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2006/06/12
【衆院決算委】菅代行、靖国・米軍再編問題めぐり首相の認識質す


 衆議院決算行政監視委員会で12日、質疑が行われ、民主党・無所属クラブを代表して菅直人代表代行が質問に立ち、小泉首相はじめポスト小泉とされる安倍官房長官、麻生外務大臣、谷垣財務大臣らに、靖国神社問題、財政再建のあり方等に関する見解を質した。

 「5年間の小泉政権、9月の総裁選に出られないというからには終わりが近づいてきた」と述べた菅代行は、同日が24回目の委員会質疑になると語るとともに、5年間の労をねぎらう言葉を首相にかけた。同時に「総理の精神的な強さには敬意を表する。ぜひ学びたい」とも語りかけたうえでまず、少子化問題を取り上げた。
 
 菅代行は「結婚と出産は、一体不可分の関係にある。直接的な少子化の原因は晩婚化・非婚化にあるといわざるを得ない」と分析。この点をどう見るか問われた小泉首相は同調する姿勢を示したが、国が関与して結婚を強制するようなことはできないと語った。そうした答弁を受けて菅代行は、晩婚化・非婚化が進行する背景には人と人との関係性が希薄になっていることに起因するとの見方を示すとともに、若い夫婦を優先的に公営住宅に住まわせる施策を講じたり、「お見合いをまとめた人を表彰する」といった方法をとるなど、国がリードする形で非婚化解消に向けた取り組みを講じる必要があると問題提起した。

 続いて、菅代行は靖国神社問題に関して、「靖国参拝を総裁選の争点にすべきでない」とする小泉首相の発言を取り上げ、2001年の総裁選でどんなことがあっても8月15日に靖国神社を参拝すると宣言し、まさに総裁選の争点としたのはまさに首相であると菅代行は改めて指摘。今回の首相発言について「自分がそうした行動をしたことはまずかったという反省に立っての発言か」と質問した。
 
 小泉首相は「まずかったとは思っていないし、争点にしていない。争点にしたのはマスコミだ」などと答弁。聞かれたから答えただけで、自分は全く争点にしていないし、いまだに争点にするつもりはない。参拝するのは精神の問題。それを問題視されるのが理解できない、などといつもの持論を繰り返し展開した。この答弁に菅代行は「これまでの23回とまったく同じ。相変わらずはぐらかしだ」と一喝。自分が争点にしたのではない、マスコミが争点にしたのだなどと説明する首相の不誠実な姿勢は「公約なんて守れなくても大したことではないなどとした以前の答弁に共通する」と厳しく批判した。

 続いて「次の首相はたとえだれがなろうとも靖国に参拝すべきだ」と発言した安倍官房長官に、その考え方に変わりはないか質した。官房長官は「国のために戦った方々に手を合わせ、ご冥福をお祈りし、感謝の念を表する気持ちは続けて行きたい」などとしたが、菅代表の質問の本筋には答えずじまい。その考えに変化はないと理解していいかとの重ねての問いにも明言を避け、「この問題は精神の問題であるにもかかわらず、中国が外交問題化しようとしている」などとする論点のすりかえに終始した。
 
 同様にこの問題に関する見解を問われた麻生外務相は、「国のために自分の命を投げ出してくれた人びとに対し、国家が最高の栄誉をもって祀ることを禁じている国などない」としたうえで、それを東京都認可一宗教法人に投げ渡しているのが問題だとした。
 
 与謝野金融担当大臣は「どなたでも自分の信ずるところにしたがって、戦没者を慰霊するための行動は許されている。靖国神社はかつてどなたでも何のためらいもせずお参りに行っていた場所だから、そういう昔の状況に戻って欲しい。ただ、これは国が強制できることではなく、神社自体、自主的に独立して判断されるべきこと」などと述べた。

 谷垣財務相は「靖国神社は大変大事なところだと思っている」と述べたうえで、政治的な議論、外交的な議論にするのは望ましくないと指摘。海外からの指摘によって決めるのではなく、日本独自の立場で判断する問題だとした。

 続いて、内閣支持率・株価は上下しているが一貫して上がり続けているのは国債残高だと指摘した菅代行は、小泉政権下で140兆円も積み増しされ、540兆円となってしまった国債をどう減らして行くか質した。与謝野金融相は「基礎的財政収支をとんとんにするのは、財政再建の第一歩として通過しなければならない関門」などとし、2017年にはその段階に到達したい、2017年以降は債務残高が発散しないようにものごとを考えていくなどと発言したが、実効性ある具体的施策は示されなかった。

 菅代行はさらに、米軍の再編問題にも言及。府中市にある航空自衛隊本部が横田基地に移るなど、米軍と自衛隊の「司令部共存」が進みそうな状況を問題視し、かつて9・11同時多発テロ発生時に三沢基地内にある自衛隊の行動が米軍の管理下に置かれたことを取り上げ、「米軍再編の問題も大きな問題だが、日米の一体化が具体的に進んでいるなか、気をつけないと、日本の自衛隊が日本の総理大臣の指揮下に置かれるという大前提が崩れかねない事態になると指摘。独立国としての在り方が揺るぎかねないこうした現状を極めて重く受け止めた菅代行は、首相にその懸念が払拭できる方策を講じているか質したが、首相は、「日米安保条約のもとに日米同盟を強化していく協力関係だ」などと説明。菅代行の懸念は一層深まる答弁に過ぎなかった。
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