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1998/10/28
ガイドライン関連法案への対応について
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民主党政策調査会

我々は、日米安全保障条約を引き続き我が国の安全保障政策の基軸に据えるべきであると考え、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態が発生した場合に、日米が適切な防衛協力を行うことは重要であるとの基本認識に立っている。このため、新ガイドライン(日米防衛協力のための指針)を実効あるものにするための法整備を早急に行うことが必要である。
既に政府はガイドライン関連二法案を国会に提出しているが、政府案には以下のようないくつかの重要な問題がある。我々は、今後具体的な修正案を作成し、政府案を修正した上でその成立を図りたいと考えている。


1. 周辺事態安全確保法案

1. 周辺事態の定義
  政府は、周辺事態を「日本の平和と安全に重大な影響を与える事態」と定義しつつ、周辺事態は地理的概念ではないとしている。しかし、これでは自衛隊の活動範囲が無限に広がることになりかねない。我々は、新ガイドラインが日米安保条約の実効性を確保するために制定されたとの基本的認識に立つ。したがって、周辺事態安全確保法案(以下「法」という)における自衛隊の活動範囲も日米安保条約に定める極東及び極東周辺の範囲を超えるべきではないと考える。以上の点については、意見の一致をみた。
ただし、法文の修正については、1.周辺事態の定義を「極東及び極東周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」であると明示すべきとする意見と、2.定義そのものは変更せず政府統一見解を出させることで同様の趣旨を確認することが適切との意見、3.この法の日米安保条約との関係を法文上明確にすることとすれば(後述)、その趣旨は明らかになるので定義をあえて変更する必要はないとの意見に分かれた。

2. 米軍との関係
 周辺事態において米軍との関係が問題となる後方地域支援については、日米安保条約の目的達成に寄与する活動を行っている米軍を前提としている(法3条1項1号)が、後方地域捜索救助活動と船舶検査活動においてはそのような規定はなく、自衛隊が単独でも活動可能である。例えば、米軍が戦闘活動を行っているときに自衛隊のみが法で許された地域において船舶検査活動を行うことは十分あり得ることである。
 問題は、周辺事態において米軍が全く活動しなかった場合に、日本が自ら必要と認め基本計画を閣議決定し、それに基づき自衛隊が後方地域捜索救助活動や船舶検査活動を行うことの余地を認めるか否かである。現在の法文上はその可能性を否定しない形となっている。この点に関しては、1.現在のままでよいとの意見と、2.日米安保条約の実効性確保のための法律という性格を逸脱するものであり、仮に米軍の存在とは独立して自衛隊が捜索救助活動や船舶検査活動を行う必要があるのであれば、むしろ自衛隊法改正の問題であり、別途十分に議論するべきとの意見に分かれた。2.の考えに立つと、米軍が参加しない場合においては、周辺事態法の適用はないとの趣旨を明確にするため法文修正が必要と考えられる。具体的には次のような修正が考えられる。

(修正案)法第1条(目的)の規定中、「周辺事態に対応して我が国が実施する措置...」とあるのを「周辺事態に対応して、日米安保条約の目的達成に寄与する活動を行う米軍と協力しつつ我が国が実施する措置」とすべきである。

3. 国会承認
   政府提出の周辺事態安全確保法案は、周辺事態に必要となる措置の基本計画を国会に報告するにとどめている。我々は、以下の理由により国会が必要に応じて法の基本計画を修正又は拒否できる仕組みを作るべきだと考える。

1. 政治の軍事に対する優先というシビリアン・コントロールの観点から、自衛隊の活動については、国会がその活動をより直接的にチェックする仕組みが不可欠なこと、
2. 本法案が規定する措置は直接国民生活に影響を与えるとともに、国民の権利を制限することとなる可能性があること、
3. 派遣される自衛隊にとっても、その活動に対する国民的支持が明らかにされている方が望ましいこと。

    国会承認の対象については、1.周辺事態の認定が基本計画の提出と事実上同じタイミングで行われること、2.「承認か拒否か」の二者択一ではなく、国会による計画の修正も可能にすることで柔軟な対応が可能なこと等により、基本計画とすべきである。
国会承認の方法については、大きく分けて事前承認、事後承認の二通りがある。緊急の場合には国会の承認を得ないで活動できる仕組みを取り入れた上で、事前承認の方法を取ることが望ましいと考える。なお、国会が周辺事態における日本の活動の是非や内容を定期的に見直す仕組みを作るべきである。

