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1998/11/19
地方分権推進委員会「第5次勧告」について(談話)
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民主党政調会長 伊藤 英成

 本日、地方分権推進委員会は小渕総理に対して「第5次勧告」を提出した。本来であるならば地方分権推進委員会の勧告は「第4次勧告」で終了し、その後は政府の分権推進を監視することへと主たる任務を転換する予定であった。しかし、橋本前総理が行った、「行政改革」とは看板ばかりの省庁再編によって生じた矛盾の解消が地方分権推進委員会に押し付けられ、今回の勧告となっている。皮肉なことにこのような経緯から、委員会は昨年までの4次にわたる勧告より一層具体的な問題に取り組むことになり、まさに骨身を削るご苦労を強いられる羽目となった。まずは大変厳しい作業を続けてこられた諸井委員長を始めとする委員各位に心より敬意を表したい。

 今回の勧告の主たる内容は、社会資本整備事業のあり方及びこれを支える財源の見直しである。直轄事業を縮減し、補助事業については「統合補助金」制度を創設することによって地方の主体性を確保するという方向性については、民主党の考えと合致しており、これを歓迎するものである。しかし、直轄事業の指定基準は抽象的な表現に止まり、具体的な見直しは関係審議会等に委ねられている。また、統合補助金では、統合とは言いながら個別の社会資本毎の補助金が想定され、複合型社会資本の整備が困難なばかりか、申請段階で国が「箇所付け」等、実質的に従来通りの国の地方自治体に対するコントロールが残るおそれが大である。行政の権限は法律に基づいており、この法律の具体的な改正内容を伴わない今回の勧告では、結局行政側に法律の改正内容を委ねることになるため、民主党が目指す新たな分権社会の実現は不可能とならざるを得ない。その意味で我々は、残念ながら今回の勧告には満足できない。さらに実質的な事務の移譲に必要不可欠な地方税財源の拡充については具体的な内容が全く盛り込まれておらず、期待に反するものである。この点が今回の勧告とりまとめ作業にあたって自治体等の大きな支援が得られなかった原因ともなっている。

 このような結果を招いた最大の理由は小渕内閣の指導性の欠如である。小渕首相が分権推進に関して積極的なリーダーシップを発揮せず、各大臣においても国民の代表という立場を忘れ自らの省庁の権益保護に走った結果、地方分権推進委員会が各省庁と孤独な協議を続けることになったのである。この点について委員会に忸怩たる思いがあることは、想像に難くない。委員会は本年8月に「論点整理」として一つの考え方を提出したが、今回の勧告はこれに比べれば後退している。今後は政府の監視が主たる任務となるが、併せてこの後退の経緯を広く国民に公開し、改めて分権のあり方を国民に問うていくことを期待する。

 来年の通常国会より分権の主戦場は国会となり、これを如何に実現するかは国民の代表である政治の責任である。とりわけ自民党政権では分権社会の実現が不可能であることを改めて確認した現在では、野党第一党である民主党の責任は非常に重いと考える。我々はこの国民的要請に応え、「官僚主導から国民主導への転換」を果たすため地方分権推進委員会の勧告を超えた、より大胆な提案を行っていく所存である。

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