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1999/08/24
政権政策委員会提言
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民主党政権政策委員会
はじめに
日本を「最良の国」とするために
−民主党政権政策の基本理念−
T国民主権を実現する「分権連邦型国家」への道
1.「分権連邦型国家」への転換
1)自治体と国の新しい役割
2)地方への権限・財源の移譲
3)自治体に再編と紛争処理
2.政治的リーダーシップの確立
1)首相権限の明確化
2)政治主導の省庁運営
3)行政監視能力の強化
4)さらなる情報公開の推進
3.行政改革の徹底推進
1)財政の透明化
2)中央省庁の再編
3)実施部門の整理
4)公共事業の改革
5)公務員改革
6)世界のモデルとなる開かれた「電子政府」の実現
4.自立を支える税制の確立
1)所得、資産、消費課税のバランス
2)徴税システムの充実
5.信頼される政治に向けた改革
1)政治倫理の確立
2)選挙制度のさらなる改革
3)政治への参加機会の拡大
4)自治体首長の多選禁止
6.開かれた司法の実現
1)法曹人口の拡充
2)集中審理方式による裁判の迅速化
3)法曹一元制度の実現
4)参審制度の導入
5)「法律扶助法」と「被疑者国選弁護法」の制定
U新しい経済社会の構築に向けて
1.市場機能を活かした経済と財政の構造改革
2.自立成長型経済への道
1)戦略的規制改革の実施
2)インセンティブを高める最高税率の引き下げ
3)透明で公正な競争の促進
4)知的財産権の保護システムの強化
5)起業家のやる気を引き出す新産業支援
3.金融システムの安定と市場機能の強化
1)財政と金融の完全分離 − 金融失政を繰り返さない体制作り
2)公正な金融経営ルールの整備と監視
3)中小ベンチャー企業向けの新資本市場、新債権市場の創設
4)預金保険、生命保険・損害保険のセーフティーネットの強化
5)「金融サービス法」の制定
6)「地域再投資法」の制定
4.労働市場改革で「新しい完全雇用」社会の構築
1)雇用における「年齢差別禁止法」の制定
2)再就職支援ビジネスの自由化と育成
3)職業能力開発支援事業の拡充
4)「労働移動円滑化法」の整備
5)公的金融機関による社内融資の代替など労働移動の障害の克服
6)ワークシェアリング導入による雇用拡大
5.歳出構造の改革による財政の健全化
1)財政の透明化と単年度財政主義からの脱却
2)公共事業配分の重点化・ムダな公共投資の削減
3)国の事業の限定化と国有資産の売却
V世界のモデルとなる循環型社会の創造
1.循環型社会に向けた環境政策
2.持続可能な未来へつなぐ循環型社会の形成
1)環境基本法の制定
2)資源循環法の整備
3)化学物質総合対策法制の構築
4)環境情報公開法の制定
5)環境調和型公共事業の実施
3.地球環境の保護
1)地球温暖化対策
2)オゾン層保護対策
3)砂漠化対策、森林保全
4)環境汚染物質排出・移動登録の徹底
5)生物的多様性の保全
4.省エネルギー国家の構築
1)新エネルギーの研究開発と普及
2)エネルギー計画の策定とエネルギー安全保障への取組み
3)原子力の平和利用
5.21世紀を展望する活力ある農業・農村の確立
1)食料自給率の目標設定
2)新たな土地利用秩序の構築
3)市場原理を活用した生産体制の強化
4)農業生産法人の育成と担い手確保
5)食品の流通改革と安全対策の確立
6)環境保全型農業の育成支援
7)森林の保護と新しい支援
8)資源再生型水産業の確立
9)農林水産団体の再編成
W選択できる社会、安心できる社会
1.安心できる福祉社会の構築
2.社会保障制度の再構築
1)年金制度の抜本的改革
2)質が高く効率的な医療制度の確立
3)集中投資による介護基盤の緊急整備
4)介護休業制度の拡充整備
3.地域・社会における子育て支援
1)保育サービスの充実
2)保育所と幼稚園の連携強化、一元化
3)子育てに伴う経済的負担の軽減
4)育児休業制度の充実
4.ノーマライゼーション社会の実現
1)全ての分野でのユニバーサル・デザインの実現
2)バリアフリーのまちづくり
3)バリアフリー住宅の普及促進
4)政治参加のバリアフリー化
5)統合教育の実現
6)「新・障害者プラン」の策定と「日本版ADA法」の制定
5.「賢く強い消費者」をつくる
1)「消費者契約法」の制定
2)消費者が裁判を起こしやすい仕組みの整備
3)多重債務問題への取組み
4)消費者教育の充実
5)遺伝子組替え食品と消費者
6.ルールが守られた公正な社会
1)犯罪取り締まりの強化
2)警察に対する国民の監視・コントロールの強化
3)犯罪被害者の救済支援
4)国会議員、公務員犯罪の防止
5)医療費の不正受給防止
6)環境Gメンの配置、環境破壊に対する取り締まり強化
7)「医薬食品安全庁」の設立
8)子どもポルノの取り締まりの徹底
7.国民生活を守り支える災害対策
1)危機管理体制の確立
2)災害の未然の防止
3)被害者救済制度の拡充
X多様な人々が支えあう共生社会
1.自立と共生が織り友愛社会への道
2.男女共同参画社会の実現
1)社会経済活動における均等な機会、待遇の確保
2)男女共同参画の視点に立った税制、社会保障制度
3)家族制度に関する法律、制度や慣行の見直し
4)生涯を通じた女性の健康・権利を守る施策
3.NPOと共に歩む新しい社会の形成
1)NPOを支援する社会制度の確立
2)NPO起業を促す教育の推進
4.人権の確立と差別のない社会
1)人権教育の推進
2)緊急避難場所の提供
3)同和政策の推進
4)アイヌ民族文化の保存と伝承
5)国際的な人権の確立と民主化の推進
Y「顔の見える外交・安全保障」の推進
1.平和をつくる外交
1)日米関係の創造的深化
2)アジア諸国などとの関係強化
3)国連改革の推進
4)核軍縮・不拡散と核兵器の廃絶
5)新たなODAの展開
6)官僚外交からの脱却と民間人を含めた積極外交へ
2.平和を守る安全保障体制
1)日本の防衛と防衛力のあり方
2)日米安全保障体制と日本の主体性
3)アジア太平洋地域の安全保障
4)国連の安全保障
3.沖縄の米軍基地問題と経済の自立
Z未来への投資
1.未来のための教育改革
1)就学前教育の重視
2)コミュニティに根ざした学校改革
・学校改革
・教育の分権と住民参加
・ゆとりある教育の実現
・未来志向の教育内容
・情報教育の強化
3)大学の改革
・国立大学の民営化・公立化
・奨学金の無条件化
・私学助成から個人助成への転換
・国際化の推進と大学院の質の充実
2.自由時間の拡大と生涯学習社会の創造
1)「連続休暇制度」の導入による自由時間の増大
2)生涯学習、スポーツの振興
3)伝統文化の保存・継承と多様な文化体験の場の整備
3.情報ネットワーク時代のための投資
1)情報通信基盤の整備
2)インターネット利用料の軽減促進と接続整備
3)国際情報ハブ構築のための研究開発
4)行政情報の開示
5)高齢者・障害者のインターネット・アクセスの確保
6)プライバシーの保護
4.未来型社会資本の整備に向けて
1)新しい総合交通体系の確立と整備
2)未来を開く科学技術政策
3)ゆとりある住まいの実現と街づくり
I
日本を「最良の国」とするために
−新・民主主義の実現と社会の再生−
1 日本は、豊かな可能性を持つ国です。
民主党は、日本と国民の可能性を信じています。日本は、長い歴史と豊かな自然と変化に富んだ四季に育まれた文化や伝統を持つ魅力あふれる国です。この国には、世界に誇ることのできる勤勉で誠実な人情味あふれる人々がいます。民主党は、この優れた特性を生かし、国民と共に、21世紀の新しい日本、「最良の国・日本」を築いていきます。
長い不況と将来への強い不安から日本社会は黄昏時を迎えているのではないかとの声があります。日本はかつての元気をなくし、自信喪失に陥っているかのようです。確かに、少子高齢社会の到来や終身雇用制の動揺、急速な情報社会化、市場主義の蔓延は国民生活の将来に不安をもたらし、これに、教育の荒廃やモラルの崩壊、猟奇的犯罪の発生などが伴って、このままでは、社会の土台が崩れるのではないかとの不安も生まれています。
いまもっとも必要なことは、社会の再構築です。自民党政府は、「経済の再生」を唱って、当面の景気対策を優先していますが、長期的には日本社会の基礎体力の衰弱そのものが課題となっています。民主党は、経済はもとより、この「社会の再生」にチャレンジすることが、いま政治に最も求められている課題であると考えています。
社会の再生なくして、少子高齢社会に対応する社会サービスの確保も、市場社会や官僚世界に蔓延しているモラルハザードの防止も、教育再興も実現することはできません。民主党は、「強靱な社会の構築」を何よりも優先します。
個人の自立と確かなモラルによって支えられた共同社会(コミュニティ)に基礎を置き、国民一人ひとりの自由な創造性が発揮される社会、すなわち「最良の国」日本の実現を私たちはめざします。世界に向けても、日本は、「最強の国」でも「最大の国」でもなく、文字通りの「最良の国」にならなければなりません。それは、世界の国々や人々から信頼され、世界とともに行動する日本となることです。
私たちは、国民と国民のエネルギーを何よりも信頼しています。時代の転換期に臨んで、社会の再生に向けて改革すべき点を大胆に変革する勇気と、国民に基礎をおいた新しい政府が樹立されるならば、日本は生まれ変わることができると思います。日本はもっと良くなれるし、ならなければなりません。
日本は可能性に満ちた国です。古代以来、中国・朝鮮半島やオランダ、南東アジアなどとの交流を経て豊かな文化を築き上げ、近代においてもヨーロッパ先進諸国の文物を積極的に輸入しつつ日本文化に一層の厚みを創り出してきた国です。それは、対立と排除の文化ではなく、「融合の文化」、「重ね合わせの文化」であり、いわば絶えずそのイノベーションを受け入れる「寛容で柔軟な文化」でありました。まさに、リベラリズムの源流を見ることができます。この多様性に満ち、新しいものを受容する進取の気風あふれる「柔軟な文化」を糧に、その可能性を新しい時代に向けて切り拓くならば、必ずや世界にも誇れるすばらしい「最良の国・日本」を創造することができると信じています。
2 日本再生に挑戦する私たちの基本理念
−新・民主主義の実現を通した「社会の再生」−
民主党は、不公平を拡大し、人々に不安と不満をもたらす弱肉強食社会に通じる「市場万能主義」にも、依存心を増長し、個人の尊厳と自立した人格の破壊に通じる「福祉国家至上主義」にも与しません。市場原理の機能を強く支持していますが、社会と政治の積極的役割についても重視しています。特に、市場主義と利己主義の行き過ぎは社会のモラル基盤を危ういものとし、不公正や不平等を放置するゆがんだ構造を創り出すことにもなります。私たちは、個人の選択の自由を広く容認しつつも、ルールを守ることや社会を支えるモラルを大切にする立場に立ちます。
21世紀は国際人権の時代とも言われています。世界のどこに暮らす人々であっても、大量の人権侵害が繰り返される状況については、国際的な規模でこれを防止しその支援を行う時代です。民主党は、日本がそうした国際活動に率先して大きな役割を果たせることを望んでいます。国内外を問わず、人権や個人の尊厳が尊重される新しい社会の姿を追求します。
民主党は、個人の自由な選択が保障される社会の形成につとめます。それとともに、国民生活の安心と安全が守られるセーフティーネットの整備に徹します。「経済には可能な限りの自由を、生活には最大限のセーフティーネットを」です。「自由で安心な社会」の構築が民主党の基本目標なのです。
民主党は、人と人、男と女、国と国、人間と自然等の間の「対等」「互恵」を基本に、「自立」と「共生」が織りなす「友愛社会」の実現をめざします。「自助」も「公助」も必要ですが、何よりも人々が互いに結び合い助け合う「共助」の世界を大切にします。
そして、いま、20世紀から21世紀への大転換期を迎えて、新たな千年紀に突入しようとしています。紀元の始まりから1000年までは、人類が自然を神としてそれに支配されてきた1000年であり、その後2000年までの間は、人類が神を畏れつつも自然を征服することによってその無限の開発欲を満たしてきた1000年でありました。新千年紀を迎えるに当たり、私たちは、支配でも征服でもなく、人類と自然が共生する、新しい時代を切り開いていく決意です。
これらの基本理念を形に変えるため、民主党は、新しい政治手法として、「新・民主主義」の確立を提唱します。政府にすべてを依存し、行政の対象者として位置づけられた受益者民主主義や請負型民主主義を脱却し、義務よりまず権利が先行するという戦後民主主義の弱さを克服して、人々が共に支え合い、すべての分野で「国民一人ひとりが主役となって自ら参画し責任を負う新しい民主主義」に挑戦します。
以上の考えに立ち、私たちは、次の5つの課題に挑戦します。
1)民主党は、「分権連邦型国家」と「情報公開の徹底」による「新しい民 主主義」の形成に挑戦します。
自民党は、省庁改革に際して分権改革を実質上後回しにし、曖昧な権限移譲策で乗り切ろうとしています。しかし、民主党は、21世紀日本の姿は、分権連邦型国家でなければならないと考えています。なぜなら、地域の自己決定と自己責任がない社会は依然として官僚依存政治の存続を意味するからです。このままでは、政治の質は一向に変わらないことになります。
民主党は、中央政府の役割を限定し、地域に自主性と財源を持たせる分権改革を断行します。自治事務の飛躍的拡充とともに、国と地方の税源配分が1対1となるよう改正します。これによって、多様なNPOなどのネットワーク活動が自治を担う新しい政治が誕生します。地域のことは地域が決定する社会が生まれ、自己決定する個人が横に連帯して、1人1人が参加し責任を持つ新しい民主主義が実現することとなります。
民主党は、すべての分野における「情報公開」こそがこれからの日本にもっとも必要なことだと考えます。国民の知る権利に基礎を置いた情報公開の徹底があって初めて民主主義が十分に機能し、国民の自由な力が発揮できます。分権改革と情報公開の徹底は、まさに、新・民主主義革命にとって不可欠な条件なのです。
2)民主党は、男女共同社会を通じた「福祉」と「労働」の再構築に挑戦 します。
年金や福祉サービスの確立は、国民生活の安心の土台となるものです。私たちの政府は、これらのセーフティーネットの確立に何よりも優先して取り組みます。基礎年金については税方式を基本に改革し、介護や子育てなどの社会サービスと各種の給付制度や参加制度を統合的に捉えた「社会保障制度の再構築」をおし進め、国民生活の安心を確保します。それとともに、人々の共同で福祉を支える新しい社会のかたちを作り出していきます。
とくに、21世紀の人権時代や共生原理にふさわしい新しいライフスタイルと生活をかたどる男女共同参画社会の創造に取り組みます。
大量の失業と雇用不安を放置する政府は「責任ある政府」と言えません。雇用の開発と雇用機会の均等な保障は社会の責任であり、政府の基本的任務です。明確なルールの下で民間による職業仲介事業や労働者派遣事業を拡大し、子育てや介護と両立できる新しい働き方や「やり直しのきく社会」の確立を強力に支援して、働くことを望むすべての国民にその機会を保障する「新しい完全雇用」社会の実現をめざします。
3)民主党は、「人材立国」と「コミュニティの再生」に挑戦します。
豊かな人材の形成は国の基礎でもあります。学校荒廃や学級崩壊はもとより、学力水準の著しい低下は社会と国の基礎体力を衰弱させる道に他なりません。教育改革を断行し、新しい時代にふさわしい豊かな人材の育成を支援します。焦点の「学校改革」については、とくにコミュニティの力が必要です。学校経営の自主的運営をコミュニティに委ねて、画一的中央統制から解放します。また、大学の改革にチャレンジし、新しい時代を担う優れた人材の育成支援につとめます。
少年犯罪や非行、極端な利己主義、大人社会を含めたモラルの低下、依然として根強い官依存体質を克服するためには、何よりも強靱な社会の再生が必要です。また、多様な福祉サービスのネットワークを確立するためにもコミュニティの再生が不可欠です。民主党は、これら「社会の再構築」にも挑戦します。
4)民主党は、「インフレなき持続的経済成長」と「財政規律」の実現に挑戦します。
民主党は、公共事業ばらまきの従来型公共投資から福祉・情報関連中心の新公共投資への大胆な転換を進めて、当面の景気対策はもちろん、市民生活や環境保護と両立し、かつ起業家活動が活性化する「新しい成長軌道」の実現に辛抱強くチャレンジします。社会的不公平の拡大と様々な歪みをもたらすインフレ政策は回避し、持続可能な市場経済の確立につとめます。
現政府は、景気対策を理由に構造改革先送りの財政ばらまき政策を次々と繰り出しています。これは、財政責任も曖昧にしたまま、将来世代に多大な不良債務を積み残すものでしかありません。私たちは、景気の回復なくして財政の再建はないと考えますが、同時に、歳出構造の改革なくして財政再建もあり得ないと考えます。無駄な公共投資や特殊法人の整理を計画的に進め、21世紀日本に必要な新しい社会資本の整備に集中的な投資ができるよう、効率的で規律ある財政の確立につとめます。
5)民主党は、「平和創造国家」と「アジアの中の日本」の確立に挑戦します。
民主党は、国際社会を与件として、これに依存する国の姿をかえなくてはいけないと考えています。日本は、これまで日米関係を重視するあまり、自前の対外政策と自己主張を持たず、世界の国々から「顔の見えない国」として受け取られてきました。しかし、日本は世界平和の中でしか生きられない国です。資源小国であり、国際交易の利益を大いに享受している日本にとって世界平和はまさに国の存立基盤そのものなのです。それはまた、国際平和と国際社会に信を置き、未来を切り開くことを決意した戦後日本の出発点でもありました。「平和を享受する日本」から「平和を創り出す新しい日本」へ、すなわち「平和創造国家」へと大転換していくことが重要です。民主党は、常に「世界と共に何ができるか」を構想し、それを多様な国の人々と共に実践していく積極的外交政策を推し進めていきます。
とくに、国連の効率的体制の確立に日本自らその積極的役割を果たすとともに、国際平和の創造により有効な活動ができるよう国連活動の活性化に取り組みます。
冷戦時代の終わりとともに、世界に開かれた海洋国家でもある日本は、自らの創意工夫で、新たな地域的平和秩序の形成に挑んでいくべきときを迎えています。とりわけ、「アジアの中の日本」の地位と役割を明確にし、アジア太平洋地域における外交的リーダーシップを発揮します。
3 「最良の国・日本」を実現するために
−民主党は国民と共に前進します−
新世紀を目前にして、世界史の流れは大きく方向転換しました。壮大な歴史観や荘重な国家が個人や地域をリードするのではなく、逆に、個人や地域などの小さな単位が主役となり、歴史を創り出す時代が到来したのです。国の在り方についても、これまでの惰性に流されることなく、ゼロベースで吟味し、再構成する勇気を持たなくてはいけません。戦後日本の基本的枠組みのすべてを見直し、大胆な改革の道を構想していくことが必要です。
