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1999/11/02
衆院本会議で鳩山代表が代表質問 「モラルハザード政権の継続は国民の不幸」


衆議院本会議で2日、小渕首相の所信表明に対する各会派の代表質問が行われた。民主党から鳩山由紀夫代表が質問に立ち、民主党の理念と政策を表明しながら、自自公連立政権の諸政策について批判し、論戦の火ぶたを切った。

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 鳩山代表はまず、「自自公の迷走ぶりは『総保守』どころか、党利党略と利権擁護に奔走し、改革を先送りする『権益保守』としか言いようがない」と指摘。「機会の平等を保障し、自立した個人が公正・透明な市場競争を行う社会」「自己を律する倫理観をしっかりと身につけたたくましい個人を育てていく」などの「ニューリベラル」の考えを提示した。

 その上で、「昨今の政治には倫理の片鱗さえ見えず、巨大なモラルハザードを作りだしている様相すら見える」と述べ、1.国民への約束を反故にする企業団体献金の存続 2.西村前防衛政務次官のモラル以前の暴言 3.リクルート収賄事件に関する藤波議員に対する有罪判決と議員辞職についての無責任な態度 4.相次ぐ防衛庁不正事件などへのいい加減な対応−−など、自自公連立政権の「モラルハザード」ぶりを列挙した。

 特に鳩山代表は、かつて「宗教団体と密接な関係を持つ政党が政権中枢に座り、権力を行使することへの危惧」を表明していた河野外相を名指しし、公明党の政権参加についての説明を求めたのに対し、河野外相は「今日の状況で私の持っている危惧はなくなった」と開き直った。

 また、平成6年1月に当時の細川首相と、「政治家の資金管理団体への企業・団体献金を5年間の猶予付きで禁止」することを合意した当時の自民党総裁であった河野外相に、「5年前の合意内容をお忘れになったのか、あるいは変節されたのか」との問いただしたが「党で改めて検討された。自民党の国会議員として党の決定に従うのは当然」と責任逃れ。小渕首相も「各党各会派でのご議論を」との紋切り型の答弁で、リーダーシップを示そうとはしなかった。

 また企業団体献金禁止を主張している公明党から入閣した続総務庁長官も「与野党協議の推移を見守りたい」と述べるにとどまった。 

●介護保険料凍結は国民を愚弄する暴挙

 次に鳩山代表は、介護保険制度の保険料徴収凍結など制度の骨格を変える自自公の合意を「明らかな選挙対策」「国民を愚弄する暴挙」と厳しい口調で批判。家族介護に対する慰労金についても、「介護の目的も理念も全て吹っ飛んだ何でもありのバラマキ福祉で、福祉版地域振興券」と指弾した。

 これに対し、小渕首相は「与党3党の合意は法改正を行わないことを前提に合意されたものと理解しており、予定通り来年4月からの実施に向けて万全を期す」と答弁。丹羽厚相は「政府としては給付と負担の関係が明確な保険方式で運営することが前提で、ただちに税方式に移行することは考えていない」と答え、3党合意内容との微妙な食い違いを見せた。

 財政・金融政策について、鳩山代表は「構造改革なき一時しのぎの財政出動はもはややめるべき」と主張し、公共事業のバラマキは「日本経済の背骨をへし折りかねない」と警鐘を鳴らした。また特別公的管理銀行になり米国の投資会社に譲渡される長銀への4兆円を超える公的資金投入に対して、「巨額のコストを国民に押し付けた責任をどう感じているのか」と小渕首相に迫った。これに対し首相は「預金者保護、金融システム保護のためにやむをえない」とするだけで、自らの責任には触れなかった。

 また鳩山代表は経済構造改革にテーマを移し、「国民の生活実感は更に悪化している」と政府が示す経済成長プラス発表に反論。「自民党政治の本質は政官業の甘えた構造の上に立った相変わらずの利益誘導政治。日本経済の再生のためには、まずその構造を打破しなければならない」と主張した。

 政府与党の中小企業政策についても、「民主党の提起したベンチャー支援のためのエンジェル税制などをことごとく無視したもの。それに取り組まずして『中小企業国会』などと銘打つ政府の姿勢はまやかし以外の何物でもない」と厳しい口調で責め立て、中小企業借入の金融安定化特別保証枠の追加についても「丼勘定で、構造改革に逆行する」と批判した。

 また、東海村での臨界事故について、鳩山代表が政府の対応の遅れを非難したのに対し、小渕首相は「政府の体制に改善の余地があるのは事実」と反省の弁を述べた。また鳩山代表が、「安全に関するチェック機構であるはず原子力安全委員会が全く機能していない」として、強い権限を持った完全な独立機関の設置を提案したのに対し、首相は「内閣府の中で独立した機能を果たせるように整備していく」と答えるにとどまった。

 コンピュータ2000年問題に関しては、鳩山代表が「全てを予測することは不可能だからこそ最悪の状況を想定して対策を講じることが危機管理だ」として、「不測の事態は生じないと断言できるか」と政府の取り組みをただしたが、小渕首相の答弁は「引き続き万全を期す」と、かみ合わなかった。
 この日閣議決定されたオウム対策法案について、鳩山代表は「国会公安委員会に一元化した体制で対処すべき」として、政府案にある公安調査庁の役割に疑義を呈した。

 鳩山代表は最後に、度重なる警察や防衛庁などの不祥事をあげ、「国民はいま『社会の再生』を成し遂げる力強いリーダシップと真摯な責任意識の確立を求めている」「モラルハザード政権がこれ以上続くことはまさに国民の不幸」と述べ、一日も早い解散総選挙を求めて、質問を終えた。

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 参議院本会議では、4日に代表質問が行われ、民主党新緑風会から寺崎昭久、直嶋正行両参議院議員が質問に立つ。

 衆議院本会議後、菅直人政調会長が国会内で記者会見し、この日の鳩山代表の代表質問について「ポイントをついたいい質問だった」と評価。政府側の答弁については「無責任で、政治家として当事者能力を失ったような答弁ばかりで残念」と批判した。
関連URL
  第146臨時国会民主党代表質問(鳩山代表)
 http://www.dpj.or.jp/news/?num=11530
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