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2002/02/06
小泉首相の施政方針演説に対する代表質問(鳩山代表)
第154通常国会代表質問
小泉首相の施政方針演説に対する代表質問
鳩山由紀夫

(はじめに)

 私は、民主党・無所属クラブを代表し、総理の施政方針に対して質問するとともに、私の所信の表明を行います。とりわけ、私は、小泉内閣に決定的に欠けている説明責任と結果責任について厳しく質します。

 2002年は、昨年末の愛子内親王殿下のご誕生を受け、国民にとって喜ばしい年となるはずでした。
 しかし、小泉内閣が今日国民にもたらしたものは、「日本売り」という最悪のシナリオの到来であり、現在と将来に対する強い不安でしかなかったのです。このようなときだけに、私は、総理の施政方針演説に注目していました。しかし、それは、なんと事なかれ主義に覆われた官僚の作文そのものではありませんか。そこには、差し迫まる危機に対する緊張感もなく、経済再生の見通しも処方箋も示されていません。
 政治決断が求められる医療制度改革やBSE問題に対する覚悟と責任も欠けており、あれほど世間を騒がせたアフガニスタン復興支援会議におけるNGO拒否問題についての言及もなく、緊急事態法制については基本方針すら見えないままでした。
 総理、あなたには、物事を直視し、それと真剣に向き合うという姿勢が根本的に欠けているのではありませんか。私は、強い失望を感じています。


(NGO出席拒否問題、何故、真相解明しないのか)

 その第一は、抵抗勢力と手を握って行った田中真紀子外務大臣の更迭問題です。私は、昨年末と今年の初め、パキスタン、アフガニスタン、そしてインドを訪問しました。これらの国々を訪れて、私は、改めて、世界はいま国際協力と多くのNGOの活動によって支えられていることを強く感じました。先のアフガニスタン復興支援会議は、まさに、こうした歴史の大きな流れを受けたきわめて重要な会議であったはずです。ところが、外務省幹部による恣意的なNGO参加拒否に対して、世界各国から集ったNGOのリーダーたちは、口々に「排除はヨーロッパではあり得ないこと」と言い、その旧い体質に驚いたのであります。
 一体どのような理由で、NGOの参加を決断した田中真紀子大臣を更迭したのでしょうか。行政的責任ですか、それとも政治的責任ですか、明確にお答え下さい。また、NGOの参加拒否を決定したのは誰であり、どのような権限に基づくものか、国民の税金をあたかも政治家の金でもあるかのような発言をしたとされる鈴木宗男議員が外務省の誰に、どんな内容の働きかけをしたのか。また、それらの真実を追及し、国民に伝えるために、私たちが要求している田中真紀子前大臣、鈴木宗男前議院運営委員長、野上義二事務次官、NGOの大西健丞氏の参考人招致要請に賛同しますか。すべて総理に伺います。
 ところで、聞くところによると、官僚出身の川口さんが新しい外務大臣に就任したことに、外務官僚は大喜びしたといいます。その川口新大臣をして、一体、どうやって外務省改革を進めていくつもりなのですか。既にトーンダウンしているではありませんか。


(小泉総理は、外務省の隠蔽体質に加担している)

 私は、このたびの出来事は、鈴木宗男議員や外務官僚の根強い「官尊民卑」意識の現れだと受け止めています。そもそも、国民が、あなたに期待したのは、こうした旧い体質を変革することでありました。にもかかわらず、事もあろうに、森前総理や青木参議院幹事長と結託して、あなたは外務省改革に立ち向かう田中外務大臣を更迭し、外交機密費・官房機密費問題、さらにはODAをめぐる利権問題にフタをしようとしたのです。あなたが手を組んだこれらの政治家たちは、密室談合で森総理を決めたあの「五人組」そっくりではありませんか。
 国民はあなたのその決定の中に、昨年以来、道路公団問題等で抵抗勢力に屈し、妥協を続けた姿を重ね合わせて失望し、さらには、あなた自身が自民党の旧い政治家と同類なのだと見抜き始めています。そのことが、支持率の急落につながったのです。あなたは、今回の騒ぎで「一番傷ついたのは自分だ」と、予算委員会で答弁しました。しかし、最も傷ついたのは、「自民党をつぶす」と言ったあなたに期待した国民だということにどうして気づかないのですか。
 私は、小泉総理が自民党内の抵抗勢力と対決し、「国民にとって必要な構造改革を断行するのであれば、協力する用意がある」とまで言ったことがあります。しかし同時に、もし総理が改革にひるみ、抵抗勢力に屈することがあるならば、その時には「あなたの首を取らなくてはいけない」と申し上げたのであります。いま、まさに、その時だと言わねばなりません。 