にもかかわらず、自民党中心の政権は、バブル崩壊後の不況に直面して小手先の緊急対策を優先し、日本が直面している改革課題に正面から向き合い、これに挑戦しようとする毅然とした姿勢を欠いたままです。結果として、改革の「先送り」「その場凌ぎ」が繰り返され、国民はいまや日本社会の将来と国民生活の行く末に大きな不安を抱いています。
政治そのものを変えなければ、日本の再生はありません。日本が国際社会との調和の中で求められている経済構造の改革も、政治の改革と表裏の関係にあります。先送り、場当たり、ばらまき予算を続ける自民党中心の政権を許すことは国民の不幸でもあります。
誰もが「社会の再構築」が必要だと気づいているのに、日本社会の現状は、いま、歴史の転換点にあって立ち往生しているようにも見えます。なぜ、改革は進まないのでしようか。それは、日本の進路を方向付ける政策の立案を官僚が独占する仕組みそのものが変わらないままであり、いわゆる霞が関の支配が続いているからです。国民生活の方向を決する政策立案活動については、これまでのような官僚独占を排し、情報公開を徹底して、広く民間にも政策立案の仕組みが確立されるよう変革していく必要があります。まさに、民主党がめざす「霞が関の解体」です。
このため、政府への民間人の登用が可能なポリティカル・アポインティ(政治任用)のポストを飛躍的に拡充し、官庁の中にも指定職以上を特別職の政治任用とするなどの改革に着手します。また、民間シンクタンクや大学と官庁との人材交流を積極的に推し進めて、政策立案の官僚独占を打破していきます。
時代の大きな転換期に臨んで、変革の時代にふさわしい「ダイナミックで行動的な政府」、民主党中心の政府を実現しなくてはなりません。必要なことは、国民を信頼し、その新しい社会の姿の実現に向けて行動する政治的リーダーシップです。私たちには、それを引き受ける覚悟と用意があります。
私たちは、日本及び国民にとって「何が大切なのか」「何が必要なのか」を常に考え、良いものは良いと素直に認める政党でありたいと考えます。このため、民主党は、これまでの旧いイデオロギーにとらわれた「対立の政治」から、ビジョン、政策、リーダーシップ、新しい価値観などを互いに争う「競争の政治」へと大きく歩み出しました。
この基本姿勢に立ち、私たちは、ここに、国民の皆さんに向けて新しい選択肢を提供します。数を頼みに談合政治を続ける自民党中心の政権か、それとも、未来に向かってこの日本の可能性を切り拓いていくことを決意した新しい民主党中心の政権か、それを決するのは国民の選択です。
1.国民主権を実現する「分権連邦型国家」への道
1 「分権連邦型国家」への転換
民主党は、当面する「経済の再生」ととともに、「社会の再生」を同時に進めていくことがいま政治に求められていることだと考えています。そのためには、この二つの再生にチャレンジする政治の活性化がなくてはなりません。それは、日本における本格的な民主主義の実現と政治的リーダーシップの確立を意味します。この考えに立ち、民主党は、日本における「社会の再生」を進めてこの国をもっと良い国とするために、これまでの中央集権型国家を排して、国民の自己決定や地域の自己責任がより明確となる分権連邦型国家の実現をめざします。「政治はリーダーシップの発揮に全力を上げ、地域では様々な人たちが参画する民主主義が活性化する」、そんな国のかたちをめざしたいと思うのです。
明治維新以降のわが国は、文明開化・軍国主義・戦後復興という三段階のプロセスを通じて、欧米に「追いつき追い越す」という目的の下、中央政府が権力を独占し、地方自治体は、その補完的役割を担わされてきました。しかし、権力の集中を必要とするキャッチアップが実現されたことで、その役割も終わりを迎え、今日では官依存の風潮を残す弊害にすらなっています。
いまや、個々の住民の多様なニーズに対応でき、住民による参加と監視がより容易である地方自治体こそが、行政の主役としての地位を占めるべきときです。このためには、行政サービスの提供主体として、基礎自治体を中心に据え、どうしても基礎自治体では担うことのできない事務に限って広域自治体が担い、国は、広域自治体では担い得ない特定の事務に限って処理するという、「スリムで限定された中央政府」と「効率的で身近な地方政府」が対等に並ぶ新しい仕組みを確立することが必要です。
民主党は、「地域のことは地域で決める」「自分たちのことは自分たちで決める」という国民主権と民主主義の原点に立ち返り、「分権連邦型国家」への転換を大胆に進めていきます。
1)自治体と国の新しい役割
民主党は、基礎自治体(現在の市区町村)・広域自治体(現在の都道府県)・国のそれぞれの役割を明確に規定した法律(「中央政府権限限定法」)を制定し、国の役割と権限を限定する。基礎自治体にほとんどの事務権限及び財源を委ね、地域の事情に応じた木目の細かい行政サービスの提供や行政に対する住民の参加と監視が可能となる。これによって中央政府のスリム化も進み、国家規制の大幅な縮小を実現することができる。
1.国の事務の限定
国が行う事務を明確に限定し、具体的に列挙する。「国の事務」は、外交・防衛・皇室・司法・通貨の他、ルールの設定とそのチェックに特化させ、指導行政にかかわる事務や実施事務は、原則、地方に移管する。社会保障における国の役割も、その財政調整機能と最低基準の設定に限定し、具体的な実施・給付については、地方自治体に委ねる。
公共事業については、大規模災害に対する復旧事業、羽田・成田・関西空港・伊丹・中部・新千歳・福岡の国際空港などや、東京・横浜・名古屋・大阪・神戸の国際港に限定することとする。このほか、国が実施・関与できる事業として、3つを超える広域自治体に関わる公共事業に限定する。
2.広域自治体の事務
これまでの都道府県の事務の大部分を基礎自治体に移管する。広域自治体の事務は、国の事務を外れるもののうち、高等教育・通商を除く経済政策・幹線道路の整備・河川管理など、基礎自治体では取り扱いが困難な事務に限定して、法律で具体的に列挙する。公共事業の多くの部分は、広域自治体の事務とするが、その範囲は、空港及び港を除き、3つを超える基礎自治体に関わるものであり、かつ全域的な視点から必要と思われるものに限定する。
3.基礎自治体の事務
国又は広域自治体の事務として限定列挙された事項以外は、すべて基礎自治体の事務とする。教育・福祉・街づくりなど、生活に直接関係する行政サービスの提供は、そのほとんどを基礎自治体の事務とする。国の広域自治体への関与とともに、広域自治体による基礎自治体への関与も、原則として禁止する。
4.「地方自治基本法」の制定
地方自治体の権限と財源などについて明確にした「地方自治基本法」を制定する。その取り扱う事務に関して、自由に条例を制定できる旨を明記する。議会や首長のあり方についても、民主主義と自治の基本に反しない限り、自治体ごとに自由に決定できることとする。
5.国・地方紛争処理委員会の設置
自治体間の紛争や、国と自治体、広域自治体と基礎自治体の紛争については、自治体代表を含めた独立行政委員会(「国・地方紛争処理委員会」)を設けて処理する。
2)地方への権限・財源の移譲
1.税源の地方移譲
地方自治体に財源を移譲する。財源については、国と地方の税財源の比率を、現在の「2対1」から「1対1」に転換することを目標に、所得税の税率10%に相当する部分を地方に委譲する。
2.簡素で透明度の高い財政調整制度の確立
国の税収のうち25%を超える部分を地方自治体の財政調整の資金に充当することを義務づけ、人口・面積・人口密度・一人あたり所得・従属人口比率を要素に、明確な公式に基づいて配分する。当面、非裁量的補助金を除き、使途を限定した個別補助金を廃止し、使途を限定しない包括補助金に転換する。
3)自治体の再編と合併手続きの確立
連邦分権型国家においては、広域自治体を全国十前後の州に、基礎自治体を千程度の市に、それぞれ再編することが望ましいと考える。しかし、その再編プロセスについては、地域住民の自主的判断を尊重する。
当面、住民意思の確認手続きを基礎に、合併手続きを容易にするとともに、合併から5年間は、財政調整のための交付金を上乗せするなどインセンティブを与える。また広域連合など合併に至らない自治体間の連携を容易にする。
2 政治的リーダーシップの確立
政治が行政をコントロールし、その政治を国民が選挙を通じてコントロールすることによって、初めて「国民の声に基づいた政府」「国民主権に基礎をおく政府」が実現します。しかし、現状は、政治がリーダーシップを発揮しようと思っても、それをサポートするスタッフ機能が十分でなく、結局は官僚システムに依存せざるをえません。何よりも行政が情報を独占しているために、政治による行政のコントロールも、また、国民による政治・行政の監視も、困難な現状にあります。これでは政治の現状を変えることはできません。
時代はいま、必要な改革を「思い切って迅速に」実施する強い政治のリーダーシップを求めています。国民はまた、政策決定過程が明らかになり、官僚の抵抗によって改革が骨抜きにされることなく、国民のための政治が展開されることを望んでいます。民主党は、内閣制度をさらに改革し、国会によって選ばれた首相が国内外の問題についてより確かで迅速なリーダーシップが発揮できるよう、政治改革にチャレンジしていきます。
1)首相権限の明確化
「内閣法」を改正し、内閣の首長である内閣総理大臣の統括権や指揮監督権、裁定権などを明確にする。また、補佐室、秘書室、政務室、政策室、報道室などからなる強力な首相府を設置して、首相の政治的補佐機能を充実する。
内閣府の機能を拡充し、人事・公務員制度、行政評価・行政改革、政策評価、予算編成に関する事務を担当する機関とする。特に予算編成については、予算編成部局を内閣府に置き、内閣総理大臣直轄で総合的な調整を行うようにする。
2)政治主導の省庁運営
副大臣設置、政府委員廃止など、大臣の機能強化策は前倒しで実施する。事務次官会議は廃止して、副大臣会議で政府部内の調整を行う。次官・局長など指定職以上の幹部職員は特別職とし民間人登用を含む人材の流動化を容易にする。当面、選考による民間人登用を積極的に活用する。
3)行政監視能力の強化
内部監査の限界を是正するため、国会による行政監視機能を強化する。米国におけるGAO(General Accounting Office)に準じた「行政監視院」を国会に設置する。「行政監視院」には、立入調査、資料提出請求、参考人招致などの強力な調査権限を与え、行政に対する外部監査機能を持たせる。
内閣府に「行政改革推進室」を設置し、各省庁に対する指揮権を備えた政策評価を恒常的に行う。また、「日本版GPRA法」(政府業績評価法)を制定し、各行政機関に対し業績目標を定めさせ、その達成状況を次年度の予算編成に反映させるシステムを導入する。
4)さらなる情報公開の推進
成立した「情報公開法」をさらに充実する。知る権利を明記し、「情報公開法」の対象機関を特殊法人や行政代行業務を行う公益法人・営利企業までに広げる。非開示情報の範囲をより限定するとともに、不服申し立てをできる裁判所を全国すべての地方裁判所に拡充する。また、非公開の正当性を審査するインカメラ制を導入する。行政情報の保存・管理に関する法律を制定するとともに、大臣主導のガイドラインを設けて、インターネット上などに行政情報の開示を義務づけるなど積極的情報公開を推進する。
3 行政改革の徹底推進
民主党は、行政改革は単に省庁の再編成にとどまることなく、その質的変革をはかることが重要だと考えています。企業や市民社会の自己責任・自己規律を曖昧にし、かつ行政責任をも不明にしたまま巨額の税が投入される今日の政治・行政システムは転換されなくてはいけません。行政指導や護送船団方式による行政スタイルを改め、公正で透明度の高いルールの下の行政を確立する必要があります。
また、財政の現状は、国が多額の借金を抱えて、少子高齢社会が進行すれば必然的に破綻へと向かうことは明かです。行政の無駄を省き、小さくても効率の良い行政を実現しなければなりません。強い権限を持った首相府・内閣府が主体となって、政治主導の大胆な行政改革を断行します。
1)財政の透明化
単年度主義、単式簿記、現金主義など、弊害の目立つ現在の公会計制度を抜本的に改め、予算・決算に企業会計的視点を導入し、国の財政状況を、国民に分かりやすく開示する。国・財政投融資・特殊法人などの各々と、その総体について、毎年、貸借対照表を作成し、公表する。その資産及び負債は時価計上することとし、その計算根拠についても、すべて公開して、国民によるチェックを可能にする。
2)中央省庁の再編
看板の掛け替えにとどまった現在の中央省庁再編に代え、地方への権限委譲を踏まえて、スリムな中央省庁に再編する。国の事務を「企画部門」と「実施部門」に整理し、公権的強制力行使を伴わない実施部門は、行政本体から切り離し、原則として民間に委託する。どうしても民間委託が不可能な分野については、独立行政法人によって実施する。
3)実施部門の整理
独立行政法人の長は、すべて民間も含めた公募により決定し、その長に責任と権限を集中させ、弾力的な予算、運営、人事を可能にする。「企画部門」から独立行政法人への出向・天下りを禁止し、なれ合い・癒着を防ぐ。既存の特殊法人は、「廃止」「民営化」又は「独立行政法人化」のいずれかに区分し、制度そのものを廃止する。国の事務を民間に委託する際に、天下りを受け入れている企業・公益法人を対象から除外して、委託先と官庁・独立行政法人との癒着の危険を排除する。
4)公共事業の改革
従来の公共事業関係長期計画と国土総合開発計画及び土地利用基本計画を内閣総理大臣の統轄下で策定する「社会資本整備総合計画」に一本化し、全体像が明確になるようにする。この計画には、事業費と経済効果の試算や環境への影響評価などの公表を含めることとし、国会承認も義務づける。
入札に関する情報を事前・事後を問わず徹底的に公開する。また、インターネットなどを通じて誰もが入手可能とし、国民による幅広いチェックを可能にする。自己責任を前提とした民間資金による公共事業(Private Finance Initiative)を積極的に採用し、国が行う場合とのコスト比較を義務づける。
5)公務員改革
天下り規制の対象を、営利企業から、特殊法人・独立行政法人・公益法人にまで拡大する。省庁別縦割りの人事・採用制度をあらため、省庁横断的に国として一括採用・一括人事を行う。指定職以上の幹部国家公務員を特別公務員に変更し、民間人の登用を含む人材の流動化を容易にする。
6)世界のモデルとなる 開かれた「電子政府」の実現
IT革命(情報技術革命)の成果を十分に取り入れ、行政情報の100%電子化、行政手続きの簡素化と100%ネット処理可能な体制を構築し、世界のモデルともなる国民に開かれた「電子政府」の実現をめざす。また、政府調達の電子化・透明化、各省庁などを統合されたネットで結ぶ政府VANの整備と高速化ネット化を進める。
4 自立を支える税制の確立
税は、政府と国民をつなぐ結節点であり、国のかたちを端的に現すものです。その税のあり方に対する国民の信頼が失われている現状はまさに政治の貧困そのものです。税についての不信の最大のものは、クロヨンという言葉に象徴されるような徴税の不公平のほか、無駄な公共投資やバラマキ型歳出が顕著なうえ、その透明度が低く、解りにくい構造となっていることなどにあります。これからの税制は、1.水平的・垂直的・世代的に公平な税制、2.例外をできるだけなくし徴税コスト削減にも資する簡素な税制、3.資源配分を人為的に歪めることのない中立的な税制――という「公平・簡素・中立」の原則に基づき、透明度の高い税構造の確立につとめなくてはなりません。また、グローバル化した経済に対応し得る国際的整合性をも考え方の基本とします。
この考えに基づき、民主党は、最高税率の引き下げを含むよりフラットな直接税の実現、租税特別措置や軽減税率、特殊法人や公益法人等への優遇税制の見直し、NPO税制の整備充実などをはかります。さらに、将来における消費税の福祉目的税化と直間比率のさらなる改革、地方税として不安定な法人事業税の外形標準課税方式への改革などの検討に取り組みます。
こうして、「誰もが納税をし、その使途を監視していく社会」「すべての人が自立した納税者として成り立つ社会」の実現をめざし、課税最低限の見直し、徴税側の都合のみを優先させてきた源泉徴収制度・年末調整制度などの各種徴税制度の改革を進めます。
1)所得、資産、消費課税のバランス
1.所得税の簡素化・総合課税化
個人所得課税については、総合課税化と課税ベースの拡大を通じた税率の引き下げをめざす。この観点に立ち、国と地方を合わせた最高税率を、40%以下を目標として引き下げるとともに、納税者番号制度を導入して所得の把握を公平にする。課税ベースの拡大に当たっては、各種人的控除制度などの総合的見直しを行う。また個人単位の課税をめざし、特に女性の就業意欲を殺ぐような税制上の措置について改革を進める。
2.法人課税の見直し
法人課税については、国と地方を合わせた実効税率を30%以下を目標に引き下げる一方、法人事業税の外形標準課税化などの検討や、法人住民税均等割の見直しなどによって課税ベースの拡大をはかる。また、法人事業税の外形標準課税についてその導入を検討する。
3.有効な土地税制の確立
資産課税のうち、土地・建物に対する保有課税については地方自治体の自主財源である固定資産税を基本としながらも、土地基本法の精神に立脚した地価税も有効に活用する。その課税対象となる時価の算定のあり方について統一する。自治体はその税率を自由に決定できるものとする。土地譲渡所得課税を除く土地流通税は、手数料的側面の強い登録免許税を実態に即して登録料に変更する以外は廃止を基本とする。
4.その他の資産課税
資産の相続・贈与については、個人間の資産格差が拡大しつつある傾向をも考慮しつつ、不労所得に対する一定の累進制を持つ課税方式を維持する。その際、中小零細企業のいわゆる事業継承の取り扱いについて改めて検討する。
5.消費税の改革と福祉目的税化
消費課税は、基礎年金財源に充てる福祉目的税に改める。「益税」「損税」を生じる原因である消費税の仕入れ税額控除のあり方について、現行の帳簿方式からEU型付加価値税と同様のインボイス方式に変更する。EU諸国の付加価値税とくらべて高過ぎる免税点(現行3,000万円)についても、インボイス導入に伴う納税義務者の負担増も勘案しつつ、適切な水準に引き下げる。なお、消費税の逆進性を緩和する措置として、カナダの消費税額控除制度と同様の世帯人員数等に応じた控除方式を検討する。
2)徴税システムの充実
1.納税者番号制度の導入
公平な所得捕捉と課税には、納税者番号制度の導入が不可欠である。利子・配当・株式譲渡益などの総合課税化を行うのに必要な範囲に限定した番号制度を、プライバシー保護などに留意しつつ導入する。
2.源泉徴収制度・年末調整制度の選択制
サラリーマンの源泉徴収制度における年末調整制度については、年末調整と確定申告の選択制についてその選択の幅をさらに広げていきます。
3.徴税機関のあり方
徴税事務の効率化と住民の利便性を図るため、国税、社会保険料や地方税のうち所得課税など一定の税目については、将来の分権連邦型国家において新たに「歳入庁」を設置し、一元的に代理徴収事務を行うこととする。地方自治体の独自の調査により賦課している税目については引き続き地方自治体が徴収を行う。
4.国民の監視・異議申立て
サラリーマン税制改革の一環として、納税者による更正の請求、異議申し立て、納税猶予などの納税者の地位と諸権利の保障を明確にした「納税者権利憲章」を制定する。また、納税者教育を推進するとともに、脱税への制裁・罰則を強化する。
