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2002/07/18
外務省刷新:7つの柱(中間報告)
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外務・安全保障合同部門会議・外務省刷新WT

1.外交のあり方と組織使命の刷新
2.外交戦略の刷新
3.組織・機能の刷新
4.国際協力の刷新
5.情報機能の刷新
6.人的資源の刷新
7.会計・業務監査の刷新



はじめに

政府・与党は、外務省不祥事が表面化するたびに、次々と「外務省改革案」を発表してきた。しかし、いずれも場当たり的で局所的な対処に終始し、外務省の旧態依然とした隠蔽体質や組織構造の刷新にはほど遠く、新たな不祥事の病巣は温存されてきた。

民主党は、現在の日本外交の状況に強い危機感を抱き、政府に先立って以下を提起してきた。

*任地・任務に適した大・公使等の政治任命の拡充、意欲・専門・能力・実績に応じた人事制度の確立、民間との人事交流の促進等を内容とする『外務公務員(外交官)の人事制度等に対する考え方』を2000年4月13日に提起。
*松尾事件等を受け、2001年2月24日、『政府機密費(報償費)改革案』を提起。平成13年度予算の修正要求、2002年4月26日に再提出。
*大使・公使の任用を国会の同意人事とする『外務公務員法の一部を改正する法律案』を2002年3月14日に策定。
*外務省も含めた政府の自浄作用を確保するため、内部告発者を保護する『公益開示法案』を策定。
政府は、これらの提案を放置したため続発する不祥事を防止できず、組織崩壊が進んでいる。


冷戦構造崩壊後の国際社会は、大きく変化している。わが国外交も、新たな国際社会における役割・位置、国益や理念、方針を再確認し、これに基づく戦略を抜 本的に建て直すことが急務である。その上で、外務省の組織使命(ミッション)を規定し直し、そのミッションの遂行のための組織、人事、態勢等の整備を抜本 的かつ包括的に行う必要がある。

民主党は、改めて以下に外務省刷新のための7つの柱と刷新案を提案する。

1.外交のあり方と組織使命の刷新

<基本認識>

日本外交は、方向性や国益、目指すべき国際社会のあり方などを踏まえた外交目標・戦略・政策などを主体的に構築できていない。国民の理解に支えられた日本外交のあり方(アイデンティティ)と外務省の組織使命(ミッション)の再定義が不可欠である。
民主党は、日本が対話と信頼・協力を基礎とする主体的で積極的な外交によって、国際社会の平和と安全を推進する「外交立国・日本」となり、「平和を享受す る国」から「平和を創る国」となることを目指している。平和・自由・基本的人権の尊重などを基本とした予防外交、人道支援、民主的社会の発展等を新たな外 交の柱とすることが、国際社会とわが国の平和と安定に貢献する道である。
貧困、難民、人権、環境、軍縮などの人類的な課題、東アジアに残る冷戦構造の脅威、変容を迫られる日米安全保障体制や国連、テロリズム、南アジア・中東等 の軍事的緊張、不安定な国際金融市場、FTAへの対処など、新たな国際環境で山積する日本の外交課題をゼロ・ベースから検証し、総合的な外交戦略を策定す る必要がある。

刷新案1 政治主導による日本外交の再定義

*国会に「外交刷新特別調査会」(仮称)を設置し、国民に開かれた議論を行い、新たな時代の外交課題に対するわが国外交のあり方や目標に関する「外交刷新大綱」(仮称)を策定する。

刷新案2 外務省の新たなアイデンティティとミッションの確立

*「外交刷新大綱」(仮称)に基づいて、外務省の任務・組織・業務等について「外務省刷新プログラム2003:"REMFAP2003" (Renovation MFA Program 2003)」(仮称)を策定し、新たな外務省の組織使命(ミッション)とあり方を提示する。

2.外交戦略の刷新

<基本認識>

わが国の存立が、諸外国との良好な外交関係の維持・発展に大きく依存する地理的・政治的条件は変わらない。対話と信頼・協力を基礎とする主体的で積極的な 外交の推進等によって、国際社会の平和と安全を推進する「外交立国・日本」めざすために、予防外交・人道・人権・人間の安全保障を新たな柱とした外交戦略 の刷新が必要である。そのため以下の政策を積極的に推進する。

刷新案3 予防外交を柱としたユニークな外交活動の展開

*予防外交の見地から、「貧困撲滅センター」、「民主化支援センター」、「アジアNGO支援センター」といった紛争の予防や和解、貧困撲滅や人間の安全保障に資する組織を設立・誘致・支援し、ノウハウや知識の蓄積、人材育成に取り組む。
*国連平和維持活動は、NGOなどとも連携し、経済面、行政面での協力等を促進し、より機能が発揮されるよう発展させる。

刷新案4 国際機関の連携・活用と積極的誘致

*国連等の国際機関に対して、積極的・戦略的に人材を派遣し、国際機関から包括的にサポートする体制を整え、国際機関との連携を深める。
*わが国にある国際機関の一層の活用を図るとともに、特に、予防外交等に関わる国際機関・国際会議を積極的に誘致し、日本の国際社会での発言力の強化を図る。

