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2006/05/17
【衆院厚労委】古川・園田議員、負担・不安増の医療法案問題追及




衆議院厚生労働委員会で17日、医療制度改革関連法案について締めくくりの質疑を小泉首相の出席のもとで行った。民主党はあくまで「審議時間が短すぎる」「まだまだ審議が必要」と主張したが与党側は採決を強行。自民、公明両党の賛成多数で可決した。採決に先立ち、民主党・無所属クラブからは古川元久議員、園田康博議員、『次の内閣』ネクスト厚生労働大臣の仙谷由人議員が質問に立った。

 同法案では70歳以上で現役並みに所得のある人(夫婦世帯で年収約520万円以上、単身世帯で約380万円以上)の医療費窓口負担を今年10月に2割から3割に引き上げ、70〜74歳の人の負担割合を08年4月以降は2割にアップするとしており、国民の負担増は避けられない。また、慢性病患者が長期入院すると、療養病床(医療型、25万床)で、10月以降、70歳以上の入院患者の食住費が全額自己負担となる。さらには、高額療養費の自己負担限度額の定額部分を引き上げるなどとする内容。
 
 古川議員はまず、日本の医療制度をどう評価するか、日本の医療は国民のニーズに十分に応えているかについて、首相の現状認識を質した。首相は「相対的には先進的な医療体制が整備されている」と語ったが、重ねての質問には「人によっては不十分とする人もいる。すべての人に満足してもらえるとはいい難い」などとする見方を示した。古川議員の「小泉だからできた」と胸を張れる医療制度改革の成果はあるかとの問いにも、あいまいな答弁を繰り返すだけだった。そうした勢いもやる気も感じさせない答弁を受けて古川議員は、「郵政改革・道路公団改革と比べると、優先順位からすると低かったということか」と指摘。医療制度改革の入り口に手をつけただけにすぎないのに、さも大改革を断行したかのようなアピールを繰り返す首相の政治姿勢を批判し、「『医療費抑制ほど改革の本丸』とでも言えるのではないか」と述べ、目立っているのは医療費抑制のみだとした。
 
 続いて、医療費が今後激増して医療保険制度の破綻に繋がるとして、政府が医療制度改革断行の根拠として集計している医療費推計について質すと、首相は「どういう形で推計するか知らない」などと答弁。単に、過去数年間の伸び率平均をもとに今後の数年間の積み重ね(2年間であれば伸び率×2)を計算したに過ぎないものであるうえ、医療費の伸びをどう抑制するかという医療制度改革のそもそもの根拠となる数字であることを改めて指摘した古川議員は、「この1点をとっても到底この法案は裁決するようなものではない」「国民が求める医療の提供が実現するとは思えない」と指摘した。

 続いて質問に立った園田議員はまず、小泉首相の政治姿勢を批判。医療制度改革関連法案を最重要法案と位置づけていたにもかかわらず、まさにこの期に及んで委員会に出席した首相の態度を問題視し、「国民のいのちをつかさどる法案という認識があるのか疑わしい」「法案を採決しようという時点でおいでいただいても有り難くない」と厳しい口調で指摘した。法案の中身について首相が自ら示し、国民の理解を得ようとする思いも何ら見えないとの考えも示した。同時に「安心・安全の医療を提供するというからには国民が納得できる指針を示すのが普通だ」として、政府の不誠実な対応を重ねて批判。そうした指摘に対して首相は、「どの委員会に参加するかは国会にお決めいただいている」などとする開き直りとも言える答弁を繰り返すだけだった。その不誠実ぶりに園田議員は「しっかりと議論しなければいけない。30時間議論したからいいいうものではない」と重ねて主張した。
 
 園田議員はまた、医療提供体制の崩壊ともいえる危機的状況が全国各地に広がり、国民生活に大きな不安を与えていることを指摘し、小児科・産科・急性期医療における深刻な医師不足の実態を明らかにした。さらには、劣悪な労働条件下にある病院勤務医や看護婦がどんどん辞めて行く実態も問題視した。そのうえで園田議員は、医師不足の実態をいつごろ認識したかを質すと、首相は「厚生労働大臣時代に認識していた」としたうえで、「しかし過剰であるというのと、不足しているとの両方の意見がある。偏りがあるわけだ」などと答弁。そうした答弁も踏まえつつ、今回の法案にはそうした問題点是正に繋がる方針が何ら盛り込まれていないことを園田議員は批判し、再考の必要性を重ねて指摘した。

 「不明確な部分が多く、総理の認識も甘い。この法案を総理が強行(採決)させることによって国民の医療までぶり壊すことになりかねない」との懸念を園田議員は最後に表明し、質問を締めくくった。
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