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1999/11/26
<衆院厚生委>年金改革法案 自自公が一方的に強行採決 議会制民主主義踏みにじる運営、野党は身を挺して抵抗
給付水準の引き下げを柱とする年金改革関連法案を審議している衆議院厚生委員会で26日、自民・自由・公明の与党3党が強行採決に踏み切った。民主党は、共産、社民両党とともに激しく抵抗、委員長席に詰め寄ったが、江口一雄委員長は衛視に囲まれながら、怒号の中、与党側の動議や修正案説明を聞かないまま議事を進めていた。これに対して、野党側は採決はあくまで無効だと主張している。


 この日は朝9時30分から同委員会の理事会が開かれようとしたが、野党側は25日に江口委員長が強引に今日の採決日程を決めたことに反発し、民主党の金田誠一、山本孝史両理事ら野党側の4人の理事が着席せずに、「審議は尽くされておらず、採決は認められない」と猛烈に抗議し、日程の白紙撤回を強く求めた。

 理事会室の外側廊下には、民主党の若手議員などがびっしり集結し、衛視ともみ合いながら、強引に委員会を始めようとする江口委員長を制止しようと汗だくになって抗議行動を続け、委員長は1時間以上缶詰状態に。その中で、自民党の厚生委理事の衛藤晟一議員が、廊下にいた民主党の今田保典議員を恫喝し、さらに腹部を殴りつけるという暴行をはたらき、理事会室の周囲はしばし騒然となった。

 その後、江口委員長は衛視に支えられ、委員会室になだれ込んだが、野党側議員が委員長席を囲んで猛烈に抗議したため、委員長は委員会の開会を宣言したものの、直ちに休憩とした。

 こうした中で、野党3党の国会対策責任者は伊藤衆院議長に対し、採決日程を撤回し、円満な運営に努力するよう要請。議長は「円満な運営が大事だ。誠実に努力する」と述べた。

 この後、与野党の国会対策委員長会談が断続的に開かれ、野党側が「まず、委員会の採決日程を取り消し、委員会の理事会で改めて今後の日程を協議すべきだ」と強く求めたが、与党側は「きょうの採決を行うかどうかも含めて、国会対策委員長で協議したい」と繰り返すだけで、結局話し合いはつかなかった。

 この間、与党側は委員会室で待機している野党側議員に「自民党と民主党が裏で話をつけている」などと卑劣なデマを流したり、「与野党の第一党でまず話し合おう」などと働きかけ、野党を分断する工作を試みたが、3野党が緊密な連絡を取り合って対応したため、いずれも不発に終わった。

 このため、江口委員長は午後6時過ぎ、再度衛視に囲まれて委員会室に入り、野党側が委員長を取り囲むなど猛烈に抗議する中で、与党側の発言すら聞き取れない状態で強引に議事を進め、一方的に法案は可決したと宣言した。

 この後、野党3党の国会対策責任者は国会内で記者会見し、この強行採決に対し、与党が採決を撤回しない限り、週明け以降の衆参両院の本会議、全委員会の審議には応じない方針を表明した。民主党の川端達夫国対委員長は、強行採決を「議会の役割を忘れた許しがたい暴挙」と批判した。
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