ニュース
ニュース
2006/03/16
【参院予算委】喜納議員、外交・安保に関して公聴人に意見求める


 参議院予算委員会で16日、公聴会が開かれ、2006年度政府予算案の外交・安全保障に関して軍事アナリストの小川和久氏、財団法人平和・安全保障研究所理事長の渡辺昭夫氏の2人の公述人から意見を聞いた。民主党・新緑風会からは質疑者として喜納昌吉議員が質問に立ち、両公述人に外交・安全保障のあり方等について質した。
 
 小川公述人は「防衛予算から明らかになるわが国の防衛力の現状」と題して、使い道から見た防衛予算の中身に関して、一番多くの割合を占めているのが人件・糧食費である点を指摘し、本来的な軍事力・防衛力の整備は全体的な防衛費の30%程度であることを明らかにした。同時に「世界の大きな国々がもっている軍事力とは程遠い、中くらいの軍事力で、使う兵器は安く、古いものを改善しながら使っている」と語った。
 
 また、米国同盟に起因する米国の要請に基づく役割分担によって、一部においてだけ世界一流の軍事力整備を求められて現状であると小川公述人は主張。海上自衛隊の対潜水艦船(ASW)、航空自衛隊の防空戦闘能力等がそれに当たり、米国が頭脳で日本が手足を担っていると分析してみせた。同時にこれらの整備で、ほとんどの防衛費が使い果たされる実態を明らかにした小川公述人は、「極めて特異な構造の防衛力であることを自覚しなければならない」と語り、バランスのとれた軍事力整備を前提としたかのような予算審議がなされているが、そもそも認識に誤りがあるとした。さらに、自立できない構造の軍事力になっているとも語り、日米同盟の結合による防衛力だなどとした。

 渡辺公述人は「日米関係が機軸と半世紀言い続けられてきて、本日もその考えは生きているが」と前置きしたうえで、対米関係さえしっかりしていればすべてうまくいくという認識とは異にするとの自らの考えを披瀝。対米関係とアジア諸国との関係をいかに調和させて成立させるか、どう両立させるかが外交戦略の工夫のあるべきところだと主張した。
 
 同時に日米中という大国間の関係だけに気を配るのではなく、島サミット参加国に代表されるようなアジアの諸外国に対してもどんな外交を展開するか、知恵を喚起して外交のあり方を検討していく必要があるとした。
 
 こうした意見陳述を受けて質疑者の喜納議員は、日本の国防予算の4分の1が、グアムにおける米海兵隊の移転費に当てられることをどう見るかを小川公述人に質問。「米国から言わせれば当然」としたうえで小川公述人は、しかし値切るのも外交であると回答。判断の基準を金額に置くのではなく、日本政府として何を重視するかの観点で判断すべきとの認識を示した。

 続いて喜納議員が、日本は独立国家とは言い難く、米国は沖縄を人質にしてお金を巻き上げている感があると述べたのに対して、小川公述人はそうした認識はもっていないとしつつも、現在の日米間の力関係は外交能力が低いことによってもたらされた結果だとする見方を示した。
 
 渡辺公述人に対しては、「日米が中国と共有するイメージをもって行動する」とした場合の想像できるイメージの実態について喜納議員は質問。それに対して渡辺公述人は「共通の敵国が存在するのではなく、困った状況が敵である」との認識を示し、テロリストの横行、エネルギー減への対応、鳥インフルエンザ対策等、国際社会全体にとっての問題を共通課題と認識することを通して行動することも可能ではないかとの見方を示した。そのうえで渡辺公述人は「そういう議論の仕方において日本はもうすこし活発に、政治のトップリーダーもそうした観点から外交に取組むべき」と主張した。
記事を印刷する