(日本経済はいま、未曾有の危機に直面している)

 日本は、いま未曾有の危機の局面を迎えています。小泉総理がどんなに声を大きくして改革を叫んでも一向に事態は改善していません。そして何よりも、最大の危機は、政府にこの事態に対する危機意識が欠けていることです。
 私は、小泉総理との最初の党首討論で、「不良債権処理をスピーディに推し進めることが日本経済再生の決め手である。したがって、その正確な実態を把握し、国民に知らせることが肝心だ」と指摘しました。しかし、総理はその圧倒的な支持率に奢って、真摯な答弁もせず、逃げ回ったのではありませんか。まさに、今日の経済不況は、総理自身の危機認識の欠如が生んだ「経済無策」の結果と断ぜざるをえません。
 官僚政治や自民党的なるものとの妥協を繰り返す小泉総理の口先改革論にマーケットは明確に「ノー」を突きつけています。株安・円安・債券安のトリプル安が進行し、マーケットは大規模な「日本売り」を始めています。株価は1万円を大きく割り込み、バブル崩壊後最安値を更新しました。わが国はいまや、金融不安がトリプル安を招き、さらにトリプル安が金融不安を増幅させて「日本売り」を加速させるという悪循環、すなわち「小泉スパイラル」に陥っているのです。総理は施政方針で「デフレスパイラルに陥ることを回避するための細心の注意を払う」としていますが、このような事態を招いた経済無策に対する責任と併せて、その具体的な処方箋をお聞かせ願います。


(経済危機と財政危機にどう立ち向かうのか)

 総理は、初めての所信表明演説で、「米百俵」の精神を説き、構造改革に取り組む姿勢を示しました。しかし、今国会では、昨年秋の臨時国会であれほど考えてないと強調していた第2次補正予算を、「うまいへそくりがあった」と無邪気に喜びながら、臆面もなく提出された。今の痛みに耐えて明日をよくしようという「米百俵」の精神と、明日の借金返済のためにとっておかなければならないおカネに安易に飛びついてしまう神経は、まったく矛盾しているではありませんか。「米百俵」の精神も単に国民を惑わす話だったのでしようか。総理の考えをお聞かせ願います。
 さらに、総理は、需要追加型の政策とは決別すると宣言したにもかかわらず、なぜ、需要追加型の第2次補正予算を組んだのでしょうか。総理がもし政策転換をしたのであれば、はっきりとそう宣言すべきではありませんか。
 私は、小泉総理の経済政策は、口先で改革をうたい、実態はこれまでと同じ自民党の既得権擁護政策だと思います。具体例をあげましょう。来年度予算の省庁別シェアや公共事業のシェアは、昨年度当初の小渕総理の予算、今年度当初の森総理の予算とほとんど変わりありません。川辺川ダムなどの無駄な公共事業も予算計上されています。施政方針では「中小企業を積極的に応援する」と言いながら、関連予算は削減するという矛盾したことをやっています。本質的な部分は全く変わっていないのです。小手先の「改革もどき」なのです。総理に反論があればお聞きします。
 もっと悪いことは、小泉総理の予算編成は、数字あわせのため借金先送りや隠れ借金などの会計操作を行い、財政をますます不透明なものにしていることです。来年度予算では1.5兆円もの隠れ借金が復活しているではありませんか。過去、財政再建に失敗した多くの国が、このような誤りを犯しています。総理も同じ轍を踏もうというのでしょうか。ご見解をお聞かせ下さい。