5 信頼される政治に向けた改革
政治改革は、選挙制度改革にとどまるものではありません。今なお、政治資金の透明化、政官業の癒着、国民の政治不信など、政治改革を必要とする状況は変わっていません。政治が、真のリーダーシップを発揮するためには、国民から信頼されることが必要です。
1)政治倫理の確立
国会議員等の資産公開制度を強化し、在任中の株取引などを対象に含めるとともに、親族・秘書などの名義による公開逃れに歯止めをかける。また、虚偽記載に対しては強い罰則を設ける。国会議員等が、公務員に不正行為をあっせんして、その対価を得るあっせん利得について、罰則付で禁止する。企業・団体による政治献金は原則禁止とする。
2)選挙制度のさらなる改革
地方分権の進展に対応して、衆参両議院の議員定数を段階的に削減する。衆議院の選挙制度は、「政権を選択する選挙」という意味合いを持つ小選挙区を基本とした現行制度の骨格を維持し、繰上当選や比例当選議員の小選挙区補欠選挙への出馬など問題のある部分を補正する。参議院については、二院制のメリットを生かす見地から、衆議院との差別化を重視して、選挙制度を見直す。
3)政治への参加機会の拡大
成人年齢を18歳に引き下げることで、選挙権年齢も引き下げるとともに、被選挙権年齢も20歳を原則とする。在外邦人投票制度を拡充し、選挙区選挙についても投票の機会を保障する。インターネットを利用した選挙運動を可能にするとともに、電子投票制度の研究を進める。定住外国人の地方参政権を認める。
4)自治体首長の多選禁止
多選による権力集中の弊害を防ぐため、今後地方自治体の首長の4選を禁止する。
6 開かれた司法の実現
司法を国民の手に取り戻し、新時代のニーズに対応するため、その抜本的な改革を断行します。現在の日本の司法は、「二割司法」と呼ばれるように、本来期待されている機能のごく一部のみしか果たしていません。紛争の多くの部分が、「泣き寝入り」「政治決着」「暴力」「行政指導」などで解決されており、司法は量においても質においても、本来の働きをしていないというのが実状です。公正な立場から、政官業の癒着から生じる不正や腐敗をただし、また、社会の変化によって生じるさまざまなトラブルや犯罪を裁いていくためには、司法の機能を高めると同時に、「国民に身近で、国民の権利を守る司法」へと改革していくことが必要です。
また、わが国は、国際化やそれにともなう規制緩和・自由化の時代をむかえ、新たな法的サービスの必要にも迫られています。これからは「長くて費用のかかる」裁判は通用しません。社会のルールを明確にし、そのルールにのっとって、合理的かつ早期にトラブルを解決する良質な法的サービスを提供します。
1)法曹人口の拡充
司法試験合格者の数を、少なくとも千五百名程度まで増員する。司法試験合格者の増員に伴い短縮された司法修習期間を補うため、修習終了者は全員弁護士補として一年間のOJT(職場内訓練)を行い、その後に法曹資格を得て、弁護士又は検事になる制度とする。
また、迅速な裁判を実現するため、裁判官の数を当面3割程度、検察官の数を当面2割程度増員する。また、裁判所書記官、検察事務官の増員も行う。
2)集中審理方式による裁判の迅速化
現在の民事裁判では、争いのある事件については、長期化することが避けられない構造になっている。当事者による主張・立証活動を、原則として短期集中的に実施することを義務づける集中審理方式を採用し、裁判の迅速化を図る。
3)法曹一元制度の実現
裁判官のキャリアシステム(官僚制)を改め、法曹一元制度を実現する。判事の資格を、弁護士・検察官経験10年以上を有する者などとし、裁判所毎に新たに「裁判官任命諮問委員会」を設置してその推薦に基づき任命する。今後10年間を、そのための移行期間とし、基盤整備を進めるとともに、弁護士から裁判官となる者の数を順次増加させる。裁判官と検察官が、相互に交流する制度は、裁判の公正さを疑わせるおそれがあるため、直ちに禁止する。
4)参審制度の導入
行政に関わる裁判に、参審制度(職業裁判官とともに一般国民の代表が参加して裁判を行う制度。職業裁判官を排除しない点で陪審制度とは異なる。)を導入する。導入対象は、行政機関や公務員が当事者の行政訴訟と民事訴訟、公務員犯罪に関わる刑事訴訟とする。
5)「法律扶助法」と「被疑者国選弁護法」の制定
「法律扶助法」と「被疑者国選弁護法」を制定し、経済的理由で裁判を起こすことができなかったり、弁護士を依頼できなかったりする状態を解消する。
U新しい経済社会の構築に向けて
1 市場機能を活かした経済と財政の構造改革
民主党は、市場原理を信頼し、自由な貿易・自由な市場経済を支持します。経済における政府の役割は、公正な競争の促進と市場ルールの監視、経済システムのセーフティーネットの整備、失業や不公平な格差の拡大など行き過ぎた市場主義による社会的歪みの是正にとどめるべきだと考えています。官僚の手による調整よりも、消費者の総意に基づく市場の調整に委ねる方がうまくいくと信じるからです。
過剰な規制や政府の市場介入は、市場の機能を阻害し経済の活力を低下させるものです。経済活動に対する規制は、環境保護や最低賃金など社会的要請に基づく合理的な規制に限定して可能な限り撤廃し、市場の機能を高めて民間の活力と企業家のやる気を引き出す経済構造の改革を早急に推進していきます。
民主党は、「インフレなき持続的成長」と「新しい完全雇用」の実現をめざしています。日本経済は2%から2.5%程度の潜在成長率を実現できずにいますが、民主党は、「景気回復なくして財政再建はない」という立場から、日本経済が潜在成長率を実現するまでの間、景気回復を優先して財政刺激策を継続します。ただし、公共事業費配分の重点化など予算の無駄使いをなくす歳出構造の改革に取り組み、財政健全化の道を確実にします。また、将来への不安を解消して消費マインドの向上をはかる一方、従来型公共事業を上回る雇用拡大効果が期待できる環境・福祉など新しい公共事業に優先配分していきます。
失業率が過去最高を記録する中で労働市場の柔軟性を高めるための諸制度の改革が急務となっています。新しい雇用機会を創出する新産業の育成や人材の円滑な移動を可能にする労働市場の整備、人材の移動を阻んでいる社会保険制度の改革などを急ぐことが、経済構造改革を成功させる道だと考えます。民主党は、パートや派遣労働など多様な雇用形態の人々も対等な処遇が受けられること、性別や年齢によって差別されることない公正な労働市場が確保されていること、介護や子育ての休業をした人たちがキャリア形成においても不利益にならないこと、転職しても「やり直しがきく」社会であることなどを含め、全ての働く意欲のある人たちに多様な雇用機会が保障されている社会の実現をめざします。まさに、成熟社会にふさわしい「新しい完全雇用」体制の構築です。
2 自立成長型経済への道
日本経済を自立成長軌道に乗せていくためには、行政指導によって特定の企業活動に補助や支援を与える手法はとってはならず、市場における自己責任原則を確立することが何よりも重要です。しかし、自民党中心の政権は、財政規律を失わせて巨大なモラルハザードをもたらしつつあるうえ、産業競争力会議の場合に見られように、所管省庁による行政指導方式を復活させるなどまさに時代に逆行する手法を採り始めています。これでは、公正な市場ルールの下で、民間の創意工夫や地方の活力が最大限に発揮される「自立成長型の経済」の確立は期待することができません。
景気の動向は、巨額の財政資金の投入によって景気の底支えは見られるものの、民間設備投資や個人消費の伸びは定かでなく、景気回復のための慎重な対策も求められています。民主党は、当面の景気回復に向けては、従来型公共事業から将来を見据えた新しい公共投資へのシフトであり、とりわけ、IT革命(情報通信革命)に対応するデジタル経済の道を加速的に推進していく戦略的経済政策の展開が求められていると考えています。
また、社会保障制度の充実による過剰貯蓄の解消・消費の活発化が不可欠です。年金や医療保険に対する将来不安や不十分な福祉サービスに対する不信が、将来への不安を増大させて過剰な貯蓄を生み出しており、これでは、消費の活性化は望めません。景気低迷の要因ともなっている消費の落ち込みを解消し、安心できる国民生活を確立するためにも、社会保障制度の充実を急ぐ必要があります。民主党はまた、これからの公共投資についても、財源配分の思い切った見直しを行い、国民の将来不安を解消する社会保障分野へ優先的に取り組んでいきます。
それと同時に、自立成長型経済の確立向けて、(ア)規制改革や公正な競争促進など市場基盤の確立とIT革命に対応するデジタル経済化の戦略的促進、(イ)思い切った起業家支援、(ウ)金融システムの安定化と資本市場の整備、(エ)労働市場の改革と「新しい完全雇用」体制への移行が不可欠であり、かつ、(オ)持続可能な経済を支える規律ある財政運営の実現が必要です。民主党は、この5つの課題を着実に実行しつつ、新しい自立成長軌道への道を押し進めていきます。
1)戦略的規制改革の実施
すべての経済的規制を時限性として、延長する場合は、その理由を行政が明らかにする責任を義務付ける「規制サンセット法」を制定する。社会的規制に関しては、基準を明確化し透明化を進める。とりわけ、従来型公共事業に代わって、これからの成長が望める情報通信、バイオ、環境、福祉、教育文化などの分野で、民間投資を誘発するための戦略的規制改革を優先的に実施する。
IT革命に対応するデジタル経済化を加速的に促進するため、電気通信分野でのより一層の規制緩和を戦略的に実施する。
2)インセンティブを高める最高税率の引き下げ
所得課税の最高税率は40%程度を目標に、法人課税の実効税率は30%程度を目標に引き下げをはかり、個人、法人の所得向上に向けたインセンティブを高める。また特に、上記の成長期待分野に対して投資減税を実施する。
3)透明で公正な競争の促進
自由な経済活動を保障する大前提として、公正な取引ルールや時価評価による企業会計基準を確立し、情報公開の正確さを担保する。あいまいで不透明な商慣行を是正し、「独占禁止法」の実効性を担保するために、公正取引委員会事務局の調査部門を質量ともに倍増する。
また経営情報の開示に関して、違法行為に対する処罰を強化し、そのチェック体制を確立する。公認会計士制度の改革によって、会計監査を実効あるものとするとともに、検察庁の特別捜査部と警察の経済犯罪捜査部門を抜本的に強化して、違法行為を見逃さない体制をつくる。
4)知的財産権の保護システムの強化
知的財産権政策を産業競争力強化の重要な政策手段として位置づけ、首相直属で知的財産権政策を立案する知的財産権・科学技術担当の首相補佐官を設置する。政府資金による研究開発の成果である発明に対して、大学、非営利機関及び中小企業が所有権を取得することを許容する「米国特許商標法修正条項」(通称、バイ・ドール法)にならった法律をわが国でも成立させ、日本版のSBIR(ハイテク中小企業の技術開発支援)制度を確立する。また、裁判所での知的財産権専門部の拡充、高い専門性を有する裁判官及び裁判所調査官の育成増員に加え、裁判所と特許庁との情報交換制度の整備、人的交流などを促進する。
5)起業家のやる気を引き出す新産業支援
起業家を育成し、新規産業を開拓し、雇用機会を創出することがこれからの日本経済にとって不可欠である。しかし、日本経済の現状は廃業率が開業率を上回り、法人の減少傾向が続いている。やる気のある国民にビジネスチャンスを与え、容易に新規事業を起こすことのできる環境を作ることこそが、政治に課せられた喫緊の課題である。とりわけ、インターネット時代の分散処理に対応し、多様な情報関連産業やスモールビジネスのチャンスが広がっている。これらの新規事業を支援することによって、「護送船団型経済社会」から「自律成長型経済社会」へと大転換していく。
民主党は、この転換に際して、5年程度で起業家倍増を実現し、わが国の開業率を3.7%から7%に、毎年の新規設立登記数を11万弱から20万件に、そして新規事業による雇用を400万人創出することを目標に取り組んでいく。
1.税制・金融改革で起業家のやる気を刺激
上場基準の緩和や店頭登録市場の整備、社債登録のコンピュータ化などによって資本市場を整備し、ベンチャー企業の資金調達方法を多様にする。大胆な成功報酬を可能にするストックオプションの上限額(現行1000万円)の撤廃、連結納税制度の導入、エンジェル税制の拡充など新規事業が生まれやすい証券市場・税制を確立する。またスモールビジネスなどの起業を促進するため、会社設立要件の緩和などを推進する。
資本金規模にかかわらず、企業は創業時3年間は法人税を免除する措置を講じる。ただし、実質的に同一法人と見なせる企業については、営業期間を通算する制度を創設して、悪質な脱税を防止する。
2.ベンチャー企業、NPOへの技術支援
優れた商業化の可能性と開発リスクの高いプロジェクトの事業化を支援し、ベンチャー企業の育成を図ることを目的とした多段階の支援制度(日本版SBIR)を確立する。また、情報通信、バイオテクノロジー、環境、福祉、教育文化など新規事業分野、そしてNPOセクターに対して重点的に技術・開発を支援する。
3.ベンチャー育成を柱とする産業競争力強化戦略の展開
既存産業の存続、過剰資産・土地の処理などに偏ることなく、ベンチャー企業育成を柱とする産業競争力強化の総合的な施策を実施する。通商問題、産業の戦略的位置づけ、標準化競争での支援などに国家が積極的に関与していくため、米国の国家経済会議(NEC)にならった内閣総理大臣直属の組織を創設する。
4.起業家を育成する教育制度
大学などのビジネススクールの創設を推進する。国立大学院の教員が、NPOなどの役員になれるような規制緩和を実行する。産学協同研究を推進し、大学をベンチャー企業誕生の拠点にする。特に、初等教育段階から起業家教育を推進し、企業での実習を単位として認定するようなインターンシップ制度の充実を行う。また、大学に「ベンチャーインキュベーター(創造的新企業の孵化センター)」を創設し、アイデアを審査機構に提出して審査をパスした創業意欲のある人が、インキュベーターの中に無料で事務所兼実験室を持つことができるような仕組みを創設する。
5.女性の起業家育成
金融機関が融資するにあたり、性別だけで差別をしないよう環境を整備する。特に、政府系金融機関の貸付制度、信用・債務保証制度などについて、女性を対象とした特別制度の創設や窓口開設などを進める。また、政府調達の一定比率を女性起業家に振り向ける仕組みを創設するとともに、各省庁に女性起業家の担当者を必ず一人は配置するものとする。SOHOによる起業をめざす女性を重点的に支援するセンター機能を整備促進する。
6.“勤労者”“求職者”を「起業家」に転換
勤労者の中から起業家が育つよう、体系的な訓練や動機付けが行われるような職業教育訓練を行う。また、雇用保険被保険者である求職者に対する職業能力教育・訓練を強化し、求職者のやる気を刺激することによって、起業家の数を増大させる。
7.起業家が再起できる「セカンドチャンス」の確保
会社更正を簡易なものとし、起業家の再起を促す。そのために労働債権の十分な確保を前提としつつ、簡易な倒産処理手続きを株式会社以外の法人にも広く適用されるようにする。債務者保護や破産手続きの負担軽減などに関する法律を整備する。また、雇用保険制度の拡充、年金のポータブル化などに取り組み、起業した際のリスクを少なくするためのセーフティーネットを確立する。
8.規制改革、地方分権による新産業の育成
経済的規制は原則撤廃し、ベンチャー企業の新規参入を容易にする。地方経済をリードする中小企業を育成する体制を確立するために、地方法人諸税、政策金融、外国企業誘致などの産業政策は地方自治体に全面委譲する。
3 金融システムの安定と市場機能の強化
民主党は、財政と金融を完全に分離して裁量行政と決別し、透明な市場監視ルールに基づく公正な金融行政を確立します。金融は、市場参加者の自己責任と市場原理に基づく競争を原則とし、市場に関する情報の適時適切な開示の推進を基本とします。「金融再生関係法」に基づき不良債権の適切な処理を推進し、健全な金融機関の信用創造力の再生と金融システムの安定化をはかります。
金融政策は、物価水準と為替相場の安定を最優先に、日本銀行の独立した判断で行われるよう日本銀行の独立性を強化します。
民主党はまた、日本の金融システムが、これまでの間接金融中心のものから直接金融のウェートをより高めたものへとシフトしていくことが趨勢であるとともに、政府としてもそのための制度的基盤を早急に整備していくことが重要だと考えています。特に、投資家に有利な運用の機会を確保し、新規産業への資金供給を円滑にするために、中小ベンチャー企業向けの新しい資本市場や債券市場の創設をめざします。また、2001年4月からのペイオフの実施に備えて、モラルハザードを拡大しない預金保護のルールを確立します。金融業界別の垣根をなくして金融機関の国際競争力を強化するため、金融関係法制を業界別縦割りの法制から「金融サービス法」を中心にした統一した法体系に一新します。
1)財政と金融の完全分離 ― 金融失政を繰り返さない体制作り
財政当局の要求によって金融政策がねじまげられたバブルの失敗を繰り返さないために、「財務省設置法」を改正し、財務省(2001年1月までは大蔵省)から金融行政を完全に分離して新設の金融庁に一元化する。金融庁長官は専任の国務大臣とする。外国の金融検査の専門家や公認会計士などを新規に採用するなど金融検査官を増員して、金融検査体制を充実する。
マクロ経済政策の調整のため、内閣総理大臣を座長とし、日銀総裁、大蔵大臣(財務省大臣)などで構成する「財政・金融懇談会」を定期的に開催する。
2)公正な金融経営ルールの整備と監視
国際標準の時価評価基準による経営情報開示の義務化により、金融機関のディスクロージャーを推進する。自己資本比率の算定にあたっては、不良債権の算定根拠の明示を義務づける。金融庁に会計監査部(仮称)を新設し、会計監査法人や公認会計士が行う会計監査のチェックを強化する。公認会計士を大幅に増やすとともに、会計士業務の厳格な運用を求めて、粉飾決済について故意の不正行為があった場合は、公認会計士の登録を抹消するほか、不正行為が組織的に行われた場合は、会計監査法人に対して業務停止を命ずる。
3)中小ベンチャー向けの新資本市場、新債券市場の創設
中小ベンチャー企業向けの新しい資本市場や債権市場の創設を規制緩和や税制、財政の面から強力に推進する。特に、新市場の創設に合わせて、電子商取引の普及を促進するために、店頭の対面取引を前提とした規制を緩和する「証券取引法」などの改正を速やかに行う。
4)預金保険、生命保険・損害保険のセーフティーネットの強化
2001年4月のペイオフ実施に間に合うように、安易な債権放棄など金融機関のモラルハザードを拡大しない形で破綻処理の方法を多様化し、預金保険のセーフティーネットを拡充することで金融システムを安定化する。
生保・損保会社の株式会社化を推進し、保険支払い能力を示すソルベンシー・マージン比率基準を達成できない生保・損保会社に対しては早期是正措置を講じる。また、会社の破綻に伴う経営責任・契約者(相互会社においては社員)責任を明確化したうえで、保険のセーフティーネットを強化する。
5)「金融サービス法」の制定
