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2006/10/06
【衆院予算委】菅代表代行の追及の前に、首相あいまい答弁に終始


 衆議院予算委員会で6日、基本的質疑が行われ、民主党・無所属クラブを代表して質問に立った菅直人代表代行が、対北朝鮮政策、格差拡大の問題、税金の無駄遣い、天下りの問題等を取り上げ、前日・5日に引き続いて、安倍首相の見解を質した。

 菅代行は冒頭、核実験実施を宣言した北朝鮮の問題について、実験実施の可能性をどう認識しているか、そうした北朝鮮に対し、実験実施の阻止に向けて、日中・日韓首脳会談を通じてどういう対処策を検討する用意があるかなどを首相に質問した。首相は、情報収集・分析を行っている段階だと説明。そのうえで、対話と圧力の圧力を強めているとした。核実験に踏み切った場合は、「一層きびしい状況になるとの認識を北朝鮮に持たせるべく、国連で議論するとともに、日中・日韓首脳会談を通じて、現状認識を共有することが大切」と語り、中韓両国と連携して北朝鮮問題に対処するとの考えを示した。また、菅代行の問いに首相は「宣言は有効」との見解を示したうえで、それに乗っ取った対応を北朝鮮に求めていくとした。
 
 続いて、「国民との対話を重視していく」とのスタンスを所信表明で示したにもかかわらず、小泉首相が毎日2回行っていた記者ブリーフを毎日1回に減らしたことに言及した菅代行は、スタンスと矛盾すると指摘。しかし、首相はメルマガやインターネットテレビなどもあるので十分などとした。これを受けて菅代行は、一方通行の情報発信では対話とはいえず、説明責任を果たす意味で不十分だと指摘した。

 「格差を感じる人がいればその人に光を当てることが必要」と語るだけで、必ずしも格差拡大という認識を示さない首相の主張を取り上げ、その認識はないのか、改めて質問した。首相は高齢者世帯が増えている現象を差し引くと、格差は拡大していないとの見方もあり、中流意識をもつ人の構成比率にも大きな変化がないと説明。「非正規雇用、フリーター、ニートが増えてくるなかにあって、格差拡大が懸念されるのも事実で、都市や地方間の格差がある」と述べながらも、格差が拡大したとの認識はないとの主張を繰り返した。

 菅代行は、高所得者が出てくる一方で年収300万円、200万円以下といった低所得者も増加している現状を改めて明らかにし、そのうえで、菅代行は大阪府茨木市の年間240万円の年金受給者世帯を例に、小泉改革による制度変更によってもたらされる07年における収支・暮らしぶりの窮状を取り上げた。

 菅代行は、この家庭では従来222万円の控除があったが、公的年金控除や老齢者年金控除がなくなった結果、68万円の控除がなくなり、配偶者特別控除も廃止され、控除総額は221万円から120万円になると説明。これによって、それまで課税所得以下と認定されていた年金受給者が課税世帯に移ったことを明らかにした。同時に、課税世帯への移行は、単に税だけでなくさらなる負担増が見込まれることを指摘。代行の説明によれば、年金収入240万円の夫婦世帯の場合、01年は所得税ゼロ、住民税も所得割りゼロで、負担総額が17万6000円だったものが、07年まで制度が続いたとすると、介護保険料や国民健康保険料、そして住民税・所得税のすべてが上がって、負担総額が30万9000円となり、従来の1・8倍、13万3000円の負担増となることを明らかにした。

 こうした実態を認識しているか首相に質したが、「低所得世帯の負担増にならないよう制度上配慮しているはず」とするだけで、菅代行が示した「首相は増えないというが実際には増えている実例」を受け止め、年金需給世帯の負担増による格差拡大を何とか是正しようといった真摯な姿勢はあくまでも示されなかった。

 菅代行はまた、天下りの問題にも言及。「官製談合と天下りは表裏一体、天下りをやめさせるべきではないか。天下りを受け入れた企業には公共事業の受注はささせない」と首相が閣議決定さえすれば天下りはなくなり、入札価格も2〜3割下がって税金の無駄遣いが改められると指摘した。しかし、首相は「官製談合については徹底して排除していく」としながらも、「しかし公務員といえども職業選択の自由がある」などとあやふやな答弁。強い取組み姿勢は最後まで示されなかった。

 社会保険庁改革についても政府案は看板の架け替えだけで実効性が伴っていないことを菅代行は指摘したうえで、取組み姿勢を首相に質問。首相は「解体的な見直しを行っていく」「国民から信頼される組織にしていく」などと繰り返すだけだった。
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