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2006/03/26
前原代表、福島・喜多方市アグリ特区視察。農業活性化への道探る




 前原誠司代表は26日、福島県喜多方市を訪れ、平成15年8月に導入された構造改革特別区「喜多方市アグリ特区」の現状と課題、地産池消の取り組み等について、白井英男市長らから説明を受けるとともに、特区制度導入を機に農業参入した大建工業株式会社の圃場を視察した。

 この日は渡部恒三国会対策委員長のほか、党農林漁業再生本部事務局長代理の篠原孝衆議院議員、地元選出の佐藤雄平・和田洋子両参議院議員、吉田泉衆議院議員、参院農水委員会委員の松下新平議員はじめ、多くの県議会議員らが同行した。

 喜多方市は耕地面積の66%で米を作付けし、農業粗生産額のおよそ7割を占めるなど、米に依存した経営を行ってきた。しかし、米価の下落により農業粗生産額はピーク時の8割まで落ち込み、農地保全、農村活力の低下などの問題が出てきた。また、農業の担い手の高齢化が進むとともに、農家数の減少など、担い手不足が各地域で深刻化している。これに伴い、農地の荒廃が進み、平成12年度時点で134ヘクタールが遊休農地となり、特に国営事業で造成された畑ではその傾向が顕著となっていた。

 そうした状況を前に、遊休農地の解消と担い手の確保、都市住民との交流拡大による農業振興と地域活性化を図ることを目的に、「喜多方市アグリ特区」と名づけて市内全域を対象に、特区制度が導入された。これによって、農地貸付方式による株式会社の農業経営への参入容認や市民農園の開設者の範囲の拡大が実現した。

 挨拶に立った前原代表は、農家の生活が成り立つための施策のあり方、また担い手を作り出していくにはどうあるべきか等について、先進的な喜多方市の例を視察にきたと前置きしたうえで、「しかし、問題点もあると思う。それを政治としてどう変えていくべきかということも学ばせていただきながら全国へ広め、自給率が5割、6割と上げることができる、農業が基幹産業となりうる国に脱皮させるために勉強したい」と語った。

 市長はグローバリズム、市場原理主義のもとでは東京はじめ大都市に人も物も金も集まり、その一方で農村部はさびれていくとの見方を示したうえで、「市長として、こうした状況を打開するには、人・物・金を還流させなければならないと思った」と主張。その手立てとしてグリーンツーリズムの実践と農外資本である株式会社の農業経営への参入を実現したことを明らかにした。

 産業部長からは、地元建設業者の9社が農業経営に参入し、約8・4ヘクタールの農地を貸し付け、タラの芽やそば、緑化木の栽培が行われているとの報告があった。同時に異業種の農業参入について産業部長は「遊休農地が有効利用されるとともに、地域農業の新たな担い手として期待できる。また、企業が合理的な考えにより農業経営を行うことで、コスト感覚など既存農家の経営に良好な刺激を与え、地域農家の経営意識が高まっていくことを期待しているところだ」と述べた。

 株式会社が農業参入することへの農業者の不安解消に向けては、参入法人の選定や地権者との調整を市が自ら担うことでマイナス面を払拭してきたとの報告があった。一方で、生産・流通のノウハウがない新規参入法人へのケアとしては、平成15年10月に市アグリ特区支援センターを窓口に、県の農業普及所、農協など農業関連機関からの協力を得ながら、作物の栽培技術や必要な農機具の斡旋などの参入企業のサポートを行ってきた。

 また、農業への参入を自ら実践した大建工業有限会社の遠藤広社長は、「当社においては大変な局面を迎えている」と語り、直面する課題が予想以上に多く、行政の特区における丸投げ状態には戸惑っているとの率直な思いが示された。遊休農地の農地化はマイナスからの立ち上げを意味し、土壌づくりだけで最低でも4〜5年を要するのが現実で、そこへの投資は本業の経営悪化をも呼び込み、売り上げの落ち込みによって銀行からの融資拒否なども起きかねない状況であるとの現状が語られた。「特区を本当に推進するのであれば、行政の支えが必要」との指摘があった。

 こうした説明後の会見で前原代表は、民主党として「食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案」を16日に衆議院に提出したことを改めて報告。農業を基幹産業とし、国内自給率を50%、将来的には60%へと高めていく方針であることに言及した。同時に今回の視察で得た喜多方市の現状と課題を持ち帰って検討し、全国へと発信していくことで、国内自給率向上へとつなげていく考えも示した。

 同時に大建工業社長から指摘のあった「特区推進への行政の支え」については、小泉政権に対して、政府・与党として十分なフォローを行うよう働きかけていく意向を示した。
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