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2006/03/06
【参院予算委】谷議員、タクシー運転手賃金問題、難病対策等質す


 参議院予算委員会で6日午前、2006年度予算案に関する基本的質疑が行われ、民主党・新緑風会の谷博之議員が質問に立ち、タクシー運転手の賃金下落の問題、足利銀行の受け皿問題、難病対策のあり方、戦後処理問題等を取り上げ、小泉首相はじめ関係大臣に質した。

 谷議員は冒頭、1月の施政方針演説で小泉首相が引用した幕末の思想家、吉田松陰が説いた「志士は溝壑(こうがく)に在るを忘れず」という孔子の言葉を改めて取り上げ、どういう思いで使ったかを質問。首相は、志ある人はその実現のためには溝や谷に落ちて死んでも構わないと常に覚悟しているとの意味で、自分自身に向けた言葉だが、国会議員の多くがそうした思いに立ってほしいとの思いを込めたものだとの考えを示した。

 こうした答弁を受けて谷議員は「こういう言葉の引用は掛け声だけであってはならない」と指摘し、「根っこがあって、その上に吉田松陰の言葉がくる。根っこは民真なくば立たずだ」と谷議員は述べ、あくまでも国民の代弁者として国政の場にあるとの認識を強くもち、国政に当たらなければならないと改めて首相に問題提起した。
 
 そうした認識に立って谷議員は、タクシー運転手の賃金下落の問題を取り上げ、その賃金実態が2004年の年間所得308万円で、全産業従事者の平均賃金543万円の約6割にも満たないもので20年前とほぼ同じ賃金であることを指摘し、あわせて段階的な規制緩和が始まった1997年から100万円の賃金の下落が見られることを明らかにした。そのうえで谷議員は、この賃金を適切と見るか、その賃金下落の原因は何かを質した。
 
 北側国交相は「賃金の状況はその通り。大変厳しい状況にあると認識している」などと答弁。下落の原因は長引く景気低迷と2002年の道路運送法改正に伴う規制緩和があるとの考えを示したが、多様な運賃設定や障害者用タクシーの導入など、規制緩和によって利用者にもたらされたプラスの面もあったとした。

 この答弁を受けて谷議員は、道路運送法改正時には「運賃についてその基準には人件費等の費用について適正な水準を反映させること」とする付帯決議が付されていたことを明らかにし、「この付帯決議が全く守られていない」と指摘。同時に、タクシー運転手の賃金制度が累進歩合制となっていることが賃金低下の一番の原因だとして、付帯決議の実行と累進歩合制の見直しを政府として指導することで、この状況を改善していくよう北側国交相に強く求めた。

 続いて、足利銀行の受け皿問題に関して、選定の手法と時期を質したが、与謝野経済財政担当相は「どのような手法かを論じる段階にない」と答弁。谷議員は11月27日の段階でも政府から同様の答弁が示されていることを指摘し、「3カ月半かかっても同じ答弁か」として政府の怠慢を批判。栃木県の声を聞いて早急に検討するよう要請した。

 03年12月に行われた金融危機対応会議で小泉首相はじめ6人の大臣によって、足利銀行の経営破たん、国有化の判断が下された事実を谷議員は改めて指摘し、その再生へ向けた結論を任期中に出すよう求めたのに対して首相は「任期中にできるかどうか申し上げられない。対応してくれるものと思う」などと答弁するに留まった。これを受けて谷議員は、「足利銀行をつぶしたのはこの会議だ」ときびしい口調で指摘し、地域経済活性化の観点からも再建への道筋を早急に示すよう注文をつけた。
 
 難病対策のあり方に関しても谷議員は取り上げ、不備が目立つ難病対策整備に向けては国としてセーフティネットを整えるべきとの認識に立って、難病対策の法制化の必要性を強く指摘。国と地方が重層的に取り組むのも重要との認識も示し、地方の財政力の格差が広がりつつあるなかにあっては、難病患者団体の意見等も十分に受け止めながら国として法整備にむけて対処するよう重ねて強く求めた。

 国の戦後処理にとして、シベリア抑留の問題を取り上げた谷議員は、91年に日ロ捕虜・抑留者協定が結ばれたにもかかわらず、15年を経過しても目覚しい進展が見られていない現状を問題視した。シベリア抑留者のなかで中国・北朝鮮へ移送された1万3000人あまりの情報が未入手となっていることを麻生外務相の答弁からも明らかにした谷議員は、「わが国の取組は遅れている。(ロシアにおける)その後取り組みはどうなっているか、ロシアに対して説明を求めるべき」と述べ、国としてロシアに対して情報公開を要請するのが本筋であることを強調。抑留体験者が高齢化するなかにあっては、早急に真相究明を進めるべきであることにも言及した。

 同時に、戦没者の遺骨収集の立ち遅れも問題視し、十分な予算措置と早急な取組みを谷議員は要請。小泉首相から「戦後60年、遺骨のことを忘れてはならない。しっかり取り組んでいく」との答弁を引き出した。
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