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2003/09/26
「パスポートに指紋を」野沢法相発言についての談話
民主党『次の内閣』法務ネクスト大臣
千葉景子

 新たに閣僚に任命された野沢法務大臣が、小泉総理から、日本を世界一安全な国に戻してほしいと指示されたとしたうえで、治安対策のため、「顔の形、指紋など個人特有のデータを読み込んだ形でパスポート、その他を作っていくのが効果があるのではないか」と述べたと報じられている(9月26日付東京新聞朝刊など)。

 日本を世界一安全な国に戻すという目的そのものが否定されるべきでないことはもちろんである。しかし、治安の維持という目的に対して採られる手段は、往々にして個人の私生活やプライバシーなどの制約・侵害にわたりがちであることから、警察国家とならないよう、そのバランスに配慮することは当然である。

 特に指紋は、利用方法次第ではプライバシーが侵害される危険がある。かつて在留外国人に指紋押捺を義務付けていた外国人登録法が、在留外国人を犯罪者扱いしているという批判の強まりにより、1999年に指紋押捺を全廃する法改正がなされた経緯は軽視することができない。

 最高裁も指紋押捺拒否訴訟において、何人もみだりに指紋押捺を強制されない自由を有しているとしており(最判平7.12.15)、パスポートの取得に際して一般的に指紋押捺を義務付けるとすると、過度の強制となるおそれがあり、また、海外渡航の自由(憲法22条)に対する制約ともなりうる。それだけではなく、指紋というきわめて重要な個人情報を国がデータとして集積することにも問題があり、より個人の人権や自由に関して制限的でない他の選びうる手段がないか等、慎重な検討を求める。
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