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2006/10/12
【参院予算委】浅尾議員、所得と資産の格差拡大などを質す




 12日午前、参院予算委員会の総括質疑に浅尾慶一郎議員(「次の内閣」官房副長官)が質問に立ち、北朝鮮の核実験への対応、再チャレンジ、負担増と格差拡大などについて、総理をはじめとする政府閣僚の見解を質した。

 浅尾議員は、わが国が領海内で船舶に対する臨検を行う場合の主体と根拠について質問し、安倍総理から主体は海上保安庁であるとの答弁を、冬柴国土交通大臣からは領海から公海までを場合分けしてどのような対応が可能であるかということおよび海上保安庁は臨検は行わないという答弁を得た。浅尾議員は、これでは公海を経由する北朝鮮の核物質の持ち出しに対して有効ではないと指摘し、臨検を行うことについての見解を求めたが、総理は具体的に答えられるものではないと答弁した。

 浅尾議員は、周辺事態船舶検査活動法にもとづけば公海上でも臨検を行うことが出来ると指摘し、そのためには国連安保理の決議とともに、周辺事態であるとの認定が必要であるとして、政府の見解を求めた。久間防衛庁長官は、現在の状態では周辺事態とは言い難いが、国連決議後の事態の推移によっては分からないと答弁した。浅尾議員は、今の段階では臨検しないというのは北朝鮮に誤ったメッセージを送ることになると批判した。浅尾議員は、一方では制裁のための国連決議を求め、他方では臨検に参加しないというのでは国際社会で通らないと述べた。さらに浅尾議員は、国連海洋法条約によっても臨検が出来る場合があると指摘したが、防衛庁長官は同条約には経済制裁は含まれないと答弁した。浅尾議員は、昭和63年の国会における当時の小渕官房長官の答弁を引いて、この分野における国内法の整備を促した。防衛庁長官は、憲法9条の制約のため臨検は限定的なものとされており、また武力の行使は出来ないと答弁した。総理は、今後の大きな課題であるとの見解を示した。

 浅尾議員は、職業における再チャレンジの重要性を訴えて、総理も同様の見解を持っているとの答弁を得た。そして浅尾議員は、再チャレンジが困難なのは制度の問題なのかそれとも心の問題なのかと問った。総理はどちらとも言えないとしつつも、再チャレンジが成功した実例をつくることでその気運を作りたいと答弁した。浅尾議員は、人々が再チャレンジに向けて新たな一歩を踏み出すことを支援すべきではないかとし、水飲み場に馬を連れて行くべきだと述べた。総理は、ホームレスから立ち直った人の例を引き、規律に馴染んだりすることに時間がかかるが、必要なことだと答弁した。浅尾議員は、議業の努力などを促しつつ、多くの人が夢と希望を持って労働市場に参加できるようにしてもらいたいと述べた。

 浅尾議員は、小泉内閣時代の厚木市の所得階層別の負担増をパネルで示しつつ、社会保険料の負担増は増税と同じではないかと問い質した。総理は、国民にとっては負担増かもしれないが、増税ではないと答弁し、柳沢厚生労働大臣は負担論から見れば同じかもしれないが、使途を考えれば異なるものだと答弁した。浅尾議員は、定率減税を廃止したことは増税ではないのかと問い、尾身財務大臣は定率減税は平成10年ころの小渕内閣時代の需要喚起策としての臨時的かつ異例な措置であり、それをやめるだけだと答えた。浅尾議員は、当時の減税は法人税・所得税の税率引き下げと所得税の定率減税の三点セットであり、その中で定率減税のみを廃止するのは中堅以下の所得層にのみ負担をもたらすものだと指摘した。財務大臣は、低所得者層に手厚い措置であった定率減税が廃止されたために、その階層の負担増加率が大きくなっているだけだと答弁し、総理は、税の所得再分配機能は維持していくと答弁した。

 浅尾議員は、貯蓄のない世帯が増加し、しかも平均貯蓄金額は増えている状況をパネルで示し、これは中堅以下の所得層に対する負担増のためであると指摘した。これに対して総理は、小泉内閣のせいではなく失われた十年という長期不況のせいであると応じた。浅尾議員は今後は資産について中立的な政策をとるべきだと迫り、総理はどのような社会をつくるか広く議論するとのみ答弁した。

 浅尾議員は、年金の官民格差を取り上げ、公務員には民間では企業年金となる部分も加えて退職金が支払われており、年金の職域加算部分との二重取りになっているのではないかと質した。菅総務大臣は、公務員には兼業禁止などの制限があるので、職域加算があると答弁したが、浅尾議員は民間にも兼業禁止があるとし、そのような制限に対する配慮は現役時代に行うべきだと主張した。
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