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2006/08/29
【衆院沖北特】仲野議員、漁船拿捕事件解決への政府取組みを要請


 衆議院沖縄及び北方問題に関する特別委員会で29日、民主党・無所属クラブの仲野博子議員が質問に立ち、北海道の根室半島沖の北方領土付近で、かにかご漁船「第三十一吉進丸」が、ロシア国境警備庁の警備艇に拿捕され、乗組員の一人が銃弾を受け死亡した事件をめぐり、日本政府の対応に関して麻生外務大臣らに質した。

 仲野議員はまず、亡くなられた乗組員に対して冥福を祈りたいと前置きしたうえで、事件が発生した16日、根室市の乗組員ご家族や漁協関係者、市役所、海上保安庁から事情を聴取するとともに、同日夜には上京し、17日には外務省、ロシア大使館、海上保安庁を訪れ、亡くなられた乗組員のご遺体の引き渡し、3人の乗組員の早期解放を強く申し入れたと、早期解決に向けて奔走した自らの行動を紹介。23日には鳩山由紀夫幹事長らとともに外務省に麻生外務大臣を訪ね、(1)早急に事実関係の詳細を把握し、ロシア政府に対して、拘束されている乗組員全員の速やかな解放及び船体の返還、発生した損害の賠償等を実現すべきである(2)武器使用の態様、同水域における操業規制のあり方等について、事実関係の解明及び再発防止をロシア側に強く求めるべきである(3)現場水域は、わが国が領土主権を有する北方領土である。過去においてもロシアによる拿捕事件が発生している。同様の事件の再発防止に向けた協議を開始するとともに、ロシア側に対し北方領土の早期返還を強く求めるべきである――との3項目を列記した民主党としての要請書を手渡したことを明らかにした。

 この3項目について仲野議員が改めて見解を質すと、麻生外相は「16日から領土問題に対する日本の立場に基づいて、またゆゆしき事態が生じたことに対して厳重に抗議した」としたうえで、ロシア側に陳謝、再発防止、責任者の処罰などを求めると同時に、遺体の即時引き取りを実現したと表明。残る3人の早期解放と船体の返還を求めているとも語った。同時に領土問題の解決に向け、日ロ双方にとって「受入れ可能な解決策」を見出すべく取り組んで行くことが必要だとの認識を示し、そのためにはまず、98年の北方4島周辺水域操業枠組協定、81年の貝殻島昆布協定など従来からの枠組みを引き続き堅持するのが大事だと指摘。安全かつ安定的な操業が円滑に行われるよう、日ロ間で話し合っていきたいなどと語った。民主党からの要請についても日本政府としてロシア側に申入れたことを明らかにし、引き続き誠意ある回答を求めていくとした。

 そうした答弁を踏まえて仲野議員は、この問題の受け止め方に関して地元・根室市と東京とでは温度差があると言及。「政府の対応が冷たい」との声が上がっているとしたうえで、政務官が国後島を訪れたのであれば、未だ解放されない3人の乗組員の帰還見通しに関して家族及び関係者に説明があってしかるべきだと指摘した。対応の不備を問題視したが、塩崎外務副大臣は対応は妥当との認識を示し、3人の解放については「刑事手続きに入っていないので帰還時期はわからない」とのロシア側の回答を繰り返すだけだった。

 仲野議員はまた、今回の問題は北方領土問題が解決していれば起こることはなかったとの見解を示すとともに、小泉政権下では小泉首相はじめ、問題解決へ向けた熱意が伝わってこなかったと指摘。その上で、61年間解決しなかった問題をこの事件を契機に解決しようとしても、同様の交渉では埒があかないとの見方を示し、自民党総裁候補としての麻生外相の前向きな取り組みを求めたいとした。

 さらに小泉・プーチン会談が13回に及ぶなど、日ロ間交渉は進みつつあるとの認識をこの間繰り返し主張する麻生外相に、仲野議員は「回数よりも中身だ」と一括。外交のツケがこうして悲劇を招いたと指摘した。また、麻生外相自らロシアに直接出向き、解決を図るべきではないかとの仲野議員の問題提起に麻生外相は電話や手紙で十分対応していると答弁。こうした姿勢に仲野議員は「電話でも手紙でも交渉は可能なのだろうがそれで片付けられるのか。自らが出向いて精神・気持ちを訴えるべきだ」として、当事者の気持ちを重視して真摯に対応すべきだと改めて強く主張した。
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