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2003/12/04
裁判員制度設計に関する考え方
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司法改革WT座長  江田 五月
「次の内閣」法務大臣 千葉 景子 第1 裁判員制度の基本理念

 私たち民主党は、今回の司法制度改革を、市民が主役の司法をめざす極めて重要な大改革と位置づけ、その実現のために提言し、努力してきた。
 裁判員制度は、国民主権のもと、主権者として自律的かつ社会的責任を負う統治主体である国民が、三権の一つである司法に直接参加し、多様な価値観や発想で事案を審理し、国民主導で正義を実現する制度であり、司法制度改革の諸課題の中でも最も重要なもののひとつである。
 従って、この制度設計にあたっては、常に国民主権の実現という観点を忘れてはならない。また、新しい裁判方式であるから、従来の制度を前提とせず、新しい、柔らかい発想で行われる必要がある。

第2 制度の基本骨格

 1.裁判体の構成

 (1)裁判官の人数
裁判員制度における裁判官の役割は、法律専門家としての知識と経験を生かし国民の責任ある自律的判断をサポートすることである。
 従って、裁判官の人数は、総括裁判官クラスのベテラン1名とすることが適当である。(なお、ベテラン判事1名と、補助的な仕事を行うロークラークとしての判事補1名の構成とすることも考えられる。)

 (2)裁判員の人数
裁判員制度は、国民が司法に参加することによって、司法における国民の自治、自立、社会的責任を実質化するものであり、また多様な価値観が反映することが必要である。
従って、裁判員の人数は、10名前後の多数とすることが適当である。

 2 裁判員の選任

 (1)裁判員の資格要件
裁判員の要件は、公職選挙法による選挙人の資格を有する者とする。

 (2)裁判員の選任方法

1. 裁判員は、選挙人名簿から無作為抽出する。
2. 欠格、除斥、忌避制度の適正な運用のため、裁判員候補者は定員の数倍召喚する。
3. 欠格、除斥、忌避制度の適正な運用のため、裁判官、当事者による候補者への質問手続を設ける。

 (3)国民の義務
裁判員となることは原則として国民の義務とする。

 (4)国民の負担への配慮
国民参加が過大な負担とならないよう、合理的な理由による辞退制度、義務を一定期間先延ばしにできる延期制度や、司法参加により不利益が生ずることを防ぎ、雇用関係に影響がないようにする「裁判員休暇制度」を設けるべきである。

 3 裁判員の権限

有罪・無罪の決定と刑の量定については、裁判員は裁判官と対等の権限を有するものとする。法律問題・手続問題は裁判官の権限とする。

 4 評決

3分の2の特別多数決制とする。ただし、裁判官または裁判員のみの多数で被告人に不利な決定をすることはできないこととする。

 5 対象事件

(1)当面は刑事事件のみとし、対象事件は現行法により法定合議事件とされるものを基本とする。
 組織犯罪事件やテロ事件なども、対象から除外すべきではなく、そのためにも裁判員の安全確保の方策などを併せ検討する。

 6 裁判員制度における公判手続

 (1)準備手続
裁判員制度のもとでは、第1回公判前の準備手続を必ず行うこととする。

 (2)証拠の開示と争点整理
迅速で充実した集中審理方式を実現するため、検察官手持ち証拠全ての開示を、原則として義務づける。また、裁判員にとってわかりやすい審理とするため、当事者は準備手続において争点を明らかにすべきものとする。

 (3)証拠調べ等
裁判員に分かりやすい審理とするため、直接主義・口頭主義を徹底できるよう、制度上、運用上の工夫を検討するとともに、供述調書については、取調べ状況をビデオ録画することを条件に利用できるものとする。

 7 判決

 証拠調べ終了後、当事者の弁論及び裁判官の説示を行い、裁判員と裁判官は直ちに評議に入り、全員一致を目指して評議するものとする。
 評決に至った場合は直ちに判決を言い渡すものとし、判決書はその後速やかに裁判官が作成すべきものとする。但し、将来、刑事事件以外にも拡大する場合には、裁判所法との調整を要する。

 8 控訴審

控訴審には裁判員は参加せず、裁判官のみによる事後審とする。
控訴審は、少なくとも事実問題については自判できないものとする。

 9 裁判員の保護及び公正な裁判の保障

 (1)個人情報
裁判員の個人情報は、本人が特定されないような扱い方を検討する。

 (2)裁判員に対する請託等
裁判員に対する請託等は、犯罪として処罰の対象とする。

 (3)守秘義務
裁判員や裁判員であった者は、合理的な範囲内の守秘義務を負うものとするが、その範囲については、意見表明の自由との関係で、さらに検討する。

 (4)裁判員制度と取材・報道
裁判員制度で審理される事件の取材・報道のあり方については、表現の自由と、裁判員のプライバシー、公正な裁判の実現等との適正な調整を目指すべきであるが、基本的にはメディアの自主的規制に委ねることとする。

 10 国民が参加しやすい仕組み

 (1)育児・介護の支援
性別や年齢を問わず、自立した男女が共に参画できる社会システムづくりの観点から、女性の司法参加の機会増大を図るため、裁判所に託児所や託老所を設けるなどの体制を併せて整備する。

 (2)義務教育段階から法教育を充実
社会の一員としての責任感を醸成するため、義務教育段階から裁判員制度をはじめとする法教育を充実する。

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