金融ビックバンに伴う業界の相互乗り入れ、競争の激化、商品の複雑化に対応して、金融サービスに関するトラブル・被害から投資家を保護するため、業種ごとに分けられてきた法律を総合化、強化した「金融サービス法」を制定する。この法律には、商品に関する情報開示、わかりやすい説明の義務化、顧客の投資経験、理解力、資金に適合しない投資商品の勧誘の禁止、契約の書面化と交付の義務化、長期契約のクーリングオフ制度などの内容を盛り込む。
6)「地域再投資法」の制定
米国の「地域再投資法」にならって、総貸出に占める地域企業向け融資比率(地域再投資比率)の公表を義務付けるなど、地域経済の振興に地域金融機関が公的な責任を果たすように促す「地域再投資法」を制定する。特に、公的資金による資本注入を受けた地域金融機関に対しては、一定の地域再投資比率の遵守を義務付ける。
4 労働市場改革で「新しい完全雇用」社会の構築
民主党は、雇用の安定は国の責務であると考えています。この考えに立ち、中期的に、働く意欲のあるすべの人々に雇用機会を保障することを目標とする「新しい完全雇用」社会の実現につとめます。このため、産業構造の変化に対応してタイムラグなく、雇用の創出と人材の移動が連動できるように労働市場の構造を改革する施策を強力に推進します。また、一度失業した人が再起を期して挑戦できる中高年の雇用機会の門戸が広い「セカンドチャンスのある社会」を実現します。労働移動の障害となっている企業年金や社内融資などについては大胆に制度改革を推進します。
企業に対しては、安易な雇用調整を厳しく監視するとともに、解雇者の再就職までを企業の社会的責任として対応を義務づけます。さらに、民間事業者による再就職支援業、職業能力開発業の育成を積極的に進め、勤労者の自立と職業能力の開発を多方面からバックアップします。同時に、情報通信、バイオ、環境、福祉、教育文化などこれからの成長が望める分野で新たな事業を育成し、就業機会の創造に挑みます。
1)雇用における「年齢差別禁止法」の制定
中高年や若年者の雇用機会を確保し、「セカンドチャンスのある社会」を実現する突破口として、米国の雇用における年齢差別禁止法にならい、採用募集、昇進、解雇などの様々な雇用の局面において年齢を理由にした差別を禁止し、罰則を設ける雇用における「年齢差別禁止法」を制定する。
また特に、中高年にも公務員や教員など公的部門や各種の国家資格を必要とする職業の採用の門戸を開放する。このため、一般職の国家公務員の採用資格試験、教員免許試験など各種資格試験の受験年齢の上限を定年年齢直前まで引き上げる。
2)再就職支援ビジネスの自由化と育成
中高年ホワイトカラー層の雇用問題に対応するため、「職業安定法」を改正し、再就職支援ビジネスを自由化する。国は、融資制度、税制優遇措置などを講ずるとともに、悪質な事業者の監視と排除を厳格に行う。また、公共職業訓練施設の民間への貸し出しや民間事業者がノウハウを蓄積できる環境を整える。24時間サービスやインターネットによるサービスなど公共職業安定所の情報提供サービス体制の充実に取り組む。
雇用していた労働者を解雇する場合、離転職者の再就職まで企業の社会的責任を果たすよう求めるとともに、再就職支援事業についてのカウンセリングとコンサルティングを組み込んだきめ細かい対応内容を企業に義務づける。ただし、企業の責任において再就職支援ビジネスに委託できるものとする。
中高年層に対する求人拡大のため、当面、現行制度を抜本的に拡大した「中高年人材移動助成金」を創設し、45歳以上の勤労者を受け入れる企業に助成する。若年層には、適職探しや職業的支援のため、学校での職業能力カリキュラムの充実やインターン制度の導入を図る。
安心して求職活動や職業訓練に専念できるよう、全国延長給付の給付期間を一律90日に延長するなど失業給付を充実させる。倒産などによる失業者に対して、雇用保険の被保険者であった期間が6ヶ月に満たない者についても90日間の失業給付を実施する。
3)職業能力開発支援事業の拡充
円滑な人材移動を促進するために、現行の雇用調整助成金制度に替えて再就職を目指す勤労者の職業能力の開発に対する助成金を大幅に拡充する。現行の教育訓練給付制度の適用対象に、専修学校、大学院や大学のコースも入れ、より専門的な能力開発を選択肢に加え、原則自由選択方式とする。また助成限度引き上げや助成要件の緩和を実施する。
企業に対しては、在職中の職業能力訓練のための企業内制度(費用負担、長期休暇制度)を義務づける。雇用保険の給付条件を緩和し、現状平均6ヶ月程度の訓練期間を1年程度まで可能にする「訓練延長給付」を支給する。雇用保険の対象にならない者にも、一定条件下で「職業訓練手当」を支給する。
4)「労働移動円滑化法」の整備
労働移動が、不安定な雇用、著しい労働条件の低下を招かないようにする「労働移動円滑化法」を制定する。これにより、全ての勤労者の加入に向け、雇用保険への加入要件を緩和するなど、転職や雇用形態の違いによる社会保障制度上の不利を解消する。
あらゆる職種、とりわけホワイトカラー層のミスマッチ解消と移動先での能力に応じた処遇を確保するためには、汎用性のある職業能力評価システムを創設する必要がある。このため、我が国の実状を踏まえた社会性のある職務・職能評価基準(「職業能力評価システム」)の形成に向けて、有識者・専門家による委員会を設置し、その評価手法を含めた研究調査に早急に着手する。また、企業の社会的責任の明確化のため、従来曖昧になりがちであった労働契約の明示と雇用者責任の履行を徹底する。
5)公的金融機関による社内融資の代替など労働移動の障害の克服
転職に伴う社内融資の住宅ローンの繰り上げ返済などが、労働移動の障害になっていることに鑑み、企業の社内融資について、退職時に公的金融機関による振替融資ができる特別融資制度を創設する。また、企業年金のポータブル化など選択肢を広げて、労働移動により将来の経済的な不利益が生じないようにする。
6)ワークシェアリング導入による雇用拡大
これからの日本において、とりわけ「労働の分かち合い(ワークシェアリング)」の発想に立ち、雇用政策を確立していくことが重要です。そのためには、何よりもまず、増大する雇用不安に対応し労使がいわば休戦協定を結んで、いわゆるサービス残業の中止、残業そのものの縮小、年次有給休暇の完全消化などの具体的対策を考案しプログラム化する努力が必要である。
また、これらの取り組みと併せて、有給休暇の拡大、残業規制や時間短縮促進、短時間労働や臨時雇用に係る公正な雇用条件の確保など、ワークシェアリングに必要な事項について研究する。とりわけ、ドイツやフランスなどと比較して依然三割近くも長い年間労働時間の短縮と余暇活動の活性化にもつながる「長期休暇の利用促進」について本格的な方策を検討する。
5 歳出構造の改革による財政の健全化
今日の危機的な財政状況は、国民に将来の負担増の不安を与える重しになっており、財政再建は中期的に必ず成し遂げなければなりません。民主党は、「歳出構造の改革なくして財政再建はなく、景気回復なくして財政再建はない」という立場から、2%から2.5%程度といわれる潜在成長率を実現して景気回復がはっきりするまでの間は、財政刺激策を継続しつつ、歳出構造を見直して税金が無駄なく最適な形で利用されるようにつとめます。
1)財政の透明化と単年度財政主義からの脱却
国の会計を企業並みに透明化し、不良債権化のおそれのある事業に税金が使われないようにする。このため、「財政透明化法」を制定し、予算・決算に複式簿記・発生主義などの企業会計的視点を導入して、国の財政状況を、各省庁別にバランスシートの形で国民に分かりやすく開示する。財政法の予算の単年度使いきりの原則を改め、節減した予算の一定割合を翌年度の政策予算として各省が留保できる制度を導入する。予算案と同時に5年間の中期的な財政収支の見通しを含む財政再建計画の国会提出を政府に義務付ける。特に、財政投融資制度を含めた財政節度を保つための歳出ルールを明確にする。
2)公共事業費配分の重点化・ムダな公共投資の削減
当面は、現状の公共投資水準を維持しつつ、公共事業費の配分を徹底的に見直し、重点化を図る。国営干拓事業は廃止するなどムダな公共投資を削減するとともに、事業実施前に徹底した費用対効果分析を行なう。一方、高速道路整備の税方式への転換を行い、道路特定財源の使途を見直し、高速道路にも利用できるようにする。
3)国の事業の限定化と国有資産の売却
国が行う事業は、民間でできない事業に限定する。この観点から、全ての国の事業を民間参入の可能性の観点から見直す。民間の参入が可能な事業分野は、国の事業から分離し、民営化を推進するとともに、民間参入を自由化して競争を促進する。民営化する国の事業の政府保有株式の売却、遊休地などの国有資産の売却などによって財政の健全化を推進する。
V世界のモデルとなる循環型社会の創造
1 循環型社会に向けた環境政策
民主党は、この国の技術と長い間の蓄積されたノウハウによって、日本を世界に誇る循環型社会とすることができると考えています。
そもそも日本は典型的な循環型社会でありました。江戸時代の300年間は、資源を国内で賄い、リサイクルに徹して環境汚染を極力抑えていました。環境問題が私たちの生活に及ぼす影響を考えると、今こそ江戸時代の知恵に学び、資源の使用量を極力抑え、廃棄物などの排出量を徹底的に削減することが必要です。すでに、ある自治体では「ゼロ・エミッション」社会に向けて、火力発電から太陽・風力・波力など環境負荷のない発電システムへの変換、電気自動車の導入、建設廃棄物の徹底利用など様々な取り組みがなされています。このような地域レベルでの取り組みを全国的に展開していくことを通じて、必ずや循環型社会・日本の姿が確立されるものと思います。
日本の省エネルギー技術は常に世界水準のトップを占めています。また、これに加えて、太陽熱や光、バイオ、風力などを駆使した新エネルギーの開発に戦略的に取り組むならば、世界に貢献することも可能です。民主党は、科学技術研究の重点として、環境負荷の少ないエネルギーの開発と社会システムの構築を置き、21世紀初頭の戦略プロジェクトとして推進していきます。
しかし、文字通りの資源循環型社会を実現していくためには、政府のみならず、企業や国民一人ひとりの熱意と取り組みを欠くことができません。私たちは、企業にも素材やパーツの再生利用が可能な製造工程の確立に努めることを求めたいと考えますし、国民の皆さんがリサイクル社会に見合ったライフスタイルを形成していくよう願っています。民主党は、経済的・物質的豊かさを持続させつつ、後世代に環境汚染や環境コストのツケを回す政策については極力これを排し、環境と調和する新しい経済社会の実現をめざします。
大量の大気汚染や食の安全に対する不安を解消し、国民の健康を守ることは政府の基本的任務です。国民に新たな不安を呼び起こしているダイオキシン問題や環境ホルモン、遺伝子食品対策などに全力を上げ、国民の健康の確保を最優先します。
2 持続可能な未来へつなぐ循環型社会の形成
民主党は、成長の限界と地球の有限性を認識し、経済効率性を環境容量内に制御する社会制度の構築をめざします。環境基本法をはじめとする各種の環境法が策定された現在においても、現場での環境破壊が後を絶ちません。これは、事業を行う法律の中に、「環境」の視点がほとんど組み込まれていないからであり、全ての政策・法律に対して、環境の視点を組み込み、環境優先の法体系を築くことが必要です。循環型社会の構築に向け、既存の経済社会制度体系を環境の視点から見直し、国民と共に改革していきます。
また、市場メカニズムにおいても、効率性と公平性が確保される反面、外部不経済の問題等が生じ、環境負荷を増大させている現状を改革し、環境への負荷等によって生じる外部費用を内部化し、公正な市場メカニズムを構築する必要があります。それととともに、経済成長(GNP)に代わる環境成長(グリーンGNP)の指標を確立し、社会の成長指標とするよう改善します。
1)環境基本法の制定
環境権と環境保全対する責任を明示した環境基本法を制定する。「人間の生存に不可欠の良好な環境を享受する権利」を明記し、人権としての環境権を確立する。自然環境を将来世代に受け継いでいくためにも、国民の責務として「将来の世代へ良好な自然環境を引き継ぐ義務」を明記する。
また、環境問題の解決のためには、「生活の質」や「豊かさ」の意味を環境との関係において明らかにするとともに、いかなる行動が環境と調和しつつ豊かさを増進させうるのかを一人ひとりが真剣に考える機会が必要であることから、ライフスタイルを大量消費・大量廃棄から環境重視に転換させるための学習・教育を学校や地域で推進するよう、環境学習教育についても基本法に明記する。
2)資源循環法の整備
ゴミゼロ社会をめざした「資源循環法」を整備する。廃棄物発生を極力抑制し、発生した場合も素材又はエネルギーとして廃棄物を利用することを原則とし、廃棄物の利用及び処分の責任が廃棄物の発生者、保有者にあることを明確にする。特に不法投棄に対しては厳罰をもって臨み、また、産業廃棄物を対象とするマニフェスト(積荷帳票)の添付・追跡を徹底する。社会動脈系・静脈系のビジネスを育成し、両者の連携を推進して、「環境配慮が組み込まれた生産システム」を促進する。
3)化学物質総合対策法制の構築
環境ホルモンなどごく微量で健康被害を与える物質については、その科学的知見を深めるとともに、当該物質の分布や排出源を特定し規制する。また、科学的に原因が解明されなくても、未然防止の観点から早期に対策を施す基準の整備を進める。このため、化学物質の環境リスクを低減させ、対策を体系的・総合的に講じる「化学物質総合対策法」を制定する。
ダイオキシンについては、発生量に応じた課徴金制度の創設、廃棄物焼却施設の改修などを徹底する。緊急措置として清掃工場の改修・建て替えにあたっての国庫補助率を1/4から2/3へ引き上げる。
4)環境情報公開の制度化
環境に関する情報は、行政や企業に集中的に存在し、国民は自由に情報を引き出すことができないことが多い。このような情報の非対称性を解消するため、「環境情報公開法」を制定する。
5)環境調和型公共事業の実施
公共事業についても、環境アセスメント法に基づく一層の環境配慮のほか、グランドワークやビオトープなど環境再生のための復元型公共事業を積極的に行い、循環と共生のための社会資本整備を国としても率先して推進する。また、環境負荷の大きい公共事業については、途中アセスメントの導入、見直しや中止を可能とするよう修正手続きの制度化に取り組む。
河川の自然を守るための市民参加を保障する制度を構築する。このため、森林、河川、海岸等の各法律を水循環という観点から環境指向的「水循環管理法」の中に統合する。その際、地域の自然的・文化的・社会的特性に応じて、住民が森林や河川の問題に真剣に取り組むことのできるシステムを法律上組み込む。
3 地球環境の保護
地球温暖化やオゾン層の破壊など、今日の環境問題は一国の努力や制度設計では解決できないものとなっています。それどころか、日本は、優れた技術や豊かな経済力を有する先進国として、これらの地球環境問題に率先して責任を果たしていくことが求められています。民主党は、地球環境問題に対する国の姿勢は、この国のかたちを問うものであり、国内の循環型社会の構築とともに、関係する企業や専門家、NPOなどとの連携を通じて、この課題にチャレンジして行きます。
1)地球温暖化対策
温暖化の進行をくい止めるためには、現在の世界の温暖化物質排出量を半分以下に抑えなければならない。現在の大量生産・大量消費・大量廃棄型のライフスタイルや産業構造を環境負荷の少ないものへと転換するために、環境税の導入を検討する。地球温暖化防止のために国際条約で定められた二酸化炭素やフロンガスの削減目標の達成をめざし、化石燃料多消費型の産業には環境負荷に比例した課税がなされるように石油関連税制などを抜本的に見直す。一方で、環境保全技術開発には設備投資段階から税制・財政面での手厚い支援策をとる。ハイブリッドカーや天然ガス自動車など環境保全型技術の普及には、最優先で集中的に補助金や税制優遇措置を講じる。毎年の目標達成度は白書のかたちで国民に公表する。
2)オゾン層保護対策
特定フロンなどの人工の化学物質については、現在では、国際的な枠組(モントリオール議定書)により生産規制がなされている。しかし、機器中のフロンガスの回収は義務づけられておらず、回収も進んでいないのが実状である。オゾン層保護法を改正し、フロンガスの回収と破壊を義務づけるとともに、途上国のフロン対策への国際的支援を行う。また、途上国などに対して、代替物質への移行と破壊処理のための国際的技術支援を行う。
3)砂漠化対策、森林保全
今日、世界中で砂漠化が進展し、生産に適さない土地が増大して食糧不足などの生活条件の悪化や環境難民の発生による社会的な混乱が各地で起きている。また、熱帯地域の開発途上国の森林面積が急激に減少し、各地で環境破壊が問題化している。日本の木材輸入は、世界の45%を占め、そのうちほぼ半分を開発途上国からの輸入に頼っており、森林伐採による自然破壊を防止することは、わが国の重大な責務である。砂漠化防止や森林保全のために、植生の回復等の積極的支援を、その地域の住民の生活も考慮し、NPOとも協力しながら進める。
4)環境汚染物質排出・移動登録の徹底
PRTR制度(環境汚染物資排出・移動登録)に関しては、日本が世界の環境法制をリードするためにも、国民の知る権利を明確にし、対象化学物質の範囲を柔軟にし、企業秘密に関して統一的な基準を定めるとともに、地方自治体が主体的に行えるようにするなど制度を改善する。
5)生物多様性の保全
生物の多様性の確保は、人類にとっても重要な課題である。世界各地での開発行為の結果、絶滅の危機に瀕している動植物が多数ある。これらの種を保存するためには、その種の生活する環境そのものを保全する必要がある。豊かな生態系を育む自然環境を国際的に保全するための財政的支援と、生物多様性に関する国際的な調査研究をNPOと協力しながら積極的に支援する。
また、湿地を保全し、失われた湿地を回復するために、「湿地保全法」を制定する。さらに、良好な生息環境を保全し、野生生物と人間の共存を図るために、保護より駆除が優先されてきたこれまでの鳥獣保護法に代えて、新たに「野生生物保護法」を制定する。
4 省エネルギー国家の構築
循環型経済社会をめざした省エネルギー国家の構築を目標に、環境と経済のバランスを追求したエネルギー政策を推進します。資源小国として石油、石炭、天然ガスなど必要なエネルギーを国の責任で確保するとともに、経済発展・資源の確保・環境保全の3つの課題の同時達成(トリレンマの解決)をめざしたベスト・ミックスを追求します。
気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)での約束の遵守を前提に、エネルギー多消費につながる社会慣習・生活慣習、経済活動を見直し、省エネルギー・新エネルギー関連の技術開発、研究開発の強化を推進します。環境対策、省エネ推進、原子力発電の安全性向上、再生可能なエネルギーなど、アジア諸国のエネルギー確保のための国際協力を強化します。
1)新エネルギーの研究開発と普及
当面、非化石エネルギーのウェートを高めつつエネルギーのベストミックスを追求する。このため、技術的ブレイクスルーが期待される新エネルギーの実用化研究開発を積極的に推進する。特に風力発電については有力な再生可能エネルギー源と位置づけて、わが国の風力事情などの徹底調査を進め、研究・普及への支援を強化する。新エネルギー・産業技術研究総合開発機構を強化・拡大するとともに、核融合などの未来エネルギーの研究開発を積極的に推進する。
