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2001/10/04
米国における同時多発テロへの対応について
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民主党

1. 民主党の基本的考え方

本年9月11日に米国で発生した同時多発テロは、多くの罪なき人々を巻き込んだ卑劣かつ残虐な犯罪行為であり、平和で安全な民主的な社会を希求する私たち人類への挑戦であり、こうしたテロを民主党は断固容認しない。日本は、国際社会におけるテロ撲滅のために、国連を中心とする国際機関及び米国などの世界各国と一致協力して毅然と立ち向かうべきである。

 民主党は、今回のテロが、わが国を含む多くの国々の人々が犠牲となった極めて悲劇的な事態であり、私たちの平和と安全にとってこれまでにない全く新しい形の脅威と捉え、新たな対応が求められていると認識する。

 民主党は、その安全保障基本政策において、日本国憲法の基本原理である平和主義に基づいて、テロや紛争などの予防・解決のために、わが国の特性を活かしたあらゆる外交努力を行うべきと主張してきた。今回のテロ事件への対応においても、特定宗教や民族、文化、思想等の対立を助長しないという細心の配慮のもと、平和外交の理念に基づき、テロ撲滅への国際的な協力や対話の促進、貧困問題や中東和平外交などテロ原因除去への積極的な取り組みなど、テロ撲滅のための外交努力に全力を傾注すべきである。

 また、グローバル化した国際社会にあっては、今後もいかなる事態がいつ起こるとも限らない状況にあると認識し、日本政府が、国民の生命・財産を守るために、国内のテロ対策及び危機管理体制に万全を尽くすべきと考える。

 テロ撲滅に向けた国連等の国際機関及び米国等各国との協調行動においては、日本国憲法の枠組みを遵守し、その中で可能な、武力行使と一体化しない形での、対応措置に取り組んでいくべきと考える。国内のテロ対策とあわせて、現行の法律に基づく最大限の対応はもとより、さらに必要となる法制度や態勢の整備については、これまでの国会論議等を踏まえ、しっかりと議論を尽くして行うべきである。

 今後行われるであろうテロ撲滅の行動においては、民主的な社会の基礎となる国民の理解と合意を得るため、テロ事件の徹底的な捜査による実態の解明、テロリスト及び支援者の特定に関する十分な証拠の提示、対応措置に関する的確な情報の開示・提供を、米国及び日本政府に強く求めていく。

2. 日本の対応のあり方

 今回のテロ撲滅対策への民主党の基本姿勢として、以下の3原則を踏まえる。

一、 正義と人道に反するテロには毅然として立ち向かう。

二、 米国等のテロ撲滅行動への協力に必要な法整備には、憲法の枠内で周辺事態法の議論を踏まえて取り組む。

三、 求められる後方地域支援には、犯人の特定と米国の作戦目的の明確化を求める。

1 外交上の取り組み

(1)テロ撲滅のための中東和平外交及びアジア外交の積極推進

1. 古来、中東地域では、宗教・民族・石油利権等をめぐり歴史的に極めて根深い対立が続いてきた。今回の事態を決して宗教や民族対立の戦争にしてはならない。中東地域においては、日本は欧米各国よりも中立的な役割が期待できるものであり、事態の収拾に向けた取り組みや、対話促進など和平構築プロセスに積極的に関与するなどあらゆる外交努力を尽くすべきである。

2. テロ撲滅に向けてアジア諸国間の認識を共有できるよう、インドネシア、マレーシア等のイスラム系アジア諸国との対話・連携を促進するとともに、この共通認識を背景に、わが国の対応について十分な理解が得られるよう頓挫したままの中国、韓国を含めたアジア外交を積極的に推進するべきである。

(2) ODAの戦略的な活用

1. 欧米諸国とは異なるアプローチができる日本の特性を活かして、テロの根源となっている貧困問題の撲滅等を目的として、中東・南アジア等の諸国に対して、政府開発援助(ODA)を戦略的、積極的に活用するべきである。

2. 援助の供与にあたっては、人道上必要な援助が、被援助国の国民を直接裨益するよう、草の根援助の活用やNGOとの連携する。特に、現地で人間的な信頼関係を築いてきた様々なNGOを積極的に支援するとともに、現地情報や支援供与方法などについての協力を求める。

3. ODAの供与にあたっては、現在の被援助国からの要請型から、日本の主体的判断を踏まえた提案型の援助方式を重視し、さらに戦略的な活用ができるようにする。民主党は、ODA改革について積極的に検討しており、国会の関与等も含めて「ODA基本法」の策定等さらに抜本的な改革を検討していく。



(3)国連等をはじめとした多国間協議でのリーダーシップ

1. 今回の事態を契機に、アジア諸国をはじめ各国のテロ撲滅への認識を共有化していくとともに、国際間の治安担当者間の捜査・司法共助、テロ情報の交換、犯人の引渡し、原因究明、科学捜査、資金洗浄の阻止など、具体的な再発防止策などを検討するため、「対テロ撲滅国際会議(仮称)」の場を設けるよう各国に働きかける。