(個人消費に元気を取り戻すことが重要だ)

 いま、日本経済再生を図るためには、徹底した不良債権処理を進めて金融再生を確実にするとともに、家計における個人消費を活性化させることが不可欠です。しかし、小泉内閣は、いの一番に支援すべき勤労者世帯に痛みをどんどん押しつけるという完全に逆の政策を採り続けています。
 私は、業界支援中心の経済政策に終止符を打ち、勤労者・自営業者世帯の生活を全面的に支援する家計支援型の経済雇用政策をとることが何よりも必要だと考えています。すなわち、従来型公共事業に使われてきた予算を大幅に見直し、福祉・教育・環境など国民生活の質を支える分野へと切り替えるといった大胆な政府予算の組み替えを実行すること、また、住宅ローン減税や教育費負担軽減など実施して消費を促進すること、そして、年金・医療など社会保障制度の充実や雇用機会の確保に全力を挙げて不安を取り除き、家計の行動が貯蓄ではなく消費へと向かうように支援することです。
 2002年度政府予算案には、そうした思い切った資源配分の切り替えは全く見られません。このことによっても、小泉内閣が旧い利権配分型予算の構造改革に完全に失敗していることは明らかです。総理、これに反論できますか。


(これ以上、「骨抜き内閣」に任せる訳にはいかない)

 道路四公団の改革は第三者機関に丸投げされてしまいました。しかも第三者機関には、個別路線の優先順位の決定権を持たせず、路線の選定も国土交通省に任せるというのは、族議員に全て任せるという「骨抜き」です。
 道路特定財源の一般財源化の見直しも言葉だけで、いかにも改革を装う小泉流ゴマカシそのものです。民主党はそのすべての「一般財源化」を決めていますが、小泉総理は、抵抗勢力が本気で抵抗しなくても済むほどのところに巧みに着地させました。小泉総理、あなたがやっていることは、ことごとく抵抗勢力との手打ちではありませんか。道路特定財源の一般財源化に踏み込まない理由は何か、総理の明快な答弁を求めます。


(金融再生は待ったなしである)

 98年の金融国会において、わが党が提案した金融再生法が成立したとき、金融行政は変わるかもしれないという期待感が広まりました。しかし、その後の金融行政はまったくその期待を裏切るものでした。銀行業界とのもたれ合い体質から脱却できずに、不良債権の真の実態を隠蔽したことが、問題をさらに深刻化させたのです。これまで33兆円もの巨額の公的資金を使いながら、金融再生に失敗した柳沢金融担当大臣については、即刻責任をとってお辞めいただかなくてはなりません。総理、いかがですか。
 わが国の金融は、いまや、断崖絶壁に立っていると言っても過言ではありません。総理は、現時点では資本注入は必要ないが、万が一の場合は大胆かつ柔軟に対応するという意思を表明されております。万が一とはどういうことでしょうか。政府や銀行の表向きの発表では、大手行の自己資本比率は10%以上あるということになっています。それだけ健全な銀行に、今後資本注入を行う必要が生じてくるかもしれないというのであれば、どういう理屈でそうなるのでしょうか。総理、はっきりとした原理原則をお示し願います。


(民主党は金融再生プランを提案している)

 民主党は、先日、真の金融システム再生のための最終手段として、「金融再生ファイナルプラン」を発表しました。すなわち、緊急一斉検査を実施して不良債権の真の実態を明らかにし、債務超過の銀行は一時国有化、過少資本の銀行には経営者や株主の責任を明確にした上で資本注入を行い、速やかに金融システムを健全化するというものです。そして、一時国有化した銀行の中から中小企業向け融資に特化した銀行をつくり出し、間接金融市場の構造改革も実現しようという考えも盛り込んでいます。全国の中小企業が成立を求めている、不当な貸し渋りなどを許さないための「地域金融円滑化法」とあわせて法案提出を進めています。銀行業界とのなれ合い、もたれ合い体質に浸かった自民党政権、さらには銀行族と言われている小泉総理の下では、真の金融再生はできないこと、そしてそれができるのが民主党であることを、強く訴えます。


