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1999/12/14
定数削減・政党への企業献金継続/採決は無効、審議はやり直し 〜またも与党の暴挙・採決強行に衆院議長が「裁定」
国会最終盤を迎え、審議方法をめぐり与野党が厳しく対立していた衆議院の政治倫理・公選法改正特別委員会で14日、自民・公明の両党が衆院比例代表定数を20削減する公選法改正案と、政党への企業団体献金を存続させる政治資金規正法改正案で、「この日は採決をしない」との理事会の合意を破って採決を強行した。しかし、伊藤宗一郎衆院議長の裁定で2法案は議長預かりとなり、事実上採決無効・審議やり直しとなった。

 また委員会の冒頭、民主党と与党が先週合意していた来年1月からの政治家個人への企業団体献金を禁止する政治資金規正法改正案(付則9条の実施)は切り離して採決され、全会一致で可決。同日午後11時20分からの衆院本会議でも全会一致で可決、参議院に送られ、15日の会期末までに成立する見通しとなった。


 民主党は共産、社民両党との野党共闘姿勢を崩さず、緊密に連絡を取り合って、与党側に対抗してきた。同特別委員会の日程を決める理事会では、(1)政治資金規正法付則9条の「政治家個人への企業団体献金の来年1月からの禁止」を先行して採決する(2)そのあとで同法付則10条関係の議員立法3法案を審議する(3)衆院の比例定数20削減は、与野党の協議が整わないうちに採決をすべきではない――と主張。堀込征雄、中桐伸五両理事が「3法案を一括して採決したい」などとする与党側と断続的に協議を続けてきたが折り合わず、10日と13日に予定された委員会は開かれないまま2度にわたって流会した。

 14日、参院本会議で補正予算関連の中小企業対策法が成立したのを受けて、同委の理事会で(1)すでに合意した付則9条の委員長提案により採決する(2)政治資金規正法に関わる3法案(民主、共産、自民提出)の提案理由説明を行い、それに関わる審議を行う(3)今日は採決はしない――ことを委員長と与野党の理事が了解して、審議に入った。

 ところが、審議開始から2時間たった午後9時過ぎ、民主党の松本龍議員ら野党議員の質疑が終了したところで、自民党議員が突然質疑打ち切り・採決を求める緊急動議を出そうと立ち上がった途端、野党議員が委員長席に駆け寄り、委員会室は大混乱に陥った。委員長の発言などが全く聞き取れない中、与党側の議員は、バンザイのような動作を繰り返し、採決が行われたとして退席した。


●連立維持のための国会私物化は許せない

 野党3党はこの後、直ちに伊藤衆院議長に採決の無効を申し入れた。続いて開かれた党代議士会で堀込理事は経緯を説明しながら「議会制度の根幹に関わる議員定数のあり方を決める場所が、与党の暴挙によって壊されたことは納得できない」と憤りを露わにし、羽田孜幹事長は「皆さんとともに心から怒りを感じている。自自公の連立維持のために天下の公器である国会を私物化したのは許せない」と与党の暴挙を厳しく批判した。

 この後10時20分、伊藤議長は与野党6党の国対委員長を議長室に集め、「国会議員の各々の政治資金や政治活動に関わる問題は各党間の協議が整うことを願っていたが、依然として結論が出ていない」とした上で、(1)政治資金規正法付則10条関連法案と定数削減法案については、議長預かりとしたい。今後審議が継続できるよう与野党は互譲の精神で取り組むようお願いしたい。(2)政治資金規正法付則9条関連法案は、本日(14日)の本会議で議了させたい――との裁定を出し、与野党ともこれを受け入れた。

 民主党の川端達夫国会対策委員長は、この後共産党の穀田国対委員長、社民党の前島院内総務とともに国会内で記者会見し、議長裁定で与党の採決強行に断が下されたことから「小渕内閣への不信の気持ちは当然のことだが、不信任案を今の時点で出すことは控えることで3野党が一致した」と述べた。

 また、与党側で取りざたされた会期延長問題について川端委員長は、付則9条関係の政治資金規正法改正案が成立することで「衆参両院で(処理すべき)法案がなくなり、15日で閉会するという裁定であり、現実にそれ以外の選択はないと認識している」と強調した。
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