民主党の野田佳彦でございます。
民主党・無所属クラブを代表して、大臣より御説明をいただきました法案について質問をいたします。(拍手)
公団方式の高速道路整備は、その基本的な特徴は、償還主義とプール制にあります。
償還主義は、要は、数十年も先に料金収入などによって借金を返していくという時間軸のどんぶり勘定であります。プール制は、もうかる路線ともうからない路線を抱き合わせにする空間軸のどんぶり勘定です。この二つのどんぶり勘定が重なって、車を走らせる道路の経営状況は、自動車操業ではなくて、自転車操業になってしまいました。
これに対する小泉内閣の姿勢は、道路の問題でありますので道に例えて言うならば、抜け道、迷い道、回り道に陥っていると思います。(拍手)
国費投入をゼロにするというのは、一見、英断に見えます。しかし、その浮いた三千億円は、高速道路には回らなくなったとしても、国交省の道路局の財源再配分で一般国道に回すことはできる。要は抜け道があります。
加えて、償還期間を本来ならば三十年に短縮する話がありました。いつの間にか、妥協されてしまいまして、五十年に後退しました。総理は明らかに迷い道に入っています。
加えて、大事なさまざまな政治的な決断を、今回の法案に出てくる第三者機関にほとんど丸投げであります。回り道です。
結局は、赤字路線をだらだらとつくり続ける。人の道に反すると思います。こんなことを続ければ、あなたへの支持は坂道を転がるだけであると思います。
以下、具体的に質問させていただきたいと思います。
まず、この第三者機関の検討は、二〇〇二年中に結論を出すということになっていますが、この間も公団方式の道路整備は続くわけでありまして、この間に開通する新しい路線を見ても、相当に赤字路線が含まれております。
私は、せめて、こうした大事な検討が行われている間は、建設工事はストップすべきである、一時凍結すべきであると思っています。治療をする前に、手術をする前に、血をとめない、止血をしないというのは、私はおかしいと思いますが、総理大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
次に、この法案は、冒頭からいきなり、淡々と、「整理合理化計画に基づき、」と表現されておりまして、何ら理念や目的が明記されていません。まさに、小泉内閣の理念なき構造改革を象徴的にあらわしている法案だと思います。
法案には明文化されてはおりませんが、どのような理念で、どのような目的でこの委員会を設置しようとするのか、総理の明快な答弁を求めたいと思います。
次に、新たな組織形態についても、十分な検討をしないでこの第三者機関に丸投げをしています。極めて無責任だと思います。
高速道路の建設部門と管理部門を分けるのか分けないのか、上下一体か上下分離かというのは、とても大事なテーマであります。上下分離というのは、一
方は公的なセクター、もう一方は株式会社という形態であって、しかし、これはよく考えてみると、日本道路公団とファミリー企業との関係と何ら本質的な変わりはありません。部分民営化にすぎません。
本当にむだな道路をつくらないようにするためには、上下一体の民営化が望ましいと私は思いますが、総理大臣の御見解をお尋ねしたいと思います。(拍手)
このように、いろいろなことが十分に煮詰まらないで第三者機関に丸投げをされている今回の動きでございますので、だからこそ、そうしたあいまいさ、玉虫色の部分を乗り越えて、この第三者機関には十分な権限と万全な体制をつくらなければならないと思います。
その意味では、国家行政組織法上の独立性の弱い八条委員会ではなくて、独立性の強い三条委員会としてスタートすべきであったと思いますが、これも総理大臣にお尋ねしたいと思います。
次に、国会同意人事を拒む理由についてお尋ねしたいと思います。
予算委員会の答弁では、総理は、委員の人選に当たって、自民党、公明党、そして保守党、さらには有識者の意見を聞くとおっしゃっていました。だったら、国会で否決されるはずはありません。
さらに加えて、あの人はいい、この人はだめというやり方はしたくない、選ばれた人はいいけれども、否定された人の名誉にかかわるという答弁もされました。私は、これは国会同意人事そのものを否定する、極めて説得力のない御説明だと思っています。
もし、総理が真の改革者であったならば、与党審査を避け、国土交通省の横やりを避けて御自身で人選をするというやり方も、一定の理解は得られたかもしれません。しかし、田中眞紀子元外務大臣が、自分のスカートを踏んでいた抵抗勢力と指摘された今の小泉総理に、私は、残念ながら、信をおくことはできません。小泉神話は消えてしまいました。
だからこそ、重要な人事は国会の同意を求めるべきであります。私ども民主党は、大使の任命も国会の同意を求めるべきだと考えています。今回の民営化推進委員会の人選についても、ぜひ国会の同意を求めるべきだとお訴えをしたいと思います。(拍手)
いずれの形をとるにしろ、この人選は、民営化の成否を占う、とても重要なかぎを握っています。この人選について、自民党の道路族は、公平中立を求めていらっしゃいます。この公平中立という考え方は、一見、耳当たりはいいけれども、要は、九千三百四十二キロの整備計画どおり全部つくれと言う人を入れることが中立であり、公平であるという考え方であります。仮に、そうした意見に押し流されて、国土交通省OBなど、非効率な道路整備にかかわってきた人を入れるとするならば、私は、今回のせっかくの民営化の動きも魂を抜かれてしまうという懸念を強く持つものであります。
