ニュース
ニュース
1999/08/09
国旗国歌法案が参議院で可決・成立/最後まで懸念残った教育現場への影響
 日の丸を国旗、君が代を国歌とする国旗・国歌法が9日、参議院本会議で可決・成立した。
 民主党は衆院と同様、君が代を法制化の対象から外し、日の丸を国旗と定めるだけの修正案を提出したが賛成少数で否決され、政府案には各議員それぞれの意思による自由投票で臨んだ。午後からの参院本会議での民主党・新緑風会所属議員の投票内訳は賛成20、反対31、棄権5だった。
 国会での実質審議は計12日間、延長国会入り後の法案提出、会期末直前の採決など、法案審議の拙速さが最後まで目立った。

 参院国旗・国歌特別委員会では9日、中央公聴会と、小渕首相も出席しての締めくくり総括質疑が行われた。
 午前の公聴会では、民主党・新緑風会推薦の石川真澄・元朝日新聞編集委員など4人が意見を述べた。
 石川氏は「植民地であった朝鮮半島の人々に対する想像力が必要ではないか。先日も学校現場で職務命令に従わないことを理由に教師が処分された。日本ではお上にまつろわぬ人々を排除する政治文化がある」と性急な法制化に反対した。
 民主党・新緑風会からは竹村泰子議員が「侵略戦争の旗印、天皇制の讃歌であった日の丸、君が代がそのまま法制化されることが許されるのか」と質問。石川氏は「法制化で在日の人が社会的に強制されないか危惧する。戦前からの継続性を選択したことに賛成できない」と述べた。
 また教育現場への影響について、石川氏は「この10年で学習指導要領の記述が変わったが、国会を通過したわけでもないのに法規として扱われている」と現場での指導が強化される可能性を指摘した。

 締めくくり総括質疑で、民主党・新緑風会のしんがりとして質問に立った足立良平議員は「国民統合の象徴としてなぜ国旗・国歌が必要なのか、総理の言葉として響いてこない」「2月25日の参院予算委員会で、総理は法制化を明確に否定しながらその1週間後、法制化の検討を野中官房長官に指示した。いかかなものか」と追及した。
 小渕首相は「当初は諸般の情勢から法案化を控えていたが、法制化が望ましいとは考えていた。“よくよく考えた結果”法案を提出した。法的根拠がない、という教育現場における議論も踏まえた」と答えたが、足立議員は「提案理由になってない。結局野中長官と話し合って方針転換したとしか思えない」と小渕首相のご都合主義を批判した。
 また「君が代」の「君」の解釈について、足立議員は「政府は従来慎重に避けてきたが、今回初めて明確に“象徴天皇”とした。政府による明確な統一見解は行うべきでない。国民それぞれの思いがあっていい」と、法制化に際して国民の大多数が納得し定着させるためのコンセンサスが無視されたことを非難した。
 全質疑を終え、採決に先立って、江田五月議員が民主党・新緑風会の修正案(以下民主案)を趣旨説明した。挙手採決の結果、民主案は賛成少数で否決。続けて政府案には自民、自由、公明、参議院の会に加えて、民主党委員6人のうち3人が政府案に賛成した。

 午後1時開会予定の参院本会議は、民主党・新緑風会など野党会派が本会議採決に難色を示して議院運営委員会で断続的な協議を続けたため、大幅にずれ込み3時すぎの開会となった。
 民主、政府両案が緊急上程され、峰崎直樹議員が民主党案の趣旨説明を行った。会派としての賛否を決めなかった民主党以外の各会派代表の討論が行われたあと、採決があり民主党案は54対185で否決。続いて政府案が166対71で可決、成立した。
記事を印刷する