2. 特に、国連は2001年を「国連文明の対話年」としており、今回のテロ対応が宗教等の対立にならないよう主張するべきである。さらに今年7月の「国連小型武器会議」で議長を務めた日本は、小型武器拡散抑止に向けて積極的にイニシアチブを取るべきである。

3. テロ等の予防、テロ対策専門家の訓練・育成及び事件が発生した場合の国際協力態勢の強化、生物・化学兵器の規制、サイバーテロ対策、小型武器規制、薬物対策等に向け、集中的・継続的な国際的取り組みを推進するため、常設の「国連対テロ捜査監視機構(仮称)」の創設など国連における枠組み作りに積極的に取り組む。

(4)難民支援活動

1. アフガニスタン難民については、放置すれば、この冬数百万人の餓死者が生じるとの指摘を重く受け止め、わが国として、緊急物資の提供等、人道上の難民救済活動を実施する。

2. 現行のPKO協力法に定める緊急の人道援助で対応できる部分について、可能なものを実施する。パキスタンにいる難民への緊急物資の空輸については、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の支援要請に基づき、現行の法律の枠内で対応する。ただし、派遣の前提たる条件が崩れた場合には、撤退するものとする。

3. 現行の法律の枠を越える事態への対応については、テロの特性、任務や派遣地等を勘案し、憲法の枠内において検討する。特に、難民にゲリラ等が紛れ込む場合が指摘され、地域住民、他の難民、わが国やNGO等の援助関係者に危険が及ぶ可能性もあり、難民支援活動を実施する場合は、安全性の確保について、派遣時期や戦闘地域との距離、武器使用基準のあり方を慎重に検討する。

4. わが国に対して難民申請する者がいる場合は、UNHCRと密接に協力し、ゲリラ等の侵入を阻止しつつ、人道主義に基づく円滑な移送、希望者への定住支援、教育などの生活支援を含む物的・人的な難民受入態勢の整備を図る。

2 国内の取り組み

(1)テロ防止関連条約の早期批准及び国内法令の整備

1. 現在、未批准の次の条約を早期に批准するとともに、必要な国内関連法を整備する。
・テロリズムに対する資金供与防止条約(1999年12月9日、国連採択)
・テロリスト爆弾使用防止条約(1998年4月17日署名)

2. 日本も今回のテロで被害を受けた国として、捜査情報の交換や捜査共助など国際的な捜査等に主体的に取り組むべきである。

(2)危機管理体制のさらなる充実と強化

1. 日本も既にテロの標的になっているという現実を厳しく受け止め、災害対策に加えて、生物・化学兵器テロ、サイバー・テロ等への対処も含め、「危機管理庁<日本版FEMA>」(仮称)の新設など、関係機関の連携が円滑に行われるよう実効性のある危機管理体制を早急に整備する。特に、医療や消防態勢など国民の生命・生活に関わる部分についてしっかりと整えるべきである。

2. 日本として主体的にテロに関する情報収集・分析を行うよう態勢を整備する。

3. テロ・危機管理に関する専門家を養成する。

4. 国内線を利用したハイジャック等によるテロ攻撃の事態に対処については、現在、法的な根拠が空白となっている。このような場合に、航空自衛隊が対応すべきことがあるか、任務のあり方について検討に着手する。

(3)出入国管理、航空保安、ハイジャック防止の強化

1. 不法入国を未然に防止し、また密航者の捜査、テロ関係者が既に不法滞在している場合に備えて、入国警備官(現在1,017人)の増員、偽・変造文書鑑識等の科学機器の装備など、出入国管理行政、税関検査等の態勢を強化する。さらに、手荷物検査等の航空保安体制を徹底的に点検し、ハイジャック防止に万全を尽くす。

2. 無用な国民の不安をなくすため、不法入国者に関して適切な情報の公開を行うとともに、警察など関係機関と連携し、テロ等容疑者の検挙に全力を傾注する。

3. 「航空機不法奪取条約(1970年ヘーグ条約)」・「航空機強取等処罰法」及び「民間航空不法行為防止条約(1971年モントリオール条約)」・「航空危険行為等処罰法」等に基づき、ハイジャック容疑者の捜査・手配等について、万全の体制を確立する。

(4)在外邦人への情報提供・保護策の強化

1. 在外邦人への今回のテロに関して十分な情報提供を行うとともに、被害者、家族、救助関係者等への心のケア等を含め支援対策を強化する。

2. 在外邦人及び邦人関係施設がテロの標的になるおそれがあることから、在外邦人の危機管理体制等を再点検し、安全対策や緊急時の連絡・情報提供・救援・保護・救援・支援体制などテロ対策を抜本的に立て直す。

(5)在日外国人の安全確保

1. 在日外国人に対し、テロ対策や危機管理体制等について適切な情報を十分提供する。

2. 乏しい情報の下では、テロと無関係な中東系の外国人に対して、偏見に基づく差別的な対応がなされる恐れがある。政府はかかる差別などを未然に防止するため、国際理解教育の充実などとあわせ、在日外国人の人権擁護など多文化共生への理解を促進するための適切な措置をとるべきである。

以上

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