2)エネルギー計画の策定とエネルギー安全保障への取組み
エネルギー安定供給確保のために、長期エネルギー需給見通しについては国会承認とし、エネルギー資源輸入先の分散化など外交的努力につとめ、エネルギー安全保障を確立する。このため、産油国との協力関係の推進とアジア諸国との政策協調を進める一方で、輸入地域の多角化などを進める。
まだ、石油依存度を低下させるため、LNG火力発電所建設、都市ガス利用拡大など天然ガス利用の普及、LNG基地、国内パイプライン網建設など利用環境整備を促進する。さらに、ガス・コジェネレーション、ガス冷房など都市ガスの利用拡大の推進と家庭用高効率機器の開発と普及促進、天然ガス自動車の積極的導入などにつとめる。
3)原子力の平和利用
わが国の原子力開発は、省エネルギー、新エネルギーの開発に積極的に努めながら、当面、気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)における温室効果ガス排出削減目標達成を考慮したものとする。老朽化の進んだものを廃炉にし、供給力確保を前提としつつ、新規原子力発電所の建設を検討する。同時に、原子力安全委員会の独立性および安全チェック機能の強化・充実を図り、原子力に関わるあらゆる産業・組識における安全意識醸成の促進などにより、原子力の安全を確保する。わかりやすい情報提供や情報開示の徹底をはかる「原子力情報公開ガイドライン」を設定する。
原子力開発を計画しているアジア諸国での安全に関する認識の定着と技術支援のための「ASIATOM(アジア地域における原子力開発の安全技術支援のための国際組織)」の創設をはかる。
プルトニウムの再利用はMOX燃料、高速増殖炉などの研究開発用として使用計画のある分量のみを抽出し、その他の使用済燃料は一時保管する。その間、安全確保を前提とした使用済燃料の国内再処理事業確立と核燃料サイクルの研究開発を進め、廃炉技術の技術的安定性と併せて、信頼性確立のための先進国間協力推進などを推進する。
5 21世紀を展望する活力ある農業・農村の確立
農業及び農村の持つ多面的・公益的機能を考えると、これから農業の重要性はますます大きくなると思われます。特に、環境保全型農業の育成や環境や景観の維持に貢献する農村のあり方について強い関心が寄せられています。21世紀の循環型社会の形成に向けて、農業・農村の新しい役割が期待されています。 にもかかわらず、今日の日本の農業は、農村地域の過疎・高齢化、後継者不足、国際化などで、将来への展望が見えないままで、結果として、食料自給率の低下や農地の減少など、農業の衰退につながっていっています。これまでの農政の画一主義や価格政策に依存した体質、不十分な農地政策などを転換して、21世紀を展望した農業政策を展開していきます。
民主党はまた、国民の間に健康と食の安全に関する強い関心があることを踏まえ、国内農業の基本を「安全で健康に寄与する食」の供給に据えていきます。このため、低農薬や有機農法などを取り入れた環境重視型農業の育成・確立につとめます。
1)食糧自給率の目標設定
わが国の食糧自給率の向上をはかり、国内生産を基本としつつ輸入・備蓄の効果的な組み合わせで国民への安定的供給を行なう。食糧自給率については、その目標を、カロリーベースで50%とする。
2)新たな土地利用秩序の構築
「農業振興地域の整備に関する法律」などにより、多額の費用をかけて整備した優良農地が、減反の対象になり宅地化されるなど、農地の利用計画には問題が多い。都市計画法によるいわゆる「線引き」も、農業政策及び宅地政策として時代のニーズに合わなくなっている。「農業振興地域の整備に関する法律」、「都市計画法」を統合し、新たに総合的な土地利用計画を策定できる体制を整備する。その上で、各地方自治体は、ゾーニングの見直しをはかり、農地を今後30年間にわたり農業目的に使用するという観点から確保する。
3)市場原理を活用した生産体制の強化
今後の農産物価格決定については、市場に委ねることを原則とする。農業経営安定対策については、一定基準による不足分への所得補償などを行う。事実上強制となっている米の減反については、実質的な選択制度とする。
市場原理にも耐えうる平地の大規模農業政策と、市場原理になじみにくい条件不利地域の農業政策を分けて立案・推進する。市場原理に対応しうる大規模農業経営体の育成のため、農地流動化の促進など意欲ある農業者の農地集積を支援する。
4)農業生産法人の育成と担い手確保
農業生産法人については、設立要件の緩和、設立への支援策の確立などを進めるとともに、一般企業並みの社会保障制度を整える。また新しく農業経営を希望する人への就農準備金の償還減免などを行い、新規就農を奨励する。
5)食品の流通改革と安全対策の確立
食品流通のコスト削減に向けて、生産から加工・流通・消費に至る各段階での流通合理化を進める。その際には、インターネットに食品市場を設けるなど、生産者・消費者相互の直接交流を促進する。また、生産者の顔の見える供給体制を促進し、使用農薬などの表示の徹底や検査・認証制度を確立する。いわゆる遺伝試食品については、表示の義務づけを徹底します。
6)環境保全型農業の育成支援
環境保全型農業をこれからの農業政策の基本として位置づけ、有機・無農薬・低農薬農業など、環境負荷の低い農業への転換に対する助成などの支援策を確立する。中山間地においては、農業・農村のもつ公益的・多面的機能(国土や資源の維持管理、自然環境保全、水源涵養、保健休養など)を重視する。特に、一定期間内の転作を所得面から補償するなど、デカップリング(直接所得保障)制度を導入する。
7)森林の保護と新しい支援
水資源を涵養し、二酸化炭素を吸収・固定化するなどの森林が有する公益的機能を見直し、環境保全の観点から森林の維持管理を進める。特に国有林については、木材生産の視点から公益的機能の保全へとその位置づけを明確にし、適切な国民負担を導入する。森林から受ける恩恵を将来の世代に受け継ぐためにも、森林交付税の導入等により、環境の視点からの森林管理と持続可能な森林経営を行うことができるような財政的な手当を行う。
8)資源再生型水産業の確立
水産資源問題に適切に対処するため、資源管理型漁業や栽培漁業・養殖業といった「つくり育てる漁業」の振興をはかる。
9)農林水産団体の再編成
新たな農林水産業の展開における、農協・土地改良区・農業委員会・森林組合・漁協など農林水産業団体の役割について再検討を行い、再編成を図る。
W選択できる社会、安心できる社会
1 安心できる福祉社会の構築
民主党は、国民生活の安心と安全を何よりも優先して確保します。その基盤がしっかりと確保されてこそ、国民の一人ひとりの自由な選択と自立が可能となると考えるからです。
高齢化社会は、長寿長命社会であり、本来、人類の目標でありました。しかし、現在の日本が直面しているのは高齢化社会への不安です。年金と医療保険の財政破綻が囁かれ、介護基盤が不十分な中で介護保険が導入される現状は、高齢者のみならず、わが国全体に大きな不安を生み出しています。
民主党は、医療保険制度と年金制度の抜本改革を断行し、将来にわたって、安心のためのセーフティーネットを確保します。その将来像を正直に示すことで、部分的には国民の負担増を提起してでも、低所得層の実質的負担増を避けつつ、安心が確保されることを明確にします。
介護保険は、予定通り2000年4月より導入し、遅れている基盤整備に集中投資して「保険あって介護なし」という状況を回避して、地域格差の解消を緊急に実現します。その財源は、不要不急な従来型公共事業予算を振り向けることとし、地方における雇用の確保といった経済的効果にも結びつけていきます。
2 社会保障制度の再構築
1)年金制度の抜本的改革
年金制度への不信を払拭し、制度の長期的安定をめざして、抜本的な改革に着手する。年金は高齢者の所得保障の柱であるので、給付水準の確保に努める一方で、将来世代に過重な負担を押しつけることのないような給付と負担の水準を設定する。また、年金制度の改革とともに、65歳現役社会の実現、社会保障体制の総合的整備などに取り組む。
1.「国民基本年金」の創設
現行の基礎年金制度を改革し、全国民に一律定額の年金額を給付する「国民基本年金」制度へと再編し、セーフティネット(最低所得保障)として確立する。
基本年金財源を消費税とすることで、給付水準と消費税率を完全に連動させ、負担と給付の関係を明確にする。低所得者にとって負担の大きい定額制の基礎年金保険料を廃止するとともに、現行基礎年金部分に相当する約40兆円の積立金については、少子高齢社会のピークをにらんで計画的に取り崩し、消費税率の抑制を図る。
2.個の選択を生かす年金システム
定年制と終身雇用制を特色とする日本型雇用慣行の変容や、人々の生活意識の多様化にも対応するために、個人の選択を生かせるような年金システムを構築する。すべての個人が自分自身の年金権を持てるよう、給付と負担の設計を世帯単位から個人単位へ転換し、就労や結婚など個人の選択を年金制度が左右するような事態を避けうる制度とする。特に、女性の年金権の確立や無年金障害者問題の解決を進める。パート労働者の適用拡大や総報酬制を導入し、企業年金や私的年金との組み合わせの選択肢を広げる。また65〜69歳の在職者の厚生年金を調整する。
厚生年金の報酬比例部分については賦課方式とし、当面現行の物価スライドを維持する。また、ボーナスを含む総報酬制を導入する一方、パート労働者等についても加入を進める。育児休業期間中の保険料の事業主負担分は免除する。
3.年金資産の運用と企業年金の改革
年金資産の運用内容について情報公開の仕組みを導入し、安全で透明度の高い年金資産運用体制のあり方を整備する。
厚生年金基金の代行制度を抜本的に見直し、確定拠出型年金制度の創設や受託者責任の明確化、受給権保護など目的とする「企業年金基本法」を検討する。
2)質が高く効率的な医療制度の確立
1.高齢者を対象にした新しい医療保険制度の創設
拠出金に依存した現在の老人保健制度を廃止し、社会保険方式を基本とした新たな高齢者医療保険制度を創設することによって、現役世代の保険料負担を大幅に減額し、財源の不足分は公費負担とする。高齢者の負担は、保険料および窓口負担を合わせ、現役世代より低く設定する。また、低所得者には減免措置を講ずる。
2.包括払方式の導入による診療報酬・薬価制度改革
医療費の合理的支出を確保するため、包括払方式を導入する。慢性期医療については、診療群別包括払方式に切り替え、急性期医療の出来高払方式と組み合わせる。包括払いとなる慢性期医療については、その最低基準を設定し、医療水準を確保する。慢性期の薬剤費は、包括払いの中に含める。急性期の薬剤費は、自由価格とした上で診療報酬とは別立ての定率負担とする。診療報酬の算定に当たっては、技術評価を取り入れたものとしてこれを行う。
3.保険制度の改革
現役世代の保険集団を再編成し、保険者機能を抜本的に強化する。政府管掌健康保険は、広域自治体単位に分割し、国民健康保険は、組合国保を除いて広域自治体単位に統合する。零細な組合健康保険については、適正規模への統合を推進する。また、保険者機能として、医療機関に対する評価機能、医療機関の指定・取消権限、独自の診療報酬契約締結権などを検討する。
新たな老人保険制度の対象年齢に達しない退職者については、退職時に加入していた保険に継続加入するものとし、国保と健保の役割分担を明確にする。退職者の保険料については、雇用者負担相当分を公費負担とすることで、その高騰を抑制する。
4.医療の情報公開
患者・国民が自分の健康状態や治療内容を知ることを重視し、カルテやレセプト(診療報酬明細書)の開示とインフォームド・コンセント(十分な説明と理解にもとづく同意)を着実に実践する。また、より適切に医療サービスを選択できるように医療機関の評価と情報公開を進める。医療機関に対する苦情を処理するシステムを新たに地域に設け、患者会活動(セルフ・ヘルプ)を支援する。こうした医療への総合的な国民参加を確実にするために、「患者の権利法」の制定を進める。
5.病院と診療所の機能分担の整備
日本の医療制度改革の中長期的目標として、病院と診療所の機能を明確に分離し、それぞれにふさわしい診療報酬体系を整備する。病院について、基本的に在宅医療を推進し、入院を必要とする医療に限定した病院機能に純化する。また、外来についたては救急・予約専門以外は取り扱わないこととする。これらの病院に対しては包括診療報酬制とし、DRG-PPS方式を基本とする。
診療所は、個人医師の開業制とし、家庭医と専門医に分ける。家庭医は簡易な病気の治療だけでなく、健康管理・健康相談及び専念医や病院への紹介機能を担う。家庭は登録制で人頭払いとし、専門医は出来高払いを原則とする。
3)集中投資による介護基盤の緊急整備
介護保険は、「介護地獄」や「老老介護」といった悲惨な状況の克服のため、また、高齢者の介護を社会全体で支える第一歩として是非とも必要です。2000年4月より介護保険制度を予定通り実施し、無責任な実施や負担の先送り論には組みしません。一方、政府の怠慢による基盤整備の遅れによって「保険あって介護なし」という深刻な状況も懸念されおり、必要量に見合った介護の基盤、さらに「4人部屋・6人部屋」といった劣悪な居住環境の改善を集中的、緊急に行います。
このため、ゴールド・プラン、新ゴールド・プランに続いて、以下のように、4年間の数値目標を明示した「スーパー・ゴールドプラン(介護サービス基盤緊急整備計画)」を策定します。予算の確保などを計画的に行えるよう、この計画を「スーパー・ゴールドプラン法」として法制化し、政府の最重点施策のひとつとして取り組みます。
この介護基盤の緊急整備は、未来に真に役立つ公共事業として、また介護サービスの充実は雇用の拡大として、景気対策としても有効です。
1.施設サービスの量的整備、「個室化」など質の充実
特別養護老人ホームは、18万「個室」の新設及び20万床(4人部屋)の「個室化」、老人保健施設は、4万「個室」の新設及び14万床(4人部屋)の「個室化」を行う。6〜8人部屋と居住環境がさらに劣悪なうえ、介護と医療の狭間にあり保険料高騰の要因の一つとなっている療養型病床群については、公費補助による「個室化」などのほか、特別養護老人ホームなどへの転換を進める。介護問題の中でもっとも深刻な痴呆性老人に対しては、その介護の「切り札」としてグループ・ホームを2万カ所(中学校区に2つ)、約15万人分を設置する。
2.在宅サービス基盤の整備
デイ・サービス8千ヵ所、デイ・ケア2千ヵ所の増設などサービスを大幅に拡充し、施設を利用しなくても済むような在宅サービスを充実する。ホームヘルパーなどマンパワーについても、その育成、待遇の改善を含め大幅な充実をはかる。介護保険導入に伴い、いわゆる「社会的入院」をしていた自立が困難な多数の高齢者が施設から家庭へ移動することが想定されるので、こうした事態に対応するため、およそ12万人分の高齢者住宅の確保などにつとめる。
3.自治体による負担軽減・移行対策
自治体がきめの細かい対策をとれるように、低所得層の保険料の支払区分細分化や高額介護サービス費の上乗せを、自治体が独自に実施できるようにする。 自治体が介護保険条例の制定にあわせて、「高齢者総合生活支援条例」を制定するよう促し、地域における高齢者総合生活支援政策を充実させる。在宅高齢者保健福祉推進支援事業補助を大幅に増額し、国の市町村支援を拡大する。
4)介護休業制度の拡充整備
高齢者の介護のための休業制度を充実する。介護のための休業時における所得給付率を一定の条件の下で60%とするとともに、介護を理由に職業を離れた男女が再び就業しようとするとき、職業能力開発など希望に応じた再就職が可能となるような雇用環境を整備する。
3 地域・社会における子育て支援
民主党は、子育ては、母親のみの責任で行うものではなく、父親やその他の家族全体の責任のうえで、地域と社会が支援すべきものであるという考えに立ちます。子どもたちがどのように育ち、社会の担い手として成長するかは「社会の再生」の最も重要な課題でもあります。この考えのもとに、政府がその社会的・経済的支援を飛躍的に充実していくことが必要です。
多様なニーズに対応した保育サービスの充実、子育てに伴う経済負担の軽減、育児支援制度の拡充とともに、子育ての孤立化や不安の解消を図るための相談・支援体制を充実します。
1)保育サービスの充実
低年齢児保育・延長保育・長時間保育・一時保育・病児保育など、多様なニーズに対応した保育体制を整備するため、施設や保育者のための財源確保などエンゼルプランの充実を図る。
認可外保育所の施設や人員の充実、民間参入を促し、一定の条件を前提に国からの補助を実施する。また自宅で2〜3人の子どもの面倒を見るといった「保育ママ」などの仕組みを発展させ、小規模の子育て支援を奨励する。
2)保育所と幼稚園の連携強化、一元化
保育所と幼稚園の連携強化、一元化によって、必要な子どもへの子育て支援量の確保、そして質の改善を図る。一元化された施設を地域の子育て支援の拠点とすることで、育児不安の解消、虐待などの予防へとつなげていく。
社会性を持った人間としての人格形成を重視し、就学前教育について国として本格的な支援を実施する。このため、保育と幼児期教育の社会化を加速度的に推進することを一つの目標に、一元化した保育所と幼稚園などの費用に関しては、公費負担を新たに導入し、保護者負担を半減する。
3)子育てに伴う経済的負担の軽減
子育てを行う現役世代の経済的負担を軽減するため、児童手当を改め「子育て支援手当」を創設する。現行の児童手当の金額を倍増(第2子まで1万円、第3子以降2万円)するとともに、年齢を18歳未満(現行3歳未満)に大幅拡大する。また現行670万円の年収制限を1200万円とする。一方で、高額所得者に有利な扶養控除は廃止する。
4)育児休業制度の充実
出産・子育てに携わる男女労働者の育児休業制度を充実させる。所得給付率を60%に高めるとともに、事業主に対して、子どもが病気の時の休暇や父親の育児休暇取得、企業内・事業所内の託児施設の設置など、育児支援制度の拡充を奨励する。
出産や育児により職業から離れた男女が再び就業しようとするとき、職業能力再開発など希望に応じた再就職ができるような雇用環境を整備する。
4 ノーマライゼーション社会の実現
民主党は、障害のあるなしにかかわらず、誰もが地域で暮らせる社会づくりを実現することが、21世紀の日本に求められている課題だと考えています。このため、公共施設やバリアフリー住宅などのハード面の整備とともに、障害を持つ人の社会参加や障害者に係わる資格制度の欠格条項の見直しなどソフト面でのバリアフリー化を進めます。また、障害者の権利確立をはかる基盤づくりにも積極的に取り組んでいきます。
重度障害者への支援を一層進めるために、障害保健福祉施設の分権化、サービス提供体制の一元化も推進していかなければなりません。重度・重複の知的障害者のための施設類型を創設し、併せて、障害者を介護する家族などの負担減をはかります。
これらの具体的事業を協力に推進するため、国連が進めるノーマライゼーションの基本指針「障害者の機会均等化に関する標準規則」の国際条約化を国内外でサポートします。また、できないことに主眼をおくのではなく可能性に着目して福祉政策の根本転換を進めていきます。障害者をチャレンジド(常なる挑戦者)ととらえなおし、障害者自らの自立運動を支援する政策を推進します。
