(目的)
第一条
この法律は、労働者の募集及び採用について、その年齢にかかわりなく均等な機会を確保するための措置を講ずることにより、労働者がその有する能力を有効に発揮することの妨げとなっている雇用慣行の是正を図り、もって労働者の職業の安定を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与することを目的とする。
(啓発活動)
第二条
国及び地方公共団体は、労働者の募集及び採用においてその年齢にかかわりなく均等な機会を確保することについて国民の関心と理解を深めるとともに、特に、労働者がその有する能力を有効に発揮することの妨げとなっている雇用慣行の是正を図るため、必要な啓発活動を行うものとする。
(基本方針)
第三条
厚生労働大臣は、労働者の募集及び採用においてその年齢にかかわりなく均等な機会を確保するための施策の基本となるべき方針(以下この条において「基本方針」という。)を定めるものとする。
2
基本方針に定める事項は、次のとおりとする。
一 労働者の募集及び採用の動向に関する事項であって、求職者の年齢に関するもの
二 労働者の募集及び採用においてその年齢にかかわりなく均等な機会を確保するために講じようとする施策の基本となるべき事項
3
厚生労働大臣は、基本方針を定めるに当たっては、あらかじめ、労働政策審議会の意見を聴くほか、都道府県知事の意見を求めるものとする。
4
厚生労働大臣は、基本方針を定めたときは、遅滞なく、その概要を公表するものとする。
5
前二項の規定は、基本方針の変更について準用する。
(労働者の募集及び採用における均等な機会の確保)
第四条
事業主は、労働者の募集及び採用について、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。
2
事業主は、次の各号に掲げる場合は、前項の規定にかかわらず、それぞれ当該各号に定める者を対象として募集及び採用を行うことができる。
一 芸術又は芸能の分野における表現の真実性の要請から、特定の年齢階層に属する者が求められている場合 当該年齢階層に属する者
二 労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)その他法令の規定により特定の年齢階層に属する者の就業が禁止され、又は制限されている場合 当該年齢階層に属さない者
三 事業主がその雇用する労働者の定年の定めをしている場合 当該定年未満の年齢の者
(指針)
第五条
厚生労働大臣は、前条に定める事項に関し、事業主が適切に対処するために必要な指針(次項において「指針」という。)を定めるものとする。
2
第三条第三項及び第四項の規定は、指針の策定及び変更について準用する。この場合において、同条第三項中「聴くほか、都道府県知事の意見を求める」とあるのは、「聴く」と読み替えるものとする。
(紛争の解決の促進に関する特例)
第六条
労働者の募集及び採用における年齢に関する事項についての個々の求職者と事業主との間の紛争については、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成十三年法律第百十二号)第四条の規定は適用せず、次条に定めるところによる。
(紛争の解決の援助)
第七条
都道府県労働局長は、前条に規定する紛争に関し、当該紛争の当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当該紛争の当事者に対し、必要な助言、指導又は勧告をすることができる。
2
事業主は、労働者の募集及び採用について、求職者が前項の援助を求めたことを理由として、他の求職者と差別的取扱いをしてはならない。
(調査等)
第八条
厚生労働大臣は、労働者の募集及び採用においてその年齢にかかわりなく均等な機会を確保するため必要な調査研究を実施するものとする。
2
厚生労働大臣は、この法律の施行に関し、関係行政機関の長に対し、資料の提供その他必要な協力を求めることができる。
3
厚生労働大臣は、この法律の施行に関し、都道府県知事から必要な調査報告を求めることができる。
(報告の徴収並びに助言、指導及び勧告)
第九条
厚生労働大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。
2
前項に定める厚生労働大臣の権限は、厚生労働省令で定めるところにより、その一部を都道府県労働局長に委任することができる。
(公表)
第十条
厚生労働大臣は、第四条第一項の規定に違反している事業主に対し、前条第一項の規定による勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができる。
(船員になろうとする者に関する特例)
第十一条
船員職業安定法(昭和二十三年法律第百三十号)第六条第一項に規定する船員になろうとする者に関しては、第三条第一項並びに同条第三項及び第四項(同条第五項及び第五条第二項において準用する場合を含む。)、第五条第一項並びに前三条中「厚生労働大臣」とあるのは「国土交通大臣」と、第三条第三項(同条第五項及び第五条第二項において準用する場合を含む。)中「労働政策審議会」とあるのは「船員中央労働委員会」と、第七条第一項及び第九条第二項中「都道府県労働局長」とあるのは「地方運輸局長(運輸監理部長を含む。)」と、第九条第二項中「厚生労働省令」とあるのは「国土交通省令」とする。
(適用除外)
第十二条
第五条から第七条まで、第九条及び第十条の規定は、国家公務員及び地方公務員に関しては適用しない。
附 則
(施行期日)
第一条
この法律は、平成十六年四月一日から施行する。
(雇用対策法の一部改正)
第二条
雇用対策法(昭和四十一年法律第百三十二号)の一部を次のように改正する。
第七条を次のように改める。
第七条 削除
第十二条を次のように改める。
第十二条 削除
第三十条第二項中「、第七条、第十二条」を削る。
(厚生労働省設置法の一部改正)
第三条
厚生労働省設置法(平成十一年法律第九十七号)の一部を次のように改正する。
第九条第一項第四号中「地域雇用開発促進法」の下に「、労働者の募集及び採用における年齢に係る均等な機会の確保に関する法律(平成十五年法律第 号)」を加える。
(国土交通省設置法の一部改正)
第四条
国土交通省設置法(平成十一年法律第百号)の一部を次のように改正する。
第四十三条第四号中「及び船員職業安定法(昭和二十三年法律第百三十号)」を「、船員職業安定法(昭和二十三年法律第百三十号)及び労働者の募集及び採用における年齢に係る均等な機会の確保に関する法律(平成十五年法律第 号)」に改める。
理 由
最近における中高年齢者の厳しい雇用情勢、就業に対する意識の変化、少子高齢化の進展等にかんがみ、年齢にかかわりなく労働者がその有する能力を有効に発揮することのできる社会を実現するため、労働者の募集及び採用について、その年齢にかかわりなく均等な機会を確保するための措置を講ずることにより、労働者がその有する能力を有効に発揮することの妨げとなっている雇用慣行の是正を図る必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
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