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2006/11/14
【衆院教育特】松原、前原、藤村、古賀議員、教基法改正のあり方質す




 衆議院教育基本法特別委員会で14日、民主党・無所属クラブの松原仁、前原誠司、藤村修、古賀一成各議員が、教育基本法改正をめぐり、民主党案・政府案それぞれについて質問した。

 最初に質問に立った松原議員は、教育基本法の改正理由を伊吹文部科学大臣に尋ねるとともに、冷戦構造の崩壊や社会変化により、改正は時宜を得ているとの考えを示した。また、愛国心の取り扱いについて塩崎官房長官、伊吹文科相、下村官房副長官の見解を質し、宗教教育のありようを議論した。

 愛国心について松原議員は、政体へ対する国民の思い入れはあって然るべきだとの見解を表明。「責任政党の幹部が、愛国心教育が必要だと言い切れない国は極めてまれだ。教育基本法の中に明記するのは当然だ」などとして、政府案第2条第5項の「我が国と郷土を愛する」という文言の解釈を大臣に質した。また、「国を愛する態度」を学習指導要領へ反映させる方法についても答弁を求めた。

 宗教的情操教育については、「明快に語られない」与党案と、「宗教的感性の涵養」に言及した民主党案を対比させて質問。大臣はガイドラインのようなものを作る考えは持っていないとした。

 前原議員は、教育委員会のあり方、学校運営協議会制度の位置づけ、教師の評価・免許の更新のあり方、未履修問題等について、伊吹文部科学大臣と議論した。

 冒頭、教育基本法の改正について「見直すことに異存はないが、問題は現場で起きている」と述べ、現場感覚での改革が求められていることを改めて指摘した。そのうえで、教師の指導力不足の問題を取り上げ、都道府県教育委員会が指導力不足と認定した教師が05年度、全国で506人に上り、116名が研修を受けて現場に復帰したことについて「私の印象ではちょっと少ない気がする」と述べ、実態を網羅しきれていないのではないかとの認識を示した。それに対して伊吹文科相も同様の見方を示した。

 また、中央教育審議会が有効期限を10年間とする答申を出している教員免許の更新制度導入についても前原議員は取り上げ、この制度で指導力不足は解決するのか質したのに対し、伊吹文科相は「ダメだといわれた教師を10年に一度研修することですべては直らない」と述べ、中教審の答申では不十分だとした。

 そうした答弁を受けて前原議員は、教育行政そのものを見直していく必要性に改めて言及。教育委員会にメスを入れなければならないとした。また、民主党案に盛り込まれた学校理事会の重要性にも言及し、保護者・地域住民・学校関係者からなる学校理事会が自主・自立的に行うことが教育改革につながると指摘した。さらに、学力低下の原因ではないかとの指摘がある学校週5日制の見直しの必要性についても問題提起した。

 続いて質問に立った藤村修議員は、家庭・学校・地元教育委員会・都道府県教育委員会・文部科学省それぞれの位置づけや責任のあり方等について、整理して質した。

 教育現場で起っている諸問題に対して、家庭・学校・教育委員会・文部科学省と責任のたらい回しのような状況が起っているとの認識を示し、地方分権法等によって文科省が教育委員会等に対し改善措置を促す権限もないことで、責任体制があいまいになったのではないかと指摘。民主党案にある、国の責任の明確化の必要性を浮き彫りにした。

 民意を教育現場にも反映させていくためにも国会の関与、国が責任を果たす形にかえていくべきだとも藤村議員は問題提起し、学習指導要領の決定にあたっても国の関与を検討すべきだとした。また、現行法下で都道府県教育委員会が果たしている責任と権限の首長への移譲も提起した。

 しかし、伊吹文科相は政府の教育基本法改正案における教育委員会の在り方・権限について「大きな流れは変わらない」と述べ、現行法制下と変化がないとの認識を示すにとどまった。

 「国立大学の法人化」をめぐり、個人的にはあまり賛成できないとの発言がきかれる伊吹文科相の認識を改めて確認したうえで、義務教育費国庫負担制度の今後について質問。その問いに対して文科相は、「国立大学法人そのものに反対しているのではない」と述べたうえで、運用によってはマイナスとなることを懸念するとの認識を示した。一方で、義務教育費国庫負担制度については従来の2分の1負担に戻すべきではないかとの認識を示した。

 最後に質問した古賀議員は、時代に対応せず変質してきた文部行政を問題視する基本的立場を示し、「現場主義」ではなく「教育管理行政」であったと指摘。今度の教育基本法改正で、教育現場の荒廃が改められるか、また現場の混乱を避けられるか、文部行政のトップの熱意が問われるとして文科相を追及した。

 さらに、大臣として全国の子どもたちや教師に、自殺防止に関するメッセージを発出する考えがあるか質問し、真剣に考えるよう要請した。

 今後の教育については、知恵を絞り大胆に行うことも時には必要であるとして、英語教育や海外研修における取組みなどを例に挙げた。教育改革タウンミーティングでのやらせ質問の問題にも言及し、調査の進捗状況などを質問した。
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