1)すべての分野でのユニバーサル・デザインの実現
デジタル革命とインターネットの急速な普及は、一方で障害を持つ人たちの新しい可能性を拓くとともに、他方では新たなハンディキャップをも作り出している。障害者でもアクセスできるインターフェースの開発普及を進めて、障害者にも開かれた高度情報社会の形成をめざす。また、家電製品や自動販売機、ATMの利用などについて障害者や高齢者が利用しやすいユニバーサル・デザインの実現を促進する。このために不可欠な技術標準の整備やルールを明確にする法整備などに着手する。
2)バリアフリーのまちづくり
障害を持つ人が自由に移動できる「バリアフリーのまちづくり」を計画的に推進する。鉄道の駅舎や公的施設にエレベーターやエスカレーターを設置するとともに、幅の広い歩道の設置や段差の解消、電線類の地中化を進める。このため、事業者による計画的整備とそれに対する公的補助、利用者を交えた協議会の設置などを骨子とする「交通アクセス法」を策定する。また特に、障害を持つ人や高齢者に配慮したユニバーサル・タクシーやドア・ツー・ドアのスペシャルトランスポートシステムの確保につとめる。
現行の建築基準法を改正して、「安全」「防災」「衛生」の目的に加えて、「バリアフリー」を明記し、ノーマライゼーション時代にふさわしい基準に改革する。
3)バリアフリー住宅の普及促進
少子高齢社会に対応する多様な家族形態やコミュニティハウスなど新しい住まいのあり方が住宅のオプション・システムを求めるようになっている。これにより、障害を持つ人と持たない人が共同で生活する住まいのかたちを当事者参加の下で自由に設計することが可能となっている。住宅の基本構造部分については個人資産としても、バリアフリー化に係る廊下やドアの幅寸法の確保や室内エレベーターの設置、バスユニットの特注などについての支援制度を充実し、バリアフリー住宅及び利用柔軟性の高い住宅の普及につとめる。
4)政治参加のバリアフリー化
バリアフリー社会実現のため、視覚や聴覚、知的障害などを持つ人への選挙情報の提供や投票補助など、選挙参加のための条件整備を進める。選挙活動や選挙運営の改革など、政治参加に必要なバリアフリー化をめざす。
5)統合教育の実現
学校教育において障害者と健常者が共に学ぶ機会を拡充し、障害者への偏見を無くすといった「こころのバリアフリー化」を推進する。このため、保育・幼稚園の段階から小中学校教育における統合保育・統合教育を可能な限り実現し、障害をもつ子どもと障害を持たない子どもとの分離を前提とした教育の現状を大幅に見直す。
6)「新・障害者プラン」の作成と「日本版ADA法」の策定
ノーマライゼーション社会の実現のために、福祉・医療・リハビリ・雇用・教育などを横断的に繋ぐ「新・障害者プラン」を策定し、予算を重点配分する。また、資格制度における欠格条項の見直しなどを進める。情報技術などを活用し、障害を持った人たちに就業創造をし、納税者となる権利を行使できる社会をめざす「日本版ADA法」を制定する。
5 「賢く強い消費者」をつくる
日本はいま、これまでの消費者保護行政を軸とする政策から自立する消費者の行動を積極的にサポートする政策へと大きく転換することを求められています。国民一人ひとりが消費者としての自由な選択の幅を広げ、そのリスクを自ら管理するという時代に備えた新しい消費者法の整備に取り組むべきときです。民主党は、消費者を悪徳商法や契約トラブルからガードする透明度の高いルールの設定を進めるとともに、消費者自らが必要な情報を入手し、自分で的確な判断を下すことのできる「賢く強い消費者」の育成を支援していきます。
1)「消費者契約法」の制定
悪徳商法、契約トラブルなどから消費者を守る「消費者契約法」を制定する。現行の業種毎の法律ではスキマが生じ、内容も不十分であるので、消費者に係る契約全般のルールを定める法律の制定が必要である。
業者の情報提供が不十分な場合など契約締結の過程に問題がある場合に、消費者は契約を取り消すことができることとする。また、契約内容をできるだけわかりやすく明確に表現させると共に、消費者に一方的に不利な内容については、これを「不当条項」として効力を停止する。
2)消費者が裁判を起こしやすい仕組みの整備
個人ではなく消費者団体などが、悪質な約款などの差し止めを求める裁判を起こすことができる仕組み(団体訴権)を整備する。「消費者契約法」にこの制度の検討条項を盛り込み、早期の実現を図る。また、一般消費者が裁判を起こす際の費用負担の軽減を図る。
3)多重債務問題への取組み
多重債務の発生など社会問題を引き起こしている消費者金融の高金利を引き下げるため、「出資法」を改正する。この改正によって、刑罰が科される金利の上限を現行の年利40.004%から、「利息制限法」と横並びの「10万円未満年20%」「10万円以上100万円未満年18%」「100万円以上15%」に改正する。同時に、すでに不要となった「臨時金利調整法」を廃止する。
4)消費者教育の充実
情報を持ち、自分で的確な判断をくだすことができる「賢く強い消費者」をつくるため、義務教育の段階から消費者教育を強化するなど、消費者教育充実に向けた政策を行う。
5)遺伝子組替え食品と消費者
遺伝子組換え食品について、消費者の選択の自由を保障するために表示を義務づける。
6 ルールが守られた公正な社会
民主党は、不正に対しては厳格な姿勢で臨み、不正を放置する社会についても厳しい姿勢でその是正を求めます。現在日本にまかりとおる暴力、汚職・収賄、違法経理、ゴミ不法投棄、脱税、情報操作などの犯罪を抑制し、巨悪と正面から立ち向かう正義の政治を展開します。
世界一といわれた日本の治安に対しても、急速に不安感が高まっています。不正や犯罪が公然と放置されて誰も責任を負わない風潮が広まり、歯止めのないモラルハザードを引き起こしています。これでは、社会の倫理的基盤も崩壊して、国民生活の安全を脅かし、国民の間にある正義感覚を麻痺されてしまうことにもなりかねません。社会の基本機能を維持するためにも、社会的ルール違反をなくし、モラルを確立して、安心して暮らせる社会、自由な自己実現が保障される社会をめざします。
1)犯罪取り締まりの強化
世界一とも言われる日本の治安を維持するため、 犯罪多発地域の交番を倍増し、刑事犯罪捜査に関与する警察官を3割程度増員する。地道な捜査に携わる警察官や交番勤務の警察官の処遇・待遇を厚くし、公安中心の警察を、粗暴犯罪対策中心の警察に転換する。
警察や麻薬取り締まりなどの縦割り組織運営を改め、短期集中的に広域暴力団の取り締まりを行い、薬物・銃器犯罪などを一斉に摘発する。主要な広域暴力団には解散を迫っていく。凶悪犯罪に対処するため、最低10年で仮出獄できる現行の無期刑に加えて、仮出獄を認めない終身刑を創設する。
「犯罪組識の取締りに関する法律」を制定する。オウム真理教などのカルト宗教や暴力団、国際犯罪組識などに対象を限定した取締法を制定することによって、その活動を実質的に封じ込める。いわゆるストーカー対策のための特別立法も進める。
また、急速な増加が予想されるハイテク犯罪に対応するため、IT技術によって支えられたサイバーポリスの機能を果たす「ハイテク犯罪ナショナル・センター」の確立を進める。
2)警察に対する国民の監視・コントロールの強化
盗聴疑惑や裏金疑惑などに関連して、ブラックボックスとなっている警察情報の公開を飛躍的に拡大する。プライバシーなどの関係で、一般公開できない情報についても、公募・抽選により選出されたメンバーを含む「警察監視委員会」によってチェックする。
3)犯罪被害者の救済支援
「犯罪被害者等給付金支給法」を抜本的に改め、その救済支援を強化するとともに、被害者に捜査や裁判の状況を通知する制度を設ける。また被害者の損害賠償請求権を実効あるものとするため、その財産保全を容易にし、加害者が無資力の場合の給付金を増額する。財産保全処分をかけられた被告人が無罪となった場合には、国の責任で補償することとする。
4)国会議員、公務員犯罪の防止
国会議員などの「資産公開法」と「政治資金規正法」を改正強化し、政治家にまつわる金の流れを透明化する。また、公務員犯罪や経済犯罪に対処する検察庁の機能を強化し、全ての地方検察庁に、特別捜査部を設置する。特に、東京と大阪の特別捜査部については、質量ともに倍増し、経済犯罪特別捜査部と公務員犯罪特別捜査部に改組・強化する。
5)医療費の不正受給防止
診療報酬請求伝票(レセプト)をすべてコンピュータで処理することで、作業を効率化するとともに、高額レセプトの抽出チェックを容易にする。不正請求については、社会保険診療報酬支払基金に告発義務を課する。また、カルテの公開を法制化することによって、患者本人によるチェックを可能にする。
6)環境Gメンの配置、環境破壊の取り締まり強化
環境基準違反や環境犯罪に対処するため、独立の環境Gメン(仮称・環境査察庁)を設立し、環境犯罪捜査に限定した警察に準ずる強制権限を付与して、
違反行為をしっかりとチェックする。
7)「医薬食品安全庁」の設立
厚生省や農水省から独立した強力な組織の下で、医療・薬品・飲食品の安全性について、徹底的にチェックする。違法行為の疑いがある場合には、警察に準じた強力な捜査権限を行使する。その費用は、メーカーなどからの手数料などをあてる。
8)子どもポルノの取り締りの徹底
子どもを描写した「子どもポルノ」は、子どもたちへの重大な人権侵害であると同時に、それ自体、健全な社会への挑戦でもある。警察庁、各都道府県警に対策本部を設置し、「児童ポルノ禁止法」に基づく取締まりを徹底する。また、インターネット上の「子どもサイバーポルノ」など国際的な子どもポルノの流通を取り締まるため、国際的な捜査協力体制を確立する。
7 国民生活を守り支える災害対策
わが国は、自然条件、国土の利用の面いずれにおいても、災害に対して脆弱な状態に置かれ、これまで幾多の取組みにもかかわらず、その基盤整備が進んでいるとは言えません。様々な災害から、国民の生命・財産を守り、災害発生時の社会的・経済的混乱を最小限に食い止めていくことは、政治に課せられた最重要課題であります。この認識のもと、災害時に迅速・機動的に対応できる危機管理体制と実効力ある被災者救済制度を確立します。
1)危機管理体制の確立
1.内閣機能の強化
危機管理における内閣機能強化を図る観点から、アメリカのFEMA(連邦緊急事態管理庁)を参考に、内閣総理大臣の権限を強化し、緊急即応組織としての「情報・危機管理室」を整備する。災害発生時には、予め定められた危機管理マニュアルによって情報・危機管理室長が内閣総理大臣を補佐して必要な対策の指示を関係省庁等に発することができるものとする。
また、緊急時において、迅速な判断を可能にするため、法制上どうしても総理大臣以下国務大臣全員の合意が必要な場合は、組閣時に予め想定できる事態を列挙し、災害時の判断を所管大臣などに委ねる旨を予め閣議決定しておく。
2.救援活動の円滑化
国、地方自治体、警察、消防、自衛隊、ボランティア、NPOなどの役割分担、協力体制、情報伝達システムを確立し、災害発生後の救援活動の円滑化を進める。自衛隊法に定める自衛隊の災害出動に関する要件を緩和し、緊急時には地方首長からの要請を待たず、いちはやく災害出動ができる体制を構築し、災害直後の救援体制の充実をはかる。
2)災害の未然の防止
予想されるさまざまな災害を未然に防止し、全国各地の特性に配慮した総合的な防災・国土保全を進める。「防災基本計画」を改定し、災害の発生を未然に防ぐ科学技術の向上、防災施設の拡充、教育・訓練の徹底などを進める。
3)被害者救済制度の拡充
国が被災者再建支援基金に対して行う補助交付金の額を増額し、支給対象者の拡大、支給上限額の引き上げなどを行う。「激甚災害法」に基づく指定基準の緩和をはかり、その指定及び実施の迅速化を進める。被災者個人に対する災害対策を強化するため、災害復興基金の拡充とあわせて、税の減免額の引き上げ、政府系金融機関からの災害融資の充実、災害弔慰金の引き上げや支給対象の拡大を実施する。
被災世帯に対する応急仮設住宅などの収容施設の供与、食品・飲料水、生活必需品の供給などを拡充する。また、警戒区域の設定により収入が途絶えた世帯に対して、避難手当(生活手当)の支給を整備する。災害遺児の高校進学などを助成する育英制度の確立をはかる。
X多様な人々が支えあう共生社会
1 自立と共生が織りなす友愛社会への道
民主党は、日本がいま直面している最も大きな問題の一つに「社会の基盤」の崩壊があると考えています。子育て、教育、社会的ルールを守ること、自己責任の意識、犯罪に対する見方、問題を共同で解決しようとする姿勢、それらのすべてにモラルハザードが生じて、社会の基盤が大きく損なわれようとしています。この基盤が崩れるならば、どのような改革も、国民生活に根ざしたものとはなりません。政治にいま求められているのは、社会の基盤を確実なものとするために、国民と共に必要な改革にチャレンジし、人々が互いに助け合い支え合う社会を創り出すという大事業、すなわち「社会の再生」への挑戦であると考えています。
成熟した今日の社会では、先ず、国民一人ひとりの個人の自立が尊重されなければなりません。しかし、それと同時に、全ての人々の自立を支える社会がそこにしっかりと築かれていることが不可欠です。まさに、自立と共生が社会の基本原理となって作用する、そんなバランスのとれた社会へと再生していく仕事があります。民主党は、この仕事を通じて、国民一人ひとりが参画する社会、共に支え合う友愛社会の構築に全力を挙げていきます。
2 男女共同参画社会の実現
多様なライフスタイルを望む人々が増えているにもかかわらず、依然として意識の面でも実態の面でも企業中心・男性中心型システムが続いています。自立した人で構成される「共生社会」を構築するためにも、男女共同参画社会への転換を急がなければなりません。女性と男性がともに、社会的・文化的に形成された性差(ジェンダー)に縛られず、個人として自らの意思と責任にもとづいて政治、経済、社会のあらゆる分野の活動に参加し、方針や政策を決定する男女共同参画社会を実現します。
1)社会経済活動における均等な機会、待遇の確保
男女の均等な機会・待遇を確保し、男女の家庭生活と職業生活の両立を支援していく。性別ではなく、個人の能力による、募集・採用、配置・昇進などのシステムを構築するとともに、子育て・介護などの社会サービスを充実させる。
女性の起業家を増やすために、政府系金融機関の貸付制度、信用・債務保証制度などについて、女性を対象とした特別制度の創設や窓口開設などを進める。
2)男女共同参画の視点に立った税制、社会保障制度
男女共同参画社会をめざすという視点から、税制が女性の就業の妨げとならないよう、また、家庭で出産・育児などの役割を負っている人々も「自立した納税者」としての責任と権利を持ち、社会に参画することができるよう、配偶者控除、特別配偶者控除の見直しを進め個人単位の税制へと移行し、これに代えて、「子育て支援手当」など各種給付制度の充実をはかる。また、年金の第三号被保険者の問題については、基礎年金を税でまかなうことによって解消していく。
3)家族制度に関する法律、制度や慣行の見直し
多様な価値観と選択肢を認めるため、選択的夫婦別姓制度を導入する。子どもの権利条約、人権規約など国際条約に鑑み、非嫡出子の相続差別をなくす。
4)生涯を通じた女性の健康・権利を守る施策
「刑法」の堕胎罪と「母体保護法」を廃止し、リプロダクティブ・ヘルス/ライツを守る法律を制定する。これによって、妊娠、出産などの選択の自由など、性と生殖に関する女性の自己決定の尊重、女性に固有の身体的機能の保護など、生涯を通じた女性の健康支援のための施策を充実する。
3 NPOと共に歩む新しい社会の形成
政府や企業が主導している社会システムを、21世紀に対応できる新しいシステムに変革し、経済社会を活性化するためには、NPOを第三のセクターとして認知し、社会システムの中に明確に位置付けていくことが必要です。NPO活動を支援し、市民の手による多元的な社会を実現するため、税制上の優遇措置、規制緩和、NPO教育の推進、労働市場の整備などを積極的に進めていきます。
また、近年に急速に普及したインターネットが、個人の自立と自発性を基調とした多様なネットワーク活動を活性化している現状を踏まえ、NPOと政府、NPOと企業の間の開かれた情報交流・相互協力を積極的に支援していきます。
1)NPOを支援する社会制度の確立
1.NPOサポート施設などの整備促進
地方自治体のNPOサポート施設などの整備を拡充する。また、民間によるNPO支援団体設立の動きを支援するために、自治体レベルでのNPO支援条例の制定を推進する。
2.財政基盤を確立するための支援
市民や団体(政府)からの出資による「NPOファンド」を設置し、NPOベンチャーキャピタルとしての役割を持たせる。NPOが公団住宅、公営住宅をインキュベーター施設(新たなNPO組織を孵化させる装置)として、手軽に利用できるように、一定の条件を満たしたNPOに対する家賃軽減制度を創設する。財団法人ベンチャーエンタープライズセンターをNPOにも活用できるようにするため、関連予算を増額するなど、支援策を強化する。
また、制度融資や信用保証、中小企業事業団の「創業助成金交付事業」、「ベンチャー支援助成」、通産省の「シニアベンチャー支援事業」など、中小企業向け支援施策をNPOにも適用する。
3.寄付金控除制度の創設
個人(企業)が一定の要件を満たすNPO法人に対して寄付や対価性のない会費を提供した場合には、その寄付金を所得から控除する制度を設ける。この場合、行政による恣意的なNPOの選別となることを防ぐため、控除の要件は、NPOの規模ごとに、寄付金収入の総収入に占める比率、寄付者の広範性、特定寄付者の寄付金全体に占める割合など、客観的基準を設け、行政による認定行為を設けないものとする。また、NPO間の寄付についても、税制面の配慮を行う。
4.NPO事業の創造
NPO事業の創造のために規制緩和や制度改革を進める。特に、福祉サービス、移送サービスなど、従来からボランティア団体が実施している事業について、NPO法人に対する参入規制を廃止する。NPO法人が参加可能なもの、事業化が成功できると考えられる事業分野においては、行政機関によるNPOへの事業委託を優先して推進する。
2)NPO起業を促す教育の推進
初等教育から大学・大学院教育に至るまで、NPOに関する教育を推進する。初等中等教育においては、ボランティア精神や自発性、創造性を重視した教育を実施するとともに、非営利事業やNPOの仕組みや社会的意義について教える機会を確保する。また、NPOでの実習を教育に取り込み、単位認定の仕組みや、受入れ体制の整備に関する支援などを行う。
4 人権の確立と差別のない社会の実現
部落差別やアイヌなどの少数民族や、在日外国人への差別など、わが国には根強い差別が残存しています。憲法や国連の人権に関する諸条約の規定に基づいて、性別、社会的身分・門地、人種・民族・国籍、年齢、障害などによるあらゆる差別の解消をめざします。教育啓発や差別禁止、被害救済など、人権保障のための法制度や施策の改革に取り組みます。また国際人権規約B規約選択議定書など、未批准の人権条約の批准を推進していきます。
1)人権教育の推進