刷新案5 セカンド・トラック外交の制度化(野党への情報提供)

*野党外交を充実し、外交の多面化・多層化を図り、政権交代があった場合でも行政の継続性と新たな外交政策との調和を図る。
*与党と同じ情報を野党も共有するように外交情報を均等に提供し、いつでも政権交代や政治環境の激変に対応できるようにする。

3.組織・機能の刷新

<基本認識>

わが国の新たな外交戦略・目標に則り、山積する外交課題に対して的確に対処できるよう外務省機能を高めるため、組織及び態勢を組み立て直す(リエンジニアリング)。
組織刷新にあたっては、新たな外交政策の遂行に関わる効果と効率、危機管理、在外邦人サポートの向上、亜国家・市民社会組織(CSO/NGO)との連携といった観点を踏まえる。

刷新案6 外務省機能の特化と効率化

*通商交渉、農業、環境など専門分野は、各省庁が外交交渉の主体となる。経済局は廃止し、国際経済情報については総合外交政策局に移管し、対外経済に関する外交機能は、経済産業省、財務省等に移管する。
*外務省は、総合的な外交戦略・政策の立案、所管官庁が未定の先端分野、予防外交に資する社会開発・人道支援等の分野、在外邦人保護や支援、地域全体の総合的な信頼醸成、二国間関係、多国間関係、国際機関等との調整機能などに特化する。

刷新案7 外交政策立案機能の強化

*民間研究機関、大学、シンクタンク、NGO等との連携を強化する。
*外務省の代弁機関と化している各種審議会を抜本的に活性化し実用化を図る。

刷新案8 在外邦人の保護と活動支援の重視

*在外職員は、在外邦人の保護と活動支援をする、市民と国際社会をつなぐ「国際市民サービス・スタッフ」としての役割を果たすよう、意識改革と業務態勢の見直しを行う。
*領事移住部は、「国際市民活動支援局」(仮称)として格上げし、在外邦人や日本企業、NGOの安全や経済・文化・国際協力活動等に対するサービス業務を中核業務とする。

刷新案9 「国際危機管理局」(仮称)の創設等

*危機の兆候を事前に察知し、その情報を政府に迅速に伝達、初動を支える組織として再生するため、「国際危機管理局」(仮称)を新設し、国際的な危機管理を総合的に行う。
*国際情報局は、「国際危機管理局・国際情報部」(仮称)として統合し危機管理の一翼を担う。

刷新案10 在外公館組織の効率化

*大使館、領事館は、邦人サービスの向上を図りつつ、現地スタッフ、民間機関等を活用し、可能な限り数・規模ともに業務効率化を図る。

刷新案11 自治体外交への協力推進

*地方自治体の国際交流・協力部門や国際交流協会などに人材を派遣したり、情報提供を積極化するなど自治体のニーズに合わせて積極的に支援を行う。

4.国際協力の刷新

<基本認識>

日本外交の新たな柱としての予防外交・人道・人権・人間の安全保障等を積極的に推進するため、経済援助や国際開発協力について抜本的な刷新が必要である。

刷新案12 新たな『国際協力大綱』の策定

*政府のODA改革は、従来の枠組みでの効率化・透明化という小手先の改革でしかない。予防外交等の新たな外交政策に、ODA等の対外経済協力政策をしっかりと位置付け、国際協力政策全般を見直した『国際協力大綱』(仮称)を策定し、これに基づき改革する。
*インフラ等ハード重視型から、教育・人材育成や技術支援、医療・福祉、保健衛生、環境、ジェンダー重視といった人や生活、ソフト面重視型とし、NGOとの連携をさらに強化する。

刷新案13 「国際開発庁」(仮称)の設置

*外務省の経済協力部門(経済協力局、経済局)と国際協力事業団(JICA)などの援助実施組織などを統合し、「国際開発庁」(仮称)を設置し、外務省の外局として、担当の国務大臣を置く。

刷新案14 総合外交政策局 国際社会協力部を「国際社会局」(仮称)に格上げ

*総合外交政策局の下にある国際社会協力部を「国際社会局」(仮称)に格上げ。
*国際社会におけるさまざまな社会変化への対応、社会開発支援、内外の市民社会組織(NGO/CSO)との連携を図る。

刷新案15 対外支援活動の透明化

*ODAに限らず、すべての対外支援活動について、第三者による厳格な査察等を実施し、経理・実施面で不透明な事業・機関への資金提供を防止する。
*情報公開と事業評価を徹底させ、透明性・効率性を確保する。

5.情報機能の刷新

<基本認識>

情報収集・分析が、個人の資質に依存し、情報の組織的な蓄積が足りないとする批判もある一方で、必要な要員の確保ができないなどの指摘もある。情報収集・分析能力の抜本的強化を図るべきである。
外交機密の保持が求められる一方、本来国民に開示すべき情報まで公開を渋るなどの弊害は著しい。客観的な公開基準を策定し明示するなど、情報公開と外交機密の保護の両立を図る。