(「温かい構造改革」の推進こそが必要だ)

 12月の完全失業率は5.6%に達し、まもなく6%失業の時代に突入しつつあります。完全失業者数は337万人で、しかも、非自発的失業者、すなわち倒産・リストラ等による失業者が過去最高の125万人を記録しています。総理は青木建設倒産の報を受け、「構造改革が進んでいる証拠」と、あたかも好ましい事態だと言わんばかりのコメントを発しました。そこで起こった倒産、失業といった不幸な出来事に対する思いやりのない言葉に、私は「この人には温かい血が流れていないのか」と背筋が寒くなりました。
 自殺者は年間3万2000人にも達し、なかでも会社破産やリストラを苦にする一家の大黒柱の自殺が増えています。さらに、路上生活をするホームレスの人々が2万4000人にも達し、就労を求めても仕事が見つからないのが現実です。 私は、先日、新宿の戸山公園を訪れ、ホームレスの人々に直接お話を聞きました。私がお会いしたホームレスの人たちは口々に「働きたくても、仕事がない」「仕事がないから住まいがない」「住まいがないから仕事がない」と言っておりました。ホームレスの人々の自立支援について、国の責務を明らかにし、NPOと連携しながら、就労と安定した住居の確保を促すことが必要だと考えますが、総理、いかがでしょうか。
 私はまた、都内にある「現代の駆け込み寺」を訪ねしました。夫の暴力から避難する女性を受け入れる民間のシェルターです。ドメスティック・バイオレンス、すなわち夫の暴力によって、日本では20人に1人の女性が命の危険を感じており、年に130人以上が殺されているという調査結果があります。その原因は、「暴力をふるってでも、妻を従わせて当然」といった男女不平等な考えがあり、最近では、リストラにあった夫が暴力を繰り返すというケースも増えています。ところが、こうした被害者を守り、支援するシェルターに対する国の援助はきわめて不十分です。私は、こうしたところに手が届く政策こそが求められていると思うのですが、総理はどう応えるつもりですか。
 小泉内閣は、母子家庭の命綱である児童扶養手当を改悪しようとしています。小泉総理、政治に求められているのは、こうした仕事を失い、家族の崩壊に直面している人々に対する不安と痛みを取り除くことであったはずです。それが欠けたまま、構造改革も立ち往生している現実を総理はどう受け止めているのか、あなたの率直な気持ちをうかがいます。
 私たち民主党は、構造改革を言葉だけに終わらせることなく実行する強い意志を持ち、そうした人々に対する十全なセーフティネットの確立と自立支援のための政策をセットで進めることを、ここに改めて申し上げたい。
 小泉流の自民党的体質に乗っかった無責任な「冷たい構造改革」から国民のための責任ある「温かい構造改革」への転換が必要であります。


(医療制度改革をめぐる不統一は目に余る)

 まさに冷たい改革の象徴が医療費自己負担率3割引き上げの問題です。国民は、過去何度も「医療制度の抜本改革」を理由にサラリーマンらの自己負担を求めては改革を先送りし続けてきた政府の姿勢に憤りを感じています。
 民主党は、将来不安を克服せずに国民にこれ以上の負担増を求めるやり方には強く反対しています。いま国民に負担を強いれば、この深刻な不況のただ中で消費がますます冷え込むことは明らかです。加えて、国民に負担を求める前に、薬価をめぐる様々な問題や診療報酬制度の根本的な見直しを断行し、不安のない医療制度の確立をやり遂げることがまず先行されるべきと考えるからです。それでも、総理は、医師会や医薬業界に配慮して抜本改革を先送りし、国民に負担を求める姿勢をとり続けるつもりですか。改めて、銀行族だけではなく、厚生族でもある小泉総理の見解をお示し願いたい。