いじめや差別をなくすために、市民やNPOがすすめている「人権教育のための国連10年」などの活動と協力し、国や自治体などでの人権教育・人権啓発に関する取り組みを進める。子どもの人権確立の観点から、いじめに悩む子どもの救済機関として、児童相談所を改組し、「子どもオンブズパーソン」を創設する。
2)緊急避難場所の提供
様々な差別事件や女性、子どもへの性的虐待・暴力などに対して、被害者の避難や救済を行うシェルターやオンブズパーソンなどを充実するとともに、問題解決にあたる人材を育成する。また、家庭内暴力根絶のための新たな法整備を含めた政策を積極的に推進する。
3)同和政策の推進
差別意識の解消のため、「人権教育のための国連10年」の活動に基づき、積極的な人権教育・人権啓発活動を進めていく。部落差別に対して、迅速かつ有効な対応が図られるよう、現行の人権擁護制度を抜本的に見直し、基本法制定など21世紀にふさわしい人権救済制度の確立をめざす。また、公共の施設など、誰もが利用しやすい場所に、人権相談の窓口を設置すると共に、相談に応じる職員の対応能力の向上を図る。
4)アイヌ民族文化の保存と伝承
いま、アイヌの人たちの人権や生活の保障ととともに、アイヌ伝統文化の保存が大きな課題となっている。現行の「アイヌ文化振興法(アイヌ文化に関する振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律)」に基づく文化保存と普及の事業に加え、アイヌの人々の生活改善と伝統文化の保存・伝承が一体となったモデル空間の整備を進めて、文化が生きる環境の再生につとめる。
5)国際的な人権の確立と民主化の推進
未批准の国際人権規約の批准を推進するとともに、国際的な人権の確立に向けて、政策課題をまとめた「人権イニシアティブ」を、国際会議などを通じて国際社会に提案していく。アジア地域をはじめとする民主化の進展に積極的に貢献する立場から、選挙監視などの国際支援活動への参加、人権確立運動の支援、NPO交流などを積極的に推進する。
Y「顔の見える外交・安全保障」の推進
1 平和をつくる外交
冷戦下における一種の世界秩序が崩れ、地域紛争や、貧困、人権侵害、環境破壊、国際テロ、麻薬、難民、地雷など新たな脅威が顕在化しています。
第二次大戦後の日本は、冷戦構造のなか、外交・安全保障上の判断と責任の多くを米国に依存し、自らは経済成長に専念してきました。しかし、世界で新たな秩序と平和のあり方が求められている現在、「平和の最大の受益者」であった日本が、その特徴や経験、得意分野を最大限活用して「平和をつくる国」として積極的に貢献する時だと考えます。
1)日本の主体性と日米関係の創造的進化
重要なパートナーである米国とは、経済、安全保障、文化・人的交流など多様な分野で協力関係を強化していく。朝鮮半島問題の軟着陸、中国の国際社会への統合、ロシアとの協調などはいずれも、米国との同盟関係を通じてより豊かな可能性を拓くことができる。日本の「グローバル・シビリアンパワー」と米国の「グローバル・スーパーパワー」の相互補完性が国際社会全体の利益となる様、わが国はこれまで以上に主体性をもって米国に対して建設的な意見を述べ、質の高い政策協議を積み重ねていく。
2)アジアにおけるリーダーシップ
わが国はアジアの発展に対して最大限の責任を果たす姿勢を明確にする。中国に対しては、歴史の共同研究を10年程度の計画で行ない、それを通じて歴史問題に決着をつける一方で、民主化の進展を日本独自の方法で促していく。また、日米中三者による政策協議を様々なレベルにおいて推進する。
韓国に対しては、特に金大中大統領の任期中、様々な産業・技術交流を活発化させ、2002年のワールドカップ共同開催を梃子として活用する。北朝鮮に対しては、韓国の包括的アプローチを支持し、米国、韓国と緊密に協力し対応する。
ロシアに対しては、北方領土問題を解決し、日ロ平和条約を締結する必要がある。そのためには、これまでのようなロシア政府内への働きかけのみならず議会や世論への有効な働きかけを行なう。
相互理解には知的交流が極めて重要である。特に中国、韓国、アセアン諸国、インドなどとの研究者・学生の相互交流を5年間で倍増させる。
3)国連改革の先頭に立つ
冷戦終結後の国際情勢下において、新しい世界に効果的に対応し得る国連となるための改革を推進する。安全保障理事会についてはその正当性と信頼性を強化するためにその拡大改組を行ない、拒否権行使方法の見直しも行なう。日本としても、国内世論と加盟国の支持を前提に、常任理事国入りをめざす。経済社会理事会の役割は、安全保障理事会とそれと同じくらい重要である。経済社会理事会の審議権限を強化し、総合的な調整機能を高めていく。
4)核軍縮・不拡散と核兵器の廃絶
日本は唯一の被爆国として、ジュネーブ軍縮会議や国連などの枠組みの中で、より積極的に行動する。具体的には、START2・3の完全実施や核保有国の核軍縮義務の強化を進めて近い将来に戦略核を全世界で1000以内に削減する。また、核兵器の先制不使用の制度化などを働きかけていく。
5)新たなODAの展開
日本にとってODAはPKOと並んで重要な外交手段である。国内景気低迷の中、ODAに対する国民の厳しい視線を踏まえ、外務省以外の実施する技術協力も含め、徹底した効率化・透明化をはかる。同時にODAで達成すべき目標・理念の明確化を図る。さらには、国会の関与を定めたODA基本法の制定も検討する。
6)官僚外交から政治主導の積極外交へ
予防・仲介外交の推進には、公式チャネルのみならず、内外のNPOや民間人、特にセカンドトラックとの連携、協力が不可欠である。外務省のみの外交から脱却し、NPO・民間ネットワークを総動員する外交を展開する。大使館における民間人の登用を格段に増やすことにより、「官僚外交」からの脱却を進める。
2 平和を守る安全保障体制
わが国の安全保障面における日米関係の重要性を十分認識しつつ、わが国の主体性ある安全保障政策の確立をめざします。複雑かつ予測困難な安全保障環境のもとで、これからは単に受け身に対応するのではなく、自らの構想力によって対処しなければなりません。従来のイデオロギー対立に基づく、安全保障論議を排し、安全保障面における日米関係の重要性を認識しつつ、日本の主体性ある安全保障政策の確立をめざす立場に立って議論を進めていきます。
日本の防衛政策については、戦後半世紀を経て、憲法の平和主義のもと、(ア)個別的自衛権の行使を超えた海外における武力行使は行わないこと、(イ)専守防衛を堅持すること、(ウ)個別的自衛権行使のための必要最小限の実力を保持すること、(エ)集団的自衛権を行使しないこと、(オ)武器輸出三原則、(カ)非核三原則などの諸原則が国会審議を通じて確立されています。民主党は、これらの諸原則は現時点においても尊重されるべきものと考えます。
1)日本の防衛と防衛力のあり方
東西冷戦の終結により、わが国に対し大規模な直接侵略がなされる可能性が低下した一方で、テロリズムやゲリラ的活動、生物・化学兵器の使用、領土・領海・領空(領域)への不法侵入、ミサイルや核兵器の拡散など新たな脅威の可能性が生じるなど、北東アジアには警戒を要する状況が残っている。このような安全保障環境の変化に柔軟に対応するため、防衛大綱の機動的な見直しを行い、上記の多様な脅威への対応に加え、災害派遣、PKO活動などの国際協力活動、周辺事態における日米協力、海外における邦人救出など、自衛隊が重要かつ多様な役割を果たせるようにする。
1.新たな脅威への対応
大規模直接侵略を主として想定して構築されてきた自衛隊の装備、配置および構成について抜本的な見直しを行い、テロリズムやゲリラ的活動などの新たな脅威に、日本が原則として単独で対処できる体制を早急に整備する。
2.緊急事態法制
出動した後の自衛隊の活動ルールについては、法律の規定がほとんど存在していない。現状のままでは、わが国に対する直接侵略などの緊急事態において自衛隊の活動が円滑に行われないことで国民の生命・財産に対する侵害が拡大するか、または、自衛隊が超法規的措置を取らざる得ない可能性がある。このためあらかじめ緊急事態における法律関係について十分な議論を行い、法制化を進める。この場合、どのような緊急事態においても自衛隊などの活動がシビリアン・コントロールの下にあり、国民に対する必要以上の権利制限とならないよう、国民の権利、とりわけ憲法上認められた基本的人権・表現の自由を保障する。
3.装備調達
限られた防衛予算のもとで必要な装備を整備していくためには、陸海空横並びの考え方から脱却して、想定される脅威に対応した予算編成を行う。また、コスト削減の観点から汎用品についてはその範囲を拡大しつつ、一般入札の積極導入を図る。随意契約・指名競争入札の対象となる装備などについても、透明性・客観性・公正性を担保できるような装備調達方法に改革する。
技術研究開発における従来の体制も見直すとともに、どの範囲までの装備をわが国が国産技術として保持すべきか、そのことの費用対効果や有事における補充はどうかといった点について今後基本的な検討を行う。
4.安全保障情報
専守防衛を国是とするわが国にとって情報収集・分析・対応能力の向上は喫緊の課題である。わが国が運営する情報収集衛星を保有すること、情報本部の充実をはかることに最優先で取り組む。今後見込まれるコンピュータ・情報システムの電子的脆弱性についても対応する。
2)日米安全保障体制
民主主義と自由主義経済という価値観を米国と大枠において分かち合い、米国と安全保障・経済面で緊密な関係を構築してきたことが、戦後わが国の安全保障と繁栄に大きく貢献してきた。国民の安全確保は、国家にとって最も基本的な責務であり、わが国の平和と安全を守るためには、わが国自身の外交防衛努力が基本となることは言うまでもないが、これと並んで、日米安全保障体制をわが国の安全保障政策の最も重要な柱とする。
従来の日米安保体制は重要な意志決定を米国に委ねるという点で、真の意味での同盟関係とは言いにくい状況にあった。今後わが国のとるべき態度は、国益を十分踏まえつつ米国との緊密な対話・協議を行う姿勢であるが、その前提として求められているのはわが国の主体性である。米国との緊密な話し合いを前提に、国内法令の整備などを通じて事前協議制度のあり方を明確にする。
1.新防衛指針
先に日米間で合意した新ガイドラインの必要性を認識する。ただし、周辺事態に対応するための「周辺事態安全確保法」の運用に際しては、周辺事態の認定を含め、わが国の主体性を十分に担保するとともに、わが国の安全と国民生活に与える影響のバランスに細心の注意を払う。同法については、必要に応じて、国会関与のあり方を含めた普段の見直しをはかっていく。
2.米軍基地
在日米軍基地のあり方については不断に見直す。朝鮮半島安定後の極東における米軍のプレゼンスのあり方、アジア太平洋地域の平和と安定を確保するための拠点としての在日米軍基地の位置づけなどについて、中長期的な視点にたって検討を行う。また、日米地位協定の運用改善に向け、米国と交渉していく。
3)アジア太平洋地域の安全保障
アジア太平洋地域において、経済的に圧倒的な存在である日米両国が外交安全保障両面で緊密な協力体制を築いていることがこの地域の安定要因になっている。またアジア太平洋地域における米軍のプレゼンスは、NATOのような集団的安全保障の枠組みを持たないこの地域の平和と安定に重要な役割を果たしている。当分の間、日米安保体制の実効性を高めることが、アジア太平洋地域の平和と安定のための重要な基盤である。その際、日本としては、同盟国としての信頼関係を構築しつつ、米国の行動が米国の国益に偏りバランスを欠いたものとならないよう、率直に協議する。
また、わが国が核拡散などの防止や危機を未然に防止・減少させるための予防外交を展開していくために、近隣諸国との二国間関係の充実、地域的取り組み、国連を通じた取り組みを推進していく。ただし、近隣諸国の不信感を解消しつつ、慎重に対応することが前提である。自衛隊がアジア太平洋地域において単独で活動することについては、邦人救出など例外的な場合を除いて今後とも慎重に対応する。また、「周辺事態法」に基づく米軍への後方支援を行うにあたっても、その範囲が拡大しないよう厳格な運営を行っていく。
3.安全保障対話
APECやARFはアセアン地域の安全保障の信頼醸成を高めるために重要であり、アジアの経済危機の中でも、ARFなどが十分に機能するようにわが国がリーダーシップを発揮していく。また、ARFなどの延長として、アジア太平洋地域における多国間安全保障対話の枠組みの構築や、朝鮮半島問題に関する四者会談を拡大した六者会談を更に発展させ、北東アジアフォーラムを構築していく。これら多国間協議の場において、安全保障関係者の交流、基地や施設への相互訪問、演習などの事前通報・情報公開、通信連絡手段の設置などの信頼醸成措置を積極的に実現していく。また海賊情報も含めて安全保障情報の域内共同管理や情報衛星の共同運営の提案などについても、憲法の枠内で積極的なイニシアティブを果たしていく。
アジア太平洋地域における多国間安全保障対話の枠組み構築と日米安保体制は対立するものではなく、両立・補完関係にあり、同地域の平和と安定のため、それぞれ重要な役割を果たすものと認識する。
4.集団安全保障
軍事的強制力を伴う集団安全保障体制をアジア太平洋地域に構築することは望まれることであるが、同時に解決すべき問題があることも認識する必要があると考える。例えば、米国と中国のいずれかが参加しない集団安全保障体制はむしろ有害ですらある。また、国連との役割分担やその関係づけについて検討する必要がある。
4)国連の安全保障
国際連合は、非効率的な運営、軍事的強制手段の不完全性などの問題点を抱えながらも、国際的な平和と安定に重要な役割を果たしている。紛争解決能力の限界を指摘されてはいるが、重要なことは国連の限界を指摘し、批判することではなく、国連がよりよく機能するよう改革していくことである。国連改革を推進する一方で、幅広い国連外交を主体的・積極的に展開していく。
5.PKO活動
国連が行う国際紛争の解決に向けての交渉、仲介や平和維持活動(PKO)の展開は世界の平和と安定のため重要な役割を果たしており、わが国もより積極的に協力していく。PKO活動については「PKO協力法」施行後7年を経て国民の間にも理解と支持が定着したと認識し、国際的な平和の維持に対する積極的な貢献を行うわが国の基本的な政策と位置づける。また、現在凍結中の紛争停止や武装解除の監視、緩衝地帯における駐留・巡回などのいわゆるPKF活動についても、その凍結解除に向け、国会審議を開始する。
6.多国籍軍
安全保障理事会で議論を尽くし、正式な決議が行われた場合には、その決議に基づく多国籍軍の役割は評価されるべきである。ただし、日本国憲法は多国籍軍の武力行使を伴う参加を禁じていると考えるべきである。また、自衛隊が武力行使を行わない場合には自衛隊の多国籍軍への協力が憲法上可能であるが、戦争終了後の協力や資金協力を別とすれば、自衛隊の多国籍軍への協力については慎重を期すこととする。
7.国連軍
「国連憲章第42条、第43条の特別協定に基づく」という意味において正式の国連軍は未だ編成されたことがなく、当分の間その可能性は低いと考えられる。国連設立時の精神である国連を中心とする集団的安全保障体制の確立に向けて真摯な努力を続けるべきであり、正式の国連軍が編成される場合には、わが国はこれに参加する。
ただし、わが国が参加する場合に、現行憲法で可能かどうかについては議論があるところであり、今後十分に検討していく。
3 沖縄の米軍基地問題と経済の自立
戦後50年余が経過している今日、なお、沖縄に米軍基地が集中していて、多くの負担と犠牲を強いている状況を直視し、沖縄の米軍基地の整理・縮小のため、国内外への移設を含め、積極的に推進します。普天間飛行場については、沖縄県民の意見を十分に踏まえつつ、その移転について早急に結論を出すように米国政府に働きかけます。さらに今後の米軍基地の整理縮小をより推進していく立場から、SACOの検討に着手します。
沖縄の振興に関しては、沖縄経済新法を制定し、沖縄の所得格差、高失業率を克服していきます。一国二制度の導入、沖縄新交通システム整備、沖縄健康アイランド構想の実現などをはかります。沖縄サミットにあたり、アントレプレナー・サミット(起業家サミット)、レーバー・サミット(労働サミット)を開催します。
Z未来への投資
20世紀末の今日、私たちは、時代の大きな転換のときを迎えています。21世紀の新しい日本をどのような国に創り上げていくのか、これからの3年間、5年間、そして10年間が貴重な時間となって、私たちに「未来への責任」を問い始めています。変化のスピードはますます速くなり、政治にもまた迅速な決断と行動が必要となり、自立性と活動能力を飛躍的に向上させた一人ひとりの国民の期待に応えられる行動的な政府の実現も求められています。
私たちは、如何なる時代にも時の流れというものがあると信じており、その流れに逆行する保守主義の道を選択するべきだとは考えません。同時に、時代の流れを正面から受け止めつつも、その進む方向に「光」と「陰」を見極め、国民の間に生まれている多様な可能性を開花させ、希望の光がより輝く道へと日本の進路を舵取りしていく冷静で実行力ある政府の確立が必要だと考えています。新世紀へのこの重要なときをどのような政府が担い、時代をリードしていくのか、それがいま求められている選択です。
そして、政府には、時代の先を読みとり、新しい世紀の到来に備えて「未来への投資」を着実に進める使命があります。民主党は、ここに、教育の改革、情報通信革命への対応を大きな柱として「未来への投資」を構想し、その一部を新しい政府の仕事として提案します。これは、国民の皆さんと大いなる議論を重ねつつ、さらにより豊かな内容にしていくための提言でもあります。
1 未来のための教育改革
日本社会の土台を担ってきた教育がいま大きな曲がり角にさしかかっています。初等・中等教育の現場では、不登校、校内暴力、いじめ、校舎破損、学級崩壊などに直面しています。また、学力の急速な低下も顕著となっています。その背景の一つとして、メディア情報などが氾濫する中での、画一主義的で魅力の乏しい教育の実態にあると考えられています。いずれにしても明治の近代化以来誇ってきた「教育立国」がそのすそ野から崩れようとしているかのようです。高等教育においてもキャンパスのレジャーランド化が指摘され、大学教育の一般化とともに学生の学力水準が問題となっています。
民主党は、21世紀の新しい日本に向けて教育の改革を断行し、未来の担い手たる子どもたちが感受性や創造性豊かな人材として育っていく機会をつくり出す場としての「学校の再生」に挑戦します。父母と教師が地域において互いに協力し、その創意を生かして学校現場の現状を自主的に改善・改革していける仕組みをつくりだしていくことが必要です。私たちは、そうした「創意」と「責任」が共に発揮される学校運営の在り方について検討し、その改革の方向を国民の皆さんに提案します。
教育行政の分権化を徹底して地域の自己決定を大きく認めること、さらに、学校運営のための固有の責任主体として「学校運営協議会」もしくは「学校運営理事会」のようなものを設置するとともに、学校長の公募制などを採用して学校経営責任を明確にするよう改革します。
