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1999/08/09
参院法務委 「盗聴法案」自自公が強行採決/民主党=採決は不存在・法案差し戻しを要求
 通信傍受(盗聴)法案など組織犯罪対策3法案を審議している参議院法務委員会は9日夜、荒木清寛委員長(公明)が、民主党・新緑風会の円より子議員の質問中に自民党議員の動議を受けて一方的に審議を打ち切り、衆院同様に「数の暴力」で強行採決に踏み切った。民主党・共産党・社民党・参議院の会はこれに抗議し、同日、斎藤十朗参議院議長に対し、各会派の参院幹事長、国対委員長が「法務委員会は異常な事態での議事進行であり、採決は不存在」として、法案を委員会に差し戻して審議をやり直すよう申し入れた。暴挙に出た自民・自由・公明側は「採決は成立した」と強弁している。

 参院議院運営委員会では10日朝から、採決の正否をめぐって断続的に与野党の協議が続けられているが、受け入れられない場合は民主党・新緑風会は荒木委員長の解任決議案を参議院に提出する方針。

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 この日の委員会は、理事会の合意のないまま、荒木委員長が職権で強行開催したもの。参院分館4階の第43委員室には、民主党・新緑風会所属の全議員など与野党の議員100人近くが委員席を取り囲んで傍聴した。野党の法務委員の一部は着席せずに、強行開催に抗議の意思を示し、異様な雰囲気の中で審議はスタート。

 午後8時過ぎ、円より子議員が質疑に立ち、まず委員会の強行開催に強く抗議し、「私たちの意志に反した委員会だが、委員長が強行採決などをしないよう、国民の怒りを代表して出席した」と表明。続いて、「要求した総理出席の総括質疑や、通産、郵政、自治大臣出席の連合審査のいずれも実現していない」と荒木委員長の委員会運営を批判するとともに、憲法59条第4項の参議院の「みなし否決」規定を盾に、採決を迫る与党側を「脅迫であり、国民軽視と非難されるべき」と牽制した。

 円議員はさらに、これまでの審議の中で明らかになった盗聴法の問題点を列挙。“通信傍受法があればオウム事件は防げた”との陣内法相発言を「国民の不安をあおることによって法案の必要性を印象づける卑劣なやり方」と断じ、また政府側が法案成立を急ぐ理由とする国際的な要請についても、「国際組織犯罪条約はまだ審議中で採択されていない」「条約の内容が確定していないのに国内法整備を急ぐのはおかしい」と批判した。

 午後8時50分頃、円議員が再度、小渕総理への総括質疑を要求し、理事懇談会を開くよう迫り、荒木委員長が「今はできない」と青ざめながら言葉を詰まらせた瞬間、突然鈴木正孝議員(自民)が手をあげ質疑打ち切り動議を出した。一斉に与野党議員が委員長席に詰め寄り、大混乱となった。その後、荒木委員長の議事進行は全く聞こえず、そのまま衛視に囲まれて公明党の議員控室に逃げこんだ。

 強行採決を受けて、民主党・新緑風会は参議院議員総会を開き、今後の対応を協議。駆け付けた菅代表と羽田幹事長は「皆さんの怒りをもっての行動は国民に理解される」と激励した。

 また角田義一参院幹事長は「委員長職権で決めた質疑さえさせない委員長は辞めてもらうしかない。この暴挙はぜったい許せない」、本岡昭次参院議員会長は「民主党の理事の質問中に審議を打ち切るのは野党第一党である民主党に対する挑戦だ。強い憤りをもって今後に臨む」と述べ、それぞれ自自公三党に対して怒りをあらわにした。

 その後、北澤俊美参院国対委員長が共産、社民両党の国対委員長とともに記者会見し、「審議すればするほど法案の欠陥が明らかになった。この法案はこの国会で成立すべきものではない」と述べた。


★民主党は10日午後4時から衆議院第2議員会館第1会議室で、盗聴法強行採決に抗議する「緊急集会」を開催し、その後午後5時30分から東京・新橋駅ゆりかもめ口で街頭演説を行う。
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