総理大臣は、改革意欲に富んだ人を選びたいとお話をされているそうでございますが、改革意欲に富んだ人とはどういう人でしょうか。私は、かつての国幹審の決定も、整備計画の九三四二も、バブル全盛期につくられた予定路線も、すべて根本から見直すことのできる人こそ改革意欲に富んだ人だと思います
が、総理の具体的な人選に向けての御所見をお伺いしたいと思います。
次に、個別路線の取り扱いについてお尋ねいたします。
今の国幹道法や道路整備特別措置法が生き残っている限りにおいて、九千三百四十二キロの道路を国がつくるというスキームは残ったままであります。その中で、今回発足しようとする委員会に採算性を検討しろといっても、おのずと限界があります。個別路線の整備計画のよしあし、そこまで見直しができるように、国幹審の決定もさかのぼって変更できるように、そうした権限を付与すべきであると思いますが、総理大臣の御見解をお尋ねしたいと思います。
次に、石原大臣にお伺いいたします。
第二東名・名神についてであります。
整備計画の残事業は約二千四百キロメートル、その総事業費は約二十兆六千億円と見込まれています。その半分近くが第二東名・名神の整備費になろうと思います。
現在、東名・名神はドル箱の黒字路線です。その横にもう一本、高速道路を走らせようというお考えでございますし、計画は進んでいますが、これは、平たく言うならば、もうかっているスーパーの横にもう一店舗つくる話であって、双方が赤字になる可能性すらあると私は思います。
個別路線の検討の中で最大の焦点である第二東名・名神について、石原大臣は、昨年十二月だったと思いますが、テレビに出演された折に、第二東名は必要ない、できっこない、第二名神の鈴鹿山脈を貫く計画は必要ないと明言されていました。現在はどのようなお考えをお持ちなのか、お尋ねしたいと思います。
石原大臣におかれましては、実は、私と同じ昭和三十二年生まれであります。大臣のお父さんは大東京都知事であって、私の父は地元の老人会の副会長ぐらいですが、氏素性は全く違いますけれども、同じ若い世代として、ぜひ、ひるまずに、恐れずに、クマばかりのところには道路はつくらなくてもいいというお話も昨年されていましたが、大胆な御答弁をいただきたいと思います。(拍手)
次に、石原大臣は、地方講演の中で、高速道路の料金の引き下げについても検討すべきであると言及されています。もしそれができるならば、夢のある改革になるでしょう。物流コストの引き下げにもつながります。
しかし、現実は、二〇〇〇年度の決算ベースで見てみると、四つの公団の債務総額は三十八兆円にもなろうとしています。その債務をどのように圧縮するのでしょうか。
とりわけ、本四公団におきましては、有利子負債が三兆八千億円です。料金収入が利払いにも満たない、経営破綻状況に陥っています。かつて、大平、三木、宮澤という歴代総理が政治力を駆使されてつくった三本のルートは、今や、官製不良債権の最たるものであります。この本四の改革なくして、私は、四公団の本当の意味の改革はないと思っています。往復で一万円も通行料金がかかる、通行するための橋というよりも、ただ見るだけの橋になりかねません。本四の改革についての石原大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
最後に、もう一度、総理のお考えをお尋ねしたいと思います。
かつて、竹下登元首相は、道路イズ政治、政治イズ道路と語られたことがありました。これほど見事に、自民党の地方への利益誘導、公共事業依存型の政治を端的に語っている言葉は、私はないと思います。その竹下イズムは、現在も自由民主党の中に、とりわけ経世会の中に脈々と引き継がれていると私は思います。
九〇年代に入ってからの自民党の歴代の道路調査会会長の顔ぶれをぜひ思い起こしていただきたいと思います。敬称略でまいりますが、金丸信、中村喜四郎、渡辺栄一、そして綿貫民輔議長、続いて村岡兼造、野呂田芳成、すべて経世会です。現在は古賀誠前幹事長という実力者でありますけれども、極めて親しいお仲間だと思います。
赤字路線でも構わずに地元に道路を引き込んで、関連業界から政治献金を受け取って選挙の支援まで仰ぐという構図、これは、ずぶずぶの政官業の癒着構造の最たるものであります。(拍手)
こういう自民党流の利権政治を変えない限り、本当は、道路関係四公団の改革はできません。私は、これが本質であり、すなわち、これは政治改革の問題だと思います。
仏経山トンネル工事の発注が見送られようとしたとき、昨年の暮れに、青木自民党参院幹事長は烈火のごとく怒って、政治的圧力をかけたと報道されていますけれども、これは、鈴木宗男議員がその影響力を駆使して、外務省に圧力をかけて国策をねじ曲げてきた構図と全く同じであります。BSE問題でちらちらと影が出てくる農水族の動きと全く同じであります。
自民党解体なくして、道路公団改革はあり得ません。政権交代なくして、道路公団改革はあり得ません。
こうした私の意見についての総理の御見解を賜りまして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
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