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2006/06/16
【衆院厚労委】逢坂・長妻両議員、社保庁の業務執行の杜撰さを衝く


 16日午前、衆議院厚生労働委員会において社会保険庁の国民年金保険料の免除などについての問題が審議され、冒頭に逢坂誠二・長妻昭(『次の内閣』ネクスト国土交通大臣)の両衆院議員が社保庁の計画や業務執行の杜撰さを指摘し、抜本的な出直しを求めた。

 まず逢坂議員が質問に立ち、福沢諭吉の「文明論之概略」を引用して、国民年金の納付率が低下した原因について、しっかり分析して対策を立てることの重要性を説いた。そして、納付率の低下の原因とされているものの中で、収納体制および免除基準の変更については、明らかに政策ミスであったと指摘した。さらに、平成11年に各県より提出させた「国民年金事務改善に関する意見」に盛られている推進員の増員など貴重な現場の声を示し、これらが後手に回っているのは社保庁の怠慢であると指摘した。これに対して社保庁の担当部長は、予算の範囲内でしか対応できないと答弁した。

 逢坂議員は、政府の年金の長期見通しの中で国民年金の納付率を80%と設定している根拠を質したが、答弁は20歳以上について職権適用した平成9年の納付率を用いたというのみであった。さらに逢坂議員は、定員削減計画についても、来年度の目標数すら出てこない現状を指摘し、こんな杜撰なことでは国民はとても納得できないと断じた。

 逢坂議員は、収納の仕組みを抜本的に見直すこと、年金の将来見通しを再構築すること、政府が提案している新機構への移行は脆弱な土台に新築するようなものなので中止すること、年金問題を閉会中も審議すること、の四点を提案して質問を終えた。

 次に長妻議員が質問に立ち、まず国民年金の不正な免除を行った職員について刑事告発を行うべきだと主張したが、川崎厚生労働大臣は関係者と連絡を取って対応するとのみ答弁した。

 続いて長妻議員は、中野社会保険事務所を訪れたとき、「不在者決定処理」が1,600人にも上ることを発見したことを示し、質疑を通じてその中の1,200人が単なる郵便物の戻りによって不在者と決定されたことを明らかにした。そして長妻議員は、不在者処理されると納付率の分母である納付対象者から外れ、結果として納付率の向上につながることを指摘しつつ、これは明らかに不正な処理であると迫った。これに対して村瀬社保庁長官は、不適切な処理ではあるが再調査すれば全てが不正な処理とはならないと述べ、あくまで不正ではないとの立場を取った。長妻議員はここで、全国の不在者処理件数に中野社保事務所での問題ある処理件数の割合を掛けると54万人が不正あるいは不適切に不在者処理されている可能性があることを示し、納付率の面からも、不在処理された人の年金権の面からも大問題であるとして、全国調査を要求した。社保庁長官は、免除問題と同様に全権の確認を行うことおよび不在者決定の統一的なルール作りを行うことを答弁した。

 長妻議員は、関西で社保庁職員の妻について、すでに時効となって追加納付が不可能となっている期間の保険料について特別に追加納付を認めた例をあげ、社保庁関係者が強く要請すれば特別な取り扱いが行われるのかと迫った。この件について、社保庁長官は処分を約束した。

 長妻議員は、墨田社会保険事務所で高年収であるにもかかわらず保険料を免除した例を取り上げて質問し、東京で50件の例があるとの答弁を得た。長妻議員は、日本国民全体を免除すれば納付率は100%となると皮肉りつつ、社保庁長官からこの件についても全件調査するとの答弁を得た。

 長妻議員は、オンライン化される前の年金記録が宙に浮いてその期間の年金権が失われた例を取り上げ、制度の改善を求めた。社保庁長官は、年金裁定の前に、現在は58歳のときに年金データを送付して是正の機会を設けているが、今後は35歳の時点でも同様の措置を取りたいと答弁した。

 長妻議員は、国民年金推進員の勤務評価の基礎となるポイントが、東京では免除を受理した場合に全国基準よりきわめて高い倍率になっていることを指摘し、推進員の気持ちを免除をする方向に誘導するものだと批判した。

 長妻議員は、国民年金法改正の中に施設の整備という項目があることは、大赤字を出して廃止されたグリーンピアなどの福祉施設を他の名目で復活させるきっかけとなるものであり、削除を求めた。そして年金保険料は、年金給付にのみ使うべきだと主張した。

 長妻議員は、法令順守をないがしろにするような社保庁長官の言葉を取り上げて法令順守こそが最優先だと指摘した。そして、社保庁長官は責任を取って辞めるべきであり、また保険商品のあり方を見直すべきであると訴え、さらに社保庁改組法案も出し直すべきだと述べて、質問を終えた。
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