刷新案16 情報収集チャネルの複線化・高度化

*職員に地域情報、地域言語の習得を徹底させると同時に、現地スタッフも活用する。
*現在本省・大使館が持つ公式・非公式チャネルに加え、シンクタンクやNGO等とネットワークを形成し、情報の種類によって情報収集を外注(アウトソーシング)する。

刷新案17 「外務省秘密保持規定」の策定・公表と「情報安全課」(仮称)の新設

*情報公開の原則に立ちながらも、国益上、守秘されるべき機密情報についての判断基準・手続きなどを定める「外務省秘密保持規定」を策定するとともに、「情報安全課」(仮称)を大臣官房に新設し、機密情報の管理を徹底する。

6.人的資源の刷新

<基本認識>

外交立国・日本をめざすにあたり、日本の顔として大使・公使の役割は極めて重要である。外交官としての専門知識ばかりでなく、一層高い見識・人徳・品格・ 対人折衝能力が求められる。また、モラルが高く教養豊かな人材の育成、登用を図るとともに、そういった職員の能力と活力が最大限に発揮されるよう、適材適 所で戦略的な人材配置ができる人事制度に刷新する。

刷新案18 幅広い人材の大使登用、評価、大使人事の国会承認・帰任勧告

*大使等は、国際的な人脈を有する政治家、学者、NGO関係者を含む民間人等から政治任命も含め、幅広く登用する。民間人を含む非外務省枠を当面3割程度とする。
*ジェンダー枠を設け、当面1割程度を目標とする。
*大使、公使の任命について同意人事案件とし、参考人招致等による意見陳述などによる事前チェックができるよう『外務公務員法の一部を改正する法律案』の成立を図る。
*大使等の任務適正を評価するため、「大使等人事評価委員会」(仮称)を設置し、政治任命によって赴任した大使等も含めた厳正な人事制度の運用を図る。
*任地での任務の実績、適正等を考慮して、問題があった場合には、速やかに参考人招致等による審査を行い、国会が帰任等の勧告をできるようにする。
*特定人物の大使職への固定化につながる官房付き大使待命制度は廃止する。

刷新案19 「回転ドア」による採用拡充と適所適材の柔軟な人事制度の確立

*本省から大使館スタッフまで、大学、シンクタンク、NGO、民間企業などから広く人材を採用できるよう人事制度を改革する。
*地域専門家は育成するだけではなく、積極的に外部から採用する。
*経験や業務習熟によって、キャリア外交官と地域専門家との間にキャリアパスを設ける。
*幹部昇任人事の評価基準を明示し、定期的な審査期間を設け、キャリア・ノンキャリア、年次の垣根を越えて、意欲、専門知識、能力、実績等の評価に応じた柔軟な人事制度を確立する。
*女性の登用を促進するよう勤務態勢の改善を図る。
*民間採用者も含め家族・配偶者を持つ人材が、海外赴任しやすくするため、赴任者の配偶者を支援する「パートナープログラム」など、配偶者や家族支援のプログラムを充実させる。

7.会計・業務監査の刷新

<基本認識>

外務省経費の使途については、報償費(機密費)やODA等をはじめ不透明性が指摘され、一連の腐敗行為の温床ともなった。透明性、説明責任、自浄作用の観点から、会計・業務監査を刷新する。

刷新案20 外務報償費の抜本的改革

*現行の報償費を、国の安全や外交等に係る本来の「機密費」と、それに該当しない一般経費に峻別し、厳格な「機密費」の用途制限と決裁手続きを課する。
*機密費の支払いに関し、「機密費支払い記録書」を作成し、衆議院決算行政監視委員会、参議院行政監視委員会の下に設置する非公開の小委員会において審議する。
*機密費支払い記録の公表を義務づける。原則10年経過後の公開とするが、公開基準を別に策定し、特に機密の程度が高いものは25年、個人・法人情報、防衛・外交機密、犯罪捜査・秩序維持情報に該当する部分については延期できるものとする。

刷新案21 大使館経理の本省とのオンライン化

*すべての大使館経費をオンラインで本省に送り、本省においてコンピューター処理により一括管理し、経理業務の効率化と透明化をはかる。

刷新案22 「外務省オンブズパーソン」(仮称)の設置と『公益開示法』の制定

*市民からの外務省・大使館に対する苦情の窓口として、「外務省オンブズパーソン」(仮称)を設置し、苦情処理等に迅速に対応する。
*法令に違反する事実等の報告及び通報の制度、報告又は通報をした者の保護について定め、国の行政運営の適正化を図る『公益開示法案』の成立を目指す。

刷新案23 業務監査の厳正実施と結果の公開

*会計検査院による現地調査、行政監察制度、両院による予備的調査制度の拡充も含め、厳格な業務監査を実施する。
*外部会計コンサルタントなど、専門性の高い有識者よりなる第三者監査を義務付ける。
*透明性の確保と説明責任を果たす観点から、監査結果は公開する。

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