4. 武器の使用と憲法9条
憲法9条が禁ずる海外における武力行使に該当することがないよう、法第3条は後方地域支援と後方地域捜索救助活動については、後方地域(現に戦闘が行われておらず、又行われないと認める公海及び、その上空)においてのみ実施することとし、船舶検査活動は我が国領海、又は我が国周辺の公海においてのみ行うこととしている。また、法第5条第4項、第6条第5項、第7条第4項は、実施区域がこの法律に定めた要件を満たさないものとなったときは速やかにその指定の変更や活動の中断を行わなければならないとしている。このような規定で、果たして十分と言えるか否か、自衛隊が戦闘区域で活動しないことを十分に担保できるか否か、国会審議を通じて確認していく必要がある。
 次に、武器の使用については、法第11条において規定されているが、これと同様の規定はPKO法等にも置かれ、これは自己保存のための自然権的権利として憲法第9条との関係は既に整理されている。ただし、前国会でPKO法を改正し、同法上の武器使用について上官の命令によることとしたことから、同様の修正は本法にも必要であると考える。
 さらに、法第11条は、武器の使用を後方地域捜索救助活動と船舶検査活動にのみ認めているが、後方地域支援活動についてもテロ行為などの不測の事態を想定して武器使用を排除すべきでないと考える。後方地域支援活動のうち武器使用規定の対象とする活動については、(A)後方地域支援活動のうち輸送任務に限るとの意見と、(B)後方地域支援活動全てについて規定するとの意見に分かれた。
最大の問題は、自衛隊法第95条の「武器等の防護のための武器の使用」の規定が排除されていないことである。防衛出動や治安出動の場合と異なり、我が国周辺の公海において活動している自衛隊に、「自然権的権利」では説明できない武器等の防護のための武器使用を認めることが、憲法の禁ずる海外における武力行使に該当しないのか疑問なしとしない。政府の明快な説明を求める必要がある。場合によっては我が国の領土、領海、領空外においては、自衛隊法第95条の適用を排除する旨の規定が必要になると考えられる。

5. 自治体・民間の協力について
  法第9条は、関係行政機関が法令や基本計画に基づき、地方公共団体の長の権限の行使と、民間を含む国以外の者について必要な協力を求めることができると規定している。自治体や民間に協力を求めることは、国民の生活や権利義務に大きな影響が及ぶ可能性があるので、協力を求められる主な事項について類型化して例示するべきである。


2. 自衛隊法改正法案

1. 我々は、邦人救出に万全に期すため、自衛隊法第100条の8(在外邦人等の輸送)を改正し、艦船の派遣をオプションに加えることは必要な措置であるとの基本認識に立つ。ただし、現在の第100条の8では輸送の手段が政府専用機又は、輸送の用に主として供するための航空機に限られている。これと類似の制限を艦船に対しても設けるべきではないかと考えられる。仮にこのような制限が現実的でないとすると、自衛隊法第95条(武器等の防護のための武器使用)の規定を排除する必要性がより大きくなると考えられる。

2. 現在、日本政府は航空機や艦船(法改正後)の事前派遣を自衛隊法第100条の8の準備行為として行っている。しかしながら、準備行為は法的な位置づけがなされておらず、防衛庁長官限りで自衛隊を世界中どこでも派遣できるとの懸念を招きかねない。このため、航空機や艦船の事前派遣について自衛隊法100条の8を改正し、明確にすべきだと考える。


3. 日米事前協議の活性化

周辺事態における米軍の活動は、日米安保条約に基づく日米事前協議の対象となる我が国からの戦闘作戦行動のための基地使用や米軍の配置における重要な変更を伴う可能性が高い。新ガイドラインに基づいて行われる日米防衛協力を我が国が主体的に判断して実施するためには、今まで実質的な協議が行われたことのない日米事前協議の制度を活性化させることが重要である。事前協議の対象となる事態を改めて確認することと事前協議の当事者を定義することを求める。




参考: 国会承認の方法(案)

* 内閣総理大臣は、基本計画の案について国会の承認を得なければならない。ただし、特に緊急の必要がある場合には、国会の承認を得ないで基本計画を実施することができる。その場合、内閣総理大臣は、直ちに、基本計画について国会承認を求めなければならない。(国会による計画の修正も可。)

* 国会は(90)日毎に基本計画を見直し、継続するときはこれを承認する仕組みとする。政府は、国会の不承認の議決があったときは、遅延なく周辺事態安全確保法に基づく措置を停止しなければならない。

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