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1999/05/24
参議院でガイドライン関連法案が可決・成立 民主党は周辺事態法案に反対・他2法案には賛成
日米防衛協力指針(ガイドライン)関連法案は24日午後、参議院日米防衛協力指針特別委員会で締めくくり総括質疑と採決が行われ、可決された後、参議院本会議に緊急上程され、自民・自由・公明3党などの賛成多数で可決、成立した。

 民主党・新緑風会は、関連3法案のうち、周辺事態の際の対米支援の内容を定めた「周辺事態法案」には、「船舶検査は国連決議を要件とし、憲法の範囲内での武器使用を担保させる」政府原案を復活させる内容の修正案を提出し、政府案・3会派修正案には反対した。

 また、在外邦人救出に自衛隊艦船の使用を認める「自衛隊法改正案」と、「日米物品役務相互提供協定(ACSA)改正案」には賛成した。


■日本の主体性に関わる事前協議の形骸化
 締め括り総括質疑で齋藤勁議員が追及

 24日午前の委員会締めくくり総括質疑で、民主党・新緑風会の齋藤勁議員が会派を代表して最後の質疑を行った。

 「冷戦終結後、アメリカの世界戦略の変化にともない、日米同盟の再定義が行われた」。齋藤勁議員はこのように指摘し、日米関係の質的変化をふまえて、日本は独自の判断が本当に可能かどうか、と政府を追及した。小渕首相は「両国が主体的に判断する」と従来の答弁を繰り返し、正面からの議論を最後まで避けた。

 齋藤議員は反論し、前回の審議でも追及した、「核搭載艦船の日本寄港」を裏付ける政府高官の書簡(72年6月17日付)がアメリカの公文書館から発見されたことについて再び言及し「日本が判断するといいながら、結局こういうところで事前協議の対象にしていない」と、あいまいな政府の態度を批判した。

 また竹内・外務省北米局長が、事前協議制度の改定問題について「日米間で話し合ったことはない」と否定したのに対し、齋藤議員は「97年、自・社・さ政権関係者が訪米した際、事前協議制度について話し合っている。アメリカ側から今後の運用は厳格にされるべきとの回答を得た」との事実を示し、日本の主体性に関わるこの問題を、政府が軽視していることを批判した。

 最後に齋藤議員は、日米安保の将来あるべき姿として「アジア・太平洋地域の多国間安全保障機構を志向すべき。今の日米同盟は、多国間安全保障をめざす中で過渡的なものととらえ、各種の安保対話を進める必要がある」と強調して質疑を終えた


■歯止めのない政府案
 委員会討論で木俣佳丈議員が主張

 午後からの委員会での採決前の討論で、民主党・新緑風会の木俣佳丈参議院議員は、まず「日米安全保障条約を支持し、日米防衛協力を進めることが日本の安全保障のために不可欠であり、ガイドライン関連法案の整備は基本的に必要である」との民主党の基本認識を表明。

 その上で、周辺事態法案に対する反対の理由として 1.日米間で合意した国連決議に基づく船舶検査活動が削除されており、法案として不完全 2.基本計画全体ではなく、自衛隊の一部活動のみを国会承認事項と規定し、自治体や民間協力に対する行き過ぎた協力要請に国会が歯止めをかけられない 3.周辺事態の定義や政府統一見解は拡大解釈の余地があり、専守防衛を大きく超えて自衛隊の活動領域に歯止めがかけられない−−−の3点をあげた。


■日本の主体性確保と国民生活への配慮不十分
 参院本会議・伊藤基隆議員が反対討論

 参議院本会議では、伊藤基隆参議院議員が登壇し、「日米防衛協力にあたっては、わが国の主体性確保と国民生活に対する配慮を法律で規定することが必要だが、周辺事態法案はこうした点が不十分」と主張。さらに、「自民・自由・公明の3会派が各々の党利党略を最優先させ、ガイドライン審議を政策論争でなく政局論争におとしめたのは残念」と述べ、「国の根幹の安全保障を政争の具に使ったことは国民の不信を招き、同盟国である米国や国際社会から冷ややかな眼差しで見られる」と批判した。
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