(証人喚問はやる気があるのか)

 自民党の元幹事長の事務所代表が公共事業にからみ、口利き・あっせんを行い巨額の報酬を得たうえ脱税していたという事件、茨城県での競売入札妨害容疑で市長ら6人が逮捕された事件が続いています。これらの事件については、国会の場でこれら事件の真相を明らかにすることが政治の責任だと考えます。加藤紘一議員らの証人喚問に対する総理の所見をお尋ねします。
 政治家は、「金と政治」にまつわる不正が絶えないことについて、常に謙虚に反省しなければなりません。その姿勢を示すのが議会における証人喚問であり、是非とも、総理の決断をお示し願います。


(いま直ぐにも、あっせん利得処罰法を強化すべきである)

 いまや与党もあっせん利得処罰法改正に取り組み始めているとのことですが、そもそも二年前に民主党をはじめとする四野党が提案してきた対案で私設秘書も対象とするなどの内容が盛り込まれていたにもかかわらず、与党が頑なに拒んできたのではありませんか。
 民主党をはじめ野党四党は既にあっせん利得処罰法強化法案を用意しております。私設秘書のみならず、父母、配偶者、子、兄弟姉妹といった親族も対象にし、また、犯罪の構成要件から「請託」を外すなど、真に実効性を高める内容です。さらに、現行法の大きな欠陥である、職務権限を持つ政治家に限定する文言は削除すべきであります。
 こうした我々の提案に基づく改正を行わなければ実効性が高まらないことは明らかです。二年前に大きな過ちを犯した与党、いまその責任者として、総理に反省と謝罪に基づく真摯なお答えを願います。

(国民参加の司法制度改革にせよ)
公正なルールと自己責任原則に基づく事後チェック・救済型社会に向けた司法制度改革は、その審議過程の透明性が保障されることが必要です。そのためにも、すべての議事録等の徹底した情報開示を行うことが大切だと考えますが、総理の姿勢をうかがいます。


(農林水産大臣の責任を求める)

 BSE、いわゆる狂牛病問題に関して、昨日、私たち野党が提案した武部農相不信任決議案は否決されましたが、任命権者として、なぜ、総理は、大臣が国民の不信を増長させた責任を明確にしようとしないのですか。武部農水大臣を罷免しない理由を是非ご説明下さい。
 国民の食物を提供する農業は国の基礎であります。その農業者の汗が報われないとしたら政治は一体に何をしているのかが問われるでしょう。民主党が提案する法案のように、BSE問題の被害を受けた肉牛生産農家らに対する十全な救済措置を総理自ら率先してとられることを強く要請いたします。


(総理の外交姿勢を問う)

 ここで、改めて小泉外交の基本的スタンスを伺います。
 小泉外交は、単にブッシュ政権の顔色だけを伺い機嫌をとる、完全なアメリカ追従外交以外の何ものでもありません。地球環境問題への余りの無理解、ABM条約からの突然の離脱通告、先の一般教書で「悪の枢軸」と名指しした今のアメリカ政府の外交姿勢では、到底、世界の平和は望めません。今回の一般教書演説には、米国内の良識派からも大いに疑問が呈せられているところであり、行き過ぎたブッシュ政権の政策に対して訪日の際はきちんと諌めるべきだと考えますが、いかがですか。総理の所見を伺います。
 とりわけ我が国の平和と安全に重大な影響を及ぼす朝鮮半島問題について、ブッシュ政権は北朝鮮敵視政策を打ち出しました。総理はこれに追従するお考えなのかどうか、お尋ねします。
 私は冒頭申し上げたように、今回、アフガニスタン、インド、パキスタンを訪問し、各国要人との対話を通じ、あらためて、21世紀の今日の世界が必要とするものは「友愛」の精神だと痛感いたしました。今年のダボス会議のキーワードは「思いやり」だったと聞いています。国際社会の中で、日本も必要不可欠な協力を行いながら、同時に、「友愛」の精神に基づき、粘り強い対話に挑んでいくべきだと考えます。
 朝鮮半島問題も、韓国の金大中大統領をはじめとする関係者との親密な対話を通じながら、朝鮮半島和平にとって真に望ましいことを日本独自で判断し、実行することがきわめて重要です。しかしながら、この重要な日韓関係も、昨年あなた自身が引き起こした靖国問題によって完全に冷え切ってしまい、小泉総理がその職にとどまる限り、関係修復はきわめて難しい状況にあります。中国とも同様です。まさに、小泉内閣は、経済のみならず、安全保障においても、国益に反するものであるということをはっきり申し上げておきたいと思います。


