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2005/07/25
【参院郵政特】民営化の見通しの甘さなど厳しく追及 大塚・桜井議員


 参議院の郵政民営化に関する特別委員会で25日、民主党・新緑風会の大塚耕平・櫻井充両参議院議員が質問に立ち、竹中郵政民営化担当相はじめ関係大臣に対し厳しい追及を繰り広げた。

 大塚参院議員はまず、竹中担当相が以前示した答弁を踏まえ、「郵政改革の目的は民間部門から公的部門に必要以上に流れ過ぎている資金のパイプを細くすることか」を確認した上で、その内容が条文上どう担保されているかを質問。しかし竹中担当相は、条文の何条に明記されているか即答できず、再質問後に、「民営化法第109条に郵便貯金銀行の業務について列記されている。その中で段階的に業務を拡大し、官から民へお金が流れる道が開けていく」などと答弁した。しかし大塚議員は、第109条には地方公共団体や管理機構、郵政株式会社、郵便事業会社、郵便局会社等への貸付けは可能としているが、民間事業者への貸付けは明記されていない点を指摘。小泉首相のお題目である“官から民へ”を流れは法文上何ら担保されていないことを明らかにした。

 また、大塚議員は、「17年6月までに55項目が決定されなければ、2007年4月暫定システム稼動は不可能」とする内容を示した民営化情報システム検討会議の報告を踏まえて民営化後の金融システムに関して質問。質疑を通じて、システム確立は当面望めずに暫定的には手作業で行われ、現在でも3日後でないと現金収支が合わない状況も「2007年4月に対応できるよう検討している」だけで、具体的な金融システム確立への道筋は何ら担保されていないことが答弁からも明らかになり、現金収支が合わないような状態で、銀行や保険会社としてスタートさせることへの疑問、システム対応も暫定対応で可能であるとの説明は著しく説得力を欠くものであることが一層浮き彫りになった。

 大塚議員は質疑の自らのまとめとして最後に、(1)官から民へと言いながらマネーフローの構造上、官が占めるウェイトを引き下げる工夫や明確な条文が盛り込まれていない、(2)郵便事業は基本的公共サービスであり、金融事業は補完事業であるという郵政事業の創設当時の社会的意義は現在も変わることがないにも関わらず、そうした点への政策的配慮が全く欠けている内容となっている、(3)財務会計実務に関してはこれまで正確でなかったものを適正化する過程にあり、公会計に準拠した財務経理も行えない中で、更に進んで企業会計に準拠した民営化を一気に強行することは論理的・政策的に飛躍があり、説得力に欠ける、(4)他の法制との整合性の面でも、独禁法をはじめ様々な既存法制の例外を認めて民営化を行おうとするものであり、そこまで拙速に行う理由が不明確であるばかりでなく、既存の法制の枠組みや価値を劣化させるものであり、日本の関係法制をつくってきた立法府の諸先輩たちの努力を軽視する行動である――といった5項目を列挙。その上で大塚議員は、「法律自体不明確な点、未完成な点があり、このような粗雑な法律を通すことは、議会人としてできない」と訴え、質問を締めくくった。

 続いて櫻井充参院議員が質問に立ち、民営化によるコンビニの収益率9.2%、10年間でGDP1.5倍の成長などの楽観的数字の根拠を追及した。また、中央省庁等改革基本法33条に関して質問。答弁が食い違ったため、審議は中断、桜井議員のこの部分の質問は留保となった。

 櫻井議員はまず、「公的貯蓄機関がない先進国はあるのか」と質問。竹中担当相は、「アメリカ」と答え、桜井議員は、「ではそのアメリカで何が起こっているか」とし、金融排除、口座を持てない人が1100万人に上ることを挙げ、「これから日本も起こり得る。口座がないということは、年金の振込みもできない、クレジットカードも使えないということ」として、公的貯蓄機関の必要性があるのではないかと、改めて郵政民営化のそのものの是非を問うた。竹中担当相は「必要であると思っていない」と否定した。

 このため櫻井議員は、郵便局の果たしている社会福祉の分野での役割や、低所得者のための安全網となっていること、地域で独居老人への訪問などについて改めて指摘した上で、「ニュージーランドで民営化は成功したのか」、「ドイツでは郵便局の数はいくつになったのか」などと詰問。竹中担当相は、成功面もマイナス面もあったとし、数が減ったのは事実だが、主として東西ドイツ統合後、民営化前に減ったものだ、などと答えた。櫻井議員は、ドイツではユニバーサル法によって郵便局の数を決めたから郵便局数の低下に歯止めがかかったとして、数を法律で明記するよう求めた。しかし、竹中担当相は従来からの答弁に終始した。

 次にこの答弁を受け、櫻井議員は、「店舗数を決めないで、どうしてコンビニ事業や国際物流の利益率が出るのか。その根拠は」と質問した。竹中担当相は、「民間準拠」と答えるのみで、コンビニ事業で9.2%、国際物流は5%という利益率ついて何ら具体的な根拠は示さなかった。また櫻井議員は、従来、竹中大臣が不良債権の処理が終われば、貸付は増えるとしてきたことを取り上げ、実態は減り続けているとして、GDPが2007年から17年までの10年間で、1.5倍に成長する根拠を問うた。竹中担当相は、「計算式を用いて計算している。もちろん政策努力も入る」と答えたため、櫻井議員は、「政府の資料の数字がいい加減さは、いくらでもある。メチャクチャもいいところ。インチキな数字を出すのはもう止めて、実側を基にしないと多くの国民が苦しむ」と厳しく批判した。その上で17年の国民負担、所得額を明らかにするよう求めたが、谷垣財務相・尾辻厚労相・竹中担当相がそれぞれ、17年度の租税・社会保障負担額・所得額の数字はないと答えるなど、今回の郵政民営化に関する数字に何ら信憑性がないことが明らかになった。

 最後に櫻井議員は、中央省庁等改革基本法が基本法であること、基本法であるからにはその精神が大事であることを確認し、公社法にその精神が継承されるかを質した。その上で33条1項の6を改正せずに、民営化法案が提出できる根拠を問うたが、政府側の答弁が食い違ったため、しばしば審議は中断。結局、この部分の質問は留保となった。
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