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2006/03/23
【衆院本会議】渡辺議員、政府の行政改革推進法案の問題点を指摘


 衆議院本会議で23日、民主党・無所属クラブの渡辺周衆院議員(『次の内閣』ネクスト総務大臣)が、松本政調会長に続いて質問に立ち、政府の行政改革推進法案の問題点を指摘し、首相はじめ関係大臣に質問した。

 まず、政策金融については官と民の役割分担を明確にし、官にしかできない業務のみの効率化を前提に存続させるべきだと問題提起した。そのうえで渡辺議員は、その目的・理由が明確にされないまま、本法案では平成20年度に現行政策金融機関を「新たに設立する一の政策金融機関」に統合するとしている点について、統合の理由、中小企業や零細事業者に民間企業が提供しない融資をどう担保するのか、また、民間並みの企業会計原則を適用する用意があるか等について、首相に答弁を求めた。

 小泉首相は、「必要な政府の関与は残しておきながら、民営化や統合により、ひとつの政策金融機関を設置することとし、これにより、近代的な政策金融機関の経営を追求していく」などと答弁。中小零細企業への資金調達支援の機能を残すこととするとも明言した。

 続いて、政府が国家公務員を5年間で5%以上純減するとしている本法案で示された総人件費改革について質問。「5年間で5%」の中身を説明できないままに本法案を提出し、審議に付そうとする政府の姿勢そのものがまず問題だとしたうえで、昨年12月に閣議決定された「行政改革の重要方針」によれば、具体的な中身は通常国会終了後の6月までに決めることになっている点を問題視し、数字の根拠を衆議院の審議中に示すべきとして、首相に要請した。しかし、「実現すべき目標として設定したもの」と首相は答弁するだけで、具体的方策は6月までに示すと繰り返し、前倒しで示す考えのないことを明らかにした。

 総人件費改革をめぐってはまた、同法案に「今後10年間で総人件費の対GDP比を、17年度対比2分の1にできる限り近づけることを長期的な目安とする」という文言が盛り込まれていることを明らかにした渡辺議員は、本来は政府支出抑制を意味するはずだが、実際には、郵政公社は現在でも独立採算で、政府からの財政支出が基本的になく、同時に公務員型独立行政法人の役職員を非公務員化へと看板を架け替えても運営費交付金が削減されない限り、国の財政支出削減には繋がらない実態を浮き彫りにした。

 次に、政府の法案が地方公共団体に対して5年間で公務員を4・6%以上純減することを要請している点について質問。地方分権の観点からすれば、国が地方に数値目標を示すのは不可解な話で、分権型社会像を提言する大きな流れを無視したものだとの見方を渡辺議員は示し、地方へどの程度の事務と権限が移譲されることを前提にした数字かを質した。この指摘に対して小泉首相は「過去5年間の純減実績を考慮し、きびしい行財政状況をふまえ設定したもの」と述べるにとどまり、分権型社会像を提言する政府の考えと相反するとの渡辺議員の指摘には明確に答えなかった。

 また「二重行政」との指摘もある33万人の一般職国家公務員のうち21万人がいる地方の出先機関等についてどんな認識を持っているか等について質問したのに対して、首相は抜本的な見直しを行うとの前向きな姿勢を示した。
 
 さらに、政府の「総人件費改革」には全く触れられていない分野として昨年7月1日時点の総務省調査で13万4000人いるとされる非常勤国家公務員の人件費に言及した渡辺議員は、「人数は総務省で把握しているものの、その人件費はベールに包まれている」として、「定員外」の職員の洗い出しを行うよう、首相に注文をつけた。
 
 引き続いて、公務員制度改革を取り上げた渡辺議員は、わずか1条の規定に過ぎない政府案に疑問を呈し、「中身は曖昧極まりなく、政府が改革に取り組む意欲が微塵も感じらない」と厳しい口調で批判した。その上で、小泉首相と中馬行革担当大臣に対し、公務員制度改革に関する法案を今国会に提出するのか、柱は何かを明確に示すよう求めた。これに対して小泉首相は「能力、実績主義の人事管理の徹底と退職管理の適正化を柱として、早期に具体化していく」とした。

 防衛施設庁の問題に関しては、同庁で早期勧奨退職を自粛するとの報道がなされている点に渡辺議員は注目し、「早期勧奨退職という慣習が天下りとセットになっていることを自ら認めた証拠」と分析してみせつつ、OBを受け入れた業者の受注額は00年から04年で平均約205億円、受け入れてない業者の平均は51億円であったとされる他の省庁も含めた公共事業を対象にした調査データも提示。同時に、防衛施設庁の問題が明るみに出た後も、国土交通省の天下り社団法人が出先機関の地方整備局から4000件以上、約750億円の業務をすべて「特命随意契約」で受注していた事実を取り上げ、早期勧奨退職制度の禁止とあわせて是正への取り組みを問題提起した。

 渡辺議員は最後に、「安全、安心、信頼という公共でしかできない分野には質の高い公共サービスを惜しまず、だぶついた政府、ぜいにくのついた行政組織を許さず、良質な行政サービスは身近な自治体が効率的に行うことを理想の社会とし、“改革の痛み”はまず税金を使う側からでなければならない」と述べ、民主党は納税者の視点で建設的な提案を交えながら法案を議論して行くと力強く宣言し、質問を締めくくった。
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