(むすびに)

 私は、世界の現状、そしてわが国の子どもたちの間に起こるとげとげしい事件、家庭内暴力等の社会風潮を見るとき、目指すべきものは、「友愛国家の建設」であると一貫して訴えて参りました。「友愛精神」は、自らの尊厳、誇りを大切にします。個人の尊厳を大切にする人は、自らの責任を果たし、自立し、だからこそ互いに尊重し合いながら共生して生きていきます。
 アメリカのゴア前副大統領は「環境こそ国家政略課題だ」と定義しました。イギリスのブレア首相は「教育、教育、教育、これこそ新しい国家の基本戦略だ」と定義しました。まさに、自立と共生に基づいて、教育と環境、そして敢えて言えば介護、このようなテーマが新しい国づくりのキーワードと理解すべきでしょう。
 あの川辺川ダムもそうですが、コンクリートのダムから「緑のダム」に変えていくことではありませんか。テトラポットづけにされているその海を、テトラポットから解放しようではありませんか。一人ひとりの個性が生き、地域社会の中で参加するコミュニティ・スクールをつくっていこうではないですか。それぞれが参加型の福祉社会を求めていこうではありませんか。
 新しい価値観を政治家が訴え続けることによって、私は新しい産業、日本の経済を大きく動かすことすらできると思っています。
 しかし、その大事業を前に推し進めていくためには、何よりもまず政治が国民から確かな信頼を得るものでなければなりません。
 残念ながら、小泉内閣は、国民を信頼せず、国民に真実を知らせず、旧い体質のままに、官僚政治そのものを続けています。これでは、信頼の政治を望むことはできません。

 江戸時代末期に著された「重職心得箇条」があります。あなたが田中真紀子議員に渡した国の政(まつりごと)をあずかる大臣らの心得を記したものです。
 200年も前のこの心得はこう言っています。
 「物事を隠す風儀甚あしし」
 「役人の仕組事皆虚政也」
 小泉内閣はこの心得に見事に反する行動をとり続けているのです。隠し事をし、閣僚や党幹部たちの画策にうつつを抜かしているその様は、滑稽にすら思えるものです。
 抵抗勢力の前に、恐れて、怯んで、とらわれて、とうとう「小泉スパイラル」です。

 日本はいま、本物の構造改革を必要としています。しかし、それは自民党と官僚におもねる小泉内閣では決して達成できるものではないのです。
 小泉総理は、抵抗勢力に屈して改革を先送りし、国民に対して「痛み」ばかりを求めて温かみの欠ける政策を繰り出しています。しかも、その先に如何なるビジョンも展望も見えません。これ以上、この政権に日本の未来をゆだねるわけにはいきません。
 いま必要なのは、国民に背を向け、マーケットからも見放された自民党政権に終始符を打ち、新しい政府を誕生させることです。まさに、「政権交代なくして真の構造改革なし」であります。私は、その政権交代の実現のために、他の野党の皆さんとも協力しつつ、私の持てる力のすべてを尽くすことをここに宣言します。
 代表質問を終わります。
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