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2005/07/22
【衆院国交委】菅前代表、官製談合問題めぐり厳しい追及繰り広げる


衆議院国土交通委員会が22日開かれ、民主党・無所属クラブから菅直人(前代表・『次の内閣』国土交通大臣)・中川治両衆院議員が質問に立ち、道路公団などをめぐる官製談合問題について、厳しく国交相や道路公団総裁らを追及した。

 菅議員は冒頭、アスベスト問題について、国土交通省所管の分野での早急な調査を求め、北側国交相の答弁を得た上で質問に入った。菅議員は、わが国が「官製談合国家と言える状態に陥っている」ことに強い懸念を表明し、「(膨大な財政赤字という)後世に大変な負担を残す、その最大の原因と言っても言い過ぎではない」との厳しい見方を示して、北側国交相の見解を質した。北側国交相は、官製談合は「決して許される話ではない」などとしたが、財政赤字のとの関連には否定的見解を述べ、危機意識の低さを露呈した。

 続いて、サラリーマン増税に走る政府・与党と、公共調達に切り込む民主党の違いを明快に説いた菅議員は、官製談合について、国民への責任という観点から、政治的な定義として、発注者(=役所)が安く買えるものをわざわざ高く買うことの問題点を指摘。北側国交相も「発注者としての責任」の所在を認めた。

 菅議員は、「コスト意識」などという第三者的な発言を繰り返す北側国交相を厳しく追及。談合に対する「天下りという見返り」についても、関係業界等への2年間の天下り禁止という条項が守られていない現状を厳しく指摘し、「所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た場合には、これを適用しない」との国家公務員法の例外規定を利用して、北側国交相がわずか10カ月で298名もの天下りを申し出て、認められている現状が明らかになった。「適正に再就職の手続きが行われている」などと苦しい弁明に終始した北側国交相に対し、当分は自粛する旨の答弁を菅議員は引き出した。

 また、道路公団談合問題について菅議員は、近藤総裁に対し、談合はなかったと信じている、といった総裁の発言を引いて、今でもその認識かを質した。近藤総裁は、「談合はあってはならない」などとしたため、その第三者的な発言を菅議員は厳しく批判。その上で菅議員は、「実効性のある提案」として、「天下りを受け入れた企業には発注はしない」ことを提案した。

 官製談合について見解を求められた猪瀬直樹参考人も、「落札率が97%や98%なら、これは官製談合だ」とし、コンクリートの橋やトンネル工事についても、「公取がやっていないだけでこれは談合だ」などと厳しい指摘を行った。

 そして、天下りをどのように止めさせるか、天下りの見返りを無くすためにどうするか、について菅議員は、民主党が、「再発防止策がとられるまでは、(道路公団の)民営化を凍結するとの法案」を提出したことを紹介した上で、更に民営化後の三会社の社長予定者に、道路公団関係者や談合に関わった会社の幹部がなっている点を厳しく追及。北側国交相に対して、「談合を止めさせるという姿勢と全く矛盾する決定だ」と迫り、国交相は、「この人本人は談合に関わっていない」などと苦しい弁明に終始した。菅議員は更に、「そういうことで国民は納得できるのか」として、人事案の撤回をすべきだとした。

 菅議員は、官製談合問題への北側国交相や近藤総裁の取り組みを、口では言っても、「実際にやれることを何一つやろうとしていない」と批判。官製談合阻止策として具体的に、当面の措置として天下った先には発注しないこと、公務員背任罪・公務員談合関与罪を設けること、天下り禁止の強化と退職勧奨を見直すことなどを提案。北側国交相に対して、後ろにいるのは役人ではなく納税者であり、「猫ばばの共犯」にならないよう、厳しく釘を刺して質問を終えた。

 菅議員に続いて質問に立った中川治衆院議員はまず 、いわゆるファミリー企業への天下りについて近藤道路公団総裁に対して質問。近藤総裁は、「ファミリー企業は受注者であり、現在は国交省の指導の下で、役員への天下りは避けるようにしている」と答弁した。これに対して中川議員は、社長や会長よりも給料の高い相談役があるという実態はおかしいと鋭く指摘した。

 次に中川議員は、国交省の昨年度の10億円以上の直轄事業における落札率を取り上げ、155件中145件が予定価格の90%以上の落札率(落札価格の予定価格に対する割合)であったことを示し、政府の見解を質した。これに対して国交省大臣官房長は、標準的な工法による単価を積み上げて計算していると答弁し、数字が示す癒着と談合の疑惑を無視した。議員は、今後とも資料を注意深く点検していくと述べ、問題を回避する答弁を牽制した。

 続けて中川議員は、その中でも旧運輸省関係の港湾および空港に関する入札31件の落札率がいずれも95%以上であること、加えて北海道開発局関係の入札の落札率も高率であることを指摘し、これらの数字は疑惑の存在を示すので調査すべきではないかと質した。これに対して官房長は、それだけでは疑惑があるとは言えないと強弁した。中川議員は更に、関係企業との関係について、橋梁疑惑などについて行ったのと同様の調査をすべきだと迫ったが、官房長は疑惑がないのに調査に協力を求めるのは困難だと消極的な答弁に終始した。

 中川議員は、国民は疑惑を持っているのでそれを晴らす必要があるとして、今後とも追及していくことを宣言して質問を終わった。
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