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2006/03/29
【参院本会議】森議員、実効性乏しい児童手当改正案の問題指摘


 参議院本会議で29日、「国の補助金等の整理及び合理化等に伴う児童手当法等の一部を改正する法律案」を議題に質疑が行われ、民主党・新緑風会の森ゆうこ議員が安倍官房長官、猪口少子化担当大臣らに質問を行った。

 「少子化が止まりません」と開口一番切り出した森議員は、平成17年に日本の人口が初めて減少に転じたことに言及。政府の予想より2年も早く、人口減少社会を迎えることになり、将来的な労働力減少、経済成長の鈍化、社会保障負担の増大等は、国力の著しい低下を招くことは必至だとの見方を示した。そうした状況下で猪口少子化担当相が「厳しい財政制約の中で十分な少子化対策予算を確保した」と主張しているが、平成18年度の新施策は、出産一時金の若干の引き上げ、支給水準の低い児童手当支給対象者の若干の拡大といった従来施策の「二番煎じ」のようなものばかりだと指摘した。「少子化担当を特命大臣として設けた割には、何ら緊迫感の感じられない内容だ」と苦言を呈したうえで森議員は、今後の少子化対策について「将来世代が、子どもを産み、育てる意欲が湧いてくるような強いメッセージであることを切に願う」として、猪口担当相の見解を質した。

 これに対して猪口担当相は「政府としては子ども子育て応援プランの推進のほか、少子化社会対策推進会議、および政府・与党協議会においてさらなる検討を進めている。関係省庁との連携はもとより、地方公共団体や民間企業への働きかけに就任以来奔走している」などと述べるに留まり、強いメッセージ性のある具体的取り組みは何ら語られなかった。

 森議員はまた、本法案が児童手当の拡充というよりも、実は三位一体に伴う国庫負担金の引下げが中心となっている点も指摘。真の地方分権を推進する改革であるならば、地方の裁量・自主性の幅を拡大するなかで、地域の実情に応じた施策を地方が競い合えるようなものとすべきだと提案した。同時に、日本の財政は危機的状況にあるとした森議員は、個々の行政サービスの効率化だけでなく、国が行う必要があるものを整理し、地方の裁量に委ねた方が効率的なサービスは、地方に税源移譲して効率化を図ることが求められるとも問題提起した。本来は、それこそが三位一体改革の目的でもあったはずだとの見方も示したうえで、行政が果たすべき役割についての基本理念を安倍官房長官に質した。

 安倍長官は「地方にできることは地方にとの観点から国は本来果たすべき役割を重点的に担い、住民に身近な行政はできるかぎり地方公共団体に委ねることを基本に役割分担することが必要。引き続きこうした観点から簡素で効率的な政府を目指す」などと答弁した。

 森議員はまた、昨年度は地方が望んでいない国民健康保険の国庫負担率を厚労省が引き下げたのに続き、本年度は児童手当、児童扶養手当、介護施設給付費の国庫負担率引下げを図ろうとしている点について、「小泉総理は地方の声を尊重するとこれまで繰り返し発言してきたが、これらの補助金削減は地方の意向に従ったものとは到底言えない」と批判。しかも、今回の児童手当などの国庫負担率引下げは、国の関与を縮小し、地方の裁量・自主性の幅を拡大するという三位一体改革の本来の趣旨を逸脱しており、4兆円の補助金改革を実現するための単なる数合わせに過ぎない点を明らかにした。
 
 さらに、児童手当の財源が、サラリーマン家庭の場合、支給対象児童が0歳〜3歳未満であれば次世代労働力確保の観点から児童手当の大部分は事業主から拠出金で賄われ、一方、3歳から小学校第3学年修了前の場合、全額公費で賄われ、事業主からの拠出金がないことになるなど、財源が複雑化している点を指摘。「背景には、児童手当の理念・目的が十分詰められないまま発足し、その後の財政事情や政治状況等によって制度が変遷してきたという歴史的な経緯がある」と森議員は言及。その結果、児童手当制度は理念・目的を見失い、「寄せ木細工」のような制度になってしまっていることを重ねて指摘した。

 そのうえで森議員は、民主党は政府の児童手当法等改正案への対案として「子ども手当法案」を提出したことを報告。子育てする者を社会全体で支援することの重要性を踏まえ、義務教育修了前の全児童を対象に、一人当たり月額1万6000円を支給するものであり、財源構成は複雑化した現行制度とは異なり、将来的には全額国庫負担で賄うこととしているとしたうえで、「この際今一度、制度の理念・目的を整理し、誰がどの程度負担すべきなのか、財源構成の在り方についても全額国庫負担で賄うことを基本に、制度を見直すべきではないか」と提案し、川崎厚労相の見解を質したが、明確な見解は示されなかった。

 また、平成16年度の年金制度改正において、基礎年金国庫負担割合は、平成21年度までに段階的に3分の1から2分の1に引き上げると法律上明記されたが、新たに必要となる2・5兆円のうちわずか3800億円が手当てされたにすぎず、まさに場当たり的な対応に終止している点を問題視した。

 森議員は「本来の三位一体改革は、地方に税源と権限を完全に移譲し、地方に自主性と効率性を促すことにより、国と地方の財政構造改革を共に実現していくことにある。そのためには、国からの補助金を原則廃止し、それに見合った税源を移譲することにより、真の意味での地方分権を実現していくことが不可欠である」と改めて主張。「生まれてくる子どもたちに親が負担を残すようなことでは、生まれてくる子どもたちがかわいそうでもあり、子どもを持つことが罪つくりにさえなりかねず、これでは少子化問題も根本的に解決しない」とも訴え指摘し、生まれてくる子どもたちが祖国に誇りを持てるような国にすることこそが、我々今を生きる者の務めであるとも宣言し、質問を締めくくった。
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