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2006/03/10
【参院予算委】若林議員、格差是正のあり方等について首相と論戦


 集中審議が行われた参議院予算委員会で10日、民主党・新緑風会の若林秀樹議員が質問に立ち、格差拡大社会に対する認識、財政・プライマリーバランス、税制の所得再配分機能、個別税制の課題等に関して、小泉首相はじめ関係大臣に質問した。

 「量的緩和についてひとつだけ言わせてほしい」として若林議員は、9日に発表された日銀の量的緩和解除決定に関連して発言。政府は日銀と一体となって経済運営を負う責任があることを改めて指摘したうえで、「(日銀は)説明責任を果たしていない」「残念な結果である」「責任は日銀にある」といった発言が閣僚からなされたことに関して、「政策効果の足を引っ張ることになる」と苦言を呈した。「発言は影響力があるとご自覚いただきたい」と述べ、竹中総務大臣に対して慎重に発言するよう重ねて強く求めた。
 
 続いて若林議員は、「労働所得の格差は97年以降拡大しており、特に非正規雇用者の増加の影響もあって、若年層でその拡大のテンポが速い」とする内閣府経済社会総合研究所の指摘や「ジニ係数について、97年から男女ともほとんどすべての年齢層で上昇している。特に男性では34歳以下、女性では24歳以下で上昇幅が大きくなっており、所得格差は拡大している」とする平成17年度版国民生活白書を提示。そのうえで格差拡大に関する小泉首相の認識を質した。

 小泉首相は、格差は統計の取り方によっても違うとしたうえで、月例経済報告会では、言われているほど、日本は格差社会ではないという報告を受けたことを繰り返し答弁した。
 
 若林議員は、格差が拡大しているのではないか、固定化しているのではないかとの視点から政策を考えるべきであると問題提起した。そうした指摘に与謝野金融担当相は「格差を固定化しないというのは大事な論点」と述べ、人生のスタート地点で差がつかないよう、セーフティネットの用意、制度的バックアップ体制が必要との見方を示した。
 
 続いて若林議員は、子育て世代の所得格差拡大がもたらす出生率低下への影響について取り上げ、年収400万円以下になると子どもゼロ世帯が急増する実態を指摘し、低所得者に対する子育て支援の必要性を浮き彫りにし、猪口少子化担当相にそうした認識に立って何らかの手立てを講じるよう要請した。

 続いて若林議員は、小泉政権下における財政再建に関連して、一般歳出に占める省庁別の主要経費の構成比率を取り上げ、歳出削減の実現に向けては各省庁別の予算配分比率を大胆に変えて臨むべきだったと指摘。各省庁とも一律3%カットにとどまっている現状について若林議員は、「できるのにしなかったことで、霞ヶ関の体質を変えてまでの歳出削減があまりできていなかったことに繋がる」と分析して見せた。

 また、地方の黒字化を先行させたことで、国と地方に開きが出ていることを指摘し、国の黒字化とのバランスをとるよう検討が必要だと谷垣財務相に問題提起した。こうした指摘に谷垣財務相は「国と地方がそれぞれのやるべきことを明らかにするとい意味でも、国と地方のバランスをどうとって行くかを検討するうえでも大変意味のあること。経済財政諮問会議の歳出歳入一体改革のなかで議論していく」と述べ、前向きな姿勢を示した。

 「所得課税の在り方について、わが国経済の状況等を見極めつつ、抜本的な見直しを行うまでの間、所得税法の特例を定める」と法律に明記され、恒久的減税とされていた定率減税についても若林議員は取り上げ、定率減税廃止に向けてはどのような抜本的見直しを行ったか質したが、谷垣財務相は苦しい弁明に終始。そうした答弁に対し、若林議員は「抜本的な見直しが行われないなかでの定率減税の廃止はいかがなことか」と、苦言を呈した。

 若林議員はさらに、任期中および来年度も消費税率を上げる環境にないと発言している小泉首相に対し、消費税率を上げる前提条件等を質した。それに対して首相は、歳出削減がまだまだ可能とする見方が国民の大半を占め、来年度も消費税UPへの国民的理解を得る環境にないとの政治的判断からの発言であることを明らかにした。

 若林議員は「小さな政府と言いながら、政府の体を小さくすることなく2兆円の増税となっている。やっていることと言っていること違う」とも批判。同時に耐震強度偽装事件、粉飾決算、談合事件等に見られるように日本社会にこれまで確立してきた相互信頼関係が崩壊し他人が信頼できない社会へと変貌しつつある点を指摘。その結果、社会的コストを上げ、財政を膨らますことになっていると分析した若林議員は、「それは民主党も含め、政治の責任」だの認識を示した。
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