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2006/02/02
米食肉業者に危険部位除去等対日基準遵守は困難 米調査団報告


輸入再開後の米国産牛肉に特定危険部位が混入していた事態を受けて、民主党はいち早く調査団を米国へ派遣。4泊5日の日程で米国内の視察を終えて帰国した民主党BSE対策本部訪米調査団は2日夕、党本部で記者会見を行った。十分な訓練を受けていない疑いがある従業員も多く、米国の食肉業者に危険部位の除去など対日輸出プログラムを遵守させるのは構造的に困難との見方を示した。

 調査団は山岡賢次本部長(副代表)、山田正彦本部長代理(『次の内閣』ネクスト農水相)、和田洋子副本部長(参院農水委)、篠原孝事務局次長(党農林水産団体局長)、岡本充功事務局次長(衆院農水委)の5人。ジョハンズ米農務庁長官はじめチャンブリス上院農業委員長(共和党)、ピーターソン下院農業委筆頭(民主党)、グッドラッド農業委員会委員長(共和党)らと会談するとともに、食肉加工業者の加工現場を視察。消費者団体関係者との意見交換を行った。
 
 会見の冒頭、山岡本部長はジョハンズ長官ら政治家との会談はすべて激論が展開されたとしたうえで、最終的には議論は平行線だったと報告。会談で長官は「今回の事件は一過性の単純ミスだ」と強調し、たった一回の単純ミスで輸入再停止にふみきった日本の判断は行き過ぎ、輸入を即刻再開すべきとの姿勢が言外に現れていたことを山岡本部長は明らかにした。そうした認識は、すべての政治関係者に共通に感じられたとの見方も示した山岡本部長は「(今回の件は)米国の構造的な問題であるという感触を強く持った」と語った。

 長官との会談では、米国産牛肉の輸入全面拒否が民主党の主張ではないことを改めて表明したうえで、米国産牛肉の安全性に対する疑念が生じてしまった現状にあっては、その疑念を払拭するためにもトレーサビリティの実施と20カ月齢以下に限定した確実な判別、全頭検査が不可欠であることを調査団は改めて米国側に提示した。

 山岡本部長は「(米国との)交渉は大変と思うが、軋轢があってもきちっとした結論を出すことが大事。安易に妥協するとその後つけがまわってくる」と述べ、調査の結果、一過性のミスではないとの確証を得た以上、米国との粘り強い交渉が不可欠だとした。

 山田本部長代理は食肉加工現場視察の印象を踏まえ、月齢識別と危険部位の除去状況について報告。大手と中堅業者を比較すると大手の方が危険部位の除去作業は荒っぽい印象で、背割りの際に危険部位が飛び散り、脊髄が肉に付着し、高圧洗浄後もそれは完全には洗い落とされていなかったとの印象を語った。

 月齢の判別は仙骨、胸椎、腰椎、肉の色という4項目で見分けるとされているが、大手業者は「長年の勘」が培われているので必ずしも4点をチェックしていないとの回答がある一方で、中堅業者では4点に関する記録もとられており、チェック基準の徹底が米国政府によって何らなされていない実態が浮き彫りになったことも山田本部長代理は指摘した。

 続いて篠原事務局次長は「拙速な輸入再開」が今回の事件の発端であることを改めて指摘しつつ、米国の食肉業界の構造的な問題でもあるとの見方を提示。効率最優先の食肉加工場においては、採算を度外視して日本が求める基準の遵守など望めるわけもなく、また外国人労働者への指示は言葉の壁に阻まれるなど、全体的に訓練不足の従業員が機械的に作業しているにすぎない状況下にあることを指摘した。

 篠原議員はまた、最大の輸入国である日本が頑張れば、世界の畜産業界の流れを変えることができるとの認識を示し、大量飼育・大量加工ではなく、適正規模での飼育・加工体制を整えた丁寧な畜産を定着させることが食の安全確保に繋がるとの考えを語った。
 
 次に和田副本部長がコメントし、日本政府が12月12日に輸入再開を決定した翌日の13日には米国内の約40社が認証された問題を取り上げ、「輸出基準を遵守できる体制が整っているとの証明までなされているが果たして実態を十分調査したうえでの証明か疑問」との認識を示し、米国まかせでなく日本独自の米国食肉加工業者への調査・監督があってしかるべきとの認識を示した。
 
 最後に岡本事務局次長が報告。BSE感染牛の特徴でもある歩行不能の症状を示す、いわゆる「へたり牛」の判別は獣医が見て判断するとしているが実際には獣医は配置されておらず、「歩けない牛がいれば検査する」との食肉加工業者の回答があったが、30頭あまりがお互いに押し合いながら移動するなかでは「へたり牛」であっても他の牛の間を歩くことでへたりこまずに歩行することができ、見つけられないまま加工されてしまう可能性が高い状態であったことを指摘した。

 また、月齢判別要件のひとつである歯による判別だが、と畜直後にチェックすることになっているが実際には大量の牛をすべて確認するのは不可能で、実際に視察時にチェックしないままにやり過ごした歯がいくつもあったことを岡本事務局次長は明らかにし、「すべてを見ているとはとても思えない状況だった」と述べた。

 特定危険部位とされる脊髄の残存も顕著であったとも指摘し、「今はやりのミントサウナと同じ。ミントサウナに入ったからといって体が洗えたと思う人がいないのと同様、噴霧洗浄では(特定危険部位は)洗い流せない」と語った。

 なお、会見には田嶋要党BSE問題対策本部事務局長(役員室次長、危機管理担当)も同席した。
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