高等教育については、競争原理を積極的に活かし、民間の創意工夫が大いに活かされる仕組みへと転換します。このため、国立大学の公立化・民営化など大胆な改革も必要です。また、国として重要な長期的研究開発については、大学院制度や各種の公的研究開発機関の充実整備によってこれを推進することとします。
1)就学前教育の重視
家庭の教育力の低下や地域社会における人間関係の希薄化、大人社会におけるモラルの低下などの問題が、未来を担う子どもたちの人格形成に様々な影響を与えている。子育てに関する社会的支援を充実させる一方で、家庭において基本的な生活慣習を正しく身につけること、地域において社会生活での最低限のルールを会得できることをめざして、家庭と地域の教育力を高める。特に、核家族化による子育ての孤立化や不安の解消に向けて、一元化された幼稚園・保育所を拠点とした、相談支援体制の整備を急ぐとともに、現在の義務教育段階と同様に国・地方自治体の支援を充実する。
2)コミュニティに根ざした学校改革
心の荒廃が教育現場を覆っている。小手先の制度いじりでは、もはや対処できないほど事態は深刻であり、教育、そして学校のあるべき姿とは何かといった根本的なことを問いかけている。教育の原点に立ち返り、次代を担う子どもたちが、「自立」しながら他人や自然と「共生」していく力と、新しい時代を「創造」していく力を育むため、学校改革を実行する。
(1)学校改革
学校のあるべき姿を取り戻すために、教職員には「より良い教育をめざすインセンティブ」を与え、子どもたちと保護者には「より良い教育を受ける選択肢」を認める必要がある。そのために、小学校・中学校・高等学校の学校改革と教育課程の規制緩和を進める。
1.教育課程の自由化
全国統一の必須科目を限定し、それ以外は、学校ごとに、独自の授業内容を選択できるようにすることで、特色ある学校を作る。学校設立への規制や指導を緩和し、ホームエデュケーション(不登校などで学校に行けない子どもたちを対象に、家庭における教育課程を認める制度)を含め、学校の種類を多様化する。
一方で、必要最小限の基礎知識・基礎能力については、年齢段階ごとに到達目標を定め、標準学力認定を設けることによって、最低限の教育水準を維持する。
2.学校選択の自由化
すべての通学区域を廃止し、子どもたちと保護者による学校選択を可能にして、学校間・教員間の適度な競争を促進する。各学校には、選択の前提となる教育課程の内容や教授法などについての情報公開を義務づける。
3.学校長公募制の導入
個性ある学校づくりの前提として、「学校経営の責任者=スクールマスター」という学校長の位置づけを明確にし、教員採用や人事・予算などを含む権限と責任を強化する。学校長の選考は公募制とし、教員免許の有無にかかわらず、幅広い人材の登用を可能にする。
4.教員採用の弾力化
新しい時代に適した人材を広く求める見地から、教員免許の有無に関わらず、適性と能力、意欲があれば、学校長の判断で、教員として採用できることとする。適性に応じて、教職公務員が一般公務員に転籍できる道も拡大する。
(2)教育の分権と住民参加
現在の文部省を廃止して、中央教育委員会を設置し、その役割は、年齢段階ごとの最低基準・基本方針を定めることに限定する。学校長の選考や学校の設置認可などを含め、その他の権限は、市区町村が独自に行使できるものとする。
地域に根ざした学校づくりを推進するために「学校運営協議会」(仮称)を設立し、教職員と保護者のみならず、地域住民も加わった学校運営を進める。学校長の選考などにあたっては、こうした地域の声を踏まえて決定する仕組みを作る。
(3)ゆとりと規律ある教育の実現
児童・生徒一人ひとりの個性を大切にした、ゆとりと規律ある教育のために、30人学級と複数担任制を早期に実現する。子どもに過度のストレスを与えている内申書を廃止する。暴力事件やいじめ問題など心の荒廃に対応するため、カウンセリングの充実を進めるとともに、学校、子ども、保護者、地域などが協力して未然防止、問題解決にあたれるよう体制を整備する。
豊かな人間性を育むために、人間の生命と個人の尊厳を尊重する姿勢、自らの育った歴史的・文化的土壌を大切にするとともに、他国の人々や文化にも尊敬の念をはらう姿勢、公共心と協調性などを重視する。福祉や農業での現場実習を、積極的に取り入れるとともに、ボランティア精神の大切さを学ぶ機会、社会規範や社会生活のルールを学ぶ機会を増やす。
(4)未来志向の教育内容
国際化と情報化の進展によって、次世代を担う子どもたちにとって、英語力の有無が、人生の選択肢の幅を決定づける大きな意味を持つことは、否定できない。小学校から、英語教育を必修化するとともに、幼稚園・保育所においても、可能な限り英会話に触れる機会を設けることができるよう支援する。英語教育の内容についても、批判の多いいわゆる受験英語から、実用英語への転換を徹底する。
また、コミュニケーション能力の欠如は、国際社会において通用しない。「以心伝心」に象徴される日本文化の積極面を認めつつも、多様化した価値観の中では、言葉による説明・説得能力の重要性が高まっていると認識する。このため、教育の場において、「みずからの意思を言葉で正確に伝える」「他人の言葉からその意思を正確に捉える」ため、ディベートなどのトレーニングを充実させる。
(5)情報教育の強化
2001年までに小中学校でパソコンを1人1台配置し、インターネット接続にかかる料金を無料化する。また2003年までに小中学校に光ファイバーを敷設する。情報教育の強化のために、インターネットの実習を必修科目とすると同時に、教員のコンピュータ活用能力の向上を図るため、すべての教員がコンピュータ操作を出来るプログラムを導入する。また、インターネット情報教育を行う非常勤講師を全国の小中学校で採用する。
3)大学の改革
わが国の大学は、先端研究においても、また、学生の基礎学力や勉学意欲においても、世界的水準から大きく遅れをとっている。未来を支える高度な専門知識を持った人材を育て、社会に貢献する新しい知識・技術を生み出していくためには、抜本的な大学改革が必要である。
「人材と知識・技術」こそが、わが国の貴重な財産であることを踏まえ、真に学びたい人が、学びたいときに学べる大学教育と、世界的な水準で勝負できる最先端の学術研究を実現する。
(1)国立大学の民営化・公立化
国立大学への手厚い保護が、国立・私立間の公平な競争を阻害し、非効率的な経営につながっている。一方、難易度の高い国立大学の学生の家計収入は高く、国立大学の安い授業料が低所得者層への機会均等になっているわけではない。そこで、国立大学は、原則としてすべて民営化する。ただし、地方自治体が希望する場合には、公立化する。国立大学は、民間のインセンティブが働きにくい基礎研究などを行う少数の大学院大学に限定する。
国立大学の民営化によって、競争条件が対等になれば、消費者が選択できる教育機関の幅が広がり、各大学には教育の質の向上、差別化へのインセンティブが与えられる。また、予算、人事面など組識運営に関して大学側の自由度が向上するとともに、大学の経営努力が促される。
研究開発費に関しては、「産学協同」体制による民間からの資金協力を基本に置く。短期的な市場価値は低いものの、学術的に必要な研究については、国営の研究施設や大学院大学を活用するとともに、個別の研究プロジェクトに対する補助システムを導入して、その水準を確保する。
(2)奨学金の無条件化
大学又は大学院の学生については、希望者全員が奨学金を受け取れるように、奨学金制度を拡充する。利息付き奨学金の資格要件を撤廃し、学費に加えて、必要最小限の生活費についても、支給の対象に含める。これによって、高等教育に対する親の負担を軽減し、真に学びたいものだけが、親ではなく、みずからの負担で進学するという状況に近づける。いったん社会人となったものでも、休職又は退職して、大学や大学院で学び直す可能性を広げる。
(3)私学助成から個人助成への転換
国立大学制度の廃止に合わせて、補助金に関しては、教育機関への補助から個人補助へ転換し、大学間の競争を高める。具体的には、従来の私学助成金と国立大学への支出の大部分をまとめた上で、学生一人あたりの助成額(但し学系毎の差異を設ける)を決定し、各大学へは、現に授業料を納めている学生数に応じて配分するものとする。
(4)国際化の推進と大学院の質の充実
質の高い研究者の養成と、職業人の高度な専門能力育成を柱として、大学院を拡充する。特に、独創的な研究や最先端の研究を促進するために、国際化を推進する。
留学生の受け入れに力点を置いて、環境整備に努めると同時に、外国人研究者の任用をはじめとする教授・研究者の交流、最先端の科学技術分野における国際的共同研究などを推進する。
2.自由時間の増大と生涯学習社会の創造
経済水準が欧米先進諸国に追いついた現在、大きく遅れを取っているのが生活の豊かさのための十分な休暇と生涯学習機会の不足です。また、不況をもたらしている消費の低迷は、「サービス」を消費するまとまった時間が不足しているのも一因です。
特に、長期休暇制度や連続休暇制度の実現は、勤労者の健康の維持、家族・地域社会への貢献、勤労者の能力・創造性の向上などをもたらすものであり、企業を含む社会全体にとっても有益と言えます。さらに、経済の中でますます大きな比重を占める旅行・レジャー産業、健康産業をはじめとするサービス産業における消費には一定のまとまった「時間」が必要であり、これらのサービス消費を刺激し、関連産業での起業などにより、景気の回復にも大きな効果があるものです。「時間の自由」の拡大は、お金をかけない「未来への投資」となるうえ、休暇の拡大に伴う労働時間短縮は、雇用拡大や失業の抑止効果にもつながります。
民主党は、「勤労は美徳」「人に迷惑をかけない」という日本的な風土においても、休暇をきちんととることができるよう改善していく必要があると考えています。また、それが余暇活動に積極的に活用されるとともに、希望する学習機会を十分に保障する社会が整備されていることも重要であり、自由時間の充実に備えた社会基盤の整備にも取り組んでいきます。
1)「連続休暇制度」の導入
勤労者の「連続した時間自由」を、欧米水準に一歩でも近づけることにより、休息による健康の維持・回復・家族や地域社会とのふれあい、ボランティア活動への参加、学習・自己啓発など多様な時間の過ごし方を可能にし、多様なライフスタイルの実現、生活の質の向上に寄与する。
このため、現在まで政府が批准を怠っている国際労働機構(ILO)132号条約の批准を実現し、連続休暇に関する国際スタンダードに即応する国内体制の整備を進める。具体的に、年次有給休暇制度を改革(「労働基準法」の改正)し、「連続休暇制度」を導入する。平均取得率が5割程度の年次有給休暇取得の現状を見直し、勤労者が権利として行使することを積極的に奨励するとともに、これを妨げる使用者には労働時間の規定などと同様に罰則を課すも検討する。現行勤続年数によって10日から20日の日数を、4日程度ずつ延長し、かつその半分は連続付与すべきものとする。
2)生涯学習、スポーツの振興
生涯学習社会の実現のために、子どもから大人までが利用しやすい施設などの整備を推進する。公民館活動の活性化や公立図書館のより一層の充実、大学などの学校図書館の開放を実施する。子どもから、高齢者までスポーツを楽しめるように、また健康の維持増進のためにも、手軽にスポーツを親しめる環境を整備する。地域スポーツの振興策として、芝生のあるグランドの整備や学校の校庭開放、付帯設備の充実を進めるとともに、地域におけるスポーツ指導者育成を推進する。
3)伝統文化の保存・継承と多様な文化体験の場の整備
日本の伝統文化を保存し、その上にさらなる新たな文化を創造していく。文化財の保護、伝統芸能・工芸の継承、教育における体験鑑賞など、文化・伝統を保存するための環境整備を行う。
3 情報ネットワーク時代のための投資
ネットワーク社会において、情報通信網は社会的インフラです。いつでも、どこでも、誰でも、必要な情報を安全に、自由に、安価に利用できる情報通信網が不可欠です。そして国民一人ひとりが情報技術を使いこなせるようになることが重要だと考えます。21世紀に向けて、わが国の競争力を高めるためにも、また国民がより豊かで自由な生活を享受するためにも、情報インフラを早急に整備し、国民の情報リテラシー100%(=誰もが情報化の恩恵を受け取ることができる社会)を実現します。
次代のわが国の基幹的産業として位置づけられている情報通信産業分野の活性化は、高度な情報通信ネットワークを基盤として多くの産業分野の発展に波及するものです。国際化時代に対応したわが国の産業政策上からも最重要施策として位置づけ、積極的に推進します。
1)情報通信基盤の整備
少子高齢化、過疎化による生活実態の地域間格差の歪みを是正するために、全国の家庭まで光ファイバー・ネットワークを早急に整備する。民間事業者が進めている2010年を目標とした整備計画を加速するために、税制や資金調達などの支援策を大胆に行う。地域の病院と大学病院などの専門医療機関を高精度の画像通信網で結ぶ遠隔地間医療ネットワークを整備し、全国的な医療の高度化、格差の是正を促進する。
2)インターネット利用料の軽減促進と接続整備
米国と比較して高めのインターネット利用料を減額するために、市内通話料金を2001年までに適正価格で定額化するよう、重点的規制緩和を実施し、競争圧力による低廉化の実現を促進します。また、政府の保有するNTT株を売却して、その売却益を利用することで民間通信事業者による接続料金の定額制が実現できない地域などにおける光ファイバーの敷設などを支援し、全国どこからでも一定料金でインターネットに接続できる環境を整備する。
3)国際情報ハブ構築のための研究開発
インターネット上で、要求された言語に一括翻訳できる装置の開発を推進する。そのために、多言語相互変換技術の開発のための研究所を設立し、政府資金で研究開発を促進する。また、多言語相互変換技術の開発を行う企業に対して、補助金を新設するほか、政府系金融機関の融資を優先的に行う。
4)行政情報の開示
閣議決定により各省庁別に行政情報の公開マニュアルを作成し、公表することを義務づけることで、遠隔地にいても各省庁の情報へアクセスできる環境を整備する。法案や制度の企画立案段階から、全省庁の行政情報をデータベース化することを義務付け、企画立案段階からの情報公開を徹底する。各種審議会、懇談会などの議事録は、すべて一定期間以内にインターネットで公開する。
図書館、公民館などにインターネット接続拠点を設け、より多くの人がインターネットの恩恵を受けられる環境を整備するとともに、中央省庁と比較して遅れている地方自治体の情報化を積極的に支援する。
5)高齢者・障害者のインターネット・アクセスの確保
国民すべてが情報化社会の恩恵を受けることができるように、高齢者・障害者のインターネット利用を促す基礎的・先進的分野の技術開発を支援する。
政府と政府資金を受けている組織に納品する情報機器は障害者に配慮したものに限定する「リハビリテーション法」を制定することで、障害者向け情報機器の開発・販売を促進する。高齢者のパソコン購入を支援するため、購入費用をすべて所得控除の対象とする。
6)プライバシーの保護
国民がプライバシー侵害に懸念を抱いている状況では、情報化は進展しない。民間分野も包括する「個人情報保護法」の制定、ネットワーク犯罪を防止するためのネットワークセキュリティーの確立を図る。
4 未来型社会資本の整備に向けて
1)新しい総合交通体系の確立と整備
21世紀の交通、物流を支えるために、効果的な「未来への投資」を実施する。鉄道、道路、空港、港湾が個々バラバラに建設されている現状を改革し、相互に連携した総合的な交通運輸体系の整備を進める。都市政策、産業政策との整合性をはかるとともに、環境への負荷の低減、高齢者・障害者への配慮、情報化社会への適応などを基本とする。
(1)幹線高速道路の無料化・都市高速道路の民営化と料金半額化
日本道路公団と本州四国連絡橋公団が運営する幹線高速道路は、全線無料化し、維持管理を費用も含め地方自治体に移管する。今後の建設財源並びにこれまで投下した費用の償還財源は、通行料金から税方式に転換する。
首都高速と阪神高速も、国や自治体の公費の大幅投入などで債務を軽減し、料金を半額にする。合わせて、事業体の効率化を図るため、道路4公団の建設部門は「道路建設公団」(仮称)に統合する。また、首都高速と阪神高速両公団の民営化とともに、その他の地域の都市高速道路事業のうち可能なものから、PFI方式による民間事業者の参入を促す。
(2)地域にあった交通網の整備
住民の声を無視して採算の合わない過疎地域から事業を撤退したり、コスト削減による利用者の安全性低下といった状況を招かないよう、地域交通に関する権限を地方に大幅に委譲し、地域実態に合った整備を進める。
(3)高齢者・障害者にやさしい交通基盤の実現
公共交通施設などにおけるエレベーターの設置、リフト付きバスの導入など、道路環境、駅舎、ターミナルの整備を推進する。
(4)環境にやさしい交通政策の推進
地球温暖化対策のため、電気自動車やハイブリッドカーなどの無公害・低公害車の技術開発支援や、貨物などのモーダルシフト(環境などを配慮した輸送分担の適正化)を積極的に促進する。自動車から排出される窒素酸化物や種々の微粒子を削減し、大気汚染や酸性雨、光化学スモッグの防止を進める。
2)未来を開く科学技術政策
わが国が世界に誇るべき科学技術において、今後とも優位を保てるよう基礎研究・応用研究の両面を重点的に推進する。特に、国民生活の向上、国際貢献などの観点から、がん、エイズ、稀少難病などの治療法の研究、地震の予知、地球環境の保護、新エネルギーの開発など国が取り組むべき課題を絞り込んだ上で、重点的な投資を行なう。特に、科学技術立国・日本の象徴として、リニア技術の実用化を世界に貢献できる国家プロジェクトとして位置づけ、具体的に実施していく。
3)ゆとりある住まいの実現と街づくり
わが国の住環境は、「ウサギ小屋」という言葉に代表されるように、決して世界に誇れる状態ではない。特に、バブルによる乱開発とその後の不動産不況、商店街を取り巻く厳しい経済環境などによって、都市・地方を問わず、「街」そのものの機能が弱まっている。
こうした状況は、わが国の土地が狭いからではない。住まいづくり、街づくりに対する政治の対応が後手後手に回り、「住宅=地価対策」「街づくり=官主導の無個性な区画整理」という状況が続いてきた結果である。
ゆとりある住まいづくりに、強いリーダーシップを発揮するとともに、地域コミュニティによる個性と活力ある街づくりを推進する。
(1)都市住宅環境の改善
都心部の遊休地や非効率的な利用地を活用して、適切な広さを持つ住宅の大量供給と、公園や福祉施設、歩道の整備などを強力に推進する。
「土地収用法」の改正で、収容を受ける者が希望した場合には、物的代償措置を取るよう事業者に義務づける。一定の条件を満たす再開発地域については、容積率を2000%程度まで大幅に拡充する。
登録手数料化する登録免許税を除いて、いわゆる不動産流通課税を見直し、土地の流動化を促してその有効利用を促進する。
(2)地域主体の街づくり
中心市街地の土地区画整理に関して、住民参加・住民主導の体制を強化し、地域が主体の計画を推進する。小公園・集会施設・医療福祉施設などの中心市街地立地を誘導し、商店街と公共施設などが共存する「にぎわいの街づくり」を進める。
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