民主党 ネクスト・キャビネット
外交・安全保障NC大臣 伊藤 英成
「えひめ丸」衝突沈没事故に関して、ファーゴ米海軍太平洋艦隊司令官は、24日(米国時間)、ワドル前艦長らに対する懲戒通告を行った。処分内容は、事前に報道されていた通り、査問会議報告書の勧告に沿うもので、ワドル前艦長らの刑事責任を問う軍法会議は開かれず、2ヶ月の減給処分など極めて軽い行政処分にとどまった。
査問会議では、ワドル前艦長の操艦指揮、乗員の配置や潜望鏡による海上の状況の確認、艦の点検・整備等はじめ規律・規則違反、操艦における過失・怠慢など多くの問題点が指摘されていた。さらに、16名の民間人を乗船させ、数名が操艦に関わった事実、及び操艦への影響も指摘されてきた。米軍事統一法典に基づくと、(1)職務怠慢罪、(2)艦船を危険にさらした罪、(3)過失致死罪の可能性もあった。しかしながら、軍法会議が開かれないことにより、真相がこれ以上は明確にならず、責任の所在についても解明されないまま幕が引かれることになる。断じてこれを容認することはできない。
民主党は、今回の決定により、日本国民の米軍に対する憤りと不信がさらに高まり、アジア太平洋地域の安全保障における日米協力関係が損なわれることを深く憂慮する。引き続き、米軍が徹底的な綱紀粛正を行い、厳格に説明責任を果たすよう改めて要請する。
本件に関し、米軍有力者の「軍法会議開催は海軍の士気を損なう」、「優秀な艦長が犠牲になる」といった発言や、秘密とされた査問会議の結果が事前に海軍当局から漏らされるなど意図的な世論誘導も感じられ、身内をかばう軍の論理や政治的思惑で、真相と責任の究明がなおざりにされたとしたら、重大な問題である。今回の決定が今後の補償交渉に及ぼす影響も懸念される。
今後の対応において、今回の事故が米原潜側の過失・怠慢により発生し、全く罪もない高校生はじめ日本国民9名が犠牲になったという事実をしっかりと踏まえ、米政府は被害者及びご家族・関係者に対し、今回の決定に関わらず、誠意ある補償と対応を行うことを改めて強く求める。さらに事故の再発防止に向けて、事故原因と責任をさらに厳密に検証し、今後の対策・措置について検討した結果を公表するとともに、それらを着実に実行しその実施状況について明らかにしていくべきである。
日本政府に対しては、被害者及びそのご家族・関係者への支援のため、あらゆる措置に万全を尽くすこと、そのために米国政府に対し、毅然とした対応をとるよう強く求めるものである。
以上
|