(目的)
第一条
この法律は、輸入牛肉に係る牛の特定のための情報の適正な管理及び伝達に関する特別の措置を講ずることにより、我が国に牛肉を輸出する国で牛海綿状脳症が発生した場合に我が国において生じるおそれのある事態に迅速に対応するための措置の実施の基礎とするとともに、輸入牛肉に関する情報の提供を促進し、もって牛肉に係る輸入及び販売の事業並びに飲食店営業の健全な発展並びに消費者の利益の増進を図ることを目的とする。
(定義)
第二条
この法律において「指定国」とは、牛海綿状脳症対策特別措置法(平成十四年法律第七十号)第十一条第一項に規定する指定国をいう。
2
この法律において「指定国牛肉」とは、食用に供される牛肉(これを原料又は材料として製造し、加工し、又は調理したものその他の農林水産省令で定めるものを除く。)であって、指定国から輸入されたものをいう。
3
この法律において「指定国牛肉特定符号」とは、指定国牛肉に係る牛について農林水産省令で定める生育等に関する履歴を特定するための符号であって、指定国の政府、政府機関又は地方公共団体その他農林水産大臣が指定する者が定めるものをいう。
4
この法律において「販売業者」とは、牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法(平成十五年法律第七十二号)第二条第五項に規定する販売業者をいい、「特定料理提供業者」とは、同項に規定する特定料理提供業者をいい、「指定国牛肉料理」とは、同条第四項に規定する特定料理のうち指定国牛肉を主たる材料とするものをいう。
(指定国牛肉台帳の作成等)
第三条
指定国牛肉の輸入の事業を行う者(以下「輸入業者」という。)は、農林水産省令で定めるところにより、指定国牛肉台帳(磁気ディスクをもって調製するものを含む。以下同じ。)を作成し、当該台帳に指定国牛肉(前条第二項に規定する農林水産省令で定めるものに用いられるものを除く。以下この項において同じ。)ごとに次に掲げる事項を記載し、又は記録し、これを保存しなければならない。
一 指定国の名称
二 指定国牛肉特定符号
三 指定国牛肉の輸入の年月日
四 その他農林水産省令で定める事項
2
輸入業者は、指定国牛肉台帳に記録された事項をインターネットの利用その他の方法により公表するものとする。
(販売業者による表示事項の表示等)
第四条
販売業者は、指定国牛肉の販売をするときは、農林水産省令で定めるところにより、当該指定国牛肉若しくはその容器、包装若しくは送り状又はその店舗の見やすい場所に、当該指定国牛肉に係る輸入業者の氏名又は名称及び住所並びに前条第一項第一号及び第二号の事項(以下「表示事項」という。)を表示しなければならない。
2
前項の場合においては、販売業者は、一の指定国牛肉について一の表示事項を表示しなければならない。ただし、次に掲げる要件のいずれにも該当する指定国牛肉の販売をするときは、一の指定国牛肉について二以上の表示事項を表示することができる。
一 いずれの牛から得られたものであるかを識別することが困難な指定国牛肉であること。
二 農林水産省令で定める頭数以下の牛から得られた指定国牛肉であること。
3
第一項の場合においては、販売業者は、農林水産省令で定めるところにより、表示事項の表示に代えて、荷口番号(表示事項以外の番号又は記号で表示事項に対応するものをいう。以下同じ。)を表示することができる。
4
前項の場合には、販売業者は、農林水産省令で定めるところにより、その氏名又は名称を併せて表示するとともに、当該指定国牛肉の販売の相手方、消費者その他の者の求めに応じ、当該荷口番号に対応する表示事項を明らかにしなければならない。ただし、他の者が定めた荷口番号を表示する場合において、農林水産省令で定めるところにより、当該他の者の氏名又は名称を表示したときは、この限りでない。
(特定料理提供業者による表示事項の表示等)
第五条
特定料理提供業者は、指定国牛肉料理の提供をするときは、農林水産省令で定めるところにより、当該指定国牛肉料理又はその店舗の見やすい場所に、当該指定国牛肉料理の主たる材料である指定国牛肉に係る表示事項を表示しなければならない。
2
前条第二項から第四項までの規定は、前項の場合について準用する。この場合において、同条第二項中「販売業者」とあるのは「特定料理提供業者」と、「一の指定国牛肉」とあるのは「一の指定国牛肉料理」と、「指定国牛肉の販売」とあるのは「指定国牛肉料理の提供」と、同条第三項中「販売業者」とあるのは「特定料理提供業者」と、同条第四項中「販売業者」とあるのは「特定料理提供業者」と、「当該指定国牛肉の販売の相手方、消費者」とあるのは「当該指定国牛肉料理の提供の相手方」と読み替えるものとする。
(帳簿の備付け等)
第六条
販売業者及び特定料理提供業者は、農林水産省令で定めるところにより、帳簿(磁気ディスクをもって調製するものを含む。以下同じ。)を備え、指定国牛肉の販売又は指定国牛肉料理の提供に関し農林水産省令で定める事項を記載し、又は記録し、これを保存しなければならない。
(勧告及び命令)
第七条
農林水産大臣は、販売業者が第四条第一項、第二項又は第四項の規定を遵守していないと認めるときは、当該販売業者に対し、必要な措置を講ずべき旨の勧告をすることができる。
2
農林水産大臣は、特定料理提供業者が第五条第一項又は同条第二項において読み替えて準用する第四条第二項若しくは第四項の規定を遵守していないと認めるときは、当該特定料理提供業者に対し、必要な措置を講ずべき旨の勧告をすることができる。
3
農林水産大臣は、前二項に規定する勧告を受けた販売業者又は特定料理提供業者が、正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかったときは、当該販売業者又は特定料理提供業者に対し、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。
(報告及び検査)
第八条
農林水産大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、輸入業者に対し、必要な報告をさせ、又はその職員に当該輸入業者の事務所、事業場その他の場所に立ち入り、指定国牛肉台帳、帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。
2
農林水産大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、販売業者若しくは特定料理提供業者に対し、必要な報告をさせ、又はその職員に当該販売業者若しくは特定料理提供業者の事務所、事業場、店舗その他の場所に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させ、関係者に質問させ、若しくは検査に必要な限度において指定国牛肉若しくは指定国牛肉料理を集取させることができる。ただし、指定国牛肉又は指定国牛肉料理を集取させるときは、時価によってその対価を支払わなければならない。
3
前二項の規定により立入検査、質問又は集取をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
4
第一項及び第二項の規定による立入検査、質問及び集取の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
5
第一項及び第二項に規定する農林水産大臣の権限は、農林水産省令で定めるところにより、その一部を地方農政局長に委任することができる。
(情報の収集及び提供)
第九条
農林水産大臣は、指定国において牛海綿状脳症が発生した場合等に我が国において生じるおそれのある事態に迅速に対応するため、牛海綿状脳症の発生等に関する情報の収集を速やかに行うとともに、当該情報を輸入業者、販売業者及び特定料理提供業者並びに消費者に対して適切に提供するよう努めるものとする。
(関係行政機関等の協力)
第十条
農林水産大臣は、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、厚生労働大臣その他の関係行政機関の長又は関係地方公共団体の長に対し、必要な資料又は情報の提供、意見の開陳その他の協力を求めることができる。
(経過措置)
第十一条
この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。
(罰則)
第十二条
次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 第三条第一項の規定に違反して、指定国牛肉台帳を作成せず、指定国牛肉台帳に記載し、若しくは記録すべき事項を記載せず、若しくは記録せず、若しくは虚偽の記載若しくは記録をし、又は指定国牛肉台帳を保存しなかった者
二 第六条の規定に違反して、帳簿を備えず、帳簿に記載し、若しくは記録すべき事項を記載せず、若しくは記録せず、若しくは虚偽の記載若しくは記録をし、又は帳簿を保存しなかった者
三 第七条第三項の命令に違反した者
四 第八条第一項若しくは第二項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、これらの規定による検査若しくは集取を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又はこれらの規定による質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者
第十三条
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、同条の刑を科する。
附 則
(施行期日)
第一条
この法律は、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(経過措置)
第二条
この法律の施行前に輸入された指定国牛肉については、この法律は、適用しない。
(政令への委任)
第三条
前条に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
(検討)
第四条
政府は、指定国牛肉以外の輸入牛肉に係る牛の生育等に関する履歴の特定のための情報が提供される制度について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
理 由
我が国の牛肉の消費量の相当部分が輸入牛肉である現状にかんがみ、我が国に牛肉を輸出する国で牛海綿状脳症が発生した場合に我が国において生じるおそれのある事態に迅速に対応するための措置の実施の基礎とするとともに、輸入牛肉に関する情報の提供を促進するため、指定国牛肉台帳の作成、指定国牛肉を販売する場合における販売業者による指定国牛肉特定符号等の表示等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
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