としたが、首相はアメリカや中国にも働きかけていくと答えるのみであった。さらに江田議員は、軍縮会議でのリーダーシップの発揮を要請し、首相は積極的に取り組むとの答弁を行った。江田議員が国際刑事裁判所条約の早期批准を迫ったのに対して、首相は必要な国内法の整備と分担金の予算措置について取り組むとの答弁を行った。上海総領事館の領事自殺問題についての江田議員の質問に対して、首相は国内報道の後に知ったことを明らかにするとともに、機密漏えいはなかったと強弁した。

 国民主権に合致する形での皇室典範改正を行うべきだとの江田議員の質問に対して、首相は今国会に所要の法改正を提出すると答弁した。最後に江田議員は、靖国神社が国家の戦争責任を分有している施設である以上、首相が参拝するのは相応しくないと述べ、思慮に欠けた行動により国際関係が悪化していると指摘したが、首相は戦没者全体を追悼する施設であるとの